第7章 弾性歪エネルギー評価法(1) 7-1 はじめに 本稿では相分解組織の有する弾性歪エネルギーの定式化について説明する。基本的には整合相分 解における弾性歪エネルギ-をマイクロメカニクス(1-3)に基づき定式化する。この種の理論では、理 論式の変形に応用数学を多用するために、結構、式の導出が長く複雑になり、何が既知量で、どの 法則を利用して、何を導こうとしているのかが不明確になる場合が多い。しかし、マイクロメカニ クスの論理は非常に洗練された体系を持っており、やっていることは至極単純である。つまり、eigen 歪(1)の空間分布が与えられた時に、平衡方程式(力の釣り合い方程式)とフックの法則を用いて、 応力場、歪場、および弾性歪エネルギー場を計算しているだけである。 以下では、まず Eshelby サイクルについて説明し、続いて秩序変数が濃度場のみの場合を例に取 り、析出相が薄い板状である特殊な場合について、弾性歪エネルギーの計算方法を説明する。 7-2 Eshelby サイクル γ相内にα相がマルテンサイト変態によって形成される場合を考えよう。γ→α変態によって、 格子は膨張すると仮定する。この時の eigen 歪を ε ij0 と置く。図 7-1 が Eshelby サイクルの説明図で ある。求めたい量は、γ相母相内にα相が存在する時に材料内にため込まれている弾性歪エネルギ ー Estr である。図 7-1 の Eshelby サイクルに従い、 Estr を計算する方法について定性的に説明する。 1 Estr = − σ ijI ε ij0 2 σ ijI = Cijkl (ε klc − ε kl0 ) (a) γ (b) + Estr = E1 − E2 + 1 1 = Cijkl ε ij0 ε kl0 − Cijkl εij0 ε klc 2 2 1 = − Cijkl (ε klc − ε kl0 )ε ij0 2 εij0 + ε klc (f) γ α E2 = α (c) (d) E1 = 1 Cijkl ε ij0 ε kl0 2 (e) 1 Cijkl ε ij0 ε klc 2 図 7-1 Eshelby サイクルの説明図(積分記号は省略している) まず初期状態はγ単相状態(a)である。この状態から中央の部分を切り出す(b)。この切り出した 領域がマルテンサイト変態によってα相に変化する(c) 。α相に変態することによって、格子が膨 張すると仮定したので、図のようにα相のサイズは切り出したγ相よりも大きくなる。さらにこの 場合、切り出した状態でのマルテンサイト変態であるので、α相の周囲に拘束はない。次にこの変 態したα相に外力を加えて eigen 歪 ε ij0 分だけ変形させ、元のγ相のサイズに戻す(d)。この変形に要 する弾性歪エネルギーを E1 とすると、 E1 は、 7-1 1 E1 = ∫ Cijkl ε ij0 ε kl0 dV 2 V にて与えられる。Cijkl は弾性定数である。図(d)の応力のかかった状態を維持しながらγ相の切り出 した穴にα相を入れる(e)。最後にかけていた外力を取り去る(f)。外力を取り去ったので、α相は図 (c)のサイズに向かって膨張しようとするが、今度は周囲にγ相が存在するので、(c)のサイズまでは 膨張できずに途中で止まる。この時のα相がγ相へなした歪が全歪(拘束歪)ε ijc である。この時の 仕事 E2 は、反作用の応力 Cijkl ε ij0 で ε klc だけ歪ませたのであるから、 1 E2 = ∫ Cijkl ε ij0 ε klc dV 2 V と表現できる。結局、最終的に材料に蓄えられている弾性歪エネルギー Estr は、E1 だけ拘束して E2 だけ緩和した後の残量に対応するので、 1 1 1 Estr = E1 − E2 = ∫ Cijkl ε ij0 ε kl0 dV − ∫ Cijkl ε ij0 ε klc dV = − ∫ Cijkl (ε klc − ε kl0 )ε ij0 dV 2 2 2V V V と与えられることになる。特に最終的な応力場は σ ijI = Cijkl (ε klc − ε kl0 ) となる( ε ijel = ε ijc − ε ij0 が弾性歪である)ので、 Estr は、 Estr = − 1 σ ijI ε ij0 dV ∫ 2V となる。通常、弾性歪エネルギーは、 Estr = 1 1 Cijkl ε ijel ε klel dV = ∫ Cijkl (ε ijc − ε ij0 )(ε klc − ε kl0 )dV ∫ 2V 2V = 1 σ ijI (ε ijc − ε ij0 )dV 2 V∫ = 1 1 σ ijI ε ijc dV − ∫ σ ijI ε ij0 dV ∫ 2V 2V にて表現されるが、この右辺第1項をガウスの発散定理を用いて変形すると、 1 1 1 σ ijI ε ijc dV = ∫ σ ijI ui n j dS − ∫ σ ijI , j ui dV = 0 ∫ 2V 2S 2V を得る。ここで、平衡方程式 σ ijI , j = 0 (体積力は考慮していない)と、物体表面における力の釣り 合い σ ijI n j = 0 (物体表面には圧力などの外力は 0 と仮定している)を用いた。したがって Estr は 7-2 Estr = − 1 σ ijI ε ij0 dV ∫ 2V となり、Eshelby サイクルの帰結と一致する。図 7-1 ではマルテンサイト変態を想定したが、整合に おける拡散相分解においても同様の式となる。切り出した領域内の原子数は固定されるので、図 7-1 の状態は、整合における拡散相分解では、析出相の格子定数が濃度変化に伴い大きくなる場合に対 応していることになる。なお拡散相変態で、界面が非整合である場合は、切り出した領域内の原子 数は固定されず、最終的に物体全体が膨張(収縮)する(拡散相変態であるので原子は動ける)こ とによって、弾性歪エネルギーが緩和される。 7-3 Cahn のスピノ-ダル分解理論おける弾性歪エネルギ- ここでは Cahn のスピノ-ダル分解理論(4)にて用いられている弾性歪エネルギーにおける弾性定 数の関数 Y< hkl > を、斜方晶について導出してみよう。整合析出物の形状を、 ( hkl ) 面上にのった非常 に薄い板形状と仮定し、結晶構造は斜方晶とする。eigen 歪場は純膨張・収縮(pure dilatation)とし、 eigen 歪の値を ε ij0 と置く。以上の仮定から、歪テンソルは以下のように与えられる。 ⎛ε 0 0⎞ ε = ⎜⎜ 0 ε 0 ⎟⎟ ⎜0 0 ε ⎟ ⎝ ⎠ 0 ij (1) ε は濃度 c(A-B2 元系を想定し、B 成分の濃度)の関数で、格子定数にベガード則が成立する場合、 ε = η (c − c0 ) にて与えられる(4)。η は格子ミスマッチで、c0 は合金の平均 B 成分濃度である。本来、 eigen 歪の基準は純物質の格子定数が基準となるが、ここでは基準を組成 c0 の固溶体にしている。 これは、物体全体の応力の総和が0になるように鏡像応力を考慮することによって、弾性歪の基準 が純物質から組成 c0 の固溶体に移行するためである(つまり組成 c0 の固溶体を歪の基準に取らな くては、全応力の積分が0にならない)。また弾性定数は斜方晶を想定して以下のように置く。 Cijkl ⎛ C1111 ⎜ ⎜ * ⎜ * =⎜ ⎜ * ⎜ * ⎜⎜ ⎝ * C1122 C2222 * * * * C1133 C2233 C3333 * * * ⎛ C1111 ⎜ ⎜ C1122 ⎜C = ⎜ 1133 ⎜ 0 ⎜ 0 ⎜⎜ ⎝ 0 C1122 C2222 C2233 0 0 0 C1133 C2233 C3333 0 0 0 C1123 C2223 C3323 C2323 * * 0 0 0 C2323 0 0 C1131 C2231 C3331 C2331 C3131 * 0 0 0 0 C3131 0 C1112 ⎞ ⎟ C2212 ⎟ C3312 ⎟ ⎟ C2312 ⎟ C3112 ⎟ ⎟ C1212 ⎟⎠ ⎞ ⎛ C11 ⎟ ⎜ ⎟ ⎜ C21 ⎟ ⎜ C31 ⎟=⎜ ⎟ ⎜ 0 ⎟ ⎜ 0 ⎟ ⎜ C1212 ⎟⎠ ⎜⎝ 0 0 0 0 0 0 C12 C22 C13 C23 0 0 0 0 C32 0 0 0 C33 0 0 0 0 0 0 C44 0 0 C55 0 0 ⎞ ⎟ 0 ⎟ 0 ⎟ ⎟ 0 ⎟ 0 ⎟ ⎟ C66 ⎟⎠ (2) 先の場合と同様、図 7-2 で示した Eshelby サイクルの考え方に基づき弾性歪エネルギ-を計算する (なお図 7-2 ではわかりやすいように板状析出物をかなり厚く表現している) 。(A)の状態は相分離 前の固溶体で、(B)は(A)より、これから析出相となる板状部分を切り抜いた状態である(図は板状 析出物の断面を表示している) 。(C)は相分離が生じて板状析出相の格子定数が大きくなり(格子定 数は濃度の関数で、析出相の格子定数の方が母相の格子定数よりも大きいとする) 、析出相全体が 7-3 になるので、eigen 歪テンソルは、式(1)の ように ε ij0 = δ ij ε と表現される。 δ ij はクロ ネッカーのデルタで、i = j の時 δ ij = 1 、お よび i ≠ j の時 δ ij = 0 である。(D)は析出相 に外から外力をかけて eigen 歪分だけ弾性 収縮させて元のサイズにもどす操作であ る。これに要する弾性歪エネルギ- E1 は、 式(1)と(2)より以下のように計算される。な お添え字に関して総和規約を採用してい る。 E1 = (A) (F) 図 7-2 (B) + Estr =E1 - E2 膨張した状態を示している。この時の歪が eigen 歪 ε ij0 である。