ダイラタント流体のずり粘化メカニズムと負圧を伴う粘化領域 ( 仙台高専)永弘進一郎 (九大理)中西秀 (NBI)御手洗菜美子 【はじめに】片栗粉やコーンスターチと水を混ぜた濃厚な懸濁液はダイラタント流体 と呼ばれ、せん断応力がある値を超えると粘性が不連続に増加する激しいずり粘化 (shearthickening)を 起 こ す 。 我 々 は こ れ ま で に 、 ダ イ ラ タ ン ト 流 体 の 現 象 論 的 モ デルとして、ずり応力粘化を取り入れた流体力学を提案し、外からの一定せん断応力 に対して媒質が、粘化状態と流動状態を交互に繰り返す自励振動を起こすことを理論 的に予言した(ずり粘化振動)。さらに、片栗粉の懸濁液を同心円筒内に満たして内 側 の 円 筒 を 一 定 の ト ル ク で 回 転 さ せ る Taylor-Couette 流 れ の 実 験 を 行 っ た と こ ろ 、 確 か に 20Hz 程 度 の 振 動 が 発 生 す る こ と を 見 い だ し た [1] 。 【 ず り 粘 化 の メ カ ニ ズ ム 】 ず り 粘 化 の 機 構 に つ い て は 、 (i)粉 体 粒 子 の 接 触 摩 擦 に よ る ジ ャ ミ ン グ が 原 因 と す る 説 と 、(ii)粉 体 の レ イ ノ ル ズ 膨 張 に よ っ て 発 生 す る 間 隙 流 体の負圧を原因とする説が知られている。前者は、レオメータによる実験で系に加え た せ ん 断 応 力 に 比 例 す る 正 圧 が 観 測 さ れ る 事 実 [2]や 、 単 純 せ ん 断 流 の シ ミ ュ レ ー シ ョンにおいて、ずり粘化が生じるためには粒子間摩擦が必須であるという結果から支 持 さ れ る [3,4] 。 し か し 、 ず り 粘 化 振 動 に お い て 、 外 側 の 円 筒 の あ る 一 点 で 懸 濁 液 の 圧力を測定すると、間欠的に負圧と正圧が両方とも観測され、主に負圧の領域が支配 的 で あ る こ と を 我 々 は 見 い だ し た [5]。 現 象 論 モ デ ル に よ る シ ミ ュ レ ー シ ョ ン も 、 実 験とよく一致する結果を与える。これらの結果は、流体内において粘化領域は局在化 したバンド構造を形成し、正圧を伴う粘化バンドと、より支配的な負圧を伴う粘化バ ントが両方とも存在していることを示している。 以上から我々は、ダイラタント流体のずり粘化においては、ジャミングによる粘化 と間隙流体の負圧を原因とする粘化の2種類が共存して発生していると考えている。 この主張の根拠について、現象論モデルによる3次元シミュレーションと幾つかの実 験からをもとに詳しく報告する。 [1] S. Nagahiro, N. Mitarai and H. Nakanishi, Europhys. Lett. 104, 28002 (2013) [2] D. Lootens, H. van Damme, Y. H_emar, and P. H_ebraud, Phys. Rev. Lett. 95, 268302 (2005) [3] M. Otsuki and H. Hayakawa, Phys. Rev. E 83, 051301 (2011) [4] R. Seto, R. Mari, J. F. Morris and M. M. Denn, Phys. Rev. Lett. 111, 218301 (2013) [5] S. Nagahiro, N. Mitarai and H. Nakanishi, 投稿準備中 Copyright (C) ソフトマター研究会 All Rights Reserved.
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