ISの平行世界の物語 ID:64639

ISの平行世界の物語
メタルストライダー
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じます。
︻あらすじ︼
インフィニット・ストラトス⋮⋮この機動兵器の登場により男女の
社会的パワーバランスが一変し、女尊男卑が当たり前になってしまっ
た時代。
しかし、その世界は複数の平行世界が存在している。
これはその世界のうちの一つで起きたちょっとした物語である。
第二話 │││││││││││││││││││││││││
第一話 │││││││││││││││││││││││││
1
目 次 第三話 │││││││││││││││││││││││││
4
最終話 │││││││││││││││││││││││││
第十三話 ││││││││││││││││││││││││
第十二話 ││││││││││││││││││││││││
番外編 ISの未来 │││││││││││││││││││
第十一話 ││││││││││││││││││││││││
第十話 │││││││││││││││││││││││││
第九話 │││││││││││││││││││││││││
第八話 │││││││││││││││││││││││││
第七話 │││││││││││││││││││││││││
第六話 │││││││││││││││││││││││││
第五話 │││││││││││││││││││││││││
第四話 │││││││││││││││││││││││││
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第一話
俺⋮⋮織斑一夏は第二回モンド・グロッソの中継を自宅で観てい
る。姉は会場のドイツに観に行かないかと誘ったが断った。何故な
ら俺には将来なりたい職業のために勉強をしなければならないから
だ。
俺がなりたい職業は⋮⋮医者だ。何故医者になろうと決めたのか
⋮⋮
それは﹁誰か︵何か︶を守ること﹂に強い憧れを持っていた頃のこ
とだった。俺は偶然、テレビを付けた時に観た番組は医者のドキュメ
ンタリー番組だった。
俺は当時、医療や医者の事に関して興味が殆ど無かったので別の
チャンネルに切り替えようとした時ある医者の言葉を聞いてチャン
ネルをそのままにした。
﹃人を守るこの仕事をする事に誇りを持っています﹄という言葉が
俺 の 心 に 留 ま っ た の だ。取 材 を 受 け て い た 医 者﹃伊 達 明﹄は そ う
語っていた。
彼は番組内で自身が行っている仕事の内容を語っていた。彼は世
界各国で活動を行う医療チームに所属しており貧困国で治療を受け
られない子供や大人の治療等を行ったりしているとの事だ。時には
紛争地域に行って医療活動を行い、実際にその場所で銃を持って戦っ
た事もあるそうだ。彼の夢は発展途上国に医療学校を建てると言っ
ていた。
俺は伊達さんのある言葉に感銘を受けた⋮⋮﹃武力で守れるものは
とても狭い﹄。
今までは姉の様に強くなって誰かを守れるようになりたいと心
の中で思っていた。しかし、伊達さんが紛争を経験してきた中でそう
言った言葉はとても重みがあった。
人を傷つけてでも何かを守らなければならない時もある。だがそ
の 後 に は 空 し さ し か 残 ら な い と 彼 は 語 る。伊 達 さ ん は そ ん な 事 が
あっても医療活動を続けている。何故なら彼は患者や助けを必要と
1
?
している人たちの為に活動を続けていると言っていた。
︵誰かを守る仕事⋮⋮。これが⋮⋮︶
俺の心中で何かがはじけた。それから俺はそのドキュメンタリー
番組を最後まで観た。医者という仕事は過酷な環境で患者や他の医
者との関わりでストレスを受けたりする事が多くある。
しかし、彼等は人の生命を守るために働いている医者が多くいる
事を知った。地域との関わりを大切にしながら医者として働く人、患
者を直接診ないが病気を研究する研究医として日々研究を続ける医
師等も取り上げられていた。
俺は番組を観終えて直ぐに行動をする。医者になる為に何が必
要なのかを調べる為に図書館に急いで向かった。
図書館ではインターネットが使えるのでそれで医者になる為に必
要な事を調べるためだ。図書館に到着した俺は早速パソコンを使う
ために手続きを済ませて検索する。
﹁これは⋮⋮﹂
俺は医者になる為に必要な事が掲載されているサイトを観て愕然
とする。医者になる為には相当な勉強が必要だったがそれ以上に医
学部の、授業料がかなりかかる事が判明した。
医学部を留年せずストレート︵6年︶で卒業できた場合、両者の学
費︵授業料他、各種費用を含む︶は、国公立大学では平均で約350
万円、私立大だと約3300万円と書かれていた。
国公立大学でも350万円はかかるのに私立ではその十倍はかか
る事を知ってしまいどうすれば良いのか一夏は方法を検索する。
﹁これは⋮⋮奨学金制度﹂
俺は金銭面を如何にして解決すべきかを模索していた時にこの制
度を目にした。これは成績優秀な学生に対して、学費を一部免除した
り、無利息で貸与するような﹁奨学金制度﹂を設けている大学がある
事を俺は知った。
︵成績が良ければ金銭面がある程度は解決できるという事か⋮⋮。で
もそうした制度を利用するとなると難易度は極めて高くなりそうだ
な⋮⋮︶
2
俺は学費免除の制度を読んで思案する。学費の安い医科大学ほど、
極めて難易度が高くその理由は応募者が殺到して倍率が高い、日本で
も入学するのが一番困難な大学に合格する並みの学力が必要とも言
われている。
それ以外にも特定の条件を満たせば学費免除される大学もある事
を知り、ある事を決意する。これらの事から学力があれば金銭面の問
題を解決しやすくなるという事を意味している。
︶
︵千冬姉には負担を掛けるかもしれないけど俺が見つけたやりたい事
のために⋮⋮やってやる
こうして俺は無謀な事、姉に負担を掛ける事になるのは承知の上で
医者になる為の勉強を今日から始めるのだった。そう決めたのなら
俺は絶対に人を守る医者になってみせる⋮⋮
断るぐらいまで勉強に熱を入れている。
︵千冬姉も頑張っている⋮⋮。俺もやるぞ
︶
間を勉強に費やしていた。第二回モンドグロッソを観に行かないと
それから毎日、一夏は今までの自分では考えられないくらいの時
!
