平成27年度 教育施設環境研究センター活動計画

<平成27年度 教育施設環境研究センター活動計画>
中期計画における研究計画(平成 22~27 年)に基づき、今年度、以下のことを重点的に取り組む。
(1)組織・体制の充実化
施設行政、建築計画、建築設計(建築家)
、建築環境、建築構造の専門家を客員、非常勤講師とし
て迎え、活用させていただく。
センター長
専任
客員
非常勤
宮本文 人
教 授 宮本 文人
准教授 斎尾 直子
助 教 立花 美緒
施設行政:
教 授 新保 幸一(文部科学省)
准教授 森
政之(文部科学省)
建築設計:
小泉 雅生(首都大学東京教授)
加茂紀和子(株式会社みかんぐみ代表取締役)
山本 圭介(東京電機大学教授)
建築設計・計画: 上野
武(千葉大学教授)
安森 亮雄(宇都宮大学准教授)
建築計画:
木下
勇(千葉大学教授)
建築環境:
伊香賀俊治(慶應義塾大学教授)
建築構造:
篠崎 洋三(大成建設プリンシパルエンジニア)
客員教授・准教授は、従来より文部科学省から着任して頂いているが、研究面、社会貢献面で有益
な助言、支援を頂くとともに、研究活動を連携して行ってきた。
非常勤講師は建築学の主要4分野から迎えており、強化した研究体制となっている。
非常勤講師には建築学専攻設計教育の指導協力と同時に、学生作品発表会等への参加・助言提供を
依頼し、大学院教育を充実する体制に貢献して頂く予定である。
本センターの教育施設環境に関する研究課題について連携・協同して研究活動を推進する等、客員
のセンター所員、非常勤講師の活用を図りたい。本センター主催のシンポジウム開催に向けて、企画
案の検討から実施に至るまで積極的に参画して頂き、より充実した企画内容を目指す。
(2)高等教育施設に関する研究
『先導的大学改革推進委託:今後の「大学像」の在り方に関する調査研究:校地・校舎研究』
(研
究代表者:本蔵副学長 当時)など、文部科学省から本学や本センターに委託された研究を中心
に、研究を継続してきた。中期計画期間においては、過去の研究を踏まえ、新しい展開を行ってき
ている。
1)大学キャンパスにおける先端性と空間構成・施設計画に関する研究(担当:宮本、斎尾、立花)
アメリカ、イギリス、ヨーロッパの一流大学キャンパスに訪問調査すると共に、資料を蓄積して
きた。これらの大学における施設管理も視座に置きながら、空間構成・配置・施設計画における先
端性を継続して探っていく予定である。
2)大学キャンパスの校舎棟における学生の居場所と機能構成計画(担当:宮本、立花)
近年、大学キャンパスは都心回帰が進み、高層の校舎が出現している。その中で、学生への教育
上の配慮や、少子化を背景とした大学の競争力の強化を図るため、私立大学を中心に談話や交流、
自学自習のためのスペースや食堂・図書館といった学生の滞留のための施設を充実させる事が重視
されており、様々な機能を複合させた校舎棟が建設され、機能構成は大きく変容している。
本研究では、講義室を有する校舎(以下校舎棟)を対象に、講義室の規模、形状、通路との関
係、断面構成から校舎の階数と機能の複合状況との関係、講義室階および地上階付近の学生の居場
所について把握している。
3)大学キャンパスの移転・撤退、大学と都市・地域との連携・協働に関する研究(担当:斎尾)
科学研究費研究・基盤研究(C)(平成 24〜26 年度)『大学・地域のサステイナブルな発展のた
めのキャンパスの移転・撤退の総合評価』を活用しておこなってきた研究。
近年、大都市圏においてキャンパスの都心回帰や自治体の大学誘致が活発化する一方で、地方都
市では撤退による人口減や地域のまちづくり衰退への影響は、立地する地域の都市計画課題として
捉えられる。本研究では、大学キャンパスの移転・撤退に関して、大学と自治体との連携や地域再
生の視点から継続的に評価を行っている。本研究の一環で行った首都圏撤退事例の詳細調査の成果
は、昨年度審査論文としてまとめた。今年度は、全国自治体への大学との連携に関するアンケート
調査結果を分析していく予定である。
4)
「東京工業大学キャンパス計画」への貢献
元センター長・坂本一成名誉教授が蔵前工業会館 TOKYO TECH FRONT を設計し、前センター長藍澤
宏名誉教授が SCMPWG(すずかけ台キャンパス計画 WG)に参加してきた。
