2-4 金属絶縁体転移

2-4 金属絶縁体転移
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物性物理の基本命題 (個人的見解)
• なぜ固体は存在するか?
1 モルの元素を集めたら,なぜ結晶が安定なのか
凝集エネルギーの問題
単純な系はだいたい理解できている
未知の結晶構造を予言
できない
• なぜ同じ結晶で金属と絶縁体があるのか?
様々な結晶の室温の抵抗率は,
10-6Ωcm から 1025Ωcm に及ぶ
通常(一電子近似が使える)物質は,
バンド理論とブロッホの定理で理解できる
• 物質はなぜ多様なのか
磁性,誘電性,伝導性など,
なぜ多様なのか
素励起と相転移の物理
一電子近似が成立しない
系は未解明
新物質の物性については,
ほぼ予測不可能
More is different
2
金属電子における相関
電子の波動性が強調された状態 ( 金属 ) と、電子の粒子性が強
調された状態 ( モット絶縁体 ) の間で生じる新現象がある
→ そのひとつが高温超伝導
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ハバード模型の平均場近似
もっとも簡単な平均場近似 (HartreeFock 近似 ) から求められる Hubbard
モデルの電子相図
強磁性 (Ferro) 、反強磁性
(Antiferro) 、常磁性 (Para) など多彩
な磁性を示す。
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動的平均場による金属絶縁体転移
Kotliar and Vollhardt
Physics Today 57, 53 (2004)
動的平均場近似と呼ばれる計算方法で計算された、無限次元のハバード模型でのモット転移。
有効質量の増大( Brinkman-Rice 描像 ) とインコヒーレント部分 (Hubbard バンド ) の分離
5
動的平均場での温度変化
Georges et al.,
Rev. Mod. Phys.
68 (1996) 13
温度を変えてゆくと ω=0 にコヒーレントピークが立ち上がってゆく。温度が高いと金属
か絶縁体か区別がつかない
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ホール係数 : キャリア濃度の指標
ホール係数 RH
Ey = RHBzjx
最も単純な場合は、
RH = 1/ne http://www.gxk.jp/elec/musen/1ama/H16/html/H1604B01_.html
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高温超伝導体のホール係数
内野倉、前田、寺崎 (1995)
モット絶縁体 x=0 (1/2 占有状態 ) に近づくとホール係数は x に反比例して増
大、つまりキャリア濃度が x=0 に向かってゼロになる
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電子相関効果による有効質量の増大
Sr1-xLaxTiO3
Phys. Rev. Lett. 70 (1993) 2126
ペロブスカイト酸化物 SrTiO3 と LaTiO3 の
混晶を調べる。前者はバンド絶縁体 (d 電子
ゼロ ) 、後者はモット絶縁体 (d 電子 1)
9
ホール係数は異常なし、比熱・磁化率は異常
Phys. Rev. Lett. 70 (1993) 2126
ホール係数の測定では、 Sr1-xLaxTiO3 で x とともに電子濃
度は順調に増加、しかし抵抗率は x=0.5 を超えると x ととも
に上がり始める
→ モット絶縁体に近づくにつれて有効質量が大きくなって
いる。比熱・磁化率でも確認
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イオン半径つき周期表
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~kanai/document/
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実験的に U/t を変える
Phys. Rev. Lett. 75 (1995) 3497
RTiO3 で R をすべて 3+ のランタニドイオンで作ると、イオン半径の違いから TiO6 八面体の傾きを
制御できバンド幅が変化する。その結果 U/t を実験的に変えて物性を調べられる
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金属絶縁体転移と気体液体転移
同一格子点に 2 つの電子が存在する確率を U の関数として見ると、一番
上のカーブは不連続に変化→ 1 次転移 相転移の分類では液体ー気体
転移と同じクラスに属する
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V2O3 金属絶縁体転移の典型
絶縁体の証拠
→ 抵抗率の対数が温度の
逆数に比例している
ρ∝ exp(Eg/kT)
Cr 置換によって、中間温度
領域で金属的になる
Phys. Rev. B22 (1980) 2626
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V2O3 の状態図
不純物の役目は不明だが、物
理的圧力と非常によい対応が
見られる。
絶縁体 (Insulator) と金属
(Metal) の間に臨界終点があ
ることに注意。ここを液体・気
体転移と比較する。
Phys. Rev. B7 (1973) 1920.
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金属絶縁体転移の臨界指数を測る
V2O3 の電気伝 導率の圧力変化
低圧側では電気伝導率が不連続に変
化するが、高圧側では伝導率の飛びが
なくなる。
http://rikanet2.jst.go.jp/contents/
cp0200a/contents/30202.html
Limelette et al.,
Science 302 (2003) 89
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臨界指数は気体ー液体転移と同じ
臨界終点の近くで圧力や温度を精
密に制御して伝導率を測る。
スケーリングによって求められた臨
界指数は気体ー液体転移のそれと
よく一致する
Limelette et al.,
Science 302 (2003) 89
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伝導率のスケーリング
電気抵抗率は T=0 まで測れな
いが、適当な方法で金属と絶縁
体を区別できる
Limelette et al.,
Science 302 (2003) 89
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まとめ
絶縁体への転移では伝導度がゼロになるが、キャ
リア数がゼロになる場合と有効質量が無限大に
なる場合が理論的に提唱されている。
実際の物質でも両方の場合がある。高温超伝導
はキャリア数がゼロになろうとしている。チタン酸
化物では有効質量が増大。
最近の理論的発展により、厳密な金属絶縁体転
移が計算できる理論モデルがでてきた。
それによれば、有限温度の金属絶縁体転移は、液
体ー気体転移と同類である。
現在は、金属絶縁体転移の臨界現象を実験に
よって検証できる段階に到達した。
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