思子淵神社資料(PDF文書)

別
紙
新指定の重要文化財(建造物)
し
こ ぶちじんじゃ
思子淵神社
ほんでん
3棟
ざ お う ごんげんしゃ
くま の しゃ
本殿、蔵王権現社、熊野社
こ がわ
所在地:滋賀県高島市小川
所有者:思子淵神社
建物の概要
はりはたがわ
思子淵神社は、針畑川流域の山間部、京都府との境に近い小川集落の南の入り口に所在
する。境内は針畑川に向かって東面し、山裾の斜面を二段に造成して、上段に、本殿・蔵
おお
や
王権現社・熊野社が一つの覆い屋内に納められている。
いかだ
思子淵神社は、 筏 流しによる木材搬送の守護神とされる思子淵神を祭神に祀る。神社の
創立は明らかではないが、社蔵の文書史料から、中世にはすでに存在していたことがわか
る。
本殿・蔵王権現社・熊野社はいずれも小規模な社殿で、覆い屋の中央には本殿が、向か
って左端に蔵王権現社が、向かって右端に熊野社が納められている。
おうあん
建築年代については、蔵王権現社の小屋組内に納められた板札から、蔵王権現社は応安4
年(1371)に建立されたことがわかる。本殿および熊野社は建築年代を示す史料はないが、
様式・技法上から蔵王権現社と大きな時代差は認められず、ほぼ同時代の建築と考えられ
る。
いっけんしゃながれ み
せ だなづくり
はりま
本殿・蔵王権現社・熊野社の形式は、一間社 流 見世棚 造 で、梁間は一間、正面に縁を
設け、屋根はこけら葺で箱棟を載せる。3棟のうちでは本殿が最も規模が大きい。
各社殿とも、部材の風蝕程度より、古くから覆い屋に納められていたとみられ、建築当
初の部材が大変良く残され、大きく面を取った部材やヤリガンナ仕上げなどの技法に中世
建築の特徴がよく表れている。
おうあん
応安4年建立の蔵王権現社をはじめ、本殿・熊野社も建築年代がほぼ明らかであり、14
世紀後期の3棟の社殿を一体的に残す極めて貴重な建造物である。また、安曇川流域にお
いて、独自の発展を遂げた思子淵信仰の形態を知るうえでも価値が高い。
思子淵神社 3棟
(左奥)蔵王権現社、(中央)本殿、(右手前)熊野社