8095 イワキ - 日本ベル投資研究所

(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
8095 イワキ
~医薬品・FC(ファインケミカル)など 4 事業分野で新市場の開拓をめざす~
2016 年 2 月 12 日
東証 1 部
ポイント
・今後 10 年間の中長期ビジョンと、第 1 フェーズの中期 3 カ年計画を公表した。2025 年
11 月期に売上高 1000 億円、ROIC(投下資本利益率)10%を目指すという意欲的な内容であ
る。今後 10 年の経営を担う岩城副社長をリーダーにその骨子を固め、実行に移しつつあ
る。第 1 フェーズでは、足元の業績を立て直し、次への布石をしようとしている。
・最大の課題は、化成品事業の構造改革である。海外生産の立ち上げに加えて、ライセン
ス生産品から自社製品への切り替えを本格化させた。この移行期の負担や海外拠点への先
行投資で化成品の赤字が拡大した。今後は採算の良い自社製品が次第に伸びてくるので、
2016 年 11 月期から業績の改善が見込め、来期には黒字転換してこよう。
・今期からセグメントを組み替えて、医薬品・FC(ファインケミカル)、HBC(ヘルス&ビュ
ーティケア)、化学品、食品の 4 つの事業分野を主力として、バランスの取れた経営を行
うことを目標とする。収益性という点では、医薬品原料に強みを有する。医薬品の原料で
はジェネリック(後発医薬品)の成長が期待できる。
・主力のジェネリック向け医薬品原料や外皮用の医薬品の需要は着実に拡大している。イ
ンバウンド(来日観光客)の影響で、ドラッグストア向け一般用医薬品やその原料も伸びて
いる。2016 年 4 月の薬価改定や 2017 年 4 月の消費税の影響、円安進行に伴う輸入原料高
があっても、全社的には化学品の収益好転が次第に寄与してこよう。
・今後の業績拡大については、1)ジェネリック医薬品の製品及び原料を伸ばす、2)メル
テックスの自社製品と海外の生産販売を伸ばす、3)健康食品(サプリメント)の表示改正
に伴う健康食品用の原料を拡大させる、4)一般用医薬品卸売事業の低収益性を改善させ
る、5)通販化粧品分野を伸ばすことなどがリード役となろう。
・まだスタートとしたばかりであるが、経常利益で 25 億円が見えてくると、ROE は 8%に
乗せてくる。そうなれば、当社の収益力は株式市場で着実に評価され、PBR も 1.0 倍に戻
してこよう。その力はあるので、企業価値の創造に向けて、強みを活かす新製品の開発、
不採算事業の改革など、今後の戦略的実行に期待したい。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
1
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
目 次
1.特色
医薬品、医薬品原料、化成品で製造機能を強化
2.強み
ジェネリック医薬品原料が最大の収益源
3.中期経営計画
4.当面の業績
10 年ビジョン Vision“i-111”で ROIC ベースの収益力向上を目指す
収益構造改革がスタート、2016 年 11 月期より好転
5.企業評価
収益力の向上には、もう一段の実行力が必要
企業レーティング C
株価(16 年 2 月 12 日) 173 円
PBR 0.34 倍
時価総額 59 億円 (34.1 百万株)
ROE 2.6%
PER 13.0 倍
配当利回り 3.5%
(百万円、円)
決算期
売上高
営業利益
経常利益
当期純利益
EPS
配当
2007.11
50505
277
553
146
6.1
6.0
2008.11
50012
21
72
-167
-7.0
6.0
2009.11
47947
300
87
-118
-4.9
6.0
2010.11
50412
494
635
371
15.5
6.0
2011.11
53797
1215
1316
1619
53.9
7.0
2012.11
51953
1126
1292
728
21.6
6.0
2013.11
52465
1007
1144
744
22.0
6.0
2014.11
54145
890
962
496
14.7
7.5
2015.11
55422
559
694
-143
-4.3
6.0
2016.11(予)
56000
850
900
450
13.3
6.0
2017.11(予)
58000
1000
1050
550
16.3
6.0
(15.11 ベース)
総資本 38040 百万円
純資産 17358 百万円
自己資本比率 45.6%
BPS 514.2 円
(注)ROE、PER、配当利回りは来期予想ベース。2011.11 期はメルテックス合併記念配 1 円、
2014.11 期は創業 100 周年記念配 1.5 円を含む。2010.11~2014.11 期の経常利益、
当期純利益は過年度修正ベース。
担当アナリスト
鈴木行生
(日本ベル投資研究所 主席アナリスト)
企業レーティングの定義:当該企業の、①経営者の経営力、②事業の成長力・持続力、③業績下方修正の
可能性、という点から定性評価している。A:良好である、B:一定の努力を要する、C:相当の改善を要す
る、D:極めて厳しい局面にある、という 4 段階で示す。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
2
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
1.特色
医薬品、医薬品原料、化成品で製造機能を強化
医薬品原料を得意とする
当社は医薬品、医薬品原料、化成品の製造・販売企業である。元々は薬種問屋(商社)か
らスタートして、医薬品の製造、化成品の製造へと展開してきた。
岩城修社長(3 代目)は、ビジネスを通して社会に貢献することを基本とし、お金のため
という利益第一主義ではなく、働くことは世のため人のため、お客様の喜びを目的とし、
そのお裾分けが利益であるという考え方で経営に臨んでいる。信条は、お客様の喜びが第
一義的であるという点にある。働く(ハタラク)とは、端(ハタ)を楽(ラク)にするこ
とであり、顧客の喜びが業績にはねかえってくると考えている。
事業内容と主な製品
事業分野 売上構成比 利益構成比
医薬品
33
〈32〉
9
〈7〉
事業内容
(%)
事業内構成比
一般用(OTC)医薬品の卸売
ドラッグストア向け一般用医薬品の製造販売
ジェネリック(後発)医療用医薬品の製造販売
動物用医薬品の卸売
55
25
20
医薬品原料
香粧品原料
31
〈31〉
90
〈71〉
ジェネリック医薬品等原料の製造・輸入・販売
化粧品等原料の製造・輸入・販売
80
20
化成品
13
〈15〉
-49
〈-7〉
電子部品用表面処理薬品の製造販売
医薬中間体、写真感光材等の製造販売
75
25
食品原料
機能性食品
16
〈15〉
31
〈23〉
天然調味料、乾燥野菜、乳製品等の輸入・販売
天然調味料の開発製造
健康食品向けサプリメント原料の販売
40
60
化粧品
通信販売
3
〈3〉
18
〈4〉
スキンケアなどの化粧品の通信販売
ー
その他
4
〈3〉
1
〈1〉
プリント配線板等の製造プラントの製造販売
医療機器の販売
ー
(注)2015年11月期ベース、利益構成はセグメント利益。〈 〉内は2014年11月期。
事業の中身を 2015 年 11 月期の売上内訳でみると、医薬品 33%、医薬品原料・香粧品原
料 31%、化成品 13%、食品原料・機能性食品 16%、化粧品通販・その他 7%という構成で
ある。医薬品では、岩城製薬が製造しているもの、ドラッグストアや薬局向けの卸売、動
物用医薬品の卸売が主なものである。なお、大手ビッグ 4 が 9 割を占める医療用医薬品の
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
3
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
卸に関しては、15 年以上前に撤退し今は手掛けていない。
原料では、製薬メーカー向けの医薬品原料、化粧品メーカー向けの香粧原料を製造、販
売し、ここが当社最大の収益源である。化成品は、電子部品などに使う表面処理薬品が主
で、そのほかに医薬中間体、プロ向けやレントゲン用の写真感光剤もある。食品原料では、
受託加工、乾燥野菜、天然調味料や、健康食品(サプリメント)向けの機能性食品原料な
どがある。
精密化学品、食品原料にも展開
当社は大正 3 年の創業で、2014 年 7 月に 100 周年を迎えた。薬種問屋からスタートとし
て、現在は 4 つの分野で事業を展開している。製造から卸、販売までを手掛け、また、原
料から製品まで作っているという点で幅広い。
創業者の岩城市太郎は 1914 年(大正 3 年)に、日本橋の薬種問屋で働いた後、23 歳で独
立した。以来、
「誠実一路」
「利は労して稼げ」をモットーに会社を発展させた。1931 年(昭
和 6 年)に岩城製薬所を設立し、製薬に参入した。そこで、マーキュロクロム(ヨードチ
ンキ)を日本で初めて製造した。
2 代目の岩城謙太郎は、製薬を学び、その後早稲田大学を出て、戦後はシベリアにしばら