その後、千冬は第二回モンドグロッソで無事に優勝したのだった。
を勧めている。
一夏はテレビ越しで決勝大会を戦っている姉の姿を見ながら勉強
!
3
!
第二話
第二回モンドグロッソから数年後、一夏は中学二年生となってか
ら医者になる為の具体的な勉強をしようと行動しようとしたのだが
何から手を付ければいいのか全くわからないのでその方法を調べる
為に図書館に赴いた。
彼は医者になる条件を満たす為に何をする必要があるのかを調べ
ていた。あの時は学費の事しか考えていなかったが今度は医者にな
る方法も知る目的もある。
︵医者になるには医師免許を取得する⋮⋮。そしてその免許を取得す
るには、国が認可した医学部・医科大学を卒業している事が前提条件
なのか︶
一夏は図書館でインターネットを使って医者になる為をサイトを
閲覧してその情報を読んで考え込む。
医学部受験に合格するには途方もない程の勉強をする必要があり、
入学してからも勉強を続けなければ留年しかねない厳しい環境に立
たされると書かれていた。
︵とはいえ今は基本五科目︵国語、数学、英語、理科、社会︶の内容を
徹底的に勉強するか⋮⋮︶
大学入試までまだまだ時間があると浅く考えた一夏は図書館で取
りあえずその五科目の勉強を閉館時間までやることにした。
彼は医者になると決意してから、中学一年の頃は授業内容の復習を
重点的に繰り返し行い、学年トップの成績を得ていた。
しかしその代償として友達が殆どいなかった。
その理由は入学時から学校の休憩時間、皆が雑談をしている
中で一夏は唯一人で勉強をしていたので誰も話しかけられず何時の
間にか彼はクラスから孤立していた。小学生の時に中国から来た転
校生の少女が中学での数少ない友人だったがその子は転校してし
まったので一夏には友人がいない。
しかし彼はそんな状況を気にする事無く勉強を続けていた。その
原動力となっているのは医者として人の命を守る為に働く為だ。
4
そんな彼の放課後は友人たちと戯れたり部活動をする事もなくた
だひたすら勉強をする日々を過ごす。一夏は入学した当初は家計を
支える為にアルバイトをしようかと考えたのだがそもそも中学生は
アルバイトは不可能だった。
故に彼はバイトに使おうと思っていた時間を医者になる為
の勉強に費やした。その代わりとして支出を出来得る限り抑えるよ
うに工夫をする。
例えばスーパーで買う食材は安売りとなっている食材を出来得る
限り購入し、お菓子類などの無駄な物を買わないように心掛けてい
る。
それだけでなく外食は極力避けてコンビニも必要な時以外
はほぼ立ち寄らないようにするなどかなり徹底している。これは支
出を抑えるだけでなく節約したお金を医者になる為に必要な教本や
道具の費用に充てるという目的もある。主婦顔負けの節約術を中学
生の彼がこなすとは⋮⋮驚きに値するだろう。
そ れ だ け で な く 彼 は 家 事 ス キ ル も 極 め て 高 い。そ の 理 由 は
常に外で働いていた千冬に代わって家事全般をこなす必要があった
からで節約術は元からある程度実践していたが医者になると決めて
から更に拍車がかかっている。
そうして彼は中学時代を過ごしていったそうだ。因みに成績は卒
業まで学年トップを維持し続けたらしい。
それから時は経って中学三年生、即ち受験生となった一夏はとあ
る 学 園 の 受 験 会 場 と な っ て い る と て も 大 き な 多 目 的 ホ ー ル に い る。
彼が受験をする学校は学費が安く、就職率が高いと言う一石二鳥の私
立藍越学園だ。本来ならば医者を目指すのに最適な高校があったの
だがそこは残念ながら学費がとても高額で姉の稼ぎではその学費を
払う事は厳しいのでやむなく藍越学園を受ける事にした。
︵こんな時に迷うとは⋮⋮︶
彼は多目的ホール内の通路で迷子になっていた。このホールはと
5
ても広く部屋数がとても多い。何故このような会場で試験が行われ
る事になったのか⋮⋮それは去年の試験でカンニングが発生しその
対策の為にこの会場で行われる事になったらしい。
︵ここは誰かに訊いてみるか⋮⋮︶
一夏はそう考えながら目の前にあるドアを開いた。
その中は薄暗く、様々な機械のランプが絶えず明滅しており、スク
リーンの光りにぼうっと照らされた。そこには巨大な何かが地面に
鎮座しているのが分かったが誰もいない。
︵人がいないからここは違うか⋮⋮。それなら別の場所に当たるとす
るか⋮⋮︶
一夏はこの部屋を場違いだと思って部屋のドアを静かに閉めて直
ぐに立ち去った。部屋の中を探っても良かったのかもしれない。し
かし彼は機械類が置いてある部屋に入るのは良くないと判断して速
やかに立ち去ったのだ。
6
その後、一度受付に戻った一夏は藍越学園の受験会場を改め
て尋ねて受験開始前に試験が行われる部屋に無事に到着して試験を
受けることが出来た。
受験の結果は合格で晴れて藍越学園に通う事が決まった。
一方、何処かの研究施設らしき場所でとある女性が錯乱してい
た。
﹁何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
﹂
何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で
何でいっくんはISに触れなかったの
頭にウサミミのカチューシャ、胸元が開いたデザインのエプロンド
!?
