ブラジル、利上げ打ち止めとレアルの動向

臨時レポート
ブラジル、利上げ打ち止めとレアルの動向
2015年9月3日
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
■ ブラジル中央銀行(以下、中銀)は、政策金利を14.25%で据え置くことを決定し、今後もその水準を相当期
間維持することを表明しました。
■ ブラジル国内の景気減速や世界的なリスク回避の流れもありレアル安が続いています。8月31日に政府が
2016年の基礎的財政収支が赤字になるとの見通しを示したことで再び格下げ懸念が強まりレアルはさら
に下落しました。
■ 国内では議会や経済界からの反発もありますが、政府は財政健全化策を進める姿勢を堅持しており、今
後もその動向が注目されます。
【利上げ打ち止め】
中銀は9月2日(現地時間)、政策金利を14.25%で据え置くことを全会一致で決定しました。2014年10月に利上げを再開
して以降、中銀は7会合連続で計3.25%の利上げを行ってきましたが、今回の決定で一連の利上げはいったん打ち止め
となりました。市場でも、前会合の議事録において政策金利を14.25%に据え置く用意があるとの考えが示されていたこ
と等から、利上げ打ち止めとの見方が優勢となっていました。
【図表】ブラジル・レアルの推移
【図表】政策金利(*)とインフレ率の推移
(2008年1月1日~2015年9月2日、日次)
(2008年1月1日~2015年9月2日、日次)
(%)
(レアル)
(円)
16
政策金利
インフレ率(前年同月比)
80
14
70
12
60
10
0.0
レアル/円(左軸)
1.0
1.5
50
レアル
高
2.0
8
40
2.5
6
30
3.0
4
20
3.5 レアル
10
2008/1/1
4.0
2
0
2008/1/1
0.5
米ドル/レアル(右軸)
安
2010/1/1
2012/1/1
2014/1/1
(年/月/日)
*政策金利は2015年9月2日発表(現地時間)。
出所:Bloomberg
※インフレ率=IPCA(拡大消費者物価指数)とは、最低給与からその40倍の給与
水準までの家計を調査対象にした消費者物価指数。政府の公式インフレ指標。
※インフレ率については、2015年7月時点まで。
2010/1/1
2012/1/1
2014/1/1
(年/月/日)
出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
【2016年基礎的財政収支の赤字見通しを発表】
ブラジル政府は8月31日(現地時間)に議会へ予算法案を提出し、2016年の基礎的財政収支が対GDP比で0.5%の赤字、
赤字額は305億レアルとなるとの見通しを示しました。 2016年の基礎的財政収支見通しについて、政府は2015年初には
2%の黒字としたものの、7月に0.7%の黒字へと下方修正していました。今回、景気減速と緊縮財政に対する政治的な
反発等により黒字達成が困難との見方を政府は初めて示しました。
これまで、ルセフ大統領らによる一部の課税措置の復活を目指す計画が、議会や経済界の強力な反対にあっていまし
た。このため、あえて赤字見通しを提示することで、議会に緊縮財政への協力を要求したとの見方もあるようです。バル
ボサ企画予算管理相は「短期的な基礎的財政収支赤字の解消に向け、議論する用意がある」、「より現実的な予算が
必要」と述べ、財政健全化策を進めるべく議会と協議していく方針を示しました。また、むこう数週間で年金、ヘルスケア、
教育等の必須と言われる支出の増加に上限を設けるといった改革を進めることも明らかにしました。
ブラジルでは、景気悪化を背景とする税収の落ち込みや政治的反発から財政健全化目標の達成が困難さを増していま
すが、8月24日に政府は現在39ある省庁のうち10省庁を廃止する方針を示す等改革は続けられています。また、レビ財
務相は29日にも、「投資適格級から格下げされるのをじっと待っているわけにはいかない」とし、公的支出の削減の必要
性をあらためて強調、財政健全化路線を堅持しています。
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
るものではありません。 D-150903-1
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ブラジル、利上げ打ち止めとレアルの動向
【レアル下落が継続】
ブラジル・レアルは大幅な下落が続いています。ブラジルでは2015年4-6月期のGDPが前期比1.9%減、2015年1-3月期
についても0.7%減へと下方修正されており景気後退期入りしています。また、財政緊縮策を巡る政府と議会との対立が
続いていることや景気悪化に伴う税収減もあり、7月の基礎的財政収支は100億レアルの赤字となる等、財政健全化策
の進展にも遅れが目立っています。このため、ブラジル国債の格付が投機的格付に引き下げられるとの懸念も市場に
は根強く、景気減速と併せてレアル安要因となっています。
外部環境についても、8月中旬以降には中国景気の減速懸念から世界的に株安、資源安が広がったことで、レアルを含
む新興国通貨も軒並み売られる展開となりました。
さらに、8月31日に政府が2016年基礎的財政収支の赤字予想を示したことで、格下げ懸念が強まったことや、9月2日に
発表された7月の鉱工業生産が前年比-8.9%と想定以上の落ち込みとなったこともあり、レアル下落に拍車がかかりま
した。
【今後の見通し】
政策金利については、今後も据え置かれると予想しています。中銀の声明は「マクロ経済のシナリオ及びインフレ見通し、
現状のリスクバランスを勘案した」、「2016年末にインフレ率を政策目標に収れんさせるため、金利水準を十分に長期間
維持することが必要と考える」と前回とほぼ同様の内容となっており、今後も現在の政策金利の水準を相当期間維持す
ることを示唆しています。
為替市場では、レアルは神経質な展開が続くことが予想されます。ブラジルの格下げ懸念の再燃や予想以上の景気停
滞等の国内情勢に加え、外部要因となる中国の景気減速懸念が当面続くと見られることは今後もレアルの重石になると
見られます。一方、議会や経済界の反発も見られるものの政府は投資適格級の格付け維持を目指し財政健全化策を
進める姿勢を堅持していることから、今後も政策動向が注目されます。
【図表】ブラジルのGDP (前年同期比、前期比)の推移
(2005年第1四半期~2015年第2四半期)
(%)
12
10
(%)
【図表】ブラジル鉱工業生産(前年比)の推移
(2009年1月~2015年7月、月次)
25
GDP(前年同期比)
GDP(前期比)
20
8
15
6
10
4
5
2
0
0
-5
-2
-10
-4
-15
-6
2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
(年)
-20
2009/1
出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
2010/1
2011/1
2012/1
2013/1
2014/1
2015/1
(年/月)
出所:Bloomberg
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当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
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