特にこの場合は純膨張 (C) + (D) + x' ε klc E2 E1 ε kl 0 (E) Eshelby サイクルの説明図(板状物の場合) 1 1 1 1 0 0 Cijkl ε ij0 ε kl0 = C1111ε110 ε110 + C1122 ε110 ε 22 + C1133ε110 ε 33 2 2 2 2 1 1 1 0 0 ε11 + C2222 ε 220 ε 220 + C2233ε 220 ε 330 + C2211ε 22 2 2 2 1 1 1 0 0 ε11 + C3322 ε 330 ε 220 + C3333ε 330 ε 330 + C3311ε 33 2 2 2 1 = ( C11 + C22 + C33 + 2C12 + 2C13 + 2C23 ) ε 2 2 (3) (D)の状態の析出物を左の母相にもどした状態が(E)である。いま非常に薄い板状析出物を想定して いるので、(E)の状態から矢印で示した外力を取り去ると、板面に垂直方向にのみ応力の緩和が生じ る(面内は母相の格子定数に完全に一致する) 。この緩和後の状態を表した図が(F)である。この板 面に垂直方向を x' 方向((F)参照)とし、その方向を表すミラ-指数を < hkl > としよう( ( hkl ) 面 は板状析出物の板面) 。また x' 方向に垂直な2方向(つまり板面内)を y' および z' とし、 x ' y ' z ' 座 標系における弾性定数と応力をそれぞれ Cij' および σ ij' とする。完全拘束状態(E)における応力は、 σ ij = Cijkl ε kl0 = (Cij11 + Cij 22 + Cij 33 )ε σ 11 = (C1111 + C1122 + C1133 )ε = (C11 + C12 + C13 )ε σ 22 = (C2211 + C2222 + C2233 )ε = (C12 + C22 + C23 )ε σ 33 = (C3311 + C3322 + C3333 )ε = (C13 + C23 + C33 )ε σ 12 = σ 13 = σ 23 = 0 にて与えられる。 ( xyz ) および ( x ' y ' z ' ) 両座標間の方向余弦を lij とすると、応力における座標変換 の公式 σ ij ' = lip l jqσ pq を用いて σ 11' = l1 p l1qσ pq = l11l11σ 11 + l12 l12σ 22 + l13l13σ 33 = n12σ 11 + n22σ 22 + n32σ 33 を得る。ここで l11 ≡ n1 , l12 ≡ n2 , l13 ≡ n3 と置いた。これより x ' 方向への(反作用の)応力 σ 11' は次式 にて与えられる。 7-4 σ 11' = n12σ 11 + n22σ 22 + n32σ 33 = ε {n12 (C11 + C12 + C13 ) + n22 (C12 + C22 + C23 ) + n32 (C13 + C23 + C33 )} (4) さて、σ 11' の応力が加わって、 x ' 方向にのみ歪の緩和が生じた場合、その時の緩和による歪量 ε11' ' ' は、応力の釣合い条件から以下のように導かれる。すなわち、σ 11' = C11 ε11 + C12' ε 22' + C13' ε 33' = C11' ε11' ' ( y' および z' 方向に歪の緩和は生じないと仮定したので ε 22 = ε 33' = 0 )、および式(4)より、 ε = ' 11 σ 11' C11' = ε {n12 (C11 + C12 + C13 ) + n22 (C12 + C22 + C23 ) + n32 (C13 + C23 + C33 )} C11' (5) である。これより ε11' の応力緩和による弾性歪エネルギ-の減少量 E2 は次式にて与えられる。 1 ' ' 1 2 {n12 (C11 + C12 + C13 ) + n22 (C12 + C22 + C23 ) + n32 (C13 + C23 + C33 )}2 E2 = σ 11ε11 = ε 2 2 C11' (6) 結局、始め E1 分だけエネルギ-的に拘束し、その後 E2 分だけエネルギ-緩和したのであるから、 (F)状態において、まだ析出物に蓄えられているエネルギ-は ( E1 − E2 ) であり、これが析出相の弾 性歪エネルギ-となる。したがって、式(3)と(6)から弾性歪エネルギ- E str は次式に与えられる。 Estr = E1 − E2 = 1 ( C11 + C22 + C33 + 2C12 + 2C13 + 2C23 ) ε 2 2 1 {n 2 (C + C12 + C13 ) + n22 (C12 + C22 + C23 ) + n32 (C13 + C23 + C33 )}2 − ε 2 1 11 2 C11' (7) ⎡( C11 + C22 + C33 + 2C12 + 2C13 + 2C23 ) ⎤ 1 2⎢ ⎥ = ε ⎢ {n12 (C11 + C12 + C13 ) + n22 (C12 + C22 + C23 ) + n32 (C13 + C23 + C33 )}2 ⎥ 2 ⎢− ⎥ C11' ⎣ ⎦ 以上が Eshelby サイクルにて弾性歪エネルギーを計算する時の基本的な考え方である。 ' ここで、 C11 を C11 , C22 , C33 , C44 , C55 , C66 , C12 , C13 , C23 を用いて書き直そう。座標変換の公式 ' Cijkl = lip l jq lkm lln C pqmn を用いて、 7-5 ' C11' = C1111 = l1 p l1q l1m l1n C pqmn = l11l11l11l11C1111 + l11l11l12 l12 C1122 + l11l11l13 l13C1133 + l12 l12 l11l11C2211 + l12 l12 l12 l12 C2222 + l12 l12 l13 l13 C2233 + l13 l13l11l11C3311 + l13l13 l12 l12 C3322 + l13l13 l13l13 C3333 + l11l12 l11l12 C1212 + l11l12 l12 l11C1221 + l12 l11l11l12 C2112 + l12 l11l12 l11C2121 (8) + l11l13 l11l13C1313 + l11l13 l13l11C1331 + l13 l11l11l13 C3113 + l13 l11l13 l11C3131 + l12 l13 l12 l13 C2323 + l12 l13l13 l12 C2332 + l13 l12 l12 l13 C3223 + l13l12 l13 l12 C3232 4 4 4 2 2 2 2 2 2 = l11 C11 + l12 C22 + l13 C33 + 2l11 l12 C12 + 2l11 l13 C13 + 2l12 l13 C23 2 2 2 2 2 2 + 4l11 l12 C66 + 4l11 l13 C55 + 4l12 l13 C44 = n14 C11 + n24 C22 + n34 C33 + 2n12 n22 C12 + 2n12 n32 C13 + 2n22 n32 C23 + 4n12 n22 C66 + 4n12 n32 C55 + 4n22 n32 C44 = n14 C11 + n24 C22 + n34 C33 + 2(n12 n22 C12 + n12 n32 C13 + n22 n32 C23 ) + 4(n12 n22 C66 + n12 n32 C55 + n22 n32 C44 ) を得る。式(8)を式(7)に代入して、最終的に弾性歪エネルギ-として次式を得る。 Estr ⎡C11 + C22 + C33 + 2(C12 + C13 + C23 ) ⎤ 1 2⎢ ⎥ 2 2 2 2 = ε ⎢ {n1 (C11 + C12 + C13 ) + n2 (C12 + C22 + C23 ) + n3 (C13 + C23 + C33 )} ⎥ − 4 2 ⎢⎣ n1 C11 + n24 C22 + n34 C33 + 2(n12 n22 C12 + n12 n32 C13 + n22 n32 C23 ) + 4(n12 n22 C66 + n12 n32 C55 + n22 n32 C44 ) ⎥⎦ (9) これより Y< hkl > は Y< hkl > ⎡C11 + C22 + C33 + 2(C12 + C13 + C23 ) ⎤ 1⎢ ⎥ 2 2 2 2 = ⎢ {n1 (C11 + C12 + C13 ) + n2 (C12 + C22 + C23 ) + n3 (C13 + C23 + C33 )} ⎥ 2 − 4 4 4 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 ⎣⎢ n1 C11 + n2 C22 + n3 C33 + 2(n1 n2 C12 + n1 n3 C13 + n2 n3 C23 ) + 4(n1 n2 C66 + n1 n3 C55 + n2 n3 C44 ) ⎥⎦ (10) と与えられる。また ε はベガード則が仮定できる場合には、ε = η (c − c0 ) と表現できるので、結局、 弾性歪エネルギ-は、 Estr ( c ) = η 2Y<hkl > ( c − c0 ) 2 (11) にて与えられる。 η は格子ミスマッチ、 c は局所的な濃度、および c0 は合金組成である。 