レスを着ている女性⋮⋮篠ノ乃束は錯乱していた。彼女は一夏をと
ある学園に入れようと画策していた。計画通りであれば部屋に入っ
て好奇心である物に触れるはずだった。しかし、彼は彼女の予想に反
してそのものに触れる事は無かった。
こうして一夏はIS学園に入学する事を避けたのだった。
しかし、束はこの時、自分の野望がこの出来事が切っ掛けとなり大
幅に狂う未来が待ち受けている事を知らなかった⋮⋮。
7
第三話
藍越学園の受験して合格が決まった後も一夏は勉強を続けてい
る。勉強内容は中学時代に苦手だった科目の復習を重点的に行うと
いうごく普通のものだ。しかし、自分の苦手分野を少しでも減らして
いく為に勉強する事は意外と大変な事だ。
好きな科目や得意科目は理解するのが容易ではかどるものの苦手
科目は理解するのに時間がかかる上に苦手意識があるので思うよう
に進まないがそれでも彼は少しずつでも勉強していった。
それから数か月後、これといった事件などもなく藍越学園の入学式
が無事に終了した。
︵今日から高校生活か⋮⋮。受験に向けてやる事は沢山あるな⋮⋮︶
一夏はこれから始まる高校生活に対して自分のやるべき事を考え
ながら帰宅した。入学式の時は大抵学校は早く終わる。彼は自己紹
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介等は普通に済ませたのでクラスメイトの印象に残った訳ではない。
一 夏
医者を目指して勉強している事を一夏は特に言っていないからだ。
そ ん な 彼 は 高 校 で も 友 達 は 出 来 る の だ ろ う か ⋮⋮
それゆえに他国のISとの比較や新技術の試験にも適しており、そ
が許されないという国際規約がある。
ず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉
この学園で育成される。また学園の土地はあらゆる国家機関に属さ
操縦者に限らず専門のメカニックなど、ISに関連する人材はほぼ
者育成用の特殊国立高等学校である。
IS学園⋮⋮アラスカ条約に基づいて日本に設置された、IS操縦
入学式が行われていた。
それぞれの高校で入学式が行われている頃、IS学園でも同様に
から⋮⋮。
姉の事を知る余地はない。一夏は夢に向かって突き進んでいるのだ
の姉である千冬は人間関係が希薄な弟を心配しているが彼がそんな
?
ういう面では重宝されている。ただしこの規約は半ば有名無実化し
ており、全く干渉されないわけではないというのが実情である。そし
て敷地内にはIS訓練用のアリーナのほか、2人1部屋の学生寮や食
堂、大浴場も設けられているとても充実した施設を有している学園
だ。
しかし、ISを取り扱っている学園だけあり入学試験は極めて難し
く、入学できた者はエリートと言われているらしい。更にISを扱い
たいという志願者が年々増加しており倍率も厳しいものになりつつ
あるそうだ。
この学園では入学式後、直ぐに授業が行われる。
入学が厳しいIS学園とはいえ例外がある。
この学園にISの開発者﹃篠ノ之 束﹄の妹という理由で﹃篠ノ之
箒﹄という少女が強制的に入学させられてしまった。当人は束の妹
である事が原因でISを発明して以来、一家離散の状態が続いてい
る。小学4年生の時から政府の重要人物保護プログラムにより日本
各地を転々とさせられていたそうだ。この世界での篠ノ之箒は如何
なのだろうか⋮⋮様子を見てみよう。
篠ノ之箒は一年一組に所属している。現在、彼女は席に座って窓の
外を景色を眺めている。
︵今日から私もここで勉強をするのか⋮⋮。三年間の辛抱だ⋮⋮︶
箒はそんな事を考えながら空を眺めていた。束の妹でなければご
く普通の学生生活を送っていたであろう彼女は何処か達観したよう
な或いはそれに近い雰囲気を出していた。
彼女は小中学校時代は転校を繰り返し、束が失踪してからは執拗な
監視と聴取を繰り返されていた。その結果、心身共に負担を受け続け
てきた彼女は如何にも荒んだ雰囲気が感じられない。
﹁次に篠ノ之箒さん、お願いします﹂
箒は誰かに呼ばれて席を立つ。彼女を呼んだのは一年一組の副担
任である﹃山田 真耶﹄だ。
山田先生の容姿はかなりの巨乳の持ち主で、眼鏡が似合う優しい雰
囲気を醸し出している。彼女は多少ドジな一面を持ち合わせている。
9
しかし今はそれを感じさせない先生らしい堂々とした態度をしてい
る。
﹁篠ノ之箒です。苗字から察している方が大勢いると思いますが私は
篠ノ之束の妹です。しかし、私はあの人とは関係はほぼなくISの事
を詳しくは知らないと先に言っておきます。不慣れな事も多々あり
ますがよろしくお願いします﹂
箒は凛とした表情でそう言った後、着席した。箒は姉が失踪してか
ら荒んだ時期があった。
しかし、中学時代に家族を省みない行動を続ける姉に対して篠ノ之
一家は全員の総意で勘当した。そして同時期にとある同級生の男子
と出会って良き友人関係を築いたことにより箒は執拗な取り調べ等
をうけ精神的に荒かった時よりも安定している。
イレギュラーが居ないIS学園は大きな事件が起こる事はないだ