く抑留され苦労した。市太郎が 1962 年(昭和 37 年)に亡くなった後、謙太郎が社長に就
任し、今のイワキの基盤作りに大きく貢献した。1963 年に、社名を岩城商店からイワキに
変え、東証 2 部に上場した。
当時、日本のさまざまな機器はメッキ性能がよくなかった。そこで、米国のマステン・
ライト社と合弁でジャパンメタルフィニッシングカンパニー(現メルテックス)を 1960 年
(昭和 35 年)に設立した。メルテックスはエレクトロニクスの成長に合わせて、1986 年に
今のジャスダックに上場した。その後 2011 年 4 月にイワキの 100%子会社となった。また、
2 代目の謙太郎は 1959 年に食品部門を開設し、インスタント食品の発展に対応して各種原
料を取り扱っていった。食品原料は、ポテトチップスの粉末など食品そのもので、添加物
は扱っていない。
4 本柱でバランス経営
岩城修社長(65 歳)は、
1973 年大学卒業と同時にイワキに入社し、
社員として一から活動、
その後マネジメントの中枢を担い、1994 年社長に就任した。
初代は、現社長が小学校 5 年生の時に亡くなったが、誠実であることに厳しく、謙虚で
あった。オーナーの態度は会社の風土に出るものである。2 代目は、上場を機に社名をカタ
カナのイワキに変え、事業の基盤を強化した。千葉薬専を出て、薬剤師の資格を取るとと
もに、早稲田大学の応用化学工業経営学科に入り直して、マネジメントも学んだ。薬種問
屋から医薬品の製造、電子部品用めっき薬品の製造に手を広げていったのである。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
4
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
3 代目は、現在社長になって 21 年目である。4 代目の慶太郎氏は現在 38 歳、本社取締役
でメルテックスの社長も務めていたが、2015 年 2 月に本社副社長に就任した。今年 1 月に
公表された中長期ビジョンは、岩城副社長が推進役となっている。
セグメント別業績
医薬品
医薬品原料
香粧品原料
化成品
食品原料
機能性食品
通販化粧品
その他
調整額
合計
2012.11
売上高 営業利益
16637
13
2013.11
売上高 営業利益
17145
127
2014.11
売上高 営業利益
17435
105
(百万円)
2015.11
売上高 営業利益
18303
101
14911
1023
16446
1070
17400
999
17793
1044
9005
156
7970
-68
8091
-94
7005
-565
7792
418
7762
365
8055
319
8985
354
3983
115
3619
95
3727
71
3954
224
-376
-600
-480
-582
-566
-511
-619
-599
51953
1126
52465
1007
54145
890
55422
559
岩城修社長の経営の基本観は、1 つの事業に偏らずに、東京タワーの脚のように 4 本の事
業を確固たるものに、バランスをとることにある。3 本脚では不安定で、将来は 5~6 つの
事業をコアとしたいと考えている。また、リスクをコントロールするために、1 つの事業分
野においても、特定の得意先に依存しすぎないようにしている。
社長になった時に、医療用医薬品の卸から撤退する決断をした。当時、この事業は年商
100 億円ほどあったが、赤字であった。この頃から業界では医薬品の卸の統廃合、再編が進
んでいった。当時 2 代目は代表権のない会長であったが、岩城社長は会長に相談せずに決
断した。2 代目が作り上げてきたものをやめるので、自ら判断するしかないと考えた。医療
用医薬品の卸からは 1994~1995 年に一気に手を引いたが、社員は一人も辞めさせなかった。
別の事業分野に移したのである。
2008 年リーマンショックの時は、メルテックスの事業のリストラが必要になった。それ
までメルテックスは比較的順調で、会社も無借金であった。しかし、家電、電子部品の不
況で、メルテックスの需要はピークの 60%水準まで落ちた。資金繰りも厳しくなってきたの
で、メルテックスの社長を本社から送り(現岩城副社長)、2008 年にメルテックスの工場を
2 つから 1 つへリストラし乗り切った。
また、セルフケア・ニュートリションと称して健康食品に力を入れてきた。このサプリ
メント原料では、三菱ウェルファーマがノンコアビジネスとして撤退したので、そのビジ
ネスを譲り受けた。元々、鹿児島県福山町の黒酢を三菱ウェルファーマが仕入れ、それを
当社が販売していた。この三菱ウェルファーマの事業を当社が譲り受けた。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
5
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
食品加工品では、米国から乾燥ポテト、オニオン、粉末ポテトなどを輸入するほか、カ
ップ麺用のスープや固形かやくを取り扱っている。日本では遺伝子組み換え(GMO)につい
て消費者が慎重である。よって、ポテトでもノン GMO が求められ、残留農薬についても関
心が高いので、品質についてよくチェックする必要がある。
当社の特色は、①4 つの事業分野を有すること、②子会社に製造部門をもつこと、③売上
高の約 4 割は自社で製造をコントロールしていることにある。いわば商社がメーカー機能
をもっている。また、医薬品の取扱いについての社歴は長く、信頼できる体制を築いてい
る。取引においては、代理店を通すのではなく、直接取引している原料が多い。輸出機能
も充実しており、メーカー機能をもっていることから品質を十分保証することができる。
検査(インスペクション)についても高い精度を有している。
不祥事への対応
昨年、北海道にある動物用医薬品の販売会社であるホクヤク(100%子会社)で、経理業
務等を担当していた取締役による金銭着服の不正が発覚した。10 年以上にわたる不正で、
同社の被害総額は 126 百万円であった。
子会社での不正が続いた要因は、主要な経理業務を実質的に一人で担っており、銀行が
発行する残高証明書等の偽造を行い、その写しを監査等にも提出して発覚を逃れていたこ
とによる。個人的遊行に使用したものとみられるが、管理担当の役員による個人的不正を
許したという点で、内部統制上の不備が問題となった。
決算書類の過年度訂正、調査委員会による実態の究明、再発防止策の実施、経営責任の
明確化、元子会社役員の法的措置がなされた。小さい子会社において悪意を持つ責任者が
起こした不祥事であるが、本来なら十分防げるはずの事案である。内部統制上の甘さは反
省すべきであるが、対策を検討済みである。
不正に関する再発防止については手を打っている。グループ会社の資金管理については
詳細な確認を行った。今後については、本社で一体的な管理を進めてく。内部統制のあり
方については、人材の制約がある中で、見直しを進めている。海外拠点については、日本
人による確認ができるような仕組みに強化していく。監査法人とのコミュニケーションに
ついても改善を図っていく方向である。
コーポレートガバナンスにおける社外取締役
コーポレートガバナンスの向上では、2015 年 11 月期から社外取締役をまず 1 名入れた。
越智氏は事業会社出身で IR の経験が豊富である。2015 年 6 月から始まった新しいコーポレ
ートガバナンス・コードへの対応として、2016 年 2 月の株主総会で、社外取締役をもう 1
名選任する予定である。候補の川野氏は金融機関出身で、事業会社の役員を経て現在その
会社の副会長を務めている。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
6
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
2.強み
ジェネリック医薬品原料が最大の収益源
ジェネリック原料に強く、ジェネリック医薬品では皮膚科用塗り薬でトップクラス
業界での地位を見ると、医薬品の原料、健康食品の原料、外皮用剤(医家向けの皮膚用
ジェネリック医薬品)などで一定の地位を有し、収益性を発揮している。また、化成品の
表面処理薬品では業界トップのものがあり、ここでも強みを有している。
医薬品卸の大手は、メディパルホールディングス、アルフレッサ、東邦ホールディング
ス、スズケンである。岩城製薬の製品はこれら大手の 4 社にも販売している。
岩城製薬は創業 84 年、年商 90 億円規模である。医療用医薬品の中でも、ジェネリック
(後発医薬品)を作っている。同時に、医薬品の原料も生産している。ジェネリックでは
皮膚科用の塗り薬でトップクラスである。また、医薬品の原料では大手製薬メーカー向け
やジェネリックメーカー向けの原料を 30 品目ほど手がけており、ここでは安定した力を有
している。
医薬品の卸は、かつては問屋機能に意味があり、それなりの力を発揮してきたが、流通
合理化の中で、採算性は低下してきた。物流コストが合わなくなってきたのである。元々、
