2015-10-12 11:14:23 Title 制限摂食時の雌マウ

>> 愛媛大学 - Ehime University
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制限摂食時の雌マウスの走行運動リズムの変調および抗
うつ薬の予防効果( 学位論文要旨 )
宮脇, 和美
. vol., no., p.-
2015-03-03
http://iyokan.lib.ehime-u.ac.jp/dspace/handle/iyokan/4479
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受理:2014-11-27,審査終了:2015-01-22
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(第3号様式)
学
氏
論
文
脇
位
和
論
文
要
旨
名
宮
美
名
制限摂食時の雌マウスの走行運動リズムの変調
および抗うつ薬の予防効果
目的:精神疾患に随伴する生物リズムの変調に関しては、妥当性ある動物モデルは開発され
ておらず、生物リズムを統計学的に解析する手法の難しさもあり、ほとんど実験的精神薬理学
の分野では報告されていない。最近、気分障害における日内リズムの乱れが、抑うつ状態や不
眠などの精神病理に極めて重要な役割を演じていることが相次いで指摘され、明暗周期に同調
した行動様式に戻すための治療法が注目されている。本研究では、マウスやラットを側室付き
回転カゴに入れ、時間制限摂食を負荷すると、回転カゴ内を走行する運動が著明に増加し、暗
期のみならず明期にも活動性が増え、逆に、摂食量は減少してゆき、やがて死に至る現象に着
目した。この現象は、Routenberg らにより“self-starvation”と名付けられ、 その後、回転カ
ゴ運動の増加それ自身がストレスを惹起するとして Pare and Houser は“activity-stress”
と
呼んだ。食餌制限による空腹感が動因となるこの現象を、生物リズムの観点から解析し、抗う
つ薬の効果を明らかにしようと本研究を企てた。
方法:約 8 週齢の市販 ICR 系雌マウスを用い、日周リズムの比較対照実験のみには雄マウス
も使用した。マウスは、飼育室環境に約 2 週間適応させた後、実験に使用した。明暗周期は、
午前 7 時から午後 7 時までを明期とする明暗 12 時間周期に調節した。装置は、直径 20.5 cm
の回転カゴに摂水摂食できる側室が付いた市販の装置を用い、1 分毎の回転数をインターフェ
イスによりコンピュターに記録した。雌マウスの性周期は、膣スメア法により測定して、dies
trus の段階を確認後、雌マウスをホームケージから装置内に移し、実験に供した。その後、4
日間は餌と水を自由に摂らせ、5 日目から自由摂食あるいは制限摂食を負荷した。得られた回
転数は、周期回帰分析および周期共分散分析を用いて統計解析し、日内リズムは離散フーリエ
氏名
宮
脇
和
美
解析後に最小二乗法で cosiner-curve に近似させ、決定係数(R2)の有意差検定を行った。そ
の際に、Nelson ら(1979)の方法により MESOR (midline estimating statistic of rhythm), amplitud
e, acrophase の三つの媒介変数を用いて比較した。それらの媒介変数については、Hayashi ら
(1992)の方法を用い、級内相関係数(ICC)を用いて解析した。
結果:雌雄マウスを比較すると、どちらも自由摂食群では 24 時間周期が最も R2 値が高かった。
午後 9 時から午後 10 時までの間だけ摂食する制限摂食を負荷した群では、雄マウスでは 2 日
目、3 日目と徐々に活動レベルが増加したが、活動パターン(amplitude と acrophase)に有意
な変化は認められなかったのに対して、雌マウスでは 1 日目から明暗周期に一致しない活動性
が出現、自由摂食群と比較して活動レベルに有意差が認められ
活動パターンも有意に異なる[F (2,
42)
[F (
1, 42)
= 45.169, p<0.01]、
= 11.145, p<0.01]ことが判明した。自由摂食群の MES
OR が 44.12 に対して制限摂食群では 93.66 であった。制限摂食を開始する前の適応期間にお
ける一致係数(amplitude: ICC = 0.996, acrophase: ICC = 0.998, overall: ICC = 0.994)と比べ
ると、制限摂食 1 日目の一致係数(amplitude: ICC = 0.650, acrophase: ICC = -0.724, overall:
ICC = -0.470) には著しい変調が認められた。抗うつ薬の imipramine (5, 10 mg/kg)あるいは p
aroxetine (2.5, 5 mg/kg)を毎日2回(午前 9 時と午後 5 時)経口投与しておくと、制限摂食群
においても明暗周期に同調した回転運動の日内リズムが維持されていた。対照群と異なり、こ
れらの抗うつ薬投与群では MESOR, amplitude, acrophase の三つの媒介変数は自由摂食群と有
意差がなかった。また、5-HT1A 受容体アゴニストの tandospirone (2.5, 5 mg/kg)および 5-HT2
A
受容体アゴニストの(-)-DOI (0.5, 1 mg/kg)にも制限摂食による回転運動の日内リズムの変調
を防止する効果が認められた。
結論:制限摂食による空腹感が回転運動増加の動因と考えられるが、動物習性学の知見から
は、生命維持に必要な餌の欠乏は餌の得られる場所への移動という行動が起こるとされている。
本研究で設定した状況下では、移動のために走行運動を増加させても、欲求は満たされず、Se
ligman や Porsolt の提唱する絶望感が増幅され、この機序を抗うつ薬が抑制することが推察さ
れる。本研究の成果は、気分障害の病因として注目されている生物リズムの変調を解明する手
掛かりとなることが期待される。
回転カゴ運動
キーワード(3~5) 日内リズム
リズム測定学
抗うつ薬
雌マウス