ろう⋮⋮。
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第四話
IS学園⋮⋮入学式後にも授業が行われていたが今は休憩時間
に入っており生徒達は其々初めて知り合った人達に話しかけたりし
ている。この部分はどこの高校とも変わらない物だ。
そんな中、篠ノ之箒は自分の席から窓を眺めてある事を思い出して
いた。それは中学時代に出会ったとある男との出会いだ。
∼回想∼
中学一年の頃、篠ノ之箒は重要人物保護プログラムにより日本各地
を転々とさせらた上に束が失踪してからは執拗な監視と聴取を繰り
返されており、心身共に負担を受け続けてきた。
そんな時、何らかの噂で箒が篠ノ之束の妹である事を知った三人の
男子が箒に因縁を付けて来た。箒は学校の校舎裏に無理矢理連れ込
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まれたのだ。彼女は剣道をやっていて体を鍛えているがそれ以上に
三人の男の力が強くて抵抗できなかったらしい。
﹁てめぇの姉のせいで俺の親父はISのせいで女性の上司に仕事を辞
め さ せ ら れ た 上 に 家 庭 は め ち ゃ く ち ゃ に な っ た ん だ。そ の 原 因 と
なった物を作った落とし前を付けさせてもうぞ⋮⋮﹂
﹂
﹁俺もだ⋮⋮。てめぇの姉が糞みたいな機械を作ってくれたおかげで
こっちは肩身の狭い思い。憂さ晴らししねぇと収まらねぇんだよ
﹁⋮⋮﹂
ちょっとしたイタズラをしていた︵失敗する事が多かった︶。しかし、
金髪の不良は女の子をからかうのが好きでよく同年代の女の子に
荒れて彼は不良になったのだ。
解雇させられてしまい、母親とは離婚してしまった。それから荒れに
なり調子に乗った女性上司によって彼の父親はでっちあげによって
坊主頭の不良は元々、不良ではなかったがISの登場で女尊男卑と
人は何故か喋らないが何処か恐ろしい雰囲気を感じている。
しくなっている事の当てつけに妹の箒に文句を言う。しかし、もう一
二人の男子中学生は箒の姉である束のせいで親や自身の生活が苦
!!
ISの登場で女尊男卑という状況によってそのイタズラがやりりに
くくなってしまいその鬱憤が溜まっていたのだろう。
肩まで茶髪がかかっているもう一人の男子が彼等に加担している
理由は分からないが只ならぬ雰囲気を感じる。
余りの身勝手な理由で因縁を付けて来た不良に対して箒はカッと
なって暴力的行動に出そうになるも何とかこらえる。
坊主頭の不良が言う通り、ISの登場で作られた女性優遇法によっ
て調子に乗った女性達の問題行動のせいで多くの男性が不当な解雇
などがされており社会問題となっている︵金髪のイタズラに関しては
寧ろやめないと大変なことになりそうだが⋮⋮︶。
とはいえ二人の言い分は理不尽で箒に押し付けるべき事では
ないという事を気付いていないようだ。
箒はそんな不良達の言い分を聞いて心のどこかで罪悪感を感じて
いた。自分の姉のせいで大きな迷惑がかかっているのだからだ。
﹁さぁ∼て⋮⋮一気にやるのも面白くないから少しずついたぶるとす
るか⋮⋮﹂
坊主頭の不良はそう言って右拳で箒の左頬を思い切り殴った。箒
は殴られて地面に倒れてしまう。
﹁次は俺がやってやるぜ、この女を立たせろ﹂
金髪男は制服の内ポケットに隠していた銀色のナックルダスター
を取り出して右手にはめる。この男は箒に鬱憤を晴らす為にナック
ルダスターを用意していた。寡黙な不良は金髪男の指示に従って箒
を羽交い締めの状態にして立たせる。
金髪男はナックルダスターをはめた右拳で箒の腹に狙いを定めて
思い切り殴ろうとする。箒は抵抗しようとするも両腕を動かせない
状態では脱出は困難で足を使おうにも宙にあるので思うように力が
入らない。
彼女は痛みを覚悟して目を閉じた。
しかし、何時までたっても痛みが来ない事に違和感を感じた箒は目
を開けると後ろから何者かが金髪男の右拳を
掴んでいた。金髪男の右拳を掴んだのは筋肉質な体で身長が18
12
﹂
5㎝と思われるいかつい男だった。制服を着ているので少なくとも
生徒である事は確かだ。
﹁お前達⋮⋮何をしている
いかつい男は三人の不良に問い質す。彼はゴミ捨ての当番だった
ので校舎裏にあるごみ収集所でごみを出してから帰る途中で先程の
光景を見かけたのだ
﹂
彼は箒の状態と金髪男がナックルダスターをはめているのみてあ
る事を連想した。
﹁三人がかりで苛めるとは⋮⋮許せん
﹁調子に載ってんじゃねぇぞ
﹂
不良の両腕を後ろに回して壁に叩きつけて無力化した。
矢理引きはがして箒を拘束状態から解放した。彼はそのまま寡黙な
いかつい男はそう言って羽交い締めをしている不良の左腕を無理
﹁その女子を離してもらおうか⋮⋮。少し荒っぽいが我慢してくれ﹂
力が余りにも強くて無駄だった。
抑えつけて無力化する。金髪男は抵抗しようとするもいかつい男の
彼は金髪男がつけていたメリケンサックを無理矢理外して地面に
た。
いかつい男は三人の不良が箒を一方的にいたぶっている事を察し
!
