ムーディーズがブラジルを「Ba2」に格下げ

臨時レポート
ムーディーズがブラジルを「Ba2」に格下げ
2016年2月25日
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
 ムーディーズ・インベスターズ・サービス(以下、ムーディーズ)はブラジルのソブリン格付を「Baa3」から「Ba2」
へと引き下げましたが、通貨レアルへの影響は限定的となりました。
 ペトロブラスに関する汚職問題は2014年の大統領選の与党選挙参謀を巻き込む事態となっており、政治的
混乱が拡大する可能性もあります。
 レアルは財政健全化関連法案の審議や金融政策の影響を受ける可能性があると見られることから、引き続
きこれらの動向が注目されます。
【ムーディーズが格下げを発表】
2月24日(現地時間)、 米大手格付会社ムーディーズ・インベスターズ・サービス(以下、ムーディーズ)はブラジルのソブ
リン格付を「Baa3」から「Ba2」に2ノッチ引き下げ、格付見通しについては「ネガティブ」としました。これにより、主要大手
格付会社3社による格付は全て投機的水準となりました。
格下げの背景についてムーディーズは、債務状況の悪化に加え、政治的な混乱とそれに伴う財政再建・構造改革の遅
れを指摘しています。また、景気低迷によりブラジルの債務状況は悪化しており、3年以内に公的債務(対GDP比)は
80%に上る可能性もあるとの厳しい見通しを示しました。
【図表】ブラジル国債の格付と見通し
(2016年2月24日時点)
外貨建て長期債
自国通貨建て長期債
見通し
S&P
BB
BB
ネガティブ
ムーディーズ
Ba2
Ba2
ネガティブ
フィッチ
BB+
BB+
ネガティブ
出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱作成。
【市場の反応】
ムーディーズの格下げを受け、2月24日にはブラジルの株式市場は下落したものの、通貨レアルへの影響は限定的とな
りました。ムーディーズが2015年12月に「格下げ方向で見直す」と表明していたことや、2016年2月17日にS&Pが「BB」へ
の格下げを行っていたこともあり、ムーディーズの決定は「予想より遅かった」との意見も出る等、市場では概ね織り込
まれていた模様です。
【図表】ブラジル・レアル(対円、対米ドル)の推移
(2008年1月1日~2016年2月24日、日次)
(レアル)
(円)
80
1.0
レアル/円(左軸)
70
1.5
米ドル/レアル(右軸)
60
2.0
50
2.5
40
3.0
30
3.5
20
4.0
10
2008/1
レアル
高
レアル
安
4.5
2009/7
出所:Bloomberg
2011/1
2012/7
2014/1
2015/7
(年/月)
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
るものではありません。 D-160225-2
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【財政目標を引き下げ】
政府は2月19日に、2016年の基礎的財政収支について、これまでの対GDP比で0.5%の黒字目標から、1%までの赤字
を許容できるよう変更するとの方針を示しました。同時に、234億レアルの追加の歳出削減策及び、公的歳出について
の上限を設け、賃金や税制優遇策等を抑制する計画を発表しています。歳出削減策等は概ね市場では好感された模
様ですが、財政目標を修正するためには議会での承認が必要となることから、今後の審議の行方が注目されます。
【汚職捜査の政界への影響は拡大】
2月22日、ペトロブラスに関する汚職問題において、政治家や企業関係者ら51名が新たな捜査対象となったと報道され
ました。中でも、与党のサンタナ氏に仮逮捕状が出されたことは現政権にとっても打撃と見られます。大統領自身に捜
査は及んでいませんが、サンタナ氏は2014年の大統領選においてルセフ大統領の選挙参謀であった人物であり、大統
領及びルラ元大統領にも近しい人物とされています。このため、不正献金が選挙戦にも関与していたとなれば、政権へ
の打撃は避けられないと見られます。さらに、実現は困難と見られるものの、大統領に対する弾劾手続きも継続してお
り、財政健全化関連法案の審議等への影響は今後も続くと考えられます。
【インフレ率は上昇が続く】
2月23日に発表されたブラジルの2月半ばのインフレ率は、食品価格の上昇等を背景に前年比+10.84%と約12年ぶり
の水準まで上昇しています。ブラジル中銀が、前回1月の会合において、インフレ率が上昇する中でも市場予想に反し
利上げを見送ったことで、金融政策に対する政府の介入姿勢が強まったとの見方も浮上していました。もっとも、依然イ
ンフレ上昇に一服感が見られないことや、大統領が金融政策は独立性を保っていると主張していることから、3月2日に
行われる次回会合では追加の利上げを行う可能性もあります。
【図表】政策金利及びインフレ率の推移
(2008年1月1日~2016年2月24日、日次)
(%)
16
政策金利
インフレ率(前年同月比)
14
12
10
8
6
4
2
0
2008/1/1
2009/7/1
2011/1/1
2012/7/1
2014/1/1
出所:Bloomberg
※インフレ率は2016年1月まで。
2015/7/1
(年/月/日)
【今後の見通し】
レアルは国内外の様々な要因により神経質な展開が続くと見られます。相次ぐ格下げや政治的混乱に加え、景気低迷
にもかかわらずインフレ率が上昇していること、世界的なリスク回避の動きや商品価格の動向等、複数の要因に左右さ
れて変動することが考えられます。財政健全化策については、今回の格下げ後に財務相が財政健全化及び公的債務
の安定化に向けた取り組みについては変更しないとの立場を表明しており、先日発表された基礎的財政収支目標の修
正に関する審議等も含めて注目材料となります。また、ペトロブラスに関する汚職問題の進展により、さらに政治的混乱
が深まる可能性があることや、金融政策次第では為替や債券価格への影響が考えられることから、これらの動向にも
引き続き注意が必要です。
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
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