▼ CAD/CAM/CAE③ A−8 CFRTP 製自動車用フロアのプレス成形への取組み Efforts to car floor made by CFRTP in press forming 〔National Institute of Technology,Gunma College〕群馬工業高等専門学校 〔Asano Co., Ltd.〕㈱浅野 〔JSOL Corporation〕㈱JSOL 〔Gunma Industrial Technology Center〕群馬県立産業技術センター 1.はじめに 黒 阿 中 西 平 鏑 瀬 部 村 島 木 雅 詞* 徳 秀** 仁*** 正 人**** 禎***** 哲 志****** 引張試験はオートグラフ AGIS−500 kN(島津製作 産学官連携により、戦略的基盤技術高度化支援事業 所)と恒温槽を用いて各試験温度(25∼200℃)で行 (サポイン事業)で平成 24 年度∼26 年度の 3 カ年で った。試験条件は JIS−K 71651)をもとに決定し、試験 「熱可塑性 CFRP による車載用大型複雑形状製品の成 速度は 2 mm/min で行った。ひずみの測定はひずみ 形技術の開発」に取り組んだ。開発の趣旨は量産性に ゲージ法と画像相関法を用いた。また、同温度条件で 優れる熱可塑性タイプの炭素繊維複合材(CFRTP) 曲げ試験(インストロン5582)も行った。曲げ試験 を用い、車載用大型複雑形状製品を既存の金属プレス はヒートディストーションテスター HD−PC−3(安田 機で製造する技術を確立することである。その開発に 精機)でフラットワイズ法による熱ひずみ試験も行っ 向けた各要素の取組みについて述べる。 た。 2.材料試験 ねじり試験機は常温についてのみ、複合材料ねじり (1) 試験方法 試験機 TO−1020(前川試験機)を用いて行い、±10° CFRTP の材料特性は成形条件に左右されるため、 恒温槽において所定の温度で引張試験を行い、材料定 までのサイクル試験を実施した。 (2) 試験結果 数を求めた。実験に用いた CFRTP はアクリル樹脂 室温環境における破断までの積層パターンごとの応 ベースの 0/90°の直交平織プリプレグを 4 層にして 力−ひずみ線図を図 1 に示す。0/90 配向材が最も高い プレス成形したスタンパブルシート(SS)である。 縦弾性係数を示し、±45 が最も低い値を示すが、こ 材料試験では CFRTP の各層の繊維方向を組み合わ の場合は非線形性が顕著に見られることがわかる。積 せて試験した。試験片寸法は 25×250×1 mm である。 層パターンを変えた場合は応力もひずみもこの中間の SS の作製では 780 t と 900 t でプレスして影響を調 挙動を示していることがわかる。 熱ひずみ試験による曲げ試験では図 2 に示すよう べた。 に母材の PMMA よりも変位点温度は高くなり、0 材 * Masashi Kurose:機械工学科 教授 Norihide Abe:専攻科生 〒371−8530 群馬県前橋市鳥羽町 580 *** Hitoshi Nakamura:技術開発部 〒372−0011 群馬県伊勢崎市三和町 2718−1 **** Masato Nishi:エンジニアリングビジネス事業部 〒104−0053 東京都中央区晴海 2−5−24 ***** Tei Hirashima:エンジニアリング本部 〒550−0001 大阪市西区土佐堀 2−2−4 ****** Tetsushi Kaburagi:技術支援係 独立研究員 〒379−2147 群馬県前橋市亀里町 884−1 ** の方が変形しにくい傾向にあることがわかる。また、 900 t で成形した方が変位温度は高い傾向にある。 高温における引張試験の一例として±45 の 4 層材 の 180℃ と 200℃ の結果を図 3 に示す。破線が実験 結果であり、ガラス転移温度以上では同様な傾向を示 し、せん断ロッキング角度以上から応力が増加し始め 200 (45) 4(780t) (45) 4(900t) (0)4(780t) (0)4(900t) PMMA 変位点温度(℃) 応力(MPa) 500 400 [0] 4 [45]4 (0)2(45)2 (45) 2(0) 2 (0) (45) 2(0) (45) (0) 2(45) 300 200 100 0 0.000 0.006 0.012 ひずみ 0.018 図 1 積層パターンごとの応力−ひずみ線図 024 150 100 50 0 2 4 6 8 積層厚さ(mm) 10 図 2 母材(PMMA)と SS の熱ひずみ試験結果 12 応力τ12(MPa) 1.5 温度 50℃ 1.0 185℃ せん断ロッキング 0.5 ストローク 20mm 180℃ 実験 200℃ 実験 解析 180℃以上 0.1 0.2 0.3 ひずみ ε12 0.4 ストローク 30mm [(0/90) ] 4 ホットプレス 図 5 SS の S タイプレール温間プレスシミュ レーション結果 0.0 0 成形中の 温度低下 0.5 トルク T(Nm) 図 3 SS の高温引張試験結果とシミュレーション結果 6 4 2 0 −2 −4 −6 −10 0/90_780_2 層 ±45_780_2 層 −5 0 5 比ねじれ角φ/l(rad/m) 10 (a)しわコンター (対称境界モデル) 図 4 面外せん断(ねじり)試験時のヒステリシス ループ ることがわかる。実線は後述のシミュレーション結果 である1)。 さらに、ねじり試験ではスタンパブルシートの接合 長さを変えて実験しているが、図 4 に示すように、 ヒステリシスループに差異が生じていることがわかる。 つまり、面内せん断だけでなく、面外せん断が起きる ような場所では 0/90 材の方が非線形性を示し、±45 材の方が線形性を有するのである。 (b)フロア部品(斜め十字は SS 接合跡) 図 6 CFRTP 自動車用フロア材のシミュレーションと 成形結果 3.CAE 従来の織物繊維モデルは複雑な 3 次元構造をして 4.成形実験 おり、面内の引張圧縮特性からプレス成形のような面 シミュレーションの結果から、図 ( 6 a) に示すよう 外曲げの特性は把握できない。そこで西らは、繊維基 に、自動車用フロア材の金型を調整し、成形可能な条 材の面外曲げ剛性を考慮するため、膜要素とシェル要 件を見出した。その結果、同図 (b) に示すように従来 素を組み合わせ、非線形の曲げ剛性を付加するモデル の 300 t 油圧プレス成形機(三起精工)を用いて 1 分 を提案した 1) 、 2) 。これにより、図 3 の実線で示したよ 以内で意匠形状を得ることができた。 うにガラス転移温度以上のせん断剛性も追従する結果 が得られるようになった。 このような材料試験パラメータを取り入れることに より、図 5 に示すような S タイプレールの温間プレ 参 考 文 献 1)西正人、鏑木哲志、黒瀬雅詞、平島禎、倉敷哲生:有限要素法 による織物強化熱可塑性樹脂のプレス成形解析、日本機械学会 論文集、Vol. 80、No. 820(2014) 、pp. 1−10 2)M. Nishi et al. : Forming Simulation of Thermoplastic Pre−Im- ス成形解析も可能となった。温度と時間の関係は実験 pregnated Textile Composite, World Academy of Science, En- により得ている。金型と接触する位置で温度が低下し、 gineering and Technology International Journal of Chemical, 剛性が高くなることで成形性が悪くなることが予測さ れる。また、フラット部分のせん断変形によるしわの Nuclear,MetallurgicalandMaterials Engineering, Vol. 8, No. 8 (2014) ,pp.671−679 発生状況も把握できるようになった。 型技術 第 30 巻 第 12 号 2015 年 12 月号 025
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