自社の物流機能をもっていたが、これは縮小整理した。一般用医薬品の卸も収益性は低く、
この分野では自社企画品のウエイトを上げようと力を入れている。OTC(店頭で販売する一
般用医薬品)の販売は赤字であるが、その OTC メーカーに原料を販売している。その意味
において結びつきは強い。当社のバリューチェーンでみると、原料、卸、販売にはシナジ
ーがあると、岩城社長は判断している。
食品は大半が輸入品である。トマトパウダー、オニオン、ポテトパウダーなど多様であ
る。ボーエン化成(株式の持分比率 36.7%)で生産しているカップラーメンの粉末スープ
もここに属しているが、そのウエイトは高くない。また、機能性食品に力を入れており、
ここがどこまで戦えるかがポイントである。
グループ経営を展開
2014 年 7 月に創業 100 周年を迎えた。次の 100 年も輝く会社であるために、規模ではな
く不易流行を軸としている。当社としては変えてはいけないもの、時代に合わせて変えて
いくべきものを実践していく。顧客に役立つことを中心に、価格競争ではないビジネスを
追求する考えだ。
グループ企業は数多くあるが、商社としてのイワキ、岩城製薬、メルテックスの 3 社を
軸に事業を展開しており、各社のマネジメントはかなり独自性を持っている。採用も各社
で行っており、役員も各社で輩出している。全体のマネジメントは、各社のトップが入っ
た取締役会で実行されており、その中では岩城製薬が業績のリード役に立っている。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
7
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
主要 3 社の構図
2015 年 11 月期の連結の売上高が約 554 億円、
イワキ単体の売上高が 441 億円であるから、
その差が 113 億円ほどある。イワキ単体は商社としての販売機能を担っている、この本体
を通さず、独自に販売を行っているのはメルテックスである。よって、化成品の主力であ
るメルテックスは独立している。それ以外では、化粧品や健康食品の通販を行っているア
プロスも独立している。アプロス(年商 19 億円)は中堅の通販会社で、一定の利益(営業利
益 2 億円)を出している。
主要会社別にみると、岩城製薬がジェネリック医薬品とその原料で最も稼いでおり、商
社であるイワキ単体の収益性は低い。メルテックス関連事業は 3 期連続営業赤字であり、
いかに黒字化するかが課題となっている。
主要グループ企業の内容
イワキ
(商社)
年商440億円
医療用医薬品、一般用医薬品
医薬品原料、香粧品原料、食品原料
サプリメント原料
100%子会社
100%子会社
岩城製薬
メルテックス
(医薬品メーカー)
(化成品メーカー)
年商90億円
年商50億円
ジェネリック医薬品
医薬品原料
香粧品原料
表面処理薬品
岩城製薬が順調
2015 年 11 月期については、岩城製薬の業績拡大が寄与した一方、化成品のメルテックス
の業績が大きく落ち込んだ。商社としてのイワキ単体の業績の水準は低いが増益であった。
主要子会社をみると、岩城製薬は売上高 90 億円、営業利益約 6 億円、メルテックス個別は
売上高 50 億円、営業赤字約 4 億円というレベルである。商社としてイワキ単体は売上高 441
億円、営業利益 3.2 億円というところにある。
①岩城製薬では、得意の皮膚用の自社製品が MR によるマーケティング効果もあって伸び
ている。医薬品原料では、インドのグレンマーク社と連携して数年がかりで拡大を図る。
岩城製薬は蒲田と静岡に工場を有するが、蒲田では医薬品(皮膚外皮用など)、静岡では医
薬品原料を生産している。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
8
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
岩城製薬は、医薬品と原料の売上比率が従来 5:5 であったが、最近はこの比率が 6:4 と、
医薬品の比率が上がってきている。ジェネリック医薬品の自社製品が好調なことによる。
香粧品原料も利益は出ている。
岩城製薬の中で作っている化学品は、フィルム向け染料中間体など、いずれも納入先の
需要が低迷しており厳しくなっている。もとの有機原料をベースに周辺多角化を進めてき
たが、これからもこうしたパターンで新しい分野を探していく方向だ。
②メルテックスのタイの工場は、2013 年 9 月にスタートし、2014 年の 5 月から本格稼働
に入っている。日本と同じ品質であると確認され、日系電子部品メーカーの現地工場に納
入できるようになりつつある。今後黒字にもっていけるかどうかがポイントである。
また、メルテックスは導入品から自社品への切り替えを進めている。これが軌道乗れば、
いずれターンアラウンドしてこよう。海外企業からの導入品は市場が国内に限られていた
が、これからは海外にも進出していけるようになった。
③イワキ(商社)は、医薬品原料、化粧品原料、サプリメント原料を主力とする。医薬
品原料ではジェネリック原料の法規制が厳しいので、品質保証という点で当社に有利に働
こう。化粧品原料では大手の化粧品メーカー向けにノンケミカルの原料が伸びている。サ
プリメントの原料では、自社品のくろ酢や韓国のオスコッテク社からの OEM 原料など、さ
まざまなものを手掛けている。
いずれも海外からの輸入品が多いので、円安の影響も受け、医薬品原料の収益性は下が
っている。医療用医薬品では複数社購買が増えている。ジェネリック原料は伸びているが、
一般用医薬品はドラッグストア向けが多いので、ここのプライスは厳しい。
イワキは医薬品原料のサプライヤーとして、インドを開拓している。ジェネリック原料
として中国より品質の良いものが安く入る可能性がある。ポイントは、①品質、②安定供
給、③価格である。当社の目利き力で、原料を入れて、岩城製薬で良い原料に仕上げて販
売できれば、他社に対して差別化できよう。
電子部品の受動部品向け表面処理薬品で業界トップ
表面処理の薬品には、洗浄、脱脂、活性化、エッチング、化学研磨、めっき、剥離など、
それぞれのプロセス毎に異なったものが用いられ、狭い意味でのめっきはその 1 つにすぎ
ない。また、表面処理には、きれいにする、錆びなくする、磨り減るのを防ぐ、電気特性
を変える、機械特性を変えるなどの機能があり、とりわけ電気特性が重視される。
当社は電子部品向け表面処理薬品において業界トップクラス、シェア 25%を有する。2
位は石原ケミカル(コード 4462)
、3 位は日本高純度化学(コード 4973)である。電子部品
の用途別では、受動部品(チップコンデンサ、チップ抵抗など)でトップ、コネクターで 5
位、リードフレームで 5 位、という地位にある。とりわけ、錫めっきに強く、電子部品売
上の 7 割が錫関連である。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
9
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
従来は、ローム&ハース、クックソン・エレクトロニクスという 2 社の外資系企業と提
携関係を結び、ライセンス製品をベースとしながら事業を展開してきた。現在は自社商品
の強みを生かし、汎用よりは高付加価値化、ニッチよりはフルラインを目指している。ロ
ーム&ハースの導入品(ライセンス生産)からは撤退し、自社開発力を一段と高めている。
また、企業単位で競合状況をみれば、DOW、ATOTECH が PWB で直接競合しており、海外展
開では JCU(コード 4975)が先行している。電子部品では石原ケミカルとぶつかっており、
こことの差をいかに広げていくかが問われている。
表面処理薬品の輸出は、かつての円高局面で、ユーザーである電子部品メーカーが海外
シフトしたため、その対応が問われた。ドル建て輸出は 10%もなかったが、円建てでも値
引きは要請されたので、数量は確保できても利益が出なくなった。
技術優位性はあるので、台湾、韓国よりもいい品質のものは提供できるが、コスト面で
は海外現地生産を急ぐ必要があった。但し、世界的にもトップクラスの商品を海外に持ち
出すと、その生産ノウハウが流出する可能性があるので、そこは守っていく。基本は LCO
(ローカリー・コンプリーテッド・オペレーション)、つまり現地ビジネスは現地の人材、
資源で対応しようという考えである。
3.中期経営計画
10 年ビジョン Vision“i-111”で ROIC ベースの収益力向上を目指す
10 年の中長期ビジョンを策定
今年 1 月に、
10 年のビジョンと 3 カ年中期経営計画を策定した。中長期ビジョン“i-111”
は、創業 111 周年に当たる 2025 年 11 月期に、売上高 1000 億円以上、№1 マーケットシェ
ア、ROIC 10 %以上を達成しようというものである。それぞれの1をとって 111 とした。i
はイワキの頭文字であると同時に 、4 つの基本戦略(Intelligent、International、
Innovative、Investment)の i である。
