オンライン会話パートナー活動の実践報告:異文化間コミュニケーション

オンライン会話パートナー活動の実践報告:異文化間コミュニケーション能力育成の
視点から検討した問題点と今後の方向性
Reconsidering online conversation partner activity from a perspective on nurturing
intercultural communicative competency
ショー出口香 (カルビン大学) KAORI DEGUCHI SCHAU (CALVIN COLLEGE)
近来、外国語教育では、コミュニケーション能力の習得だけでなく、異なる文化に所属する相手との価値観や信条の相違による
誤解を予測し、またそのような誤解を受け入れる寛容さや柔軟性、さらに相違を超えて他者とインターアクションを継続しよう
という情緒的、認知的意欲の育成も求められている。つまり、「異文化間コミュニケーション能力 Intercultural Communicative
Competency(以下 ICC という語を用いる)」習得の重要性が強調されている。この ICC 育成のための教材開発の指針として、
Moeller and Faltin Osborn (2015)は、ICC をプロセスとして捉え、母語話者対象の言語資料を利用し、学習者主体の学習を援助し、
異文化間インターアクションの場を提供する等を挙げている。本発表では、これらの指針をもとに、2014年秋学期に上級日
本語クラスで実践した、日本人パートナーとのオンライン会話活動の問題点を検討し報告する。
Byram (1997)が提案した ICC モデルの中の「解釈と関連づけの技術」「批判的文化アウェアネス」「発見とインターアクション
の技術」の使用例は、今回のオンライン会話活動過程で学習者が産出したアウトプットには明瞭に見られなかった 。主な原因は、
学習者自身の価値観や信条を再考する機会が得られなかったこと、そのような内省を促す動機付けができていなかったことが挙
げられる。学習者の主体性を維持しつつ、学習者の内省を促すような活動前指示と適宜なフィードバックを与えるという教師の
役割が、より重要だと考えられる。この点を中心に、改善案を提示したい。