現在、宮本センター長が、キャンパス整備計画室(室長:岡田理事・副学長)、田町キャンパス再
開発検討部会(主査:岡田理事・副学長)、すずかけ台キャンパス環境整備 WG(SCMPWG 主査:屋井
教授)に参加し、本学のキャンパス将来計画に取り組んでいる。キャンパス整備計画室では、キャン
パス計画検討班主査を務めている。昨年度は、斎尾准教授が、全学の大学教育改革、および、国際フ
ロンティア理工学教育プログラム関連の大学施設整備のための海外調査に参加している。
今後とも、
1)大学の発展を支える部局・組織と相互関連性を考慮した施設配置、
2)キャンパス景観、
3)地域との関係を築く施設環境計画やデザイン等について貢献したいと考えている。
(3)初等中等教育施設に関する研究
1)就学前、放課後児童施設の計画・整備に関する研究
(担当:宮本)
東京近郊の施設を対象に、訪問調査を行い、幼保連携施設(認定こども園など)について多様な運
営の状況、幼稚園児と保育園児のクラス構成、時間別保育状況を捉えながら、保育室の配置、昇降口
配置、平面構成等との相互関係の分析を行っている。一方で、全国に亘る幼保連携施設を対象に、論
文「幼保連携施設における多様な連携形態と保育室の配置」をまとめた。今年度継続して、論文をま
とめる予定である。
2)学校施設に関わる地域計画研究
①公立小中学校の統廃合整備と地域再生
(担当:斎尾)
これまで、我が国における明治期からの教育施設の史的展開研究に取り組み、今後の教育施設のあ
り方を追究してきた。また、義務教育施設である小中学校を対象に、1970 年以降の学校統廃合につい
て地域的状況、学校規模、通学圏、統廃合前後の施設形態について論文をまとめてきた。
昨年度は、農山村地域における学校統廃合と地域運営の継続性に関わる課題、廃校施設活用のため
の建築計画関連の地域アドバイザーとして参画した。今年度も継続していく予定である。
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②東日本大震災後の公立小中学校の復旧・復興、こどもの居場所づくり
(担当:斎尾)
科学研究費研究・基盤研究(A)
(平成 24~28 年度)
『連携と持続に着目した東日本大震災の農村復
興に関する総合的農村計画研究』を活用しておこなってきた研究。津波被災地域に立地する公立小中
学校・高等学校を対象に、被災後2年間の学校施設移動プロセスと仮設空間の課題について調査分析
し、論文としてまとめた。昨年度は、放課後のこども達の居場所づくりに関して実態調査をおこない
まとめたところである。今後も引き続き、地域再生と連動した復興のための計画課題・手法について
取り組んでいく予定である。
③超高層集合住宅建設による人口増加に伴う学校施設整備
(担当:宮本、立花)
2000 年以降、居住人口の都心回帰の施策もあり、東京都区部における超高層集合住宅の建設数が急
増している。一部の地域では人口増加も著しく、特に臨海部では児童数の増加が目立つ。超高層集合
住宅の建設に際して、計画時から竣工後まで区は様々な行政的対応を迫られる。特に公立小中学校に
おいては児童生徒を受け入れる義務があるため、施設不足が生じないように学区や学校施設の整備が
喫緊の課題である。
本研究では、東京都区部における超高層集合住宅が建設された区及び学区を対象に、区における人
口増加に伴い生じる学校施設整備への対応を都市計画系部署と教育委員会に分けて流れを整理し、児
童数増加への対応状況について年次変化をみながら学区変更と校舎整備について捉える予定である。
3)学校施設の設計計画研究
(担当:宮本、立花)
科学研究費研究・基盤研究(B)
(平成 21~25 年度)
『変革する時代における新世代学校施設推進の
課題と体系化に関する研究』により研究を行ってきた。今年度は、継続として位置づけ、以下の研究
を行う予定である。
① 諸外国の小学校における教室のクラスターと結合空間の構成
諸外国の初等教育において、欧米諸国を中心に生徒が自ら学ぶ教育が重視され、学級単位の一斉授
業のみならず、学級内を小群に分けた演習、プロジェクト形式の授業、チームティーチング等の多様
な取組が行われている。このような教育に対応し小学校建築では、グループルームや複数の普通教室