以上は斜方晶系における定式化であるが、立方晶、正方晶、および六方晶への変換は弾性定数マ トリックスを 【立方晶】 ⎛ C11 ⎜ ⎜ C21 ⎜ C31 ⎜ ⎜ 0 ⎜ 0 ⎜⎜ ⎝ 0 C12 C22 C13 C23 C32 C33 0 0 0 0 0 0 0 0 0 C44 0 0 0 0 0 0 C55 0 ⎞ ⎛ C11 ⎟ ⎜ ⎟ ⎜ C12 ⎟ ⎜ C12 ⎟=⎜ 0 ⎟ ⎜ 0 0 ⎟ ⎜ 0 ⎟ ⎜ C66 ⎟⎠ ⎜⎝ 0 0 0 0 C12 C11 C12 C12 C12 C11 0 0 0 0 0 0 7-6 0 0 0 C44 0 0 0 0 0 C44 0 0 ⎞ ⎟ ⎟ ⎟ ⎟ 0 ⎟ 0 ⎟ ⎟ C44 ⎟⎠ 0 0 0 【正方晶】 ⎛ C11 ⎜ ⎜ C21 ⎜ C31 ⎜ ⎜ 0 ⎜ 0 ⎜⎜ ⎝ 0 C12 C22 C13 C23 0 0 0 0 C32 C33 0 0 0 0 C44 0 0 0 0 0 0 0 C55 0 C12 C13 0 0 C22 C32 0 0 0 C23 C33 0 0 0 0 0 0 0 C44 0 0 0 0 ⎞ ⎛ C11 ⎟ ⎜ 0 ⎟ ⎜ C12 0 ⎟ ⎜ C13 ⎟=⎜ 0 ⎟ ⎜ 0 0 ⎟ ⎜ 0 ⎟ ⎜ C66 ⎟⎠ ⎜⎝ 0 C12 C11 C13 C13 0 0 0 0 C13 C33 0 0 0 0 C44 0 0 0 0 0 0 0 C44 0 ⎛C 0 ⎞ ⎜ 11 C ⎟ 0 ⎟ ⎜ 12 ⎜C 0 ⎟ ⎜ 13 ⎟= 0 0 ⎟ ⎜ ⎜ 0 0 ⎟ ⎜ ⎟ C66 ⎟⎠ ⎜⎜ 0 ⎝ C12 C11 C13 C13 0 0 0 0 C13 0 0 C33 0 0 0 C44 0 0 0 C44 0 0 0 0 0 ⎞ ⎟ 0 ⎟ 0 ⎟ ⎟ 0 ⎟ 0 ⎟ ⎟ C66 ⎟⎠ 【六方晶】 ⎛ C11 ⎜ ⎜ C21 ⎜ C31 ⎜ ⎜ 0 ⎜ 0 ⎜⎜ ⎝ 0 C55 0 ⎞ ⎟ ⎟ ⎟ 0 ⎟ 0 ⎟ ⎟ 0 ⎟ C11 − C12 ⎟ ⎟ 2 ⎠ 0 0 とすればよい(正方晶と六方晶については、z 方向をc軸としている) 。 例えば式(10)を立方晶について書き下すと、 ⎡C11 + C22 + C33 + 2(C12 + C13 + C23 ) ⎤ 1⎢ ⎥ 2 2 2 2 Y< hkl > = ⎢ {n1 (C11 + C12 + C13 ) + n2 (C12 + C22 + C23 ) + n3 (C13 + C23 + C33 )} ⎥ 2 − 4 ⎢⎣ n1 C11 + n24 C22 + n34 C33 + 2(n12 n22 C12 + n12 n32 C13 + n22 n32 C23 ) + 4(n12 n22 C66 + n12 n32 C55 + n22 n32 C44 ) ⎥⎦ ⎡3C11 + 6C12 ⎤ 1⎢ ⎥ 2 2 2 2 = ⎢ {n1 (C11 + 2C12 ) + n2 (C11 + 2C12 ) + n3 (C11 + 2C12 )} ⎥ 2 − (12) ⎢⎣ C11 (n14 + n24 + n34 ) + 2C12 (n12 n22 + n12 n32 + n22 n32 ) + 4C44 (n12 n22 + n12 n32 + n22 n32 ) ⎥⎦ ⎡3(C11 + 2C12 ) ⎤ 1⎢ ⎥ 2 = ⎢ (C11 + 2C12 ) ⎥ 2 − ⎢⎣ C11{1 − 2(n12 n22 + n22 n32 + n32 n12 )} + 2C12 (n12 n22 + n12 n32 + n22 n32 ) + 4C44 ( n12 n22 + n12 n32 + n22 n32 ) ⎥⎦ ⎤ C11 + 2C12 (C + 2C12 ) ⎡ = 11 ⎢3 − 2 2 2 2 2 2 ⎥ 2 ⎣ C11 + 2(2C44 − C11 + C12 )(n1 n2 + n1 n3 + n2 n3 ) ⎦ となり、従来の結果に一致している。なおここで n14 + n24 + n34 = (n12 + n22 + n32 ) 2 − 2(n12 n22 + n22 n32 + n32 n12 ) = 1 − 2(n12 n22 + n22 n32 + n32 n12 ) を用いた。なお ( n1 , n2 , n3 ) はミラー指数 ( h, k , l ) を用いて、 n1 = h h2 + k 2 + l 2 , n2 = k h2 + k 2 + l 2 , n3 = l h2 + k 2 + l 2 ∴ n12 n22 + n22 n32 + n32 n12 = と表される。特に < hkl >=< 100 > および < hkl >=< 111 > では、それぞれ 7-7 h2 k 2 + k 2l 2 + l 2h2 (h 2 + k 2 + l 2 )2 Y<100> = ( C11 + 2C12 )( C11 − C12 ) , C11 と計算される。また式(12)において、[ Y<111> = 6C44 ( C11 + 2C12 ) C11 + 2C12 + 4C44 ]内の分母にある (2C44 − C11 + C12 ) の正負によって、弾性 的にソフトな方向( Y<hkl > が最小となる方向)が変化する。 (2C44 − C11 + C12 ) > 0 の時には < 100 > 方 向がソフトとなり、(2C44 − C11 + C12 ) < 0 の時には < 111 > 方向がソフトとなる。これを反映して立 方晶における弾性異方性パラメ-タ A は通常、 A ≡ 2C44 /(C11 − C12 ) にて定義される。 また六方晶では Y< hkl > を Y< hkil > と書き直し、 Y< hkil > ⎡C11 + C22 + C33 + 2(C12 + C13 + C23 ) ⎤ 1⎢ ⎥ = ⎢ {n12 (C11 + C12 + C13 ) + n22 (C12 + C22 + C23 ) + n32 (C13 + C23 + C33 )}2 ⎥ 2 − 4 4 4 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 ⎣⎢ n1 C11 + n2 C22 + n3 C33 + 2(n1 n2 C12 + n1 n3 C13 + n2 n3 C23 ) + 4(n1 n2 C66 + n1 n3 C55 + n2 n3 C44 ) ⎥⎦ を得る。六方晶でc軸に垂直な面(最密面)は < hkil >=< 0001 > で、 (n1 , n2 , n3 ) = (0, 0,1) である。 したがって、 Y<0001> = (C13 + C23 + C33 ) 2 ⎤ 1⎡ C C C 2( C C C ) + + + + + − ⎢ 11 ⎥ 22 33 12 13 23 2⎣ C33 ⎦ となる。六方晶で a 軸に垂直な面は < hkil >=< 2 1 10 > で、 (n1 , n2 , n3 ) = (1, 0, 0) であるので、 Y< 2 1 10> = (C11 + C12 + C13 ) 2 ⎤ 1⎡ C C C 2( C C C ) + + + + + − ⎢ 11 ⎥ 22 33 12 13 23 2⎣ C11 ⎦ となる( ni は斜方晶における直交座標系での単位ベクトルであるので注意)。 さて以上から、Cahnのスピノ-ダル分解理論にて用いられている弾性歪エネルギ-において、非 常に大きな仮定がなされていることがわかる。すなわちこの弾性歪エネルギ-は、非常に薄い板状 析出物以外には厳密には適用できない。またスピノ-ダル分解における変調構造のように、板状析 出相が周期的に配列している場合であっても、以上の定式化においては析出相間の弾性相互作用が 考慮されていないために、やはり厳密ではない。式(11)では、弾性歪エネルギーが1つの単純な式 で陽に与えられるので、定性的な考察を行うには非常に有用であるが、実際の材料の相分解に伴う 弾性場について定量的な議論が必要である場合には、式(11)の弾性歪エネルギ-では不十分である。 一般形状を有する析出相が分散した組織の弾性歪エネルギ-は、Khachaturyanの弾性歪エネルギ- 評価法(3)(内容的にはマイクロメカニクスと等価であるが、任意の組織形態の弾性場の数値計算に 便利な形式に定式化されている)を用いて、かなり正確に計算することができるので、これについ ては次章にて説明する。 参考文献 (1) 森 勉, 村外志夫: 「マイクロメカニクス」,培風館, (1976) (2) T.Mura; "Micromechanics of Defects in Solids", 2nd Rev. Ed., Kluwer Academic, (1991). (3) A.Khachaturyan:"Theory of Structural Transformations in Solids.", Wiley, New York, NY, (1983) (4) J.E.Hilliard: "Phase Transformation", ed. by H.I.Aaronson, ASM, Metals Park, Ohio, (1970), 497. ************************************ 参考 *************************************** 弾性定数の対称性について 1.弾性定数の定義 広義のフックの法則を式(1)にて定義する。 7-8 σ ij = Cijkl ekl (1) 弾性定数には、式(2)の関係が成立する。 Cijkl = C jikl , Cijkl = Cijlk , Cijkl = Cklij (2) これより、独立な弾性定数に基づき、式(1)を書き下すと以下のようになる。 ⎛ σ 11 ⎞ ⎛ C1111 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ * ⎜ ⎟=⎜ ⎜ σ 23 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎝ * C1122 C1133 C1123 C1131 C2222 C2233 C2223 C2231 * C3333 C3323 C3331 * * C2323 C2331 * * * C3131 * * * * C1112 ⎞ ⎛ e11 ⎞ ⎟ ⎟⎜ C2212 ⎟ ⎜ e22 ⎟ C3312 ⎟ ⎜ e33 ⎟ ⎟ ⎟⎜ C2312 ⎟ ⎜ 2e23 ⎟ C3112 ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎟ ⎟⎜ C1212 ⎟⎠ ⎜⎝ 2e12 ⎟⎠ (3) なお * はマトリックスの対称要素を表す。したがって、独立な弾性定数は、最大 21 個である。次 に結晶の対称性による独立な弾性定数の決定方法について考察する。 2.独立な弾性定数の決定 まず、結晶の対称性を数式的に扱うために直交座標の回転による座標変換公式を導く。旧直角座 標系におけるベクトル P の成分を ( x1 , x 2 , x3 ) とし、変換後の新座標系におけるベクトル P' の成分 を ( x1' , x 2' , x3' ) と置く。また両座標系の原点は一致させるものとする。この両座標系間の関係を導く ために、方向余弦 lij を以下のように定義する。 F x I Fl GG x JJ = G l GH x JK GH l ' 1 ' 2 ' 3 21 l12 l22 l13 l23 31 l32 l33 11 IF x I JJ GG x JJ KH x K 1 (4) 2 3 方向余弦の意味は以下のように理解することができる。いま、 P( x1 , x 2 , x3 ) が与えられて、 P' ( x1' , x 2' , x3' ) を導く場合を考える。旧座標系において ( x1 , x 2 , x3 ) を成分とするベクトル P は当然な がら ( x1 , 0, 0 ) , ( 0, x 2 , 0 ) および ( 0, 0, x3 ) の和である。これら3つのベクトルは旧座標系ではその 座標軸上に存在するが、新座標系では必ずしも座標軸上に存在するとは限らない。したがって ( x1 , 0, 0) , ( 0, x 2 , 0) および ( 0, 0, x3 ) を、さらにそれぞれ新座標系成分に分解してやらなくてはな ら な い 。 旧 座 標 系 x1 軸 上 の ベ ク ト ル ( x1 , 0, 0 ) を 、 新 座 標 系 で 見 た 場 合 の 成 分 は ( x1 cos(θ 11 ), x1 cos(θ 21 ), x1 cos(θ 31 )) にて与えられる。θij は旧座標系 xj 軸と新座標系 xi 軸との間の角 度である。同様に ( 0, x 2 , 0 ) および ( 0, 0, x3 ) の新座標成分は ( x 2 cos(θ 12 ), x 2 cos(θ 22 ), x 2 cos(θ 32 )) お よび ( x3 cos(θ 13 ), x3 cos(θ 23 ), x3 cos(θ 33 )) にて与えられる。 以上を行列を用いて表記すると以下のようになる。 F x I F x cos(θ GG x JJ = G x cos(θ GH x JK GH x cos(θ ' 1 ' 2 ' 3 I JJ )K F GG H cos(θ IF I JJ GG JJ )K H x K 1 ) + x 2 cos(θ 12 ) + x3 cos(θ 13 ) cos(θ 11 ) cos(θ 12 ) cos(θ 13 ) x1 cos(θ 22 ) cos(θ 23 ) x 2 21 ) + x 2 cos(θ 22 ) + x 3 cos(θ 23 ) = cos(θ 21 ) 1 31 1 11 ) + x 2 cos(θ 32 ) + x3 cos(θ 33 31 ) cos(θ 32 ) cos(θ 33 式(4)と式(5)を比較することにより、方向余弦 lij は式(6)にて与えられる。 7-9 3 (5) Fl GG l Hl 11 21 31 l12 l22 l32 I JJ K F GG H I JJ K l13 cos(θ 11 ) cos(θ 12 ) cos(θ 13 ) l23 = cos(θ 21 ) cos(θ 22 ) cos(θ 23 ) l33 cos(θ 31 ) cos(θ 32 ) cos(θ 33 ) (6) 式(6)右辺のθの添え字は、前が新座標系の軸を、後が旧座標系の軸を表す。これより、方向余弦 lij には、内積の定義から次の性質が存在する。 lik lik = 1 lik l jk = 0( i ≠ j ) (7) l ki l ki = 1 l ki l kj = 0( i ≠ j ) 例: li1li1 = l11l11 + l21l21 + l31l31 = 1 li1l j1 = l11l21 + l11l31 + l21l11 + l21l31 + l31l11 + l31l21 = 0 この方向余弦 lij を用いることによて、歪および応力成分の座標変換公式は、それぞれ式(8)および式 (9)にて与えられる。 eij' = lik l jl ekl 例: (8) e11' = l1k l1l ekl = l11l11e11 + l11l12 e12 + l11l13e13 + l12 l11e21 + l12 l12 e22 + l12 l13 e23 + l13 l11e31 + l13 l12 e32 + l13 l13 e33 σ 'ij = lik l jl σ kl (9) 以上の歪および応力成分の座標変換公式を用いることにより、結晶の対称性による独立な弾性定数 は以下のように計算することができる。 3.斜方晶における独立な弾性定数の導き方 斜方晶は直方体対称性を有する。したがって、x1x2 , x2x3,および x1x2 面に対する座標変換において、 弾性体の応力および歪は不変である。この条件により、斜方晶における独立な弾性定数が導くこと が出来る。 3-1 x1x2 面における対称性 この対称性は、x1 = x1' , x 2 = x 2' , x3 = − x3' と変換した場合、弾性定数 Cijkl が不変であることを意味す る。この場合の方向余弦 lij は次式にて与えられる。 Fl GG l Hl 11 21 31 l12 l22 l32 I JJ K F GG H F cos(0) = G cos(90 ) GH cos(−90) I JJ K l13 cos(θ 11 ) cos(θ 12 ) cos(θ 13 ) l23 = cos(θ 21 ) cos(θ 22 ) cos(θ 23 ) l33 cos(θ 31 ) cos(θ 32 ) cos(θ 33 ) I JJ K F GG H I JJ K 1 0 0 cos(90) cos(90) cos( 0) cos(90) = 0 1 0 0 0 −1 cos( −90) cos(180) (10) これより、歪および応力成分の座標変換公式(8)(9)を用いることによって、以下の関係式を得る。 7-10 ' σ 11 = l1k l1l σ kl = l11l11σ 11 = σ 11 σ '22 = l2 k l2 l σ kl = l22 l22σ 22 = σ 22 σ '33 = l3k l3l σ kl = l33l33σ 33 = σ 33 (11) σ '23 = l2 k l3l σ kl = l22 l33σ 23 = −σ 23 ' σ 13 = l1k l3l σ kl = l11l33σ 13 = −σ 13 ' σ 12 = l1k l2 l σ kl = l11l22σ 12 = σ 12 e11' = l1k l1l ekl = l11l11e11 = e11 ' e22 = l2 k l2 l ekl = l22 l22 e22 = e22 ' e33 = l3k l3l ekl = l33l33e33 = e33 (12) ' e23 = l2 k l3l ekl = l22 l33e23 = − e23 e13' = l1k l3l ekl = l11l33e13 = − e13 e12' = l1k l2 l ekl = l11l22 e12 = e12 新座標系においても、フックの法則は成立するので、 σ 'ij = Cijkl ekl' に式(11)と(12)を代入することに より、次式を得る。 σ 11' = C11kl ekl' ' ' ' ' ' ' = C1111e11' + C1112 e12' + C1113e13' + C1121e21 + C1122 e22 + C1123e23 + C1131e31 + C1132 e32 + C1133e33 ' = C1111e11 + C1112 e12 + ( −C1113 )e13 + C1121e21 + C1122 e22 + ( −C1123 )e23 + ( −C1131 )e31 + ( −C1132 )e32 + C1133e33 = σ 11 = C1111e11 + C1112 e12 + C1113e13 + C1121e21 + C1122 e22 + C1123e23 + C1131e31 + C1132 e32 + C1133e33 これより、 C1113 = 0 , C1123 = 0 となる。 同様に、 C2213 = 0 , C2223 = 0 , C3313 = 0 , C3323 = 0 , C1213 = 0 , C1223 = 0 が得られる。 