メゾスコピック系の物理(物理総合) 大槻東巳 (協力:吉田順司, 2003年3月上智大学理学博士) 目次 1)メゾスコピック系とは 2)舞台となる2次元電子系 3)バリスティック系の物理 コンダクタンスの量子化 クーロン・ブロッケード 4)拡散系の物理 AB効果 普遍的なコンダクタンスの揺らぎ 量子カオス 2005/5/25,6/1 物性理論とは? 統計力学、量子力学に基づいて物質の性質を 説明するもの。 統計力学 マクロ系 (mm以上) 量子力学 ミクロ系 (nm以下) 半導体のメモリチップ 1cm2に100Mバイト(800Mビット) 10-5cm=0.1ミクロン 可視光の波長のオーダー 半導体集積回路 2005/5/25,6/1 半導体におけるムーアの経験則 集積度は18ヶ月で2倍 3年で大きさが半分 ムーアの法則 100000 10000 1チップ当たりの集積数 (単位:千個) 1000 100 真空管コンピュータ ENIAC 現代の マイクロ プロセッサー 10 半導体の処理速度 (単位:MPS) 1 0.1 0.01 70 75 80 85 年 2005/5/25,6/1 90 95 100 サブミクロン領域の物性物理が必要 Mesoscopic メゾスコピック系、ナノサイエンス 2005/5/25,6/1 メゾスコピック系の実現される系 2次元電子系; Si-MOS FET、GaAs/AlGaAsヘテロ接合などで実現される MOS FET: Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor 2005/5/25,6/1 実際のメゾスコピック系の例 1mm 0.65mm 2005/5/25,6/1 メゾスコピック系に現れる量子現象 長さがmmとは何を意味するか?(物理では、何に 比べて重い長いと言わなければいけない!) 典型的な長さのスケール 系の長さ L 弾性散乱長 e 位相緩和長 量子力学的な効果を見るには e, L 2005/5/25,6/1 メゾスコピック系の分類 バリスティック系 散乱が一度もなく電流が流れる ・コンダクタンスの量子化 ・クーロンブロッケード L 拡散領域 散乱が複数回起こる e ・A-B効果 ・コンダクタンスの普遍的な揺らぎ ・量子カオス(壁での散乱) L 2005/5/25,6/1 e 古典的には G:コンダクタンス, I/V W:サンプルの幅 2005/5/25,6/1 コンダクタンスの量子化 G=2e2/hの整数倍に量子化(h/e2 25kW) G:コンダクタンス W:サンプルの幅 2005/5/25,6/1 Van Wees 他;Phys. Rev. Lett. 60, 848–850 (1988) 2005/5/25,6/1 クーロンブロッケード 電子一個のトンネル現象, e2/2Cの静電エネルギー 端子 量子ドット 端子 EF EF eV eVg eV U. Meirav et al., Phys.Rev.Lett.65,771(1990) 2005/5/25,6/1 Aharonov-Bohm効果 電子波の干渉効果(電子は磁場ではなく、ベクトルポ テンシャルを感じる。) Φ0=h/eの周期で変化 R.A. Webb et al., Phys.Rev.Lett.54,2696(1985) 2005/5/25,6/1 AB効果 2 i dr A 1 H p eA V (r ) , (r , A) e (r ,0) 2m Note: dr A is single valued 2005/5/25,6/1 普遍的コンダクタンス揺らぎ コンダクタンス揺らぎの大きさは <G>に依存しないでe2/h程度である。 2005/5/25,6/1 磁気指紋 試料独特のパターン(再現性がある) G14,23 (B) G14,23 (B) G14,23 (B) G23,14 (B) 2005/5/25,6/1 カオスとは 初期状態の違いδx t秒後にはexp(at) δx 予測が不可能 量子系では? exp(at)δx δx 2005/5/25,6/1 量子カオス C.M. Marcus et al., Phys.Rev.Lett.69,506(1992) 2005/5/25,6/1 次回の予告 今日やった現象を大学3年生でもわかるように黒板 で説明。クーロンブロッケード,AB効果など。 今日やったpowerpointファイルは講義ノートのペー ジにおいてある(学科のページにあるのはちょっと 古いかも)。 www.ph.sophia.ac.jp/~tomi/kougi_note 2005/5/25,6/1
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