ここで №1 ビジネスを目指すという意味は、新規参入のスタンスである。既存商品で№1
という意味ではなく、これから製品やサービスを見直し、事業ポートフォリオを組み替え
ていく時に、ニッチな分野でも何らかの意味でトップを狙えるような分野に絞って参入し、
しっかり稼ぐ体制を作ろうということである。
中長期ビジョンは 3 つのフェーズから成り、2015 年 11 月期の売上高 554 億円、ROIC 1.7 %
に対して、3 年後の 2018 年 11 月期に売上高 600 億円、ROIC 4.0%、その 4 年後の 2022 年
11 月期に同 750 億円、同 7.0%、最後の 3 年で同 1000 億円、同 10.0%を目指すという内容
である。
ROIC(投下資本利益率)は税引後営業利益/(棚卸資産+売掛債権-買掛債権+固定資産)
で定義しており、まさに事業に対する投下資本に対していくらの税引後営業利益が上がっ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
10
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
ているかをみるものである。
2015 年 11 月期でみると、投下資本は期末ベースで 209 億円である。今後どの程度の投資
とそれに伴う運転資本が必要かに依存するが、現時点でみれば ROIC 4%は税引後営業利益
8.4 億円、7%で 14.6 億円、10%で 20.9 億円に相当する。それを ROE でみれば、各々4.9% 、
8.4 %、12.1%に相当する水準である。
現在の自己資本 172 億円に対して、ROE 8%というのは経常利益で 21 億円前後に相当す
る。今後自己資本が積み上がっていくので、自己資本 200 億円に対して、ROE10%とすれば、
経常利益で 25 億円を目指す必要がある。
イワキグループの中長期ビジョン
~ Vision “i-111” ~
*創業111年の2025年11月期に向けたビジョン
1.4つの基本理念~4つのi
・Intelligent 課題に対して付加価値のある解決策の提供
・Innovative 革新的なビジネスモデルを通してナンバーワン事業の創出
・Internatinal 海外市場への展開
・Investment 投下資本効率を意識した経営資源の配分・投入
2.定量的ターゲット(KPI)
・売上高1000億円以上、No.1マーケットシェア、ROIC10%以上
・売上成長年平均6%以上
・ROICの向上(在庫回転率の向上、債権債務回転率の向上、遊休資産の売却)
1)第1フェーズ(中期3カ年計画) 2018年11月期 売上高600億円、ROIC4.0%
2)第2フェーズ
2022年11月期 売上高750億円、ROIC7.0%
3)第3フェーズ 2025年11月期 売上高1000億円、ROIC10.0%
3.定性的ターゲット
・100年超企業としての企業文化、価値観の共有
・1つのチーム
・カスタマー1st
4.基本戦略
①「策揃え」企業
②ナンバーワン製品・事業
③海外市場展開
④売上成長率、ROICをKPIとして、資本効率の高い事業ポートフォリオの再構築
(注)会社公表資料よりアナリスト作成
第1フェーズの中期 3 カ年計画では、まずターンアラウンドを図る
4 つの i に対しては、1)Intelligence : 「策揃え」企業、2)International:海外市場
への事業展開、3)Innovative:ナンバーワン製品・事業、4)Investment:資本効率を意
識した事業運営をベースに基本戦略を具体化する。
「策揃え」企業とは、品揃えと客揃えのマッチングをするだけでなく、顧客の課題を解
決することで、価値を提供することを意味する。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
11
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
ナンバーワン製品・事業とは、マーケットの成長性が高く、相対的シェアも高い領域に
おいてニッチトップを目指す。
海外展開では、メルテックスのアジア拠点やイワキの海外拠点を活かして、グループと
しての販売や製造を目指す。
資本効率では、ROIC を重視して、これを KPI として 4 つのセグメント、25 のビジネスユ
ニットに用いていく。ROIC のツリー展開でビジネスも効率と収益性を高めていく。
3ヵ年の中期経営計画
*2018年11月期で売上高600億円、営業利益10億円、ROIC4%以上
1.事業セグメントの再構成
・医薬・FC(ファインケミカル)事業・・・イワキ、岩城製薬
・HBC(ヘルス&ビューティケア)事業・・・イワキ、アプロス
・化学品事業・・・メルテックス
・食品事業・・・イワキ、ボーエン化成
2.医薬・FC事業
・ジェネリック医薬品市場の拡大
・原料選定から最終製品までの策揃えを提供
・静岡工場を軸に、欧米の大手製薬会社から医薬品原料・中間体の安定受注を拡大
3.HBC事業
・インバウンド需要、機能性表示食品の拡大
・日本ブランド製品の海外市場開拓
・アプロスの「シルキーカバーオイル」の拡販
4.化学品事業
・アジアの電子部品市場の拡大
・ICチップ抵抗向けスズめっき(メルプレートSNシリーズ)、半導体向け無電解めっき(UBNプロセス)で、
世界No.1の確保、プリント配線板向け硫酸銅めっき(ルーセントシリーズ)の拡販
・9つの海外拠点を通じた迅速な対応
5.食品事業
・食の安全性、輸入原料高への対応
・ボーエン化成による国産、高付加価値原料の受託加工の強化
・マレーシア、インドネシア、中近東へのハラル原料に特化したマーケティング
6.事業基盤の再整備
・グループの経営管理機能の強化
・人財の育成プログラムと柔軟なワークスタイルの整備
(注)会社公表資料よりアナリスト作成
一方で、100 年企業としての文化や価値観を共有して、1 つのチームとしての一体感を持
ち、カスタマー1st を貫くなど、失ってはならないものは大事にしていく。この 3 つの1
11も大事にするという意味も込めている。
バリューチェーンに沿ってマネジメント組織を再編
2016 年 11 月期より新しい事業セグメントに変更した。2015 年 12 月に従来の事業部を見
直して、新しい 4 事業部を設置したので、セグメントもマネジメントアプローチに従って、
新しい 4 つのセグメントとなる。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
12
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
1 つ目は、医薬・FC 事業部である。ここには医療用医薬品、医薬品用原料が入る。その
他にあった医療機器の販売もここに入る。2 つ目は、HBC 事業部である。HBC はヘルス&ビ
ューティケアの略で、ここには一般用医薬品の卸売、香粧品原料、機能性食品が入る。従
来、その他にあった化粧品・健康食品の通販事業部も入る。3 つ目は、化学品事業部で、こ
こは従来の化成品と変わらないが、その他にあったプリント配線板等の製造プラントも入
る。4 つ目は、食品事業部である。従来の食品原料がそのまま残る。
この再編は事業のバリューチェーンを重視して、それに従って事業部を組み直したもの
である。開発、仕入れ、製造、販売までの流れに沿って事業を見直し、事業担当の責任者
も明確にした。
化学品事業部はすべてがメルテックスである。従来イワキ本体にあった表面処理薬品の
原料等の販売も、今年度からメルテックスに移した。外販もあるが原料販売の大半はメル
テックス向けであったので、効率はよくなる。
セグメント別中期計画
新セグメント
(億円)
2015.11 2016.11(計画) 2018.11(計画)
医薬・FC事業
196
200
215
HBC事業
226
240
255
食品事業
38
40
50
化学品事業
73
65
80
売上高合計
554
560
600
営業利益
5.6
8.5
12.5
ROIC
1.7
2.8
4.0
3 カ年の中期計画ではセグメントを見直し、業界別バリューチェーンをより明確化した。
医薬・FC(ファインケミカル)事業では、ジェネリックの医薬品と原料で 2020 年以降の成
長も視野に拡大を図る。HBC(ヘルス&ビューティケア)事業では、香粧品原料、機能性食
品原料、通販化粧品事業をベースに事業の拡大を図る。ベトナムからアジアへの広がりも
視野にある。食品事業は 3 割が海外からの輸入原料であるが、これからは輸出も検討する。
ハラル対応で特色を出すことも狙っている。
化学品は 3 回目の創業として、新しい展開を目指す。1 回目は輸入販売、2 回目はライセ
ンス生産、そして今回は自社製品のグローバル展開である。自社製品は粗利が高くとれる
ので、現在の新製品がマーケティングされていけば、収益性は大きく改善してこよう。
静岡工場では、医薬品、香粧品の原料を生産しているか、海外医薬品メーカーの基準を
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
13