また、 σ 13' = C13kl ekl' ' ' ' ' ' ' = C1311e11' + C1312 e12' + C1313e13' + C1321e21 + C1322 e22 + C1323e23 + C1331e31 + C1332 e32 + C1333e33 ' = C1311e11 + C1312 e12 + ( −C1313 )e13 + C1321e21 + C1322 e22 + ( −C1323 )e23 + ( −C1331 )e31 + ( −C1332 )e32 + C1333e33 = −σ 13 = −(C1311e11 + C1312 e12 + C1313e13 + C1321e21 + C1322 e22 + C1323e23 + C1331e31 + C1332 e32 + C1333e33 ) より、 C1311 = 0 , C1312 = 0 , C1321 = 0 , C1322 = 0 , C1333 = 0 となる。 同様に、 C2311 = 0 , C2312 = 0 , C2321 = 0 , C2322 = 0 , C2333 = 0 である。 以上をまとめると、0となる弾性定数は以下のようになる。 C1113 = 0 , C1123 = 0 , C2213 = 0 , C2223 = 0 , C3313 = 0 , C3323 = 0 , C1213 = 0 , C1223 = 0 これより、独立な弾性定数は 13 個となり、式(3)は次式にて与えられる。 7-11 (13) ⎛ σ 11 ⎞ ⎛ C1111 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ * ⎜ ⎟=⎜ ⎜ σ 23 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎝ * C1122 C1133 0 0 C2222 C2233 0 0 * C3333 0 0 * * C2323 C2331 * * * C3131 * * * * C1112 ⎞⎛ e11 ⎞ ⎟⎜ ⎟ C2212 ⎟⎜ e22 ⎟ C3312 ⎟⎜ e33 ⎟ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟⎜ 2e23 ⎟ 0 ⎟⎜ 2e31 ⎟ ⎟⎜ ⎟⎟ C1212 ⎟⎜ ⎠⎝ 2e12 ⎠ (14) 3-2 x2x3 面における対称性 この対称性は、x1 = − x1' , x 2 = x 2' , x3 = x3' と変換した場合、弾性定数 Cijkl が不変であることを意味 する。この場合の方向余弦 lij は次式にて与えられる。 Fl GG l Hl 11 21 31 l12 l13 l22 l32 l23 l33 I F cos(θ ) JJ = GG cos(θ ) K H cos(θ ) F cos(180) = G cos(90) GH cos(90) 11 21 31 I )J J )K cos(θ 12 ) cos(θ 13 ) cos(θ 22 ) cos(θ 23 cos(θ 32 ) cos(θ 33 I JJ K F GG H I JJ K −1 0 0 cos( −90) cos( −90 ) cos( 0 ) cos(90) = 0 1 0 cos(90 ) cos( 0) 0 0 1 (15) これより、歪および応力成分の座標変換公式(8)(9)を用いることによって、以下の関係式を得る。 ' σ 11 = l1k l1l σ kl = l11l11σ 11 = σ 11 σ '22 = l2 k l2 l σ kl = l22 l22σ 22 = σ 22 σ '33 = l3k l3l σ kl = l33l33σ 33 = σ 33 (16) σ '23 = l2 k l3l σ kl = l22 l33σ 23 = σ 23 ' σ 13 = l1k l3l σ kl = l11l33σ 13 = −σ 13 ' σ 12 = l1k l2 l σ kl = l11l22σ 12 = −σ 12 e11' = l1k l1l ekl = l11l11e11 = e11 ' e22 = l2 k l2 l ekl = l22 l22 e22 = e22 ' e33 = l3k l3l ekl = l33l33e33 = e33 (17) ' e23 = l2 k l3l ekl = l22 l33e23 = e23 e13' = l1k l3l ekl = l11l33e13 = − e13 e12' = l1k l2 l ekl = l11l22 e12 = − e12 新座標系においても、フックの法則は成立するので、 σ 'ij = Cijkl ekl' に式(16)と(17)を代入することに より、次式を得る。 7-12 ' σ 11 = C11kl ekl' ' ' ' ' ' ' = C1111e11' + C1112 e12' + C1113e13' + C1121e21 + C1122 e22 + C1123e23 + C1131e31 + C1132 e32 + C1133e33 ' = C1111e11 + ( −C1112 )e12 + ( −C1113 )e13 + ( −C1121 )e21 + C1122 e22 + C1123e23 + ( −C1131 )e31 + C1132 e32 + C1133e33 = σ 11 = C1111e11 + C1112 e12 + C1113e13 + C1121e21 + C1122 e22 + C1123e23 + C1131e31 + C1132 e32 + C1133e33 これより、 C1112 = 0 , C1113 = 0 となる。 同様に、 C2212 = 0 , C2213 = 0 , C3312 = 0 , C3313 = 0 , C2312 = 0 , C2313 = 0 が得られる。 また、 σ 13' = C13kl ekl' ' ' ' ' ' ' = C1311e11' + C1312 e12' + C1313e13' + C1321e21 + C1322 e22 + C1323e23 + C1331e31 + C1332 e32 + C1333e33 ' = C1311e11 + ( −C1312 )e12 + ( −C1313 )e13 + ( −C1321 )e21 + C1322 e22 + C1323e23 + ( −C1331 )e31 + C1332 e32 + C1333e33 = −σ 13 = −(C1311e11 + C1312 e12 + C1313e13 + C1321e21 + C1322 e22 + C1323e23 + C1331e31 + C1332 e32 + C1333e33 ) より、 C1311 = 0 , C1322 = 0 , C1323 = 0 , C1332 = 0 , C1333 = 0 となる。 同様に、 C1211 = 0 , C1222 = 0 , C1223 = 0 , C1232 = 0 , C1233 = 0 である。 以上をまとめると、0となる弾性定数は以下のようになる。 C1112 = 0 , C1113 = 0 , C2212 = 0 , C2213 = 0 , C3312 = 0 , C3313 = 0 , C2312 = 0 , C2313 = 0 (18) これより、独立な弾性定数は 13 個となり、式(3)は次式にて与えられる。 ⎛ σ 11 ⎞ ⎛ C1111 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ * ⎜ ⎟=⎜ σ 23 ⎜ ⎟ ⎜ * ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎝ * C1122 C1133 C1123 0 C2222 C2233 C2223 0 * C3333 C3323 0 * * C2323 0 * * * C3131 * * * * 0 ⎞ ⎛ e11 ⎞ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ e22 ⎟ 0 ⎟ ⎜ e33 ⎟ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e23 ⎟ C3112 ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎟⎜ ⎟ C1212 ⎟⎠ ⎜⎝ 2e12 ⎟⎠ (19) 3-3 x1x3 面における対称性 この対称性は、x1 = x1' , x 2 = − x 2' , x3 = x3' と変換した場合、弾性定数 Cijkl が不変であることを意味 する。この場合の方向余弦 lij は次式にて与えられる。 Fl GG l Hl 11 21 31 l12 l13 l22 l32 l23 l33 I F cos(θ ) JJ = GG cos(θ ) K H cos(θ ) F cos(0) = G cos( −90 ) GH cos(90) 11 21 31 I )J J )K cos(θ 12 ) cos(θ 13 ) cos(θ 22 ) cos(θ 23 cos(θ 32 ) cos(θ 33 cos(90) cos(180) cos(90) I F1 cos( −90 )J = G 0 J G cos( 0) K H 0 cos(90) 0 −1 0 I 0J J 1K 0 (20) これより、歪および応力成分の座標変換公式(8)(9)を用いることによって、以下の関係式を得る。 