<マーケット・レター> 1/3ページ 2016年2月18日 レッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社 世界的な金融市場混乱の背景と今後の米国経済の見通し ①欧州信用不安の台頭、②米国の景気後退観測、③日銀のマイナス金利政策導入が世界的リスクオフの主な背景。 ドイツ銀行の資金繰り懸念払しょくには時間を要するも、欧州銀行セクター全体では信用不安の拡大はなお限定的。 市場は米国の景気後退リスクを懸念しはじめる。ただし、米国の実体経済は個人消費中心に底堅さを維持。 米社債市場では優良企業の資金調達環境はなお緩和的。市場見通しでは2016年は合計2回の米利上げを予想。 世界的にリスクオフが加速した3つの背景 図1:日本・米国・ドイツの主要株価指数の推移 2016年は年明け以降、世界的にリスク回避の動きが加 (2006年末=100) 200 日本 TOPIX 180 ドイツ DAX 160 米国 S&P500 140 リーマンショック 120 速し、主要国の株価低迷が顕著となっています。2015年 の最高値からの株価下落率は、日本やドイツでは2割を上 回り、米国でも1割弱の下落となっています(図1)。特に 2016年2月以降、世界的なリスクオフが加速した背景に は、主に次の3つの要因があると考えられます。 第一に、欧州での信用不安の台頭です。市場では2015 60 欧州全体に銀行株の下落が拡がりました。第二に、米国 40 での景気後退観測の浮上が挙げられます。中国など新興 20 国の景気が力強さを欠く中、米国景気の先行き不安が投 07 資家の慎重姿勢に繋がっているものとみられます。第三に、 08 日銀によるマイナス金利政策の導入決定も、リスクオフ加 たことで、金融緩和効果への不透明感が意識された可能 性があります。 2016年および2017年のCoCo債の利払原資が十分ある と表明したこと(2月8日)や54億米ドル規模の社債買戻し 計画を公表したこと(2月12日)などを受けて、短期的には 資金繰り不安の拡大に歯止めがかかりつつあります。 12 13 米国 (S&P500) 14 15 日本 (TOPIX) 16 (年) ドイツ (DAX) -24.2% -24.2% 2016年の年初来騰落 -5.7% -17.1% -12.7% (出所)ブルームバーグ (注)2007年1月1日~2016年2月17日 (bp) 図2:欧州銀行セクターのCDSスプレッド (シニア債、5年物) 350 欧州銀行セクター全体 (Markit iTraxx欧州金融指数) 300 250 ドイツ銀行 200 市場の懸念を完全に払拭するにはなお時間を要するとみ 100 当面の注目点としては、3月10日の欧州中銀(ECB)理 11 -9.6% 150 の拡大は足元でも限定的に留まっています(図2)。 10 2015年の最高値からの騰落率 今後、ドイツ銀行が収益を安定化させ、資金繰りを巡る られるものの、欧州銀行セクター全体で見れば信用不安 09 (2016年2月17日時点) ECBの金融緩和が信用不安緩和に繋がる可能性 欧州の信用不安に関しては、民間大手のドイツ銀行が 欧州債務問題 米国債格下げ 80 換社債(CoCo債)の利支払いが滞るとの懸念が浮上し、 円安に振れた米ドル円相場が円高・米ドル安基調に転じ 中国株安 100 年決算で過去最大の赤字を計上したドイツ銀行の偶発転 速のきっかけとなった模様です。日銀の政策決定直後は 世界的なリスクオフ加速 217.83 113.22 信用不安拡大 50 信用不安緩和 0 2012年1月 2013年1月 2014年1月 2015年1月 2016年1月 事会で追加金融緩和策が打ち出されれば、信用不安の (出所)ブルームバーグ (期間)2012年1月1日~2016年2月17日 緩和に繋がる可能性があると考えられます。 (注)1bp(ベーシス・ポイント)=0.01%。CDSはクレジット・デフォルト・ス ワップの略で、同スプレッドは債券の信用保証料。 ●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて 作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ こに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面による同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で 配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。 <マーケット・レター> 2/3ページ レッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社 図3:向こう12ヵ月の米国の景気後退確率 (エコノミスト・コンセンサス予想) 市場は米国の景気後退リスクを懸念し始める 米国経済に関しては、市場関係者の間で先行きの景気 25 (%) 後退(リセッション)入りの可能性を懸念する見方が広がり つつあります。2016年2月時点のブルームバーグ集計の コンセンサスでは、向こう12ヵ月の景気後退確率は20% へ上昇しています(図3)。依然として少数派の見方ではあ るものの、一部のエコノミストは50%前後の確率で米国の 15 10 景気後退入りを予想しており、金融市場が混乱する中で 5 米国景気に対する弱気見通しが投資家のセンチメント悪 0 化を助長している可能性があります。 10% 10% 8月 9月 15% 15% 15% 10月 11月 12月 1月 2015年 米国経済は個人部門中心に底堅さを維持 2016年 図4:米国の実質GDP成長率の寄与度内訳 実質GDP成長率は前期比年率+0.7%へ減速したものの、 (前期比年率、%) 6 実質GDP 2015年10-12月期 前期比年率+0.7% 5 10-12月期は民間設備投資や純輸出、在庫など主に 4 企業部門の活動がGDP成長率を押し下げる要因となった 3 一方、民間消費や住宅投資が成長押し上げに寄与しまし 2 た(図4)。金融市場が懸念する「米国の景気後退入り」が 現実化するかどうかは、GDPの約7割を占める個人消費の 行方がカギを握っていると言えます。 2月 (出所)ブルームバーグ 一方、実体経済に目を転じると、2015年10-12月期の 米経済は個人部門中心に底堅さを維持している模様です。 20% 19% 20 政府支出・投資 住宅投資 1 民間消費 0 民間設備投資 純輸出 在庫・その他 -1 -2 -3 2016年初も米国の個人消費は堅調に推移 直近の経済指標では、2016年1月の小売売上高が前 年比+3.4%へ回復するなど(2015年12月は同+2.4%)、 2016年に入ってからも米国の個人消費は堅調を維持し ていることが示唆されています。 特に小売売上高の内訳を見ると、ガソリン価格下落の影 響などからガソリン・スタンドの売上が落ち込んでいる一方、 スポーツ用品・娯楽用品・書籍・音楽ストアや無店舗小売 業者(電子ショッピング等)、自動車・部品販売店などの売 上が高い伸びを示しています(図5)。住宅投資に関連した 建設資材・ガーデニング用品店や家具販売店の売上も前 年比+4~5%の底堅い伸びとなっています。 このように、娯楽品や自動車、住宅関連の支出が伸び ている米家計の消費行動からは、景気後退の兆しは依然 として限定的であると考えられます。 -4 1Q 2Q 3Q 13 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 14 2Q 3Q 4Q 15 (年) (出所)米経済分析局 (期間)2013年1-3月期~2015年10-12月期 図5:米国の小売売上高(飲食サービス含む) 9.1 8.7 スポーツ用品・娯楽用品・書籍・音楽ストア 無店舗小売業者(電子ショッピング等) 6.9 6.1 5.0 4.0 3.5 3.4 2.2 2.1 2.0 0.9 自動車・部品販売店 飲食サービス 建設資材・ガーデニング用品店 家具販売店 ヘルスケア用品店 小売売上高・飲食サービス(全体) 衣料品店 その他小売店 食品・飲料販売店 総合小売店 -4.2 電気機器販売店 ガソリン・スタンド -8.1 -10 (前年比、%) -5 0 5 10 (出所)米センサス局 (注)2016年1月時点。金額ベース。 ●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて 作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ こに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面による同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で 配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。 <マーケット・レター> 3/3ページ レッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社 ハイイールド社債利回りには注意が必要 一方、米国企業の資金調達環境の面では、上昇基調に あるハイイールド社債利回りの動向は注意深く見守る必要 がありそうです。米国のハイイールド社債利回りは2月11日 図6:米国のハイイールド社債と投資適格債の利回り 25 20 には2011年10月以来となる節目の10%台へ上昇しまし た(図6上段)。ハイイールド社債利回りの上昇や株安など 市場の混乱が持続した場合には、米国経済にも悪影響が ハイイールド社債 (%) 米国ハイイールド社債利回り 2000年以降の平均 (9.18%) 15 9.88% 10 及ぶリスクがあると考えられます。 米投資適格社債利回りは低水準で安定する傾向 5 1.77% 米国10年国債利回り もっとも、米国の投資適格社債の利回りは足元でも低水 0 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) 準で安定した傾向にあり、必ずしも社債市場全体が機能 不全に陥っている訳ではありません。2月16日時点の投資 10 適格社債利回りは3.67%と2000年以降の平均を下回っ 9 ており、格付水準の高い優良企業にとっては緩和的な資 8 金調達環境が続いていると言えます(図6下段)。 2016年初の投資適格社債市場は世界的な市場混乱 3 の影響を受けて起債が低調でしたが、2月16日にアップル 2 (S&P社格付=AA+)が自社株買いプログラムのため120 1 米ドル)やトヨタ・モーター・クレジット(17.5億ドル)も投資適 2000年以降の平均 (4.97%) 6 5 社債投資需要が回復しつつあります(同日にはIBM(50億 米国投資適格社債利回り 7 アップルの起債を契機に社債市場に回復の兆し 億米ドル規模の起債を行ったことをきっかけに、投資家の 投資適格社債利回り (%) 4 3.67% 米国10年国債利回り 1.77% 0 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (出所)ブルームバーグ、バークレイズ (期間)2000年1月1日~2016年2月16日 (注)社債利回りは期限前償還を考慮した最低利回り。 格社債を起債)。今後は投資適格社債市場の回復が継 図7:米国の政策金利の見通し (FOMC参加者、市場コンセンサス、金利先物) 続するかが、米国株やハイイールド社債などに対する投資 家の信認回復の試金石となりそうです。 (%) 市場混乱の影響から米国の利上げ観測が後退 世界的な金融市場の混乱が続く中、米連邦準備制度 2.5 FOMC参加者の政策金利見通し (中央値、2015年12月時点) 2.0 1.625 理事会(FRB)による利上げ基調が鈍化する公算が高まっ ています。ブルームバーグ集計の市場コンセンサスでは、 1.5 1.375 1.0 0.875 2016年内の利上げは4-6月期と10-12月期の計2回と 予想されています(図7)。 当面は、次回3月15-16日の連邦公開市場委員会 0.625 0.625 1.375 1.125 市場コンセンサス (2016年2月11日時点) 0.5 (FOMC)において、世界的な金融市場の混乱に配慮した 利上げ見通しの修正が示されれば、市場心理の改善に繋 2.375 0.375 0.375 FF金利先物(2016年2月17日時点) 0.0 がると期待されます。なお、2017年以降については、年 間4回のペースでの利上げ基調への回帰を予想する見方 が市場関係者の間で依然として大勢となっています。 (出所)FRB、ブルームバーグ ●当資料は、説明資料としてレッグ・メイソン・アセット・マネジメント株式会社(以下「当社」)が作成した資料です。●当資料は、当社が各種データに基づいて 作成したものですが、その情報の確実性、完結性を保証するものではありません。●当資料に記載された過去の成績は、将来の成績を予測あるいは保証す るものではありません。また記載されている見解、目標等は、将来の成果を保証するものではなく、また予告なく変更されることがあります。●この書面及びこ こに記載された情報・商品に関する権利は当社に帰属します。したがって、当社の書面による同意なくして、その全部もしくは一部を複製し又その他の方法で 配布することはご遠慮ください。●当資料は情報提供を目的としてのみ作成されたもので、証券の売買の勧誘を目的としたものではありません。
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