する。
﹁⋮⋮危ない
﹂
彼女は幼少から剣道をたしなんでいたがそれ以外の武術もある程度
学んでいたので剣を持たなくても対処することが出来る。こうして
三人の不良はあっけなく終わった。
﹁今の動き⋮⋮﹂
ごんげんざか
たける
後ろから見ていたいかつい男は箒の動きを凄いと思っていた。そ
の後、箒はいかつい男﹃権現坂 武﹄にお礼を述べた。その翌日から
武とよく話をするようになって友好関係を築いたのだ。
話す内容は武術や剣道関連で話があった。転校する前日には互い
13
?
坊主頭の不良はいかつい男の隙をついて後ろから殴りかかろうと
!!
箒は咄嗟に両腕で坊主頭の不良の右腕を掴んで地面に叩きつけた。
!
の連絡先を密かに教えて今でも交流しているらしい。余談だが箒に
因縁をつけた不良は少年院に連れていかれたらしい。
∼回想終了∼
︵武⋮⋮私は頑張るぞ︶
箒は三年間の学園生活を乗り越えようと気を引き締めるのだった。
物思いに老けた後、二限目の授業が始まるも担任の先生である織斑
千冬が何を思ったのかクラス代表を決めようと言い出した。そこで
立候補者、推薦者を求めた。
﹁私は篠ノ之さんを推薦します﹂
とある生徒が箒を推薦すると他の生徒達も彼女を次々と推薦する。
恐らく束の妹である事が関係しているのかもしれない。
納得がいきませんわ
﹂
箒は推薦された事を拒否しようとした時、誰かが立ち上がって文句
を言い始める。
﹁待ってください
﹁そのような選出認められません
開発者の血縁者というだけでク
通った碧眼を持つ少女﹃セシリア・オルコット﹄だった。
机を叩くように立ち上がったのは縦ロールのある長い金髪に透き
!
とおっしゃるんですか
﹂
ラス代表だなんて屈辱を、このセシリア・オルコットに一年間味わえ
!
﹂
!
国を平気で侮辱するのは嫌悪感を持っても可笑しくないだろう。
日本ではなく他の国から来た人達からしてもセシリアの私情で他
白い目で彼女を見ていた。このクラスの半数以上が日本人だからだ。
更に感情的になったセシリアは日本を侮辱するがクラスメイトは
わっているというのにこの様な仕打ちは耐えられませんわ
ん。ただでさえ、文化的に遅れの著しい島国で暮らすという屈辱を味
て、恥をさらすためや、屈辱を受けるために来ているのではありませ
﹁わたくしはこの極東の僻地までIS技術の修練に来ているのであっ
に関しては納得していないので僅かながら同意できる部分はあった。
女の発言に顔を顰めるも開発者の血縁者というだけで推薦された事
推薦のされ方が気に入らなかったのかセシリアは怒鳴る。箒は彼
!?
14
!