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
クリアして、欧米にもっと輸出を拡大する方針である。原料の品質は十分クリアしている
ので、狭義の品質基準ではなく、それを生産する工場の安全性や環境について十分配慮し
た体制を作ろうというものであり、その対応はすぐにできることになろう。
収益構造の改革が問われる
経営方針としては、事業基盤の強化と収益構造の改革がテーマである。1 つは、事業の 4
本の柱を太くしていくことである。政府はジェネリックの使用促進に向けて、ジェネリッ
クの数量シェアを 80%以上にするという目標を設定している。それに対応するジェネリック
の強化では、医薬品も原料も伸ばす。
医薬品原料の中で、ジェネリック(後発品)の原料を伸ばしていく。医薬品の原料の仕
入れでは、30%は岩城製薬で、その他の国内 60%、海外 10%という構成である。品質保証
の重要性が問われるので、中国、インドから直接輸入して安く販売するというわけにはい
かない。必ず品質の確認と保証が必要になる。そこに当社の役割が活きるわけである。ま
た、医薬品原料は海外販路の拡大も目指し、海外からの輸入にも岩城製薬を活かす。
2 つは、利益面で OTC の卸の収益性を黒字化にもっていくことである。その上で、それ以
外の分野の構成を高めていく。一般用(OTC)はドラッグストアの安売りで単価が下がって
いるが、今のところやめられない。OTC 用の原料で、当社は製薬メーカーに一定の強みをも
っており、製薬メーカーに原料を供給する一方で、それらの企業の OTC 医薬品の卸機能を
担っている。サプライチェーンの川下に OTC の卸を持つメリットが差別化要因となってい
るからである。香粧品原料では、アジア地域への拡大で強化を図る。サプリメント原料は
伸びが見込める。機能性食品は健康食品メーカーへの拡販に努める。
3 つ目は、化成品の収益性改善である。化成品は、以前に比べて国内での成長性は低くな
っている。電子部品メーカーは次第に集約されていく方向にあり、海外展開が活発である。
エンソンとの独占販売ライセンスが切れたが、エンソン自身が他社に買収されていく中で、
新しいものは出ていなかった。メルテックスの自社開発がどこまで通用するかがポイント
である。アジアに出ていく必要があり、その体制を整えている。
ジェネリック原料がリード
イワキというと、医薬品の卸が中心の会社というイメージがあるが、これは全体の一部
にすぎず、医薬品原料や化学品の製造に強みをもつメーカー色が強い。
イワキにとっての成長が期待できる分野はいくつかある。1 つはジェネリック医薬品であ
る。医療費の抑制に向けて、国はジェネリック医薬品の使用率を現在の 50%台から 2020 年
には 80%に高めることを政策目標として挙げており、そのインセンティブ(加算制度)を
付けている。
そこでのポイントは、ジェネリック医薬品原料の信頼性保証である。米国ではインスペ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
14
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
クション(検査)を国がやっているが、日本は民間に任されている。日本でもインスペク
ションが必要となったので、その役割をきちんと果たせるかどうかが重要である。当社は
岩城製薬がその経験を十分積んでいるので問題ない。
また、岩城製薬は、ジェネリック医薬品用の原料を作っている。ジェネリックは薬価が
低いので、原料も安いものが求められる。低価格、高品質をいかに実現していくかが問わ
れる。当社は 30 種の原薬を生産しており、さらに原料の拡充を図っている。
また、当社は医療用医薬品の卸ルートも持っているので、ジェネリック医薬品の拡販に
も力を入れている。当社は皮膚病用のジェネリック医薬品外皮用剤では、薬価収載の品目
数でトップクラスである。原料では、岩城製薬を活かして、ジェネリック原料の強化に努
めている。原料の輸入についても、品質保証の確かさを軸に販路を広げている。スイッチ
OTC の原料についても、痛み止めや抗アレルギー剤など、比較的難しいものに注力している。
一般用医薬品の卸では、自社企画品の製品化に力を入れており、首都圏ドラッグストア
向けに加えて、西日本へも事業領域の拡大に力を入れている。
子会社に動物用の薬品を扱っている販売会社が 2 社あるが、千葉にある販社(販売会社)
は豚や鶏用を扱っており、北海道にあるもう 1 社は馬や牛用の薬品を扱っており、内容が
異なるので、販社を統合する必要はない。
動物用医薬品の今後の展開は厳しい。北海道と千葉に拠点を有するが、牛などの大型動
物用、鶏などの小型動物用医薬品メーカーが業界再編の中で減少しており、その医薬品の
取り扱いも今後減る可能性がある。TPP の影響を受ける可能性もある。外資が強い分野であ
るので慎重にみておく必要がある。
岩城製薬における設備投資の推進
ジェネリック医薬品の成長は今後とも期待できる。岩城製薬はジェネリック外皮用剤で
は 80 品目を取りそろえ、品揃え№1と高い評価を受けている。大田区の蒲田工場で増産体
制を整えている。軟膏、クリーム、ローション剤などの仕込み、チューブ、充填工程に投
資し、能力を増やしていく。
ジェネリック医薬品の利用は日本全体で数量ベース約 50%であるが、
外皮用剤関連は 20%
弱とまだ低く、金額ベースでも 1 割程度とみられる。今のペースでいくと、当社のジェネ
リックも毎年 20%の能力アップが必要であり、仕込みと充填のバランスを図っていくことが
重要である。
また、岩城製薬は、化粧品分野でも新しい展開を見せている。資生堂の医療機関向け化
粧品(
「NAVISION」
、
「NAVISION DR」
)の発売元として、卸を通さず、医療機関(病院、クリ
ニック)に販売している。当社は皮膚の薬を得意としており、すでにナビジョンの専任営
業において、1300 の医療機関に販売している。ここでは、国内シェア№1 である。
ナビジョンは資生堂とコラボ(協働)している。医療機関でしか販売できない。医療行
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
15
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
為として皮膚をきれいにしていく。医療用については、当社が代理店となっている。市場
は狭いが、信用が大事なので着実に伸ばしていく方向だ。
さらに、静岡県の掛川にある静岡工場のジェネリック医薬品向け原薬の強化も逐次行っ
ている。また、2020 年に特許切れとなる医薬品のジェネリック原薬の選定も行っており、
将来は棟の建設も必要になろう。さらに、輸入原料の活用による競争力の強化も図る方向
で、原薬の商社機能にも一段と力を入れていく。
ジェネリック用の輸入原料については、大型新薬のパテント切れが相次ぐので、その準
備が必要である。5 年で 23 品目のパテントが切れる。そのため、ジェネリック薬品にとっ
てはチャンスである。当社としても、岩城製薬で生産できるものについて、優先順位をつ
けていく。それ以外については、海外メーカーで生産される原料を当社が輸入するという
連携をいち早く強化していく方針である。
メルテックスの新製品投入
分野
半導体
用途
品目数
硫酸銅めっき添加剤
2
硫酸銅めっき添加剤ルーセントカッパーシリーズ
脱脂剤、ダイレクトレーザー用黒化処理剤
微細配線用銅表面粗化剤、電気ニッケル液
5
3
3
すずめっき液
電気金めっきアウルナシリーズ
5
6
プリント配線基板
電子部品
装飾・一般
銀めっき液、クロムめっきミスト防止剤
計
(注)2015年から投入開始、26品目中既に18品目は販売中
2
26
化成品はライセンス製品から自社技術製品へのシフト
2015 年 3 月にローム&ハースとのライセンスが切れた。かなり前から手を打っていたの
で、ライセンスがなくても主力ユーザーに対応できる自社製品が販売できる。1 年で 26 品
目の新製品を出す予定で、既に 18 品目は販売している。錫めっき液のメルプレート SN は
世界№1 であり、硫酸銅めっき添加剤も世界№1 が狙える。ニッチでも世界トップクラスの
商品で攻めていく方針である。
化成品の 26 品目は、ローム&ハースとの契約切れに備えた新製品である。内外の化学メ
ーカーと新たに提携した製品も多いが、粗利率はこれまでの導入品より圧倒的に高い。2 年
後にこれらの新製品がユーザーに受け入れられていけば、化成品の収益力はかなり改善し
てこよう。
海外ライセンス品を自社主導の製品に切り替えているが、製品の品質に問題はない。し
かし、メッキ材料なので継続性の観点から一部の顧客を失う可能性もある。一方で、テリ
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
16
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
トリーの制約がなくなるので、海外でも自由に販売できる。ロイヤリティがなくなる分だ
け採算は改善する。
メルテックスはもともと米国からの輸入販売から事業をスタートさせ、これまではライ