のまとまりであるクラスターといった学級とは異なる単位で行う教育を支える領域がみられる。これ
らの室やクラスターをつなぐ空間(以下結合空間)も同様に多様な教育を支える領域として、また日常
的な交流の場として位置付けられる。
本研究では諸外国の小学校建築を対象に室、クラスター、結合空間の種類及び、階層性と配列の関
係から小学校建築の構成を分析する予定である。
② 小学校の外部空間におけるアフォーダンスと行動場面からみた児童の自由行動と物理的環境
小学校は学習の場だけでなく、生活の一部として、安全な遊びの場が求められる。児童は外部空
間の場や物的要素を様々な遊びの中で活用している。遊び等の行動分析において行動場面やアフォ
ーダンスの概念が提案され、注目を集めてきたが、これらを統合した既往研究はみられない。
本研究では、小学校において児童が自由行動を行う校舎廻りの外部空間について、自由行動の規
制状況の把握と共に、アフォーダンスを基に物的要素との関係から自由行為を整理し、行動場面の
概念を基にして多様な自由行動が行われる場所の物理環境を分析する予定である。
③ 特別教室型中学校における移動動線と校舎平面計画
中学校を設計する際には、敷地条件との関係で校舎とグラウンドの配置を検討するとともに、生徒
の安全性に配慮した計画が求められる。また、校舎内部においては、各校の教育方針やカリキュラム
に合わせ、普通教室や特別教室等の各室の配置を行う必要がある。
本研究では、特別教室型中学校を対象に、正門、昇降口、運動場、職員室の関係から敷地内動線、
普通教室と特別教室の配置から校舎内動線、施設配置や校舎形状との関係を分析する予定である。
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④ 小中一貫教育校校舎における平面計画と教室配置
近年、小中一貫教育校は、小学校から中学校への学習や生活環境における不連続性を解消するため
増加している。従来の小中 9 年間 6・3 制に変わり、独自の教育システムとして新しい学年区分を定
めている学校もある。小学校と中学校の連続性を考慮しながら一体化するため、規模が大きくなるこ
ともあり、教育方針との兼合いの中で断面構成も含めた平面計画が必要がある。
本研究では全国の小中一貫教育校一体型校舎を対象に、教育システムとしての学年区分、校舎型と
施設規模の関係、校舎内における普通教室と特別教室の配置構成を分析する予定である。
4)サステイナビリィティを考慮した教育施設(エコスクールなど)に関する研究
(担当:センター専任教員、客員教員、非常勤講師)
平成 20 年度以降、文部科学省における環境を考慮した学校づくりの調査研究において、藍澤元セ
ンター長、舌津元客員教授、長坂前客員教授、非常勤講師の伊香賀教授が参加し、中心的な活動を担
ってきた。現在、それぞれの立場で、次のような研究に取り組んでいる。
① サステイナブル学校建築と環境負荷、環境性能評価(担当:非常勤 伊香賀)
非常勤講師の伊香賀教授が中心になり、建築環境工学分野において低炭素社会、省エネルギー環境
形成に関する研究を継続的に取り組んでいる。
② 環境を考慮した学校建築の計画・建設(担当:非常勤 小泉、加茂、山本)
非常勤講師の小泉氏、加茂氏、山本氏が中心になり、教育施設の各設計・計画現場において、木質
構造等を含めて、環境を考慮した取り組みを継続している。
(4)教育施設環境研究センター主催 学校建築シンポジウムの企画・実施
(センター所員)
学校建築シンポジウムは、学校建築や教育環境研究者、計画・実務者等を対象に、東工大にて、
これまで 13 回実施してきており、シンポジウム報告は、季刊「文教施設」に掲載している。今年度
も企画・実施予定である。
(5)国際会議への参加・発表による情報収集・情報提供の推進
(担当:宮本、斎尾)
教育施設環境研究センターは 20 数年来、経済協力開発機構(OECD)・Centre for Effective
Learning Environments(CELE:学校施設・学習環境センター)のメンバー(GEN:the Group of
National Experts)であり、今年度の関連国際会議に参加予定である。
(6)社会貢献:教育施設環境に関する計画・設計、指導、情報提供等の実施
