3 一般角の三角比

§6.3
一般角の三角比
xy 座標平面において極と始線とをとるときは,
y
角度 θ の動径
特に断りがない限り,原点 O = (0 , 0) を極と定
め,原点 O から x 軸の向きに延びる半直線を始
線と定めます. この始線を Ox と書き表します:
極
O
Ox = { (x , y) | x ≥ 0 かつ y = 0 } .
始線 Ox
x
(sine) sin θ と,
一般角 θ に対して, θ の 一般角 θ
θ の (cosine) cos θ と, θ の (tangent)
tan θ とを定義します. xy 座標平面におい
y
P2
て,原点 O = (0 , 0) を極として x 軸の向き
y2
に延びる始線 Ox に対する角度 θ の動径に
P1
属す点 P1 と P2 とをとります. P1 6= O ,
y1
r2
r1
P2 6= O とします. 次のようにおきます:
P1 = (x1 , y1 ) ,
一般角 θ
P2 = (x2 , y2 ) ;
OP1 = r1 ,
x2
OP2 = r2 .
O
x1
始線 Ox
x
点 O = (0 , 0) と点 P1 = (x1 , y1 ) と点 P2 = (x2 , y2 ) とは一直線上にありますから,
y
x
x
y
y
y1
= 2 , 1 = 2 ; 更に, x1 6= 0 のとき, x2 6= 0 で 1 = 2 .
r1
r2
r1
r2
x1
x2
つまり, xy 座標平面において,原点 O から x 軸の向きに延びる始線 Ox に対する
角度(一般角)が θ の動径に属す点 P = (x , y) ( P 6= O ) をとり, r = OP とおく
x
y
y
, ( x 6= 0 のとき) の値は一般角 θ の値だけから唯一に決まります.
と, ,
r
r
x
定義
一般角 θ の正弦 sin θ , 余弦 cos θ , 正接
y
tan θ は次のように定義される: xy 座標平面に
P = (x , y)
おいて,原点 O = (0 , 0) を極として x 軸の向
r
きに延びる始線 Ox に対する角度 θ の動径に
属す点 P = (x , y) (但し P 6= O ) をとり,
r = OP とおくと,
y
sin θ = ,
r
O
x
x
,
r
y
.
tan θ =
x
cos θ =
x 6= 0 のとき
一般角 θ
一般角の正弦・余弦・正接などを三角比といいます.
一般角の三角比は 6.1 節で述べた直角三角形の三角比の定義の拡張です. 相異な
る 3 点 A , B , C を頂点とする三角形 ABC において
ACB = 90◦ とします. 次
6
のように xy 座標系を定めます: A が原点 (0 , 0)
y
で,点 C は x 軸上にあり C の x 座標は正で,点
B の y 座標は正である.
B = (x , y)
BAC = θ , AB = r ,
6
r
B = (x , y) とおきます. x > 0 なので x = AC ,
θ
A
0
y > 0 なので y = CB . 線分 AB の始線 Ax に
y
C
x
x
対する角度は θ ですから,
sin θ =
例解
BC
y
,
=
r
AB
AC
x
,
=
r
AB
cosθ =
BC
y
.
=
x
AC
tan θ =
一般角 510◦ の正弦 sin 510◦ , 余弦 cos510◦ , 正接 tan 510◦ の各々の値を求め
ます. xy 座標平面において,原点 O を極として x 軸の向きに延びる始線 Ox に対
する角度 510◦ の動径に属す点 P ( P 6= O )をとり,点 P から x 軸に下ろした垂線
の足を H とおき,直角三角形 OPH に着目します.
POH = 180◦ − (510◦ − 360◦) = 30◦ .
6
よって 直 角 三 角 形 OPH の 内 角 は 30
◦
P = (x , y)
と
HP : PO : OH = 1 : 2 :
点 P は角度 510
√
3 .
一般角 510◦
2
1
60◦ と 90◦ なので,
◦
y
30◦
√
3
H
O
x
の動径に属す O 以外の
どの点でもよいので, r = OP = 2 とします. P = (x , y) とおきます.
√
|x| = OH = 3 ,
|y| = HP = 1 .
√
x < 0 なので x = − 3 , y > 0 なので y = 1 . 従って,
y
1
sin 510◦ = = ,
r
2
√
√
− 3
3
x
◦
cos510 = =
=−
,
r
2
2
1
1
y
tan 510◦ = = √ = − √ .
x
− 3
3
問題 6.3.1
終
一般角 660◦ の正弦 sin 660◦ , 余弦 cos660◦ , 正接 tan 660◦ の各々の値
を求めなさい.