センス生産をしながら業務提携先であるローム&ハース社のライセンス製品を約 5 割、ク
ックソン・エレクトロニクス社のライセンス製品を約 2 割売ってきた。
この比率をいかに下げ、自社製品比率を上げていくかが重点施策であった。自社製品比
率 30%は今後大幅に上昇しよう。また、海外売上比率の向上も目指している。ここでいう
海外売上比率には社内的に国内輸出と分類している売上(日系企業の海外工場への売上)
を含んでおり、海外への直接輸出と国内輸出の合算値ベースでの目標である。
コア技術でグローバルリーダーを目指す
表面処理薬品分野のメガトレンドはいかに環境負荷がない方向にもっていくかである。
単なる化学薬品の利用ではなく、バイオエレクトロニクスや回路フリーなプロダクツの追
求が大きな流れである。めっき代替品が出てくる可能性も長期的には高い。代替品と原材
料の供給者には十分注意する必要があり、顧客は技術革新とコストダウンを求めている。
また、国内は成熟、成長のアジアには新規参入者が登場している。
その中で、当社はどういうポジションをとるか。アライアンスによる技術導入で国内市
場を開拓した時代、自社技術で導入(ライセンス)製品を減らしてきた時代を経て、自社開
発品で市場のグローバル化を進める時代に挑戦しようとしている。これをグローバル TSP
(テクノロジー・ソリューション・プロバイダー)と位置付けている。そして、その先に
は、真のグローバルリーダーになることをビジョンとして見据えている。
グローバル TSP を達成するために、①コア技術・製品群の育成、②グローバル化、特に
アジア市場の拡大、③生産体制の再構築、④業務・財務効率の向上、⑤魅力ある会社作り、
を挙げている。
コア技術・製品群の育成では、電子部品・半導体向け錫めっき、半導体向け技術や環境
負荷軽減技術に重点投資して、パワーIC、コネクター、ソーラー、パッシブなど、いずれ
も成長することは間違いないので、この分野を攻めていく。
グローバル化では、中国、台湾、韓国、アセアンで、各国の特性に合わせた展開で市場
を開拓する。そのために、現地化の強化に向け、アライアンスパートナーとも組んでいく。
海外でのプレゼンスの向上には M&A や JV(ジョイントベンチャー)も視野にスピードアッ
プを図っていくのである。
メルテックス本体は新製品の開発に力を入れている。電子基板にめっきなど表面処理を
行うと、銅配線の銅を溶かしてしまってダメージを与える。このダメージを少なくすると、
配線する時の銅の量を減らせるので、配線の線幅が狭くできる。基板の高密度化に貢献す
るので、スマホ(スマートフォン)などの小型・高性能化に効果がある。この銅配線に対す
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
17
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
るダメージを 20 分の 1 にまで軽減できる表面処理薬品を開発した。
また、新製品では、金の使用量が従来の 3 分の 1 になるような新しい表面処理薬品の拡
大を目指している。自社製品で、MIT 発のベンチャー企業と契約したコネクター用金メッキ
薬品の金使用量を大幅に下げる商品である。高速通信機器や車載用に伸びが見込める。
メルテックスの目指す方向と位置付け
グローバル化
これから
アジア市場
グローバル
TSP
テクノロジー・ソリューション
高付加価値化
これまで
かつて
国内市場
FSP
OEM
フィールド・サービス
技術営業サービス
相手先ブランド
生産
導入型
技術アライアンス
自社技術開発型
製販アライアンス
化成品の海外市場を開拓
メルテックスの社長を外部から招聘し、2015 年 2 月社長に就任した。古橋社長は同業他
社からのスカウトで、営業出身のマネジメントである。メルテックスの社長であった岩城
慶太郎氏(イワキの副社長)は会長に就いている。
化成品については、アジア展開に力を入れている。まずは日本の現法に売っていくとこ
ろから基盤を広げていく。台湾、香港に加えて、タイに現地法人、中国の天津と韓国に販
社を作った。韓国の販社は、それまで日本から営業していたものを現地から直販し、サー
ビス体制も強化した。
タイ工場の本格稼働
生産体制の再構築では、国内生産の絞り込み、アジアでの生産化、計画調達の強化、在
庫回転率の向上などを実行する。
表面処理薬品は熊谷と四日市で生産しているが、販売先である日本の電子部品メーカー
の海外生産シフトに対応して、タイ工場をスタートさせた。海外販売比率が高いものから
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
18
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
移管していく。原材料の現地調達によって、生産コストの低減を目指す。品質は一定の水
準に達しており、韓国への販売も行っている。自社製品で量も伸びつつある。
キャッシュ・フローの推移
2011.11
営業キャッシュ・フロー
税引後当期純利益
減価償却費
負ののれん益
売上債権の増減(-は増加)
2012.11
2013.11
2014.11
(百万円)
2015.11
1707
1700
701
-1172
-7
1603
627
740
0
112
514
725
779
0
-1532
423
525
866
0
-904
2448
196
946
0
2009
投資キャッシュ・フロー
有形固定資産の取得
有形固定資産の売却
子会社株式の取得
138
-610
861
0
-683
-508
168
0
-962
-374
54
-501
-607
-534
80
0
-337
-537
0
0
フリー・キャッシュ・フロー
1843
920
-448
-184
2111
財務キャッシュ・フロー
有利子負債の増減
配当金の支払い
-845
-615
-171
-1073
-762
-235
-170
138
-201
438
842
-252
-1734
-1330
-201
現金等期末残高
4337
4191
3595
4006
4382
(注)メルテックスの完全子会社化に伴う影響が負ののれん益、子会社株式取得などに出ている。
子会社株式取得などに出ている。
過年度修正ベース。
設備投資はキャッシュ・フローの範囲内
設備投資については、2013 年 11 月期はタイの現地工場への出資、2014 年 11 月期は岩城
製薬のジェネリック医薬品関連の増強が主力であった。2013 年 11 月期設備投資は 752 百万
円であったが、
このほかにメルテックスアジアタイランド社への出資が 6 億円ほどあった。
これはタイ工場への設備資金である。その意味では、この期の設備投資は実質的に 13 億円
程度であった。
2014 年 11 月期の設備投資は 820 百万円(前期 752 百万円)であった。これに対し減価償
却は 866 百万円(同 779 百万円)であるから、投資負担はさほど重くない。設備投資の主
力は岩城製薬の設備増強で、2015 年 11 月期も同じペースの投資が続いた。
投資の中身では、チューブ充填や打錠用設備への投資が増えた。岩城製薬の蒲田工場は、
外皮用剤のチューブ充填機に続いて、打錠機やローション充填機を入れていく。医薬品原
料を生産する静岡工場も能力アップを図っていく。また、メルテックスでも新製品対応の
設備投資が増えている。
キャッシュ・フローを見ると、2012 年 11 月期はフリー・キャッシュ・フローがかなり出
たので、その分を借入金の返済にまわした。2013 年 11 月期は、岩城製薬の設備増資やメル
テックスのタイ工場の新設など、設備投資がかなり増えたので、これまでの蓄積を取り崩
して対応した。2014 年 3 月期は、内部資金(内部留保+減価償却)で賄うことができる水
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
19
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
準ながら、運転資金の発生次第で外部借入が必要になった。今後とも設備投資に伴う資金
的な負担はさほどないとみてよい。
バランスシート
(百万円、%)
2011.11
2012.11
2013.11
2014.11
2015.11
現預金
受取手形・売掛金
棚卸資産
その他流動資産
有形固定資産
無形固定資産
投資その他資産
4466
14355
4428
752
7460
273
3294
4327
14250
4385
709
7479
340
3692
3726
15809
4571
818
7405
351
4887
4223
16803
4998
1122
8048
311
4090
4562
14801
5246
643
8111
246
4428
資産合計
35031
35185
37569
39598
38040
支払手形・買掛金
短期借入金
その他流動負債
長期借入金
その他固定負債
負債合計
11146
2962
2295
1477
2001
19881
11414
2362
1950
1315
2372
19413
12229
2658
2172
