アベノミクスの下での経済成長と 今後の取組について

資料3
アベノミクスの下での経済成長と
今後の取組について
平成28年2月18日
伊藤 元重
榊原 定征
高橋
進
新浪 剛史
1.アベノミクスの下での経済成長とその安定性
○ アベノミクスの下、日本経済は着実にしっかりとした成長を実現してきており、ファンダメンタルズは揺らいでいない。
アベノミクスの成果の活用により成長と分配の好循環を実現し、安定的成長を持続していく必要。
・ 「雇用者所得や企業収益の増加を伴う成長を実現」・・・20年近く続いたデフレ状況ではなくなり、名目GDPが実質G
DPを上回って成長(名実逆転の解消)
・ 「内需主導の自律的成長を実現」(消費税率引上げの影響を乗り越え)
・ 「総所得(GNI)はGDP以上に改善」・・・海外からの所得増や交易条件の改善も寄与
・ ストック(資産債務)の改善を伴う成長
○ 他方、昨年夏以降の中国をはじめとする新興国市場の減速、原油価格等の下落に伴う資源国経済への先行き不安
感等から市場も大きく変動し、10-12月期のGDPについては、弱い成長となった。
海外リスクの発現等により、必要と判断される場合には機動的に対応すべき。
企業収益と利益計上法人数(万) GDPデフレーター(消費税率引上げの影響を除く)
総雇用者所得(名目・実質)
(兆円)
(2005年=100)
(2005年=100)
106
100 80
影付き部分は景気後退年
消費税率引上げ
影付き部分は景気後退期
105
99 70
実質総雇用者所得
経常利益
104
98 60
97
50
102
96
40
95
30
94
20
101
名目総雇用者所得
(目盛右)
実質総雇用者所得
(含む消費税率引上げの影響)
100
99
1
7
1
2010
7
1
11
7
12
1
7
13
1
7
1
14
7
15
93 10
(月) 0
(年)
ESPフォーキャストによる成長見通し
2.5
(%)
2.0
82.3
利益計上法人数(目盛右)
1.0
実質GDP成長率
外需寄与
0.8
内需寄与
0.6
0.5
0.4
0.0
0.2
2013-14
(年率平均)
15
16
(年度)
110
2.0
100
1.0
90
0.0
80
-1.0
70
-2.0
1981~1998年度(非デフレ期)
の平均は0.9%程度
1.5
1.1
(兆円)
120
海外からの
受取所得
交易利得
影付き部分は景気後退年
(前年度比、%)
1999~2013年度(デフレ期)
の平均は▲1.3%程度
85
90
95
2000
05
10
100
影付き部分は景気後退年
繰越欠損金
不良債権/GDP
(左軸)
(全国銀行、右軸)
80
2013-2015 (年)
(%)
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
20
0
0.0
20(年度)
60
40
実質GDP
15
繰越欠損金と不良債権の推移
実質GNIの寄与度
1.2
名目GDP成長率
3.0
60 -3.0
1980
(年度)
(年率、%)
1.4
1.5
1.0
64.6
120
1990
91
92
93
94
95
96
97
98
99
2000
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
103
74.0
1990
1995
2000
2005
2010
0.0
2015 (年度)
(備考)1.内閣府「国民経済計算」、日本経済研究センター「ESPフォーキャスト(2016年2月)」、「政府経済見通し」、総務省「労働力調査」、厚生労働省「毎月勤労統計調査」、財務省「法人企業統計調査」、「会社標本調査」、金融庁「金融
再生法開示債権の状況」により作成。
2.GDPデフレーターの1997年度、2014年度の計数は消費税率引上げの影響を除く。企業収益の2015年度の計数は2015年4-6月期、7-9月期の季節調整値(年率)の平均値。
2
2.世界経済の動向
○ 世界経済の成長に向けて、これまで新興国・途上国が牽引してきたが、これからは、G7諸国等が、金融資本市
場の安定及び持続的な成長を含め、国際連携を強化していくことが求められる。我が国は経済財政運営に万全を
期すとともに、一億総活躍社会の実現、消費の質や生活環境の向上を原動力とする新たな内需主導の成長の実
現、TPPの推進等を通じて貢献すべき。
10
4.0
8
アメリカ政策金利の見通し
(FOMCメンバーと市場参加者の見通し)
実質GDP成長率
(%)
世界
新興国・途上国
3.5
6
4
2
4.0
3.0
3.1
2.5
1.9
0
G7
-2
2.0
(%)
FOMCメンバー見通し
(12月)
年4回
2.375
年4回
1.0
-6
0.5
(年)
市場参加者による見通し
(FF金利先物市場レート)
12月16日時点
1.375
1.715
1.350
1.5
-4
年3.5回
3.250
2月17日時点
0.83
0.97
0.49
年0.4回
0.69
年0.8回
年1.1回
0.0
2016末
(備考)1.IMFにより作成。
2.2015年は実績見込み。日本の15年の実績値は0.4%
