第 六

7 類 V クラス 線形代数学第二 レポート問題 6
レポート問題略解
[1] λ を複素数とする. n 次上三角行列

λ
1
0 λ

. .
 .. . .
J =
 ..
.
.
 ..
0 ···
···
1
..
.
..
.
···
..
.
..
.
..
.
..
.
···
···
0
0


1 λ


..
0 1
.
t

とその転置行列
J
=
 .. . .

.
.
1 0

.


..
λ 1
···
..
.
..
.
..
.
..
.
0 ···
···
0
.. 
.
.. 
.

λ
λ
0
···
···
..
.
..
.
..
1
0
λ
1
.

0
.. 
.
.. 
.

.. 
.

0
λ
が相似であることを示せ. (t J = P −1 JP となる P を求めること.)


0 ···
解答
 ..
.
.
.
n 次正方行列を P = 
 .. . .

0 1
1
0
···
.
..
.
..
.
..
···
0
1
1
.
..
0
.. 

.  で定める. 変形 M 7→ M P は M
.. 
.
0
···

の列の順序を完全に反転する
M の行の順序を反転する. よっ
 . 同様に, M 7→ P M は 
0 ···
 ...

.
 .. . . .
t
て P · J と JP の両方は 

0 1

1 λ
λ
t
0
···
.
..
.
..
.
..
.
..
···
0
1
λ
1
.
..
.
..
λ
.
..
0
.. 
. 
t
−1

..  に等しい. 故に J = P JP
.
.. 
.
···
···
0

となり, J と J が相似であることは示された. (注釈
P −1 = P がすぐに分かる.)
[2] 次の行列のうちに対角化可能なものがどれか調べよ.
]
]
[
[
7 4
3 −1
(c)
(b)
(a)
−1 3
−1 3
]
[
−2 −6
3
4
[ ]
1
解答 (a) に関して固有値は 2 と 4 であり, それぞれに対して固有ベクトル
1
]
[
[ ]
3 −1
1
は対角化可能で
が得られる. 後者は C2 の基底を構成するので
と
−1 3
−1
ある. (注釈 (実) 対称行列の固有値は全て実数であり, 固有ベクトルはある意味で
「自動的に直交する」ことに注意.)
レポート 5 の問題 [5] によると
[ , ](b) の行列の固有値は 5 (その代数的重複度は 2) で
−2
あり, 固有ベクトルは v =
とその定数倍しかない. 固有ベクトルから C2 の
1
[
]
7 4
基底が作れないので
は対角化不可能.
−1 3
[
]
[
]
−1 ± i
−1 + i
(c) の行列の固有値は 1 ± 3i となり, 固有ベクトルは
となる.
1
1
[
]
[
]
−1 − i
−2 −6
と
は比例していないので C2 の基底を構成する. よって
は対
1
3
4
角化可能である. (注意 全ての固有値の代数的重複度が 1 である場合に行列が常に
対角化可能となる.)


1 −3 3


[3] A = −2 −4 6  とするとき, P −1 AP が対角行列となるような正則行列 P を求
−2 −6 8
め, それを利用して A5 − A3 + 2A を計算せよ. (ヒント: (P −1 AP )k = P −1 Ak P .
P の求め方に関して教科書の 143 頁を参照.)
解答
1 月 6 日の演習問題
によると
λ1 = 1 と λ2 = 2 であり, そ

  , Aの固有値は
  [1]
3 
1
 3
れぞれの固有空間は  2  と −1 ,  0  に張られている. この三本の固有ベ

 0
1
2
クトルが線形独立であることが容易に確認できる. (実は, 相異なる固有値について,
それに対する固有空間それぞれからいくつかの線形独立なベクトルを選ぶと
,
その

1 3 3


集まりも常に線形独立となる.) それを列ベクトルとする行列 P =  2 −1 0  は
2 0 1


1 0 0


−1
P AP =  0 2 0  = D
0 0 2
を満たす. よって, A = P DP −1 であり,
Ak = A · A · A · · · A = P DP −1 · P DP −1 · · · P DP −1
= P D(P −1 P )D(P −1 P ) · · · (P −1 P )DP −1 = P · D · D · · · D · P −1 = P Dk P −1
となることに注意すると,
A5 − A3 + 2A = P D5 P −1 − P D3 P −1 + 2P DP −1 = P (D5 − D3 + 2D)P −1
が成り立つことが分かる. ただし,

 

2 0 0
15 − 13 + 2 · 1
0
0

 

D5 − D3 + 2D = 
0
25 − 23 + 2 · 2
0
 =  0 28 0 
0 0 28
0
0
25 − 23 + 2 · 2


1
3 −3


と (例えば, 余因子行列を用いる方法より) P −1 =  2
5 −6 である. 最後に,
−2 −6 7




1 3 3
2 0 0
1
3 −3




A5 −A3 +2A = P (D5 −D3 +2D)P −1 =  2 −1 0 · 0 28 0 · 2
5 −6
2 0 1
0 0 28
−2 −6 7

 
 

2 84 84
1
3 −3
2
−78 78

 
 

=  4 −28 0  ·  2
5 −6 = −52 −128 156 .
4 0 28
−2 −6 7
−52 −156 184
[
]
cos θ − sin θ
[4] 角 θ =
̸ 0, π に関して, A =
とおくとき次の問いに答えよ.
sin θ cos θ
(a) A は対角化可能であるかどうか判定せよ. 可能なら D = P −1 AP となるよう
な正則行列 P と対角行列 D を求めよ. (ただし A を複素行列と見なす.)
解答
A の固有多項式は λ2 −2[cos]θ ·λ+1 であり, その根は λ1 = cos θ +i sin θ
i
と λ2 = cos θ − i sin θ となる.
は λ1 に対する固有ベクトルの一つ. 同様
1
[ ]
−i
に,
は λ2 に対して固有ベクトルとなる. 従って
1
[
]−1 [
][
] [
]
i −i
cos θ − sin θ
i −i
cos θ + i sin θ
0
=
. (1)
1 1
sin θ cos θ
1 1
0
cos θ − i sin θ
特に A は対角化可能である.
(b) 線形変換 TAC : C2 → C2 が対角化可能かどうか判定せよ. 可能なら TAC の表現
行列が対角行列となるような C2 の基底を求めよ.
と (b) は同値である. 特に TAC は対角化可能であり, C2 の基
解答
{[ 問い
] [ (a)
]}
i
−i
底
,
に関する表現行列は (1) の対角行列である.
1
1
(c) 線形変換 TAR : R2 → R2 が対角化可能かどうか判定せよ. 可能なら TAR の表現
行列が対角行列となるような R2 の基底を求めよ.
解答 TAR は対角化可能ではない. なぜならば, A が実数を成分とする固有ベ
クトルがないから.
[
]
[
]
i −i
i 1
は一意に定まらない. 例えば,
と交換して
注意 (1) における行列
1 1
1 i
[ ]
[ ]
1
−i
でも固有値 cos θ − i sin θ
でも, その i 倍
も (1) が成り立つ. なぜならば,
i
1
に関する固有ベクトルだから.