例解
一般角 −135◦ の正弦 sin(−135◦ ) , 余弦 cos(−135◦ ) , 正接 tan(−135◦ ) の各々
の値を求めます. xy 座標平面において,原点 O を極として x 軸の向きに延びる始線
Ox に対する角度 −135◦ の動径に属す点 P ( P 6= O )をとり,点 P から x 軸に下
ろした垂線の足を H とおき,直角三角形 OPH に着目します.
6
y
POH = 180◦ − 135◦ = 45◦ .
1
H
よって直角三角形 OPH は直角二等辺三角形な
ので,
PH : HO : OP = 1 : 1 :
√
O
x
45◦
1
√
2 .
一般角 −135◦
2
P = (x , y)
点 P は角度 −135◦ の動径に属す O 以外
√
のどの点でもよいので, r = OP = 2 とします. P = (x , y) とおきます.
|x| = OH = 1 ,
|y| = HP = 1 .
x < 0 なので x = −1 , y < 0 なので y = −1 . 従って,
1
−1
y
sin(−135◦) = = √ = − √ ,
r
2
2
1
−1
x
◦
cos(−135 ) = = √ = − √ ,
r
2
2
−1
y
tan(−135◦) = =
=1 .
x
−1
問題 6.3.2
終
一般角 −225◦ の正弦 sin(−225◦ ) , 余弦 cos(−225◦) , 正接 tan(−225◦ )
の各々の値を求めなさい.
θ = 0◦ , 90◦ の各々に対する cosθ , sin θ , tan θ の
y
値を求めます. xy 座標平面において,原点 O を極
P
として x 軸の向きに延びる始線 Ox に対する角度 θ
1
角度 θ
の動径に属す点 P で OP = 1 となる点 P を定めま
す. 始線 Ox に対する線分 OP の角度が θ = 0◦ の
O
とき,右図のように,線分 OP は始線 Ox に重なり
y
x
ます. OP = 1 , P = (1 , 0) なので,
cos 0◦ =
1
=1 ,
1
sin 0◦ =
tan 0◦ =
0
=0 ,
1
0
=0 .
1
O
始線 Ox に対する線分 OP の角度が θ = 90◦ のと
1
y
き,右図のように,線分 OP は y 軸の y 座標が 0 以上
P = (0 , 1)
の部分に重なります. OP = 1 , P = (0 , 1) なので,
0
cos90 =
=0 ,
1
90◦
1
1
sin 90 =
=1 ;
1
◦
P = (1 , 0)
x
◦
O
tan90◦ の 値 は あ り ま せ ん . 以 上 の 結 果 を ま と め
x
ます:
例題
sin 0◦ = 0 ,
cos0◦ = 1 ,
tan 0◦ = 0 ;
sin 90◦ = 1 ,
cos90◦ = 0 ,
tan 90◦ の値は無い .
一般角 θ に対して, xy 座標平面において原点 O = (0 , 0) を極として x 軸の
向きに延びる始線 Ox に対する角度 θ の動径に点 P = (−3 , 2) が属すとする. θ の
正弦 sin θ , 余弦 cosθ , 正接 tan θ の各々の値を求める.
p
√
OP = (−3 − 0)2 + (2 − 0)2 = 13 .
正弦・余弦・正接の定義より,
y
2
sin θ = √
,
13
3
−3
= −√
,
cosθ = √
13
13
2
2
tan θ =
=− .
3
−3
問題 6.3.3
P = (−3 , 2)
角度 θ
√
13
O = (0 , 0)
x
終
一般角 θ に対して, xy 座標平面において原点 O = (0 , 0) を極として
x 軸の向きに延びる始線 Ox に対する角度 θ の動径に点 P = (5 , −4) が属すとしま
す. θ の正弦 sin θ , 余弦 cos θ , 正接 tan θ の各々の値を求めなさい.
例題
xy 座標平面の点 P = (0 , 3) に対して,原点 O = (0 , 0) を極として x 軸の向
きに延びる始線 Ox に対する線分 OP の角度を θ とする. θ の正弦 sin θ , 余弦
cosθ , 正接 tan θ の各々の値を求める.
0
3
OP = 3 なので, sin θ = = 1 , cos θ = = 0 . tan θ の値は無い.
3
3
問題 7.3.4
終
xy 座標平面の点 P = (0 , −5) に対して,原点 O = (0 , 0) を極とし
て x 軸の向きに延びる始線 Ox に対する線分 OP の角度を θ とします. θ の正弦
sin θ , 余弦 cosθ , 正接 tan θ の各々の値を求めなさい.
