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ぐちゃっと赤いカバ
あくびして五人囃子の三人目
細谷亮太
坪内稔典
雛祭の季節、五人囃子の三人目があくびをし
ていることをねんてんさんは発見してしまった、
ただそれだけのことなのです。でもそれだけで
もおもしろい、そんな一句です。三人目という
のは左から数えてなのか、右から数えてなのか
と思う人がいるかもしれません。そんな人達の
ために五人囃子の句と同じ頁に三人官女の句が
飾ってあります。
﹁ あ と が き ﹂に﹁ 俳 句 は 日 本 語の お も しろい
雲が好き三人官女の真ん中は
断片である。
﹂と書いてある作者の最新句集﹃ヤ
なんだ五人の三人目ってのも真ん中なんじゃん。
ツとオレ﹄
︵角川書店︶をいただきました。同じ
﹁あと がき﹂によれ ば 十二番目の句 集 とのこと。 そんな意外さも俳句のおもしろさなのです。
作者の本名は稔典。昭和十九年、愛媛生れの
ねんてんさんを知らない読者でも﹁三月の甘納
俳人で、はさみ込まれていた寒中お見舞いのご
いのですが、持論の﹁俳句の片言性﹂に触れて
うか。またまた﹁あとがき﹂の引用で申し訳な
動物園を訪ねる﹁カバ好き﹂でも知られていま
話したりの日々です。﹂とありました。全国の
挨拶には﹁定年退職し、今は書いたり読んだり
豆のうふふふふ﹂はご存じなのではないでしょ
﹁ 片 言に近い表現形 式の俳 句 は、読 者に補 われ
す。私が見習いたい先輩の一人です。
︵聖路加国際病院
顧問︶
ておもしろさを引き立てられる。読者を俟って
成立するのだ、俳句は。
﹂と言っておられます。
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CLINICIAN Ê16 NO. 646
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