1157
2580
20797
12492
3730
2411
927
2776
22336
11979
2287
2509
1040
2869
20682
株主資本
その他包括利益
純資産
15023
126
15150
15514
257
15771
16054
717
16772
16235
1026
17261
15926
1432
17358
43.2
44.8
44.6
43.6
45.6
自己資本比率
(注)過年度修正ベース。
健康食品の規制緩和が貢献
機能性食品の原料では品揃えという点で業界でもトップクラスである。この機能性食品
の表示制度の改定が 2015 年 4 月からスタートした。これまでの健康食品は「~に効く」と
いった効能の表示はできなかった。基本は食品で薬ではないので、「1 回何錠」というよう
な表示もできなかった。
今回から健康効能を食品に表示しやすくなった。内臓脂肪を減らす、脂肪の吸収を抑え
る、肌の乾燥を緩和する、など効能の表現が分かりやすくなる。当社の原料にも動きが出
ている。この表示によって機能性食品の需要に一定のインパクトが出ているので、プラス
の効果が期待できよう。
特保(特定保健食品)については、一定の効能を表現することはできるが、そのための
エビデンス(科学的証拠)を得るためにデータを集め、分析する必要があるので、かなり
のコストがかかる。今回の新たな機能性表示については、申請は必要であるが、エビデン
スがあれば効能について表現できようになった。ここがはっきりしたので、業界では、開
発、マーケティング、販売、宣伝に力が入っている。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
20
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
海外拠点の強化
2015 年 10 月、ベトナムに駐在員事務所を開設した。海外拠点は、タイ(メルテックスの
製造、販売)
、香港、深圳、天津、韓国、台湾(いずれもメルテックスの販売)、上海(プ
リント配線基盤の製造プラントの生産、販売)と、ほとんどがメルテックスの事業である。
今回のベトナムは、当面、香粧品原料や機能性食品の事業展開を視野においている。ま
た、メルテックス中心の海外拠点も、これからは全社的に活用して、イワキのグローバル
展開に広く活用する方向である。中国への展開では、日系企業は別にして、台湾や香港の
企業と組んで事業リスクの分散を図っていく。
5.当面の業績
収益構造改革がスタート、2016 年 11 月期より好転
2011 年 11 月期はメルテックスの子会社化で過去最高の業績を達成
2011 年 11 月期は、売上高 53797 百万円(前年度比+6.7%)、営業利益 1215 百万円(同 +
145.8%)
、経常利益 1330 百万円(同+106.1%)
、当期純利益 1633 百万円(同+328.3%)
、
となった。業績好転の要因は、ジェネリック原料の拡大と完全子会社化したメルテックス
の寄与にあった。当期純利益については、メルテックスの子会社化に伴い、負ののれん益
11.7 億円が発生したことによる。
売上げ面では、ジェネリック医薬品が順調で、医薬品の原料もジェネリック向けに伸び
た。営業利益面では、メルテックスの 100%子会社化に伴い、化成品の利益がフルに入って
きたことが効いた。負ののれん益が発生した理由は、メルテックスの資産を安く買うこと
ができたので、これによって特別利益が発生した。配当について、メルテックスの合併に
伴う特別配当を 1.0 円プラスして年 7.0 円とした。
2012 年 11 月期~2014 年 11 月期は電子部品用表面処理薬品の業績悪化が響いた
2012 年 11 月期は、売上高 51953 百万円(前年同期比-3.4%)
、営業利益 1126 百万円(同
-7.3%)
、経常利益 1303 百万円(同-2.1%)、当期純利益 739 百万円(同-54.7%)となった。
小幅ながら減収減益となった要因は、医薬品での不採算取引の削減、ジェネリック向け医
薬品原料の増加はあったものの、表面処理薬品を主力とする化成品の大幅減益が響いた。
電子部品関連の需要不振と海外シフトの影響による。
2013 年 11 月期は、売上高 52465 百万円(前年度比+1.0%)、営業利益 1007 百万円(同-
10.6%)
、経常利益 1154 百万円(同-11.4%)、当期純利益 754 百万円(同+2.1%)となった。
セグメント別の業績をみると、医薬品の業績は大きく改善し、主力の医薬品原料も着実に
伸びた。一方で、化成品は大きく悪化し、赤字幅が拡大した。食品原料も減益となった。
2014 年 11 月期は、売上高 54145 百万円(前年度比+3.2%)
、営業利益 890 百万円(同-
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
21
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
11.6%)
、経常利益 971 百万円(同-15.9%)、当期純利益 505 百万円(同-33.1%)となった。
減益要因の 1 つは、化成品分野の子会社メルテックスの海外子会社 5 社を連結に入れた
ことによる。メルテックスの海外子会社は、まだ売上が十分たっていなかった。費用先行
で、利益面では 2 億円ほど赤字になった。タイの工場を始め、まだ先行投資期であった。
2 つ目は、円安に伴う原料仕入れのコストアップである。円安は輸出にはプラスであるが、
国内調達分も含めて、円安による原料高が全般に響いている。この分の製品価格への転嫁
が十分できていない。とりわけ、食品分野でその影響がみられた。3 つ目は、医薬品原料や
健康食品の原料が当初見込んだほど伸びなかったことも影響した。
セグメント別業績予想
2013.11
売上高
医薬品
医薬品原料
香粧品原料
化成品
食品原料
機能性食品
化粧品通販
その他
調整額
合計
2014.11
営業利益 売上高
2015.11
営業利益
2016.11(予)
(百万円)
2017.11(予)
売上高
営業利益
売上高
営業利益
売上高
17145
127
17435
105
18303
101
19000
100
19000
営業利益
120
15978
1070
16855
999
17182
1044
18000
1000
18500
980
7970
-68
8086
-94
7005
-565
6500
-200
7000
100
7762
365
8055
319
8985
354
9000
370
9500
350
3608
95
3712
79
3945
224
3800
250
4000
200
-
-582
-
-518
-
-599
-
-670
-
-750
52465
1007
54145
890
55422
559
56000
850
58000
1000
(注)調整額はセグメントに配賦されない全社費用、予想はアナリスト予想、従来セグメントベース。
円安の影響
イワキ単体では、円安がマイナスに響いた。2014 年 11 月期は欧州からの輸入原料で 1 億
円ほどマイナスになった。岩城製薬も輸入原料高のマイナスが 1 億円ほどあったが、これ
は生産効率のアップなどによって吸収した、メルテックスは輸出があるので、ここは 0.6
億円ほどプラスに働いた。トータルとしては利益面で多少マイナスになっている。
医薬品原料は中国からの輸入が多い。輸入品の約 8 割を占める。ここは、為替の影響と
は関係なく価格交渉をする必要があり、値上げ要請がきつい。一方でメルテックスの輸出
は、円安になって採算性がよくなっている。
2015 年 11 月期も大幅減益へ
2015 年 11 月期は、
売上高 55422 百万円(前期比+2.4%)、営業利益 559 百万円
(同-37.2%)、
経常利益 694 百万円(同-27.8%)
、当期純利益-143 百万円となった。
営業利益は大幅減益となった主因は、化成品のセグメント利益が前期の-94 百万円から
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
22
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
-565 百万円へ、471 百万円も赤字幅が拡大したことによる。メルテックスの海外子会社の
立ち上げ負担とその連結化、主力商品のライセンス生産から自社製品への切り換えが大き
く影響した。
また、当期純利益が赤字となったのは、化成品事業の見直しによる繰延税金資産の取り
崩しがあったため税負担が重くなったことによる。
2015.11期の注目ポイント
2014.11
63
ジェネリック医薬品関連売上高
医薬品・医薬品原料
インバウンド関連売上高
医薬品卸売・化粧品・健康食品原料
通販化粧品売上高
セグメント利益
化成品売上高
セグメント利益
(億円、%)
(伸び率)
6.6
2015.11
67
188
207
19
10.3
19
0.6
80
2.1
70
-0.9
-5.6
セグメント別にみると、ジェネリック医薬品関連(外皮用剤を中心とする自社医薬品と
