S&Pがブラジル国債を「BB」に格下げ

臨時レポート
S&Pがブラジル国債を「BB」に格下げ
2016年2月18日
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
 スタンダード・アンド・プアーズ(以下「S&P」)はブラジルの外貨建て長期信用格付を「BB+」から「BB」へと引き下
げました。
 S&Pの発表にもかかわらず、2月17日には商品価格上昇等を背景にブラジルの株価や通貨レアルは上昇しました。
 世界的なリスク回避の動きに加え、財政健全化の遅れや、景気の更なる悪化懸念、他の格付会社の動向等によ
りレアルは変動が続くと予想されます。
【S&Pが格下げを発表】
2月17日(現地時間)、米大手格付会社スタンダード・アンド・プアーズ(以下「S&P」)はブラジルの外貨建て長期信用格
付を「BB+」から「BB」へと1ノッチ引き下げ(いずれも投機的水準)、見通しを「ネガティブ」としました。同時に、ブラジル
の公的債務の大半を占める自国通貨建て信用格付についても「BBB-」から「BB」へ2ノッチ引き下げました。
格下げの背景についてS&Pは、「ブラジルはなお政治、経済を巡りかなりの困難に直面しており、調整プロセスに一段の
時間を要する」とし、財政健全化が遅れ、深刻な景気後退がさらにあと1年続くとの見通しを示しています。
【図表】ブラジル国債の格付
(2016年2月17日時点)
外貨建て長期債
自国通貨建て長期債
S&P
BB
BB
ムーディーズ
Baa3
Baa3
【図表】S&Pによる実質GDP成長率及びインフレ率の予測
(2015年9月9日と2016年2月17日の比較)
今回予測
実質GDP成長率 ( 2 0 1 6 年2 月1 7 日)
( %)
前回予測
( 2 0 1 5 年9 月9 日)
今回予測
インフレ率
( 2 0 1 6 年2 月1 7 日)
( %)
前回予測
( 2 0 1 5 年9 月9 日)
フィッチ
BB+
BB+
出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱作成。
2015年
2016年
2017年
2018年
2019年
-3.6
-3
1.0
2.2
2.5
-2.5
-0.5
1.0
2.5
-
9.0
8.0
7.0
5.5
4.5
8.7
7.9
6.3
5.3
-
出所:S&P社のデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱作成。
※2015年から2019年まで全て予測値
【市場の反応】
S&Pの発表にもかかわらず、2月17日の市場では商品価格上昇等を背景に株価やレアルは上昇しました。ブラジルの外
貨建て長期債格付はS&P及びフィッチ・レーティングスにおいて既に投機的水準となっており、クレジットリスクの指標と
なる5年物CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の水準も、BB格相当の国と同水準まで拡大していたことから、今回の
S&Pによる更なる格下げを受けても市場は以前ほど反応しなかったものと見られます。なお、ムーディーズ・インベス
ターズ・サービスは、同国ソブリン格付を2015年12月には「格下げ方向で見直す」と発表しましたが、依然投資適格級の
最低水準に据え置いています。
【図表】ブラジル・レアル(対円、対米ドル)の推移
【図表】5年物CDSの推移
(2008年1月1日~2016年2月17日、日次)
(2013年1月1日~2016年2月17日、日次)
(レアル)
(円)
80
レアル/円(左軸)
70
米ドル/レアル(右軸)
(%)
1.0
6.0
1.5
5.0
60
2.0 レアル
50
2.5
40
3.0
30
3.5
20
4.0
高
4.0
3.0
2.0
10
2008/1
4.5
2009/7
出所:Bloomberg
2011/1
2012/7
2014/1
2015/7
(年/月)
レアル
安
1.0
0.0
2013/1
2013/6
2013/11
2014/4
2014/9
2015/2
出所:Bloomberg
2015/7
2015/12
(年/月)
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
るものではありません。 D-160218-3
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【財政悪化懸念】
ブラジルでは、2015年の財政赤字は6,130億レアル(対GDP比で10.34%)にまで拡大し、基礎的財政収支についても約
1,112億レアルの赤字と、ともに過去最悪を記録する等、財政健全化が急務となっています。景気後退による税収減の
財政への影響が大きいことに加え、第2期ルセフ政権で財政健全化を推進してきたレビ元財務相が2015年末で退任し
たことも、財政悪化懸念に拍車をかける事態となっており、レアル安要因の一つにもなっています。
新たに就任したバルボサ財務相は、レビ元財務相の財政健全化の方針を継承する姿勢を示していますが、市場にはレ
ビ元財務相ほど健全化を推し進められないのではないかとの不安が今のところ払しょくできていない模様です。政府は
2016年の基礎的財政収支を小幅黒字にまで改善するとの目標を維持する等、財政健全化に取り組む姿勢は継続して
います。政府は目標達成のため金融取引暫定納付金(CPMF)の復活等を目指していますが、景気が低迷する中での
増税に対して、議会の反発が大きく、承認が大幅に遅れているのが現状です。これに対し、政府は議会承認の不要な
対策等も打ち出しており、実際、2016年1月末にはアイスクリームやチョコレート、タバコ等への税率を引き上げる大統領
令を発表しています。
【今後の見通し】
レアルは国内の問題に加え、世界的なリスク回避姿勢の高まりもあり神経質な展開が続くと見られます。
国内では、景気後退が続く一方、インフレ率は依然2桁台で推移しており、個人消費を抑える要因となっています。また、
ペトロブラス問題については、政界を巻き込む事態が続いています。ルセフ大統領の弾劾については、実現困難とは見
られるものの、2015年12月に弾劾に向けた手続きが開始されたことで、財政健全化のための審議が遅延する等、多大
な影響を与えています。金融政策については、2016年1月の会合で中銀が市場の予想に反して利上げを見送ったため、
政府が金融政策への影響力を強めたとの憶測も浮上していることから、次回会合(3月2日)の結果には注意が必要で
す。更に、現在は投資適格級で据え置いているムーディーズの動向次第でも影響を受ける可能性があると見られ、注
目しています。
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
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