﹁私は篠ノ之束とは絶縁したのであの人の事を引き合いにしないでく
ださい。私はオルコットさんを推薦した上で、他薦されたことに関し
ては辞退します﹂
箒は立ち上がってそう言った後、席に着いた。彼女は束とは絶縁状
態だ。
法的絶縁は出来ないもののそれに限りなく近い状態には出来なく
もない。箒は篠ノ之束の連絡先を完全に消しており、束から連絡が来
ることは無いのでよほどのことが無い限り問題はないだろう。
その後、箒のあの発言もあってかクラス代表はセシリアに決まった
ものの誰も彼女を歓迎せず拍手をする生徒は誰一人いなかった。
日本を侮辱する発言をしなければ普通受け入れられたが後の
祭りだ。セシリアはクラスで孤立したまま寂しい学園生活を送るこ
とになるだろう⋮⋮。
15
第五話
インフィニット・ストラトスが各国で研究及び開発が進んでいく
中で何時しか女性がISを使える事がある思想に転換した。それは
⋮⋮ 女 尊 男 卑 と い う 思 想 だ っ た。何 故 こ ん な 思 想 が 広 ま っ た の か
⋮⋮それはISが世界で最強の兵器であり女性にしか扱えないとい
うものだった。
ISは男性には扱えないという事で思いあがった女性たちが自分
達が偉いのだと調子に乗りだした。その思想に便乗した女性たちは
何時しか男達を見下すようになり男達の肩身が狭くなっていった。
しかし、肩身が狭くなっていたのは男性ばかりではない。女尊男卑
の思想で調子に乗る女性たちの影響で良識を持った女性たちが男性
に怖がられるだけでなく避けられるようになってしまって男女の交
友が激減した事もあり少子化が過去最悪の記録を更新した。それだ
16
けでなく男児のストリートチルドレンや捨て子も増えていた。
これはISが男性には扱えない事が影響していると考えられる。
それらの社会問題に対して危機感を持った多くの政治家や団体︵男
性だけでなく女性も参加している︶による警鐘や活動も空しく日本を
中心として世界が危うく女尊男卑社会に染まりかけた。
しかしある団体を中心とした者たちの活躍によって世界は女尊男
卑が染まらなかった。その集団のリーダーとして活動していた者は
男で後に世界の人々から﹃BIGBOSS﹄と呼ばれたそうだ。
彼は演説でとある事を言った。
﹃ISが使えるから偉ぶる者達に問う。そのISを整備や研究をする
為に女性だけでなく男性達も活動をしている。彼等の仕事無くして
ISは動かない。女だから優れている、男だから劣っている。性別で
﹄
の差別をする事は人間としてやってはならない、我々はISの力に振
り回されぬようにしていかなければならない
人々がいるのでその思想を正す為に何処かで活動をしているだろう
に講演活動を続けているらしいがそれでも女尊男卑の考えを持つ
BIGBOSSは現在、IS=女性が偉いという思想を撲滅する為
!!
⋮⋮。
ISが出てから十年が経過した現在では女尊男卑という思想を持
つ者はごく少数しかいない。しかし、一夏はそんな社会状況に関係な
く医者になる為の勉強をしている。
一夏が通っている藍越学園は総合学科である。この学科は普通科
では幅広い分野の基礎を普遍的に扱う普通教育を、専門学科ではそれ
に加えて特定の分野に特化した専門教育を行う。
それらに対し、総合学科では2種類の教育のどちらに属する科目か
らも選択して履修できる。
多くは2年次から系列を目安にしながら希望進路と卒業要件の両
方を満たすような科目選択を行い、進路に関わる様々な能力を身につ
けることも出来る。多様な科目に対応しているのが特徴である。
藍越学園には大学に進学する生徒を集めた特進クラスというクラ
スを設けており一夏は当然ながらこのクラスに所属しており、特進ク
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ラスは一、二組で彼は一組だ。
入学式から数週間後、一夏は放課後の教室で自主勉強をしている。
そんな時、教室に教師が入って来た。
﹁教室で勉強は感心する﹂
部屋に入って来たのは現代社会を担当している中年ながらも渋く
てカッコイイ見た目の教師﹃石室 章雄﹄だった。校内は基本的に警
備員が見回りしている事が多いが教師も時々見回りをする事もある
そうだ。
﹁石室先生、こんにちは﹂
一夏は勉強を中断、席を立って一礼してから石室先生に挨拶をす
﹂
る。彼は最低限の礼儀を弁えている。
﹁織斑君、君は部活をしないのか
一夏は石室先生の質問に対してハッキリと答えた。彼には医者に
﹁はい、僕は部活をするつもりはないです﹂
は部活動への加入を強制していない。
している。中には帰宅部で自宅に帰っている者もいる。藍越学園で
石室先生は一夏に対して質問する。多くの生徒は放課後、部活動を
?
﹂
なって多くの人を守るという夢があるからだ。
﹁部活をしないのか⋮⋮。何故だ
石室先生は部活動に参加しない理由を尋ねる。部活動は余暇の善
用と趣味・個性の慎重をはかるとともに身体的、及び精神的にも強い
意志のある人間を育成するとともに、規則を守り礼儀正しい人間を育
成することと、単に技能だけを高める場ではなく、お互い協力し助け
合い、社会的にも豊かな性格をつくる場である。部活をするかしない
かは自由だ。大抵の生徒は何所に入るか迷っている事が多いが、迷い
なく一夏は参加しないと答えたのでそれが気になって質問したのだ。
﹁僕は医者になる為には勉強しなければならないので部活動をしてい
る時間はないです﹂
一夏は先生に自分が医者になる為に勉強しなければならない事を
伝えた。
﹁進路はハッキリしているのは良いが、勉強だけでは学べない事もあ
る。部活に取り組めば今後の糧になると思う。私は引き続き見回り
をするから遅くなる前に帰るんだ﹂
石室先生は一夏にそう言い残して教室から出ていった。
︵部 活 か ⋮⋮。お 金 と か か か る だ ろ う な ⋮⋮。そ ん な 金 は な い し な
⋮⋮︶
一夏が部活をしないのは金銭面の問題も参加をしない理由だ。彼
は暫く勉強してから五時半になる数分前に帰宅した。
それから彼は家事を済ませた後も就寝時間になるまで勉強を続け
た。
︵そろそろ千冬姉には家事が出来るようになってもらわないと困るな
⋮⋮︶
一夏はそんな事をふと考えていたらしい⋮⋮
18
?
