透明樹脂内部ひずみの複屈折位相差測定による評価

静岡県工業技術情報 No.88(2015)
平成24~26年度
県新成長戦略研究事業
研究紹介
透明樹脂内部ひずみの複屈折位相差測定による評価
【背景・目的】
近年、照明モジュールの光学部品として、ガラスより軽く設計自由度の高い透明樹脂が利用
され始めています。しかしながら、樹脂は成形・その後の加工によってその内部にひずみが発生
し、これが変形や破損といった不具合の原因となることが知られています。したがって、樹脂内
部のひずみ情報を把握することは、品質を管理するうえで非常に重要です。そこで、我々は透
明樹脂内部のひずみ情報を可視化する複屈折位相差測定により部品の不具合を予測する手
法を検討しています。この取り組みの一環として透明樹脂の溶剤によるき裂(ソルベントクラッ
ク)発生の評価を行いました。
【これまでに得られた成果】
・ 複屈折位相差測定装置(㈱フォトニックラティス WPA-100PRO)を用い、複数のアクリル樹
脂(PMMA)に対して 0nm~1,000nm 以上の複屈折位相差を測定するワイドレンジ測定を実
施しました。
・ PMMA をアセトンに浸漬させソルベントクラックを発生させる実験を行ったところ、浸漬処理前
に複屈折位相差が高い部分でき裂が発生し、その部分の複屈折位相差が減少するといった
結果を得ました。一方、処理前に複屈折位相差分布が小さい領域ではき裂の発生は確認さ
れませんでした。
多数のき裂が発生
エッジに高複屈折位相差領域
板面方向
複屈折位相差(nm)
0
板面方向
複屈折位相差減少
複屈折位相差(nm)
00
300
300
板厚方向
板厚方向
▲図1 アセトン浸漬前の観察画像(左)と
複屈折位相差分布(右)
▲図2 アセトン浸漬後の観察画像(左)と
複屈折位相差分布(右)
【期待される効果・技術移転の計画】
複屈折位相差とソルベントクラックの発生とが密接に関係していることから、樹脂光学部品の
内部ひずみ起因の不具合箇所を予測・評価に利用できると考えられます。
お問い合わせ先 工業技術研究所
機械科
電話 054-278-3027
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