2
(%)
世界GDP成長率へG7、中国の寄与度
0.5
0
-1.5
○過剰生産、過剰債務問題への対応
鉄鋼等で生産過剰状態が続く。中国政府は国有企業の合併・再編の促進等を通じ、過
剰生産能力の解消を進める方針を示しているが、具体策は明らかになっていない。
G7内需
-1
G7外需
中国外需
-2
2008
09
10
11
(年)
○金融市場改革
2015年8月に人民元の基準値を大幅に切り下げるとともに(対ドルで▲4.6%)、市場の
前日終値等を参考に決定する方式に移行。
16年1月より株式市場のサーキットブレーカー制度が導入され、実際に発動されたもの
の、同月8日に運用停止。
1
-0.5
18末
中国の政策をめぐる動き
中国内需
1.5
17末
(備考)1.ブルームバーグより作成。データカットは16年2月17日時点。
2.FOMCメンバーの見通しレートは、2015年12月16日FOMC会合時公表の政策金利見通しの中央値。
3.年間の利上げ回数は、向こう各回における1回の利上げ幅を0.25%とした場合の利上げ回数。
12
13
14
(年)
(備考)1.世界銀行により作成。
2.PPP(2011年、米ドル)ベース。中国の内需と外需については、外需の中国GDP成長率への寄与度と、世
界GDPにしめる中国のシェアから算出。G7の外需と内需については、各国統計よりシェアを算出。
○ビジネスのしやすさ
ビジネスのしやすさは189か国中84位、うち起業のしやすさは136位(世界銀行)。腐敗
度は168カ国中(清潔な方から数えて)83位(Transparency International)。
3
3.就業促進と働き方改革の推進
○ この冬のボーナスについては、中小企業で伸びが高かったこと、地方でも着実にその動きが広がりつつあることが報
告されている。また、パートタイム労働者の時給が大幅に引き上げられている例が見られ始めている。
○ こうした動きを継続的に拡大していく観点からは、春季労使交渉の動向が非常に重要。しかしながら、年初の労使ア
ンケートによれば、来年度の賃金引上げ見通しは定昇込みで2.12%程度にとどまっている。業績の向上した企業につ
いて、ベースアップやボーナス、諸手当などを含めた年収ベースの賃金引上げとなるよう、さらに前向きで踏み込んだ
検討を進め、企業全体の賃上げの流れを牽引すべき。
○ 政府は、非正規労働者の待遇改善(賃金・手当・ボーナス、130万円の壁への対応を含めた被用者保険の適用拡
大、教育訓練など)や正規化、同一労働同一賃金の実現、長時間労働の抑制、保育士・介護士の待遇改善、高齢者の
就業拡大に向け、環境整備を加速すべき。
パート等での賃金の動き
企業
伸び率
経団連
3.79%
日本経済新聞
毎月勤労統計
(5~29人事業所)
2000
200
一般
一般
パート
パート
150
1500
3.22%
小売
B社
全国の店舗においてパートに同一の
時給(最低でも1,200円)を適用。
3.8%
輸送
C社
期間従業員に対し、契約時・契約更
新時の特別手当(10万円)支給など
の待遇改善。
(備考)地方労組は2014年、2015年年末一時金妥結状況を公表している
都府県の平均妥結額を単純平均することにより算出。毎月勤労統計は
2015年11、12月の特別給与の前年比。
(%)
2500
出雲市においてパートより短い勤務
時間の区分を設け、パート(850円)よ
りも高い時給(1,000円)を設定。
小売
A社
3.3%
地方労組
(21都府県)
取組
一般労働者とパートタイム労働者の比較(2014年)
(時間/月) 労働時間
時給
100
1000
500
~19歳
20~24歳
25~29歳
30~34歳
35~39歳
40~44歳
45~49歳
50~54歳
55~59歳
60~64歳
65~69歳
70歳~
調査
(円)
(備考)各種報道、ヒアリングにより作成。
50
~19歳
20~24歳
25~29歳
30~34歳
35~39歳
40~44歳
45~49歳
50~54歳
55~59歳
60~64歳
65~69歳
70歳~
冬のボーナス動向
(備考)厚生労働省[賃金構造基本統計調査」により作成。
賃金引上げ見通しと春季労使交渉の結果の推移
2.3
80
70
60
2.1
2.12
春季労使交渉
1.9
50
(%)希望者全員が65歳以上まで働ける企業の割合
定年制の廃止
65歳以上定年
希望者全員65歳以上
の継続雇用制度
40
30
20
1.7
10
賃金引上げ見通し
0
2007
1.5
2009
10
11
12
13
(備考)一般財団法人「労務行政研究所」、日本労働組合総連合資料により作成。
14
15
16(年)
08
09
10
11
12
13
14
(年)
(備考)1.厚生労働省[高年齢者の雇用状況」により作成。
2.高年齢者雇用安定法に基づき、「定年制の廃止」、「65歳までの定年引上げ」、「65歳までの継続雇用制度の
導入」のいずれかの措置の実施が企業には義務付けられているが、平成25年3月31日までに継続雇用制度の対象者
を限定する基準を労使協定で設けている場合には一定の経過措置が認められている。
4