7-13 ' σ 11 = l1k l1l σ kl = l11l11σ 11 = σ 11 σ '22 = l2 k l2 l σ kl = l22 l22σ 22 = σ 22 σ '33 = l3k l3l σ kl = l33l33σ 33 = σ 33 (21) σ '23 = l2 k l3l σ kl = l22 l33σ 23 = −σ 23 ' σ 13 = l1k l3l σ kl = l11l33σ 13 = σ 13 ' σ 12 = l1k l2 l σ kl = l11l22σ 12 = −σ 12 e11' = l1k l1l ekl = l11l11e11 = e11 ' e22 = l2 k l2 l ekl = l22 l22 e22 = e22 ' e33 = l3k l3l ekl = l33l33e33 = e33 (22) ' e23 = l2 k l3l ekl = l22 l33e23 = − e23 e13' = l1k l3l ekl = l11l33e13 = e13 e12' = l1k l2 l ekl = l11l22 e12 = − e12 新座標系においても、フックの法則は成立するので、 σ 'ij = Cijkl ekl' に式(21)と(22)を代入することに より、次式を得る。 σ 11' = C11kl ekl' ' ' ' ' ' ' = C1111e11' + C1112 e12' + C1113e13' + C1121e21 + C1122e22 + C1123e23 + C1131e31 + C1132 e32 + C1133e33 ' = C1111e11 + ( −C1112 )e12 + C1113e13 + ( −C1121 )e21 + C1122 e22 + ( −C1123 )e23 + C1131e31 + ( −C1132 )e32 + C1133e33 = σ 11 = C1111e11 + C1112 e12 + C1113e13 + C1121e21 + C1122e22 + C1123e23 + C1131e31 + C1132 e32 + C1133e33 これより、 C1112 = 0 , C1123 = 0 となる。 同様に、 C2212 = 0 , C2223 = 0 , C3312 = 0 , C3323 = 0 , C1312 = 0 , C1323 = 0 が得られる。 また、 σ 12' = C12 kl ekl' ' ' ' ' ' ' = C1211e11' + C1212 e12' + C1213e13' + C1221e21 + C1222e22 + C1223e23 + C1231e31 + C1232 e32 + C1233e33 ' = C1211e11 + ( −C1212 )e12 + C1213e13 + ( −C1221 )e21 + C1222 e22 + ( −C1223 )e23 + C1231e31 + ( −C1232 )e32 + C1233e33 = −σ 12 = −(C1211e11 + C1212 e12 + C1213e13 + C1221e21 + C1222 e22 + C1223e23 + C1231e31 + C1232 e32 + C1233e33 ) より、 C1211 = 0 , C1213 = 0 , C1222 = 0 , C1231 = 0 , C1233 = 0 となる。 同様に、 C2311 = 0 , C2313 = 0 , C2322 = 0 , C2331 = 0 , C2333 = 0 である。 以上をまとめると、0となる弾性定数は以下のようになる。 C1112 = 0 , C1123 = 0 , C2212 = 0 , C2223 = 0 , C3312 = 0 , C3323 = 0 , C1312 = 0 , C1323 = 0 これより、独立な弾性定数は 13 個となり、式(3)は次式にて与えられる。 7-14 (23) ⎛ σ 11 ⎞ ⎛ C1111 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ * ⎜ ⎟=⎜ ⎜ σ 23 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎝ * C1122 C1133 0 C1131 C2222 C2233 0 C2231 * C3333 0 C3331 * * C2323 0 * * * C3131 * * * * 0 ⎞⎛ e11 ⎞ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟⎜ e22 ⎟ 0 ⎟⎜ e33 ⎟ ⎟⎜ ⎟ C2312 ⎟⎜ 2e23 ⎟ 0 ⎟⎜ 2e31 ⎟ ⎟⎜ ⎟⎟ C1212 ⎟⎜ ⎠⎝ 2e12 ⎠ (24) 以上より、式(14)(19)(24)を総合することにより、斜方晶の弾性定数は次式にて与えられる。 ⎛ σ 11 ⎞ ⎛ C1111 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ * ⎜ ⎟=⎜ ⎜ σ 23 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎝ * C1122 C1133 0 0 C2222 C2233 0 0 * * C3333 * 0 C2323 0 0 * * * C3131 * * * * 0 ⎞ ⎛ e11 ⎞ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ e22 ⎟ 0 ⎟ ⎜ e33 ⎟ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e23 ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎟⎜ ⎟ C1212 ⎟⎠ ⎜⎝ 2e12 ⎟⎠ (25) 4.立方晶の弾性定数の導出 立方晶は、斜方晶の対称性に加え、回転対称性も有する。つまり、座標変換 x1 = x 2' , x 2 = − x1' , x3 = x3' 、 x1 = x1' , x 2 = x3' , x3 = − x 2' 、および x1 = − x3' , x 2 = x 2' , x3 = x1' において応 力・歪状態は不変である。 4-1 x1 = x 2' , x 2 = − x1' , x3 = x3' における独立な弾性定数の決定 まず、方向余弦 lij は次式にて与えられる。 Fl GG l Hl 11 21 31 l12 l22 l32 I JJ K F GG H F cos(90) = G cos(180) GH cos(90) I JJ K l13 cos(θ 11 ) cos(θ 12 ) cos(θ 13 ) l23 = cos(θ 21 ) cos(θ 22 ) cos(θ 23 ) l33 cos(θ 31 ) cos(θ 32 ) cos(θ 33 ) I JJ K F GG H I JJ K 0 1 0 cos( 0) cos(90) cos(90 ) cos(90) = −1 0 0 0 0 1 cos(90 ) cos( 0 ) (26) これより、歪および応力成分の座標変換公式(8)(9)を用いることによって、以下の関係式を得る。 ' σ 11 = l1k l1l σ kl = l12 l12σ 22 = σ 22 σ '22 = l2 k l2 l σ kl = l21l21σ 11 = σ 11 σ '33 = l3k l3l σ kl = l33l33σ 33 = σ 33 (27) σ '23 = l2 k l3l σ kl = l21l33σ 13 = −σ 13 ' σ 13 = l1k l3l σ kl = l12 l33σ 23 = σ 23 ' σ 12 = l1k l2 l σ kl = l12 l21σ 21 = −σ 21 7-15 e11' = l1k l1l ekl = l12 l12 e22 = e22 ' e22 = l2 k l2 l ekl = l21l21e11 = e11 ' e33 = l3k l3l ekl = l33l33e33 = e33 (28) ' e23 = l2 k l3l ekl = l21l33e13 = − e13 e13' = l1k l3l ekl = l12 l33e23 = e23 e12' = l1k l2 l ekl = l12 l21e21 = − e21 新座標系においても、フックの法則は成立するので、 σ 'ij = Cijkl ekl' に式(27)と(28)を代入することに より、次式を得る。なお斜方晶において既に0となっている弾性定数成分は0とおいた。 ' σ 11 = C11kl ekl' ' ' = C1111e11' + C1122 e22 + C1133e33 = C1111e22 + C1122 e11 + C1133e33 = C1122 e11 + C1111e22 + C1133e33 = σ 22 = C2211e11 + C2222 e22 + C2233e33 これより、 C1111 = C2222 , C1133 = C2233 また、 σ '22 = C22 kl ekl' ' ' = C2211e11' + C2222 e22 + C2233e33 = C2211e22 + C2222 e11 + C2233e33 = C2222 e11 + C2211e22 + C2233e33 = σ 11 = C1111e11 + C1122 e22 + C1133e33 これより、 C2222 = C1111 , C2233 = C1133 また、 σ '33 = C33kl ekl' ' ' = C3311e11' + C3322 e22 + C3333e33 = C3311e22 + C3322 e11 + C3333e33 = C3322 e11 + C3311e22 + C3333e33 = σ 33 = C3311e11 + C3322 e22 + C3333e33 これより、 C3322 = C3311 また、 7-16 ' = C12 kl ekl' = 2C1212 e12' σ 12 = ( −2C1212 )e12 = −σ 21 = −σ 12 = −2C1212 e12 また、 ' σ 13 = C13kl ekl' = 2C1313e13' = 2C1313e23 = σ 23 = 2C2323e23 これより、 C1313 = C2323 また、 ' σ '23 = C23kl ekl' = 2C2323e23 = −2C2323e13 == −σ 13 = −2C1313e13 これより、 C2323 = C1313 である。 