第六話
IS学園⋮⋮入学式から数週間が経過した。ここに所属してい
る生徒達も他の高校と同様に放課後は部活動をしている生徒が大勢
いる。しかし、ISの訓練やそれに関する勉強を両立していくのは極
﹂
めて大変なのだがそれでもこの学園の生徒達は頑張っているのだ。
﹁めぇぇぇん
IS学園敷地内にある武道館では剣道部が部活動をしており、練習
試合が行われていた。一人の生徒が武道館内全体に響くほどの掛け
声を出すと共に相手の面に竹刀を振り下ろした。
竹刀は相手の防具に直撃して有効打となり、勝負がついた。二人は
所定の位置について一礼した。武道では礼に始まり礼で終わる。
﹁剣道の全国大会で優勝者⋮⋮。とても良い試合が出来ました、あり
がとうございます﹂
試合をした者はそう言って礼を述べた。この子と試合をしたのは
篠ノ之箒で彼女は中学3年生の時に剣道の全国大会で優勝している。
その時の試合は接戦でどちらが勝利してもおかしくなく、互いの全力
を尽くしたとても素晴らしいものだった。試合の後、箒と対戦相手は
き り が や
すぐは
互いに握手をかわしていたがこれが新聞記事の写真に載せられたら
しい。
余談だが決勝戦の試合相手は﹃桐ヶ谷 直葉﹄だった。
嘗ての箒がこの試合に出ていた場合、単なる憂さ晴らしで自己嫌悪
に陥るところだった。だがこの世界の箒は権現坂の出会いと彼の両
親が経営している道場で心技体を短い時間ながら教わっていた。そ
の教えを忘れることなく鍛錬をしていた。権現坂道場では人として
大事なことを多く教わった。
﹃怖れを恥じる事は無い。誰だって怖いと思う事はある。ただ大事な
のは自分自身の怖れと真正面から向き合う事だ﹄
余談だがこの試合には権現坂も観戦していた。試合から数日後、武
から優勝祝いのメールが届いたそうだ。試合を終えてからの練習を
終えた後、箒は部活仲間と親しく話をしながら着替えて食堂に行っ
19
!!
た。
彼女は昔から人付き合いが苦手で集団から孤立する傾向があった。
しかし、権現坂との交流で彼女の性格が変化して周囲とある程度友好
な関係を築けるようになっていた。
篠ノ之箒のIS学園での三年間の学園生活は充実したものになる
かは分からない⋮⋮。しかし、一つだけ言える事があるとすれば彼女
は自身の心と体を鍛える為に鍛錬を続けていく事だ。
その頃、IS学園のとある教室でセシリア・オルコットは補習を
受けていた。本来なら彼女も部活動等に参加するはずだった。しか
し、クラス代表を決める際の暴言が原因で放課後に居残り補習をさせ
られている。教師は時間ごとに交代しているがセシリアには殆ど休
む暇がなく疲れが顔に出ている。
20
補習の内容はIS操縦者としての心構え、代表候補生としての態度
など主に倫理的な部分を中心に行っている。彼女は女尊男卑の思想
について上層部から再三指摘と注意をされていたが彼女は表面的に
誤魔化していた。
セシリア・オルコットはイギリスの名門貴族のお嬢様で、過去に両
親を列車の事故で亡くし、勉強を重ねて周囲の大人たちから両親の遺
産を守ってきた努力家でもある。
男尊女卑の時代だったころから実家発展に尽力した母親のことは
尊敬していたが、婿養子という立場の弱さから母親に対し卑屈になる
それはセシ
父親に対しては憤りを覚えていた。それ故に男に対して見下した態
度をする事が多かった。
何故そんな彼女が代表候補生でいられたのか⋮⋮
暴言問題も報告する。その時、セシリア・オルコットは代表候補生と
次に何らかの問題を起こした場合、クラス代表を決める際に発した
のツケが回ってきたようだ。
実績のおかげである程度は多めに見られていたのだがここにきてそ
リアが他の代表候補生よりも優秀な実績を出していたからだ。その
?