三角比の値から角度を求めてみます.
√
3
となる一般角 θ を求めます. xy 座標
2
平面において,原点 O を極として x 軸の向きに延びる始線 Ox に対する角度 θ の
例解
◦
0 ≤ θ ≤ 180
◦
の範囲で sin θ =
動径に属す点 P = (x , y) ( P 6= O ) をとり, r = OP とおきます.
√
y
3
y
= sin θ =
,
r
1
1
2
P2
√
√
y:r= 3 :2 .
3
√
r = OP = 2 とすると,y = 3 ,x2 = r2 − y 2 = 1
30◦ 30◦
2
なので x = ±1 . 右図のように始線 Ox に対
2
まり θ = 60◦ または θ = 120◦ .
O
−1
0◦ ≤ θ ≤ 180◦ の範囲で sin θ =
60◦
120◦
する OP の角度 θ は 60◦ と 120◦ とです. つ
問題 6.3.5
P1
1
x 終
1
となる一般角 θ を求めなさい.
2
1
0◦ ≤ θ ≤ 360◦ の範囲で cosθ = − √ となる一般角 θ を求めます. xy 座標
2
平面において,原点 O を極として x 軸の向きに延びる始線 Ox に対する角度 θ の
例解
動径に属す点 P = (x , y) ( P 6= O ) をとり, r = OP とおきます.
1
y
x
= cosθ = − √ ,
P1
1
r
2
135◦
√
√
x : r = −1 : 2 .
2
1
225◦
√
◦
45
r = OP = 2 と す る と , x = −1 ,
y 2 = r2 − x2 = 1 なので y = ±1 . 右図の
ように始線 Ox に対する OP の角度 θ は
◦
◦
135 と 225 とです. つまり θ = 135
◦
1
45◦
ま
O
√
◦
0 ≤ θ ≤ 360
◦
の範囲で cos θ = −
x
2
−1
P2
たは θ = 225◦ .
問題 6.3.6
−1
終
√
3
となる一般角 θ を求めなさい.
2
xy 座標平面において, x > 0 かつ y > 0 で
ある点 (x , y) の全体を第 1 象限といい, x < 0
かつ y > 0 である点 (x , y) の全体を第 2 象限
y
といい, x < 0 かつ y < 0 である点 (x , y) の
全体を第 3 象限といい, x > 0 かつ y < 0 で
ある点 (x , y) の全体を第 4 象限といいます(右
第 1 象限
x>0
y>0
第 2 象限
x<0
y>0
第 3 象限
x<0
y<0
0
第 4 象限
x>0
y<0
x
図参照). xy 座標平面の原点 O を端点とする
x 軸の向きの始線 Ox に対する一般角について,動径が原点 O を除いて第 1 象限に
含まれるとき第 1 象限の角度といい,動径が原点 O を除いて第 2 象限に含まれるとき
第 2 象限の角度といい,動径が原点 O を除いて第 3 象限に含まれるとき第 3 象限の角
度といい,動径が原点 O を除いて第 4 象限に含まれるとき第 4 象限の角度といいま
す. 例えば次のようになります.
y
y
始線 Ox
O
始線 Ox
O
x
第 2 象限の角度
第 1 象限の角度
y
y
第 3 象限の角度
O
x
第 4 象限の角度
始線 Ox
始線 Ox
O
x
x
一般角 θ に対して, xy 座標平面において原点 O = (0 , 0) と,始線 Ox に対する
角度 θ の動径に属す点 P = (x , y) ( P 6= O ) とをとり, r = OP > 0 とおきます.
θ の正弦・余弦の符号は次のようになります:
x
> 0 ,y > 0
r
x
θ が第 2 象限の角度のとき,x < 0 なので cosθ = < 0 ,y > 0
r
x
θ が第 3 象限の角度のとき,x < 0 なので cosθ = < 0 ,y < 0
r
x
θ が第 4 象限の角度のとき,x > 0 なので cos θ = > 0 ,y < 0
r
θ が第 1 象限の角度のとき,x > 0 なので cosθ =
y
第 2 象限の角度 θ2
第 1 象限の角度 θ1
sin θ2 > 0
sin θ1 > 0
cos θ2 < 0
cos θ1 > 0
0
第 3 象限の角度 θ3
x
第 4 象限の角度 θ4
sin θ3 < 0
sin θ4 < 0
cos θ3 < 0
cos θ4 > 0
y
> 0;
r
y
なので sin θ = > 0 ;
r
y
なので sin θ = < 0 ;
r
y
なので sin θ = < 0 .
r
なので sin θ =