ジェネリック医薬品向け原料)は、前年度比+6.6%増収の 67 億円となった。ジェネリッ
ク医薬品の使用促進策が追い風となっている。とりわけ自社製品は数量ベースで+11.0%
と好調である。
医薬品の中の一般用医薬品の卸売、香粧品原料、機能性食品は、前年度比+10.3%の 207
億円の売上高となった。10%の伸びのうち、通常の伸びは 2%程度とみられるので、その大
半はインバウンド需要の拡大による増収効果であった。訪日外国人によるドラッグストア
での爆買いが当社の卸売やその原料にも波及してきたことによる。
化粧品の通販も好調である。年商 19 億円に対して、セグメント利益が 211 百万円(前期
61 百万円)と収益性が大きく向上している。売上高の半分近くを占めるシルキーカバーオ
イルブロックという商品が美白効果という点で受けている。
一方、化成品分野のメルテックスは、本業に加えて繰延税金資産の都取り崩しが 3.4 億
円ほど発生し、それが全体の純利益を押し下げた。ライセンス契約の満了に伴い事業収益
の見直しが必要になったことによる。
2016 年 11 月期から業績改善へ
2016 年 11 月期の会社計画は、売上高 56000 百万円(前年度比+1.0%)
、営業利益 850 百
万円(同+51.9%)
、経常利益 900 百万円(同+29.6%)、当期純利益 450 百万円(黒字化)
である。薬価改定があるので慎重にみている面はあるが、化成品の収益性が改善してくる
のは間違いないので、会社計画は十分達成できよう。
2016 年 11 月期は、化成品の赤字縮小で業績は上向いてこよう。さらに 2017 年 11 月期に
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
23
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
は黒字化が見込めるので、2 年後の業績はさらに改善してこよう。
2016 年 4 月には薬価改定があり、2017 年 4 月には消費税の増税が予定されている。その
影響がジェネリック医薬品にどの程度影響してくるによって、当社の医薬品や原料の収益
性にも響いてくる。インバウンド需要もこのまま続くかどうか、もう少し様子を見る必要
があろう。ただ、ジェネリック医薬品の需要拡大は 2020 年に向けて続くので環境はよい。
化成品の収益改善が進展すれば業績はいい方向に向かおう。
今後の業績拡大については、1)ジェネリック医薬品の製品及び原料を引き続き伸ばす、
2)メルテックスの海外生産、販売を伸ばす、3)健康食品の表示改正に伴って、健康食品
用原料を拡大するということが期待できる。
現状の不採算事業を水面に浮上させていけば、経常利益で 13~14 億円は出てくる、これ
に当社の得意とする分野を伸ばしていけば、経常利益で 15~20 億円は達成できよう。そう
なれば、ROE で 5~7%を狙うことができる。現状よりは一歩前進できよう。
主要セグメントの売上高営業利益率の推移
2012.11
2013.11
2014.11
2015.11
2016.11
(%)
2017.11
(予)
(予)
医薬品
0.1
0.7
0.6
0.6
0.5
0.6
医薬品原料
香粧品原料
7.0
6.7
5.9
5.9
5.6
5.3
化成品
1.7
-0.9
-1.2
-8.1
-3.1
1.4
食品原料
機能性食品
5.4
4.7
4.0
3.9
4.1
3.7
会社全体
2.2
1.9
1.6
1.0
1.5
1.7
(注)従来セグメントベース。
6.企業評価
収益力の向上には、もう一段の実行力が必要
収益構造改革へ引き続き挑戦
今回の中長期ビジョンと中期計画はかなり分かりやすく、実効性が備わってきた。岩城
副社長がリード役で推進しており、資本市場からみても方向性はみえてきたといえよう。
ROIC の改善に当たっては、流動資産の回転率の向上にも力を入れていくが、商社として
ファイナンス機能を担っている面もあるので、中身を改めて精査していく。固定資産につ
いては見直しを行い、思い切って整理していく方向である。
1 つのイメージとしては投下資本(IC)を 200 億円に抑えつつ、今後の伸びる分野に投資
し、営業利益で 30 億円、税率 35%として税引後営業利益 20 億円が達成できれば、ROIC が
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
24
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
10%となる。
固定資産には投資有価証券があり、この中にはビジネス上強い関係がない株式も含まれ
ている。一方で、長期安定的な株主作りも必要である。そのためには何よりも収益力の向
上が求められるので、分子である営業利益の向上が必須である。
今回の 3 カ年計画は保守的である。化成品事業に抜本的な手を打っており、その成果に
は期待できるとしても、慎重にみていることによる。もう 1 つは事業ポートフォリオを見
直して、リストラする事業、次の先行投資をする事業に数億円の資金を使う予定なので、
その分収益回復の水準は抑えられることになる。それでも、今回の計画が順調に進むなら
ば、2018 年 3 月期の営業利益 12 億円は十分達成できよう。
イワキは自社のコアバリュー(SHE+EG)をいかに生み出していくか。投資家にすれば、ROE
8%をクリアする水準がみえてこなければ、価値創造企業とはいえない。ESG(環境、社会、
ガバナンス)はもちろん、当社が重視するもう 1 つの ESG(倫理、安全、グッドウィル)を
いかに価値創造のビジネスモデルの中に組み込んでいくかが問われる。
収益低迷の要因は、化成品の内需の落ち込み、医薬品原料の国内競争の激化、一般用医
薬品の卸の収益改善の遅れなどにある。今後をみると、1)医薬品のジェネリック製品を伸
ばす、2)次のジェネリック原料の製販を拡大する、3)エレクトロニクス用化成品の内外
での収益力を向上させる、4)一般用医薬品の卸の収益性を抜本的に見直すことなどが求め
られよう。すでに手は打っているが、成果を出すにはさらに踏み込んだ対応が必要である。
大事な点は、強みを伸ばすことである。ジェネリック医薬品の自社製品、医薬品原料の
自社製品、自社企画品、化成品の高付加価値分野、機能性食品の新分野などを伸ばし、一
般用医薬品卸売事業の収益を浮上させれば、営業利益で 17~23 億円を出すことができる。
そうすれば ROE で 7~8%はみえてくる。その力は持っている。
今後、この水準を目指すことは十分可能である。そうなれば、0.4 倍に留まる PBR も改善
されよう。岩城製薬の収益拡大とメルテックスの黒字化、原料商社としてのイワキの収益
改善に向けて、もうひと踏ん張りが求められるところである。
ROE 8%への向上が必須の条件
今回の中長期ビジョンは ROIC を KPI としているので、そのプロセスにおいて経常利益 25
億円がみえてくるかどうかがポイントであろう。そうすれば ROE も 8%に乗せてくるので、
企業価値創造という観点で見た時、第一のハードルはクリアできる。収益源としては、医
薬品原料、化成品、機能性食品の成長が期待できる。とりわけ、化成品のメルテックスが
どこまで業績をどこまで回復できるかが鍵を握ろう。
①OTC 向け医薬品卸事業の赤字を自社企画品などの強化によって黒字化すること、②ジェ
ネリック向け医薬品原料を着実に伸ばすこと、③化成品分野のアジア市場開拓に向けて現
地生産を拡大すること、④健康食品原料で独自の分野を伸ばすこと、などが成果を上げて
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
25
(株)日本ベル投資研究所
Belletk
ベル企業レポート
IRアナリストレポート
Independent Research Analyst Report
くれば、収益力は向上しよう。その実行戦略については、まだ相当の努力を要するので、
企業評価はCとする。
(企業評価の指標については表紙を参照)
2 月 12 日の株価をベースにすると、2016 年 11 月期予想ベースで PER 13.0 倍、配当利回
り 3.5%であるが、PBR は 0.34 倍と低い。ROE 予想は 2.6%と、資本コストから見て期待さ
れる 8%を大幅に下回っている。一方、時価でみた修正 ROE(EPS/株価)は 7.7%である。
つまり、今の業績を前提にすると、PBR 0.34 倍という数字も妥当性を持つということであ
る。よって、何よりも ROE の向上に向け、まずは実効性を高めることが求められよう。
本レポートは、独自の視点から書いており、基本的に会社側の立場に立つものではない。本レポートは、投資家の当該
企業に対する理解促進をサポートすることを目的としており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではない。内容に
ついては、担当アナリストが全責任を持つが、投資家の投資判断については一切関知しない。本レポートは上記作成者
の見解を述べたもので、許可無く使用してはならない。
26