弾性定数に関する関係式は以下のようになる。 C1111 = C2222 , C1133 = C2233 , C1313 = C2323 (29) これより、独立な弾性定数は次式にて与えられる。 ⎛ σ 11 ⎞ ⎛ C1111 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ * ⎜ ⎟=⎜ σ 23 ⎜ ⎟ ⎜ * ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎝ * C1122 C1133 0 0 C1111 C1133 0 0 * C3333 0 0 * * C3131 0 * * * C3131 * * * * 0 ⎞ ⎛ e11 ⎞ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ e22 ⎟ 0 ⎟ ⎜ e33 ⎟ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e23 ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎟⎜ ⎟ C1212 ⎟⎠ ⎜⎝ 2e12 ⎟⎠ (30) 式(33)の条件は正方晶に対応するので、正方晶における独立な弾性定数は6個になり、正方晶の弾 性率は式(31)にて与えられる。 ⎛ σ 11 ⎞ ⎛ C11 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ * ⎜ ⎟=⎜ σ 23 ⎜ ⎟ ⎜ * ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎝ * C12 C13 0 0 C11 C13 0 0 * C33 0 0 * * * * C44 * 0 C44 * * * * 0 ⎞ ⎛ e11 ⎞ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ e22 ⎟ 0 ⎟ ⎜ e33 ⎟ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e23 ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎟⎜ ⎟ C66 ⎟⎠ ⎜⎝ 2e12 ⎟⎠ 7-17 (31) 4-2 x1 = x1' , x 2 = x3' , x3 = − x 2' における独立な弾性定数の決定 この条件は、4-1 節において、 3 → 1 , 2 → 3 , 1 → 2 とした場合に等しい。したがって、式(29)に おいて、添え字を 3 → 1 , 2 → 3 , 1 → 2 のように変換すればよい。すなわち C2222 = C3333 , C2211 = C3311 , C2121 = C3131 (32) これより、独立な弾性定数は、次式にて与えられる。 ⎛ σ 11 ⎞ ⎛ C1111 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ * ⎜ ⎟=⎜ ⎜ σ 23 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎝ * C1122 C2222 C1122 C2233 0 0 0 0 * C2222 0 0 * * C2323 0 * * * * * * C3131 * 0 ⎞ ⎛ e11 ⎞ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ e22 ⎟ 0 ⎟ ⎜ e33 ⎟ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e23 ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎟⎜ ⎟ C3131 ⎟⎠ ⎜⎝ 2e12 ⎟⎠ (33) 4-3 x1 = − x3' , x 2 = x 2' , x3 = x1' における独立な弾性定数の決定 この条件は、4-1 節において、 3 → 2 , 2 → 1 , 1 → 3 とした場合に等しい。したがって、式(29)に おいて、添え字を 3 → 2 , 2 → 1 , 1 → 3 のように変換すればよい。すなわち C3333 = C1111 , C3322 = C1122 , C3232 = C1212 (34) これより、独立な弾性定数は、次式にて与えられる。 ⎛ σ 11 ⎞ ⎛ C1111 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ * ⎜ ⎟=⎜ ⎜ σ 23 ⎟ ⎜ * ⎜σ ⎟ ⎜ * ⎜⎜ 31 ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎝ * C1122 C1133 0 0 C2222 C1122 0 0 * C1111 0 0 * * * * C2323 * 0 C3131 * * * * 0 ⎞ ⎛ e11 ⎞ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ e22 ⎟ 0 ⎟ ⎜ e33 ⎟ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e23 ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎟⎜ ⎟ C2323 ⎠⎟ ⎝⎜ 2e12 ⎟⎠ (35) 以上より、立方晶の弾性定数は次式にて与えられる。 ⎛ σ 11 ⎞ ⎛ C11 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ * ⎜ ⎟=⎜ ⎜ σ 23 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎝ * C12 C12 0 0 C11 C12 0 0 * * C11 * 0 C44 0 0 * * * C44 * * * * 0 ⎞ ⎛ e11 ⎞ ⎟ ⎟⎜ 0 ⎟ ⎜ e22 ⎟ 0 ⎟ ⎜ e33 ⎟ ⎟ ⎟⎜ 0 ⎟ ⎜ 2e23 ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎟ ⎟⎜ C44 ⎟⎠ ⎜⎝ 2e12 ⎟⎠ 5.正方晶の弾性定数 式(31)(33)(35)より、正方晶軸(回転軸)によって、弾性定数は以下の3種類が存在する。 ・正方晶軸 x3 方向 7-18 (36) ⎛ σ 11 ⎞ ⎛ C11 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ * ⎜ ⎟=⎜ ⎜ σ 23 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎝ * C12 C13 0 0 C11 C13 0 0 * C33 0 0 * * * * C44 * 0 C44 * * * * 0 ⎞ ⎛ e11 ⎞ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ e22 ⎟ 0 ⎟ ⎜ e33 ⎟ ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e23 ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎟⎜ ⎟ C66 ⎟⎠ ⎜⎝ 2e12 ⎟⎠ (37) ・正方晶軸 x1 方向 ⎛ σ 11 ⎞ ⎛ C11 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ * ⎜ ⎟=⎜ σ 23 ⎜ ⎟ ⎜ * ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎝ * C12 C12 0 0 C22 C23 0 0 * C22 0 0 * * * * C44 * 0 C55 * * * * 0 ⎞ ⎛ e11 ⎞ ⎛ C33 ⎟⎜ ⎟ ⎜ 0 ⎟ ⎜ e22 ⎟ ⎜ * 0 ⎟ ⎜ e33 ⎟ ⎜ * ⎟⎜ ⎟=⎜ 0 ⎟ ⎜ 2e23 ⎟ ⎜ * 0 ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎜ * ⎟⎜ ⎟ ⎜ C55 ⎟⎠ ⎜⎝ 2e12 ⎟⎠ ⎜⎝ * C13 C13 0 0 C11 C12 0 0 * C11 0 0 * * C66 0 * * * * * * C44 * 0 ⎞ ⎛ e11 ⎞ ⎟ ⎟⎜ 0 ⎟ ⎜ e22 ⎟ 0 ⎟ ⎜ e33 ⎟ ⎟ ⎟⎜ 0 ⎟ ⎜ 2e23 ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎟ ⎟⎜ C44 ⎟⎠ ⎜⎝ 2e12 ⎟⎠ (38) ・正方晶軸 x2 方向 ⎛ σ 11 ⎞ ⎛ C11 ⎜ ⎟ ⎜ ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ * ⎜ ⎟=⎜ ⎜ σ 23 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎝ * C12 C22 C13 C12 0 0 0 0 * C11 0 0 * * C66 0 * * * * * * C55 * 0 ⎞ ⎛ e11 ⎞ ⎛ C11 ⎟⎜ ⎟ 0 ⎟ ⎜ e22 ⎟ ⎜⎜ * 0 ⎟ ⎜ e33 ⎟ ⎜ * ⎟⎜ ⎟=⎜ 0 ⎟ ⎜ 2e23 ⎟ ⎜ * 0 ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎜ * ⎟⎜ ⎟ ⎜ C66 ⎟⎠ ⎜⎝ 2e12 ⎟⎠ ⎜⎝ * C13 C12 0 0 C33 C13 0 0 * * C11 * 0 C44 0 0 * * * * * * C66 * 0 ⎞ ⎛ e11 ⎞ ⎟ ⎟⎜ 0 ⎟ ⎜ e22 ⎟ 0 ⎟ ⎜ e33 ⎟ ⎟ ⎟⎜ 0 ⎟ ⎜ 2e23 ⎟ 0 ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎟ ⎟⎜ C44 ⎟⎠ ⎜⎝ 2e12 ⎟⎠ (39) 6.