(センター所員)
1)高等教育施設、初等中等教育施設等の、計画・設計、指導等
センター所員、非常勤講師が、個別に、教育施設環境の専門家として、また、建築家として、省
庁や地方自治体において、企画、計画・設計、指導、あるいは教育施設に関する政策アドバイザー
等を長年おこなってきている。学校建築等の設計プロポーザルに参加する、建築専門家として審査
会に参加する等、これらの実績は不定期ではあるが毎年総件数も多い。特に、計画・設計に関して
は、日本でも学校建築のモデルとして注目される有数の実績を残してきた。
昨年度かかわった作品としては、東京芸術大学学生寮アトリエ棟設計・監理(山本),フランス国
立極東学院設計・監理(加茂)
、板橋区立赤塚第二中学校、板橋第一小学校改築計画(長澤,基本計
画・計画指導)
、奈良市立都跡認定こども園・園庭改修基本計画(木下)
、等がある。
今後もこれらの活動を継続し、積極的に実践的な建築業務に関わっていく予定である。
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2)教育施設環境に関する調査研究
センター所員、非常勤講師が個別に、省庁・自治体・関連団体からの依頼により不定期ではある
が、調査研究活動をおこなってきている。今後も、教育施設環境向上を目指した指導や協力をおこ
なっていく予定である。
3)研修会の講師、シンポジウムでの講演等による教育施設環境に関する指導と情報提供
センター所員、非常勤講師が個別に、省庁・自治体・関連団体からの依頼により不定期ではある
が、研修会、講演会における講師をおこなってきている。今後も、教育施設環境向上を目指した指
導や協力をおこなっていく予定である。
(7)教育施設環境に関する情報の提供や研究成果等の情報公開
ホームページの活用を含め、年度計画の公開、相談窓口の運用、シンポジウムの開催案内、情報
入手・公開の活性化をおこなってきている。引き続き、双方向の情報交流や情報公開を心掛けてい
く予定である。
【外部資金の獲得状況(科学研究費研究)
】
1)科学研究費研究・基盤研究(A)
(平成 24~28 年度)
(共同研究者:斎尾)
『連携と持続に着目した東日本大震災の農村復興に関する総合的農村計画研究』
2)科学研究費研究・挑戦的萌芽(平成 26~28 年度)
(共同研究者:斎尾)
『シノワズリの逆輸入と地域アイデンティティ 中国上海・広州の水を活かした空間計画』
参考:平成 15~26 年度(2003~2014 年度)センター科学研究費助成の獲得状況
・基盤B(H13-15 年度)
『都市共生型-高機能大学キャンパスの再構築計画に関する研究』
(研究代表者 坂本、研究分担者 藍澤、宮本)9,500 千円
・基盤A(H14-16 年度)
『中山間地域における持続発展型農村経営の方法に関する研究』
(研究代表者 藍澤)45,370 千円
・萌芽(H16−18 年度)
『公立小・中学校施設における家庭・地域教育スペースの空間整備基準に関する
研究』
(研究代表者 藍澤、研究分担者 菅原)3,300 千円
・基盤B(H19−21 年度)
『義務教育施設整備の体系化にみる“少子社会対応型”施設配置計画』
(研究代表者 坂本、研究分担者 藍澤、篠野、宮本、菅原)18,590 千円
・若手B(H20−21 年度)
『小学校施設における空間需要からみた新教育空間の創出に関する研究』
(研究代表者 菅原)2,210 千円
・基盤B(H21-25 年度)
『変革する時代における新世代学校施設推進の課題と体系化に関する研究』
(研究代表者 宮本、研究分担者 藍澤、菅原)11,440 千円
・萌芽(H21−23 年度)
『農村計画における『脱・グリーンツーリズム型まちづくり』への展開に関する
研究(研究代表者 斎尾)3,440 千円
・若手B(H22-24 年度)
『小学校における教育力の展開に対応した教員スペース計画に関する研究』
(研究代表者 菅原)3,510 千円
・基盤C(H24-26 年度)
『大学・地域のサステイナブルな発展のためのキャンパスの移転・撤退の
総合評価』
(共同研究者:斎尾)5,460 千円
以上
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