平方剰余の相互法則の Eisenstein による証明 について 風あざみ 2016/02/29 目次 1 用語の説明編 2 2 ガウスの補題編 2 3 多項式の性質編 2 4 平方剰余の相互法則の証明編 4 5 参考文献編 5 1 1 用語の説明編 [x] を x を超えない最大の整数を意味する。 奇数の素数 p と p で割り切れない正の整数 a に対して ( ap ) をルジャンドルの 記号ということにする。 π は円周率を意味する。 2 ガウスの補題編 a, n を互いに素な正の整数 (ただし、n ≥ 2) とするとき、整数 ϵ(a, n) を以 下にように定義する。 a を n で割ったときの絶対値最小の余りが正のとき、ϵ(a, n) = 1 a を n で割ったときの絶対値最小の余りが負のとき、ϵ(a, n) = −1 以降簡単のため、ϵ(a, n) を ϵ(a) と書くことにする。 命題1:奇数の素数 p と p で割り切れない正の整数 a を任意にとるとき、以 下が成り立つ。 a p−1 ( ) = ϵ(a)ϵ(2a) · · · ϵ( a) p 2 証明:下記サイトの定理7を参照 http://puit578.web.fc2.com/legendre.pdf 3 多項式の性質編 命題2:k を正の整数とするとき、sin (2k − 1)x, cos(2k − 1)x は以下の性 質を持つ。 f1 (x) = g1 (x) = 1 fk+1 (x) = fk (x)(1 − 2x2 ) + gk (x)(2 − 2x2 ) gk+1 (x) = gk (x)(1 − 2x2 ) + fk (x)(−2x2 ) 上記の性質を持つ整係数多項式 fk (x), gk (x) を用いて sin (2k − 1)x = fk (sin x) sin x, cos (2k − 1)x = gk (sin x) cos x と表すことが 出来る 証明:k に関する数学的帰納法で証明する。 k = 1 の時は明らか。 2 k = h のとき命題2が成立すると仮定する。 sin (2h − 1)x = fh (sin x) sin x, cos (2h − 1)x = gh (sin x) cos x k = h + 1 のとき命題2が成立することを示す。 sin (2h + 1)x = sin (2h − 1)x cos 2x + cos (2h − 1)x sin 2x = fh (sin x) sin x(1 − 2(sin x)2 ) + gh (sin x) cos x(2 cos x sin x) = (fh (sin x){1 − 2(sin x)2 } + gh (sin x){2 − 2(sin x)2 }) sin x = fh+1 (sin x) sin x cos (2h + 1)x = cos (2h − 1)x cos 2x − sin (2h − 1)x sin 2x = gh (sin x) cos x(1 − 2(sin x)2 ) − fh (sin x) sin x(2 cos x sin x) = (gh (sin x){1 − 2(sin x)2 } + fh (sin x){−2(sin x)2 }) cos x = gh+1 (sin x) cos x したがって、k = h + 1 のときも、命題2が成立することがいえる。以上から 数学的帰納法により任意の正の整数 k に対して、命題2が成立することがい えた。 □ 命題3:命題2における fk (x), gk (x) は 2k − 2 次式でかつ最高次の係数が (−4)k−1 となる。 証明:k に関する数学的帰納法で証明する。 k = 1 の時は明らか。 k = h のとき命題3が成立すると仮定する。 k = h + 1 のとき命題3が成立することを示す。 fh+1 (x) = fh (x)(1 − 2x2 ) + gh (x)(2 − 2x2 ) = (1 − 2x2 ){(−4)h−1 x2h−2 + · · ·} + (2 − 2x2 ){(−4)h−1 x2h−2 + · · ·} = (−4)h x2h + · · · gh+1 (x) = gh (x)(1 − 2x2 ) + fh (x)(−2x2 ) = (1 − 2x2 ){(−4)h−1 x2h−2 + · · ·} + (−2x2 ){(−4)h−1 x2h−2 + · · ·} = (−4)h x2h + · · · したがって、k = h + 1 のときも、命題3が成立することがいえる。以上から 数学的帰納法により任意の正の整数 k に対して、命題3が成立することがい えた。 □ 命題4:fk (x) は以下のように因数分解される。 fk (x) = k−1 ∏ (x2 − {sin j=1 3 2jπ 2 } ) 2k − 1 証明:因数定理を用いる。1 ≤ j ≤ k − 1 をみたす整数 j に対して 2jπ sin 2jπ )= = 0 だから因数定理より 2jπ 2k − 1 sin 2k−1 2jπ 2jπ 2jπ 2 fk (x) は (x − sin )(x + sin ) = x2 − (sin ) 2k − 1 2k − 1 2k − 1 fk (± sin を因数に持つ。したがって、次数を考慮すると、fk (x) は以下のように因数分 解される。 k−1 ∏ (x2 − {sin fk (x) = j=1 2jπ 2 } ) 2k − 1 したがって命題4はいえた。 4 □ 平方剰余の相互法則の証明編 命題5:相異なる奇数の素数 p, q に対して、以下が成り立つ。 p−1 q−1 2 2 (p−1)(q−1) ∏ ∏ q 2iπ 2 2jπ 2 4 ( ) = (−4) ({sin } − {sin } ) p p q i=1 j=1 証明:命題1より以下が言える。 p−1 p−1 2 ∏ 2 2iqπ q ∏ 2iπ sin =( ) sin p p p i=1 i=1 よって命題4より以下が言える。 p−1 2 ∏ sin 2qiπ p i=1 sin 2iπ p p−1 = 2 ∏ q−1 {(−4) q−1 2 i=1 2 ∏ ({sin j=1 2iπ 2 2jπ 2 } − {sin } )} p q p−1 q−1 = (−4) (p−1)(q−1) 4 2 2 ∏ ∏ i=1 j=1 ({sin 2jπ 2 2iπ 2 } − {sin } ) p q したがって、命題5はいえた。 □ 定理6:相異なる奇数の素数 p, q に対して、以下が成り立つ。 (p−1)(q−1) q p 4 ( ) = (−1) ( ) q p 4 証明:命題5より以下が言える。 p−1 q−1 2 2 (p−1)(q−1) ∏ ∏ q 2iπ 2 2jπ 2 4 ( ) = (−4) ({sin } − {sin } ) p p q i=1 j=1 q−1 p−1 2 2 (p−1)(q−1) ∏ ∏ p 2jπ 2 2iπ 2 4 ( ) = (−4) ({sin } − {sin } ) q q p j=1 i=1 p−1 q−1 = (−1) (p−1)(q−1) 4 {(−4) (p−1)(q−1) 4 2 2 ∏ ∏ ({sin i=1 j=1 2iπ 2 2jπ 2 } − {sin } )} p q よって以下が言える。 (p−1)(q−1) q p 4 ( ) = (−1) ( ) q p したがって、定理6はいえた。 □ 定理6は平方剰余の相互法則そのものである。 また定理6は以下の形でも書ける。 (p−1)(q−1) p q 4 ( )( ) = (−1) q p 5 参考文献編 数論講義(著者:J.P.Serre、訳者:彌永 健一)岩波書店 12p-14p 5
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