六方晶の弾性定数 xy 平面上における60°回転における独立な弾性定数の決定 まず、方向余弦 lij は次式にて与えられる。 Fl GG l Hl 11 21 31 l12 l13 l22 l32 l23 l33 I F cos(θ ) JJ = GG cos(θ ) K H cos(θ ) F cos(60) = G cos(150) GH cos(90) 11 21 31 I cos(θ )J J cos(θ )K cos(90 )I F 1 / 2 cos(90 )J = G − 3 / 2 J G cos( 0) K GH 0 cos(θ 12 ) cos(θ 13 ) cos(θ 22 ) cos(θ 32 ) cos(30 ) cos( 60 ) cos(90) 23 33 I 0J J 1JK 3/2 0 1/ 2 0 (40) これより、歪および応力成分の座標変換公式(8)(9)を用いることによって、以下の関係式を得る。 7-19 1 4 3 3 3 σ 12 + σ 21 + σ 22 4 4 4 3 3 3 1 = σ 11 − σ 12 − σ 21 + σ 22 4 4 4 4 ' σ 11 = l1k l1l σ kl = l11l11σ 11 + l11l12σ 12 + l12 l11σ 21 + l12 l12σ 22 = σ 11 + σ '22 = l2 k l2 l σ kl = l21l21σ 11 + l21l22σ 12 + l22 l21σ 21 + l22 l22σ 22 σ '33 = l3k l3l σ kl = l33l33σ 33 = σ 33 (41) 3 1 σ 13 + σ 23 2 2 1 3 = σ 13 + σ 23 2 2 σ '23 = l2 k l3l σ kl = l21l33σ 13 + l22 l33σ 23 = − ' = l1k l3l σ kl = l11l33σ 13 + l12 l33σ 23 σ 13 ' = l1k l2 l σ kl = l11l21σ 11 + l11l22σ 12 + l12 l21σ 21 + l12 l22σ 22 = − σ 12 3 1 3 3 σ 22 σ 11 + σ 12 − σ 21 + 4 4 4 4 1 3 3 3 e11 + e12 + e21 + e22 4 4 4 4 3 3 3 1 ' e22 = l2 k l2 l ekl = l21l21e11 + l21l22 e12 + l22 l21e21 + l22 l22 e22 = e11 − e12 − e21 + e22 4 4 4 4 ' e33 = l3k l3l ekl = l33l33e33 = e33 e11' = l1k l1l ekl = l11l11e11 + l11l12 e12 + l12 l11e21 + l12 l12 e22 = (42) 3 1 e13 + e23 2 2 1 3 e13' = l1k l3l ekl = l11l33e13 + l12 l33e23 = e13 + e23 2 2 ' e23 = l2 k l3l ekl = l21l33e13 + l22 l33e23 = − e12' = l1k l2 l ekl = l11l21e11 + l11l22 e12 + l12 l21e21 + l12 l22 e22 = − 3 1 3 3 e11 + e12 − e21 + e22 4 4 4 4 新座標系においても、フックの法則は成立するので、 σ 'ij = Cijkl ekl' に式(41)と(42)を代入することに より、次式を得る。なお斜方晶において既に0となっている弾性定数成分は0とおいた。 ' σ 11 = C11kl ekl' ' ' = C1111e11' + C1122 e22 + C1133e33 = C1111 b LM 1 e N4 11 + OP Q LM N OP Q 3 3 3 3 3 3 1 e12 + e21 + e22 + C1122 e11 − e12 − e21 + e22 + C1133e33 4 4 4 4 4 4 4 g b g b g 3 1 1 C1111 + 3C1122 e11 + C1111 − C1122 e12 + 3C1111 + C1122 e22 + C1133e33 2 4 4 1 3 3 σ 12 + σ 22 = σ 11 + 4 2 4 1 3 3 = C1111e11 + C1122 e22 + C1133e33 + C1212 e12 + C1221e21 + C2211e11 + C2222 e22 + C2233e33 4 2 4 1 1 1 = C1111 + 3C1122 e11 + 3C1212 e12 + C1122 + 3C2222 e22 + C1133 + 3C2233 e33 4 4 4 = b b g g b b g b g b これより、 C1111 = C2222 , C1133 = C2233 , C1111 − C1122 = 2C1212 また、 7-20 g g ' σ 12 = C12 kl ekl' = 2C1212 e12' 3 3 C1212 e11 − C1212 e21 + C1212 e22 2 2 3 1 3 σ 11 − σ 21 + σ 22 =− 4 2 4 3 1 3 =− C1111e11 + C1122 e22 + C1133e33 − C1212 e12 + C1221e21 + C2211e11 + C2222 e22 + C2233e33 4 2 4 3 3 3 =− C1111 − C2211 e11 − C1212 e12 + − C1122 + C2222 e22 + C2233 − C1133 e33 4 4 4 =− b b g b b g g b b g g g これより、 C1111 − C1122 = 2C1212 , C2222 − C1122 = 2C1212 , C2233 = C1133 また、 ' σ 13 = C13kl ekl' = 2C1313e13' = C1313e13 + 3C1313e23 1 3 σ 13 + σ 23 2 2 = C1313e13 + 3C2323e23 = これより、 C1313 = C2323 以上より、弾性定数に関する関係式は以下のようになる。 C1111 = C2222 , C2233 = C1133 , C1313 = C2323 , C1111 − C1122 = 2C1212 (43) したがって、独立な弾性定数は次式にて与えられる。 ⎛C ⎛ σ 11 ⎞ ⎜ 1111 ⎜ ⎟ ⎜ * ⎜ σ 22 ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ ⎜ ⎟=⎜ * ⎜ σ 23 ⎟ ⎜ ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎜ * ⎝ C1122 C1111 * * * C1133 C1133 C3333 * * 0 0 0 0 0 0 0 C3131 * C3131 * * * * 0 0 0 0 0 C1111 − C1122 2 ⎞ ⎟ ⎛ e11 ⎞ ⎟ ⎜ e22 ⎟ ⎟ ⎟⎜ ⎜ e ⎟ 33 ⎟ ⎟ ⎜ 2e ⎟ ⎟ ⎜ 23 ⎟ ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎟ ⎜⎜ 2e ⎟⎟ ⎟ ⎝ 12 ⎠ ⎠ (44) これより、六方晶における独立な弾性定数は5個になり、六方晶の弾性率は最終的に式(45)にて与 えられる。 7-21 ⎛C ⎛ σ 11 ⎞ ⎜ 11 ⎜ ⎟ ⎜ * σ 22 ⎜ ⎟ ⎜ * ⎜ σ 33 ⎟ ⎜ ⎜ ⎟=⎜ * ⎜ σ 23 ⎟ ⎜ ⎜ σ 31 ⎟ ⎜ * ⎜⎜ ⎟⎟ ⎜ ⎝ σ 12 ⎠ ⎜ * ⎝ C12 C11 * * * C13 C13 C33 * * 0 0 0 0 0 0 0 C44 * C44 * * * * ⎞ ⎟ ⎛ e11 ⎞ ⎟ ⎜ e22 ⎟ ⎟ ⎟⎜ ⎜ ⎟ e 33 ⎟ ⎜ ⎟ 2e ⎟ ⎟ ⎜ 23 ⎟ ⎟ ⎜ 2e31 ⎟ ⎟⎟ C11 − C12 ⎟ ⎜⎜ ⎟ ⎝ 2e12 ⎠ 2 ⎠ 0 0 0 0 0 7-22 (45)
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