いう資格と専用機、家の財産や名誉を全て失う事になるだろう⋮⋮。
暴言をしたにも関わらずこうして学園にいられるのは若いが故に
更生の余地があるか如何かを見極める為に敢えて補習を課すという
処罰だけにとどめているのだ。更正の余地がないと判断された場合
は候補生の資格剥奪と専用機の返還をすることになる。
しかし、学園に在籍出来るとはいえセシリアに居場所など存在しな
いがその理由は語るまでもないだろう⋮⋮。
﹁認 め た く あ り ま せ ん わ、自 分 自 身 の 若 さ ゆ え の 過 ち と い う も の を
⋮⋮﹂
セシリアは補習を受けながらそんな事を呟いていたらしい。
21
第七話
﹁今日は部活動で何をするのかを決めないとな⋮⋮﹂
一夏は放課後の教室でどの部活に入るかを現在、悩んでいる。元々
は部活動をせずに大学の医学部医学科に入学する為に勉強しようと
していた。
元々部活動の入部は強制では無く自主的なもので任意での参加で
ある事を彼は知っていたので部活をしないという選択も出来る。多
くの学校では部活に入る事が義務である、或いは自由参加であっても
暗黙の了解なのか部活に入る者も多い。そうした中で部活動をしな
いというのはやりにくいと思われるがある種の目標を持っている一
夏からしてみれば勉強時間を削ってでもする価値が無いと思ってい
た。
しかし、石室先生に勉強だけでは学べない事が多くある事を指摘さ
れてどの部活動に所属するべきか悩んでいる。運動部に目を向けて
みたが入るつもりは無い。
藍越学園の運動部はサッカー、野球、テニス、剣道、柔道、卓球、バ
レー等様々な運動部がある。これらの部活はユニフォームが必要と
なりそれなりに費用も掛かる。今の一夏は将来の為に無駄な消費を
抑えなければならないのでこの系統の部活動は入れそうにないよう
だ。次に文化部系列の部活に目を向ける。文化系の部活であれば大
抵の場合はユニフォーム等は必要ない。一夏は文化系の部活に入る
事に決め、どれにするか選んでいるが文化系の部活も運動部と同等の
数があるので迷ってしまう。
﹁この部活は⋮⋮行ってみるか﹂
一夏はとある部活動の紹介が目に入ったのでその部活動が行われ
ている場所に行く為に教室を後にした。
教室から出て数分後、一夏は部活が行われている場所である﹃調理
室﹄を訪れた。彼がやろうとしている部活は調理部だ。この部は初心
者から経験者まで様々な生徒が集まる。活動は水曜日・金曜日の週二
回で学園祭の時期が近くなるとほぼ毎日行われる。
22
水曜日は主にミーティングで、次回の内容を決めて材料、道具等の
確認をする。そして金曜日に実習をし、お互いに出来上がったものを
評価しあい、試食したり持ち帰ったりする。こうした活動を行ってい
る部で料理が得意な一夏にとっては最適と言える部活動だ。
その後、彼は体験入部をする事になり金曜日の調理実習に参加する
事になった。因みにこの部活の顧問は若いながらも家庭科教師とし
て教鞭をとっている﹃小松﹄という先生だ。小松先生は調理の専門学
校に進学する生徒とよく接している。小松先生は礼儀正しく、自分よ
りも相手のことを第一に思いやる心優しい性格で生徒や教師、この学
校の卒業生に慕われている。
金曜日に行われる調理実習の話し合いを聞きながら一夏は少しだ
け楽しみだと思ったらしい。
それから部活を終えて帰宅した一夏はいつも通りに夕食を作っ
て一人で食事をする。寂しいと思う事がたまにあるのだが自分には
やるべきことがあると鼓舞して気を紛らわした。
夕食を作り終えた一夏は後片付けをしていた時にとあるニュース
が報道されていた。
その内容はデュノア社が経営破綻による倒産したというニュース
だった。経営破綻以前にもデュノア社社長の妻が不正な取引や違法
行為をしていた事がこれを機に露呈したことで社会的に再起不能に
なってしまった。
余談だが社長には愛人がおりその人との間に生まれた娘がいるら
しい。その娘である﹃シャルロット・デュノア﹄は父親に関わる事な
く母親と平穏な日常を送っている。
本来の世界では母親が死亡した時にデュノア家に引き取られたが、
事実上居場所がなかった。それだけでなくたまたまIS適性が高い
ことが判明したことから彼女の意志とは関係なくIS開発のための
道具として扱われてきた。
挙句の果てにはIS学園でとあるISのデータを盗む様に命令さ
れていた。しかし、この世界ではそんなひどい目にあうことはなく平
23
穏な暮らしをしており、母親は元気だ。
デュノア社が倒産しても一夏には何の影響もなく彼はいつもの様
に洗い物を片付ける。
︵千冬姉が家に戻ってきたらこの本を渡すか⋮⋮︶
彼は洗い物を片付けながら本棚にあるとある本を姉に渡そうと考
えていた。その本は﹃ズボラな人でも出来るきれいな整頓と片付け
術﹄だった。彼の姉は家事が出来ず部屋を散らかしたりする事が多く
ある。当初はあまり気にしていなかった一夏だったが医者になる事
を決意してふとある事を思った。
︵俺が大学行って戻る機会が少なくなって部屋が散らかっていたら困
るな⋮⋮︶
彼は姉の代わりに家事をこなしてきたが大学に入って家に戻る時
が少なくなった時の事を懸念し始めた。料理はともかく掃除だけで
も何とか出来るようになってほしいとお小遣いをためて前述した本
ない︶。
しかし彼のこの反応は強ち間違いではないだろう。白式は雪片弐
24
を購入した。
一夏は姉離れをしつつあるようだが千冬が弟離れできるのは何時
になるのか⋮⋮
﹂
!
とても辛口な反応を示した︵渡した相手が誰なのかこの一夏は知ら
Sを渡したアホの顔を見てみたい
を専用機として支給するなんて⋮⋮わけがわからないよ。こんなI
﹁なぁにこれぇ⋮⋮。素人にこんな極端な性能と自滅能力を持つ機体
仕様能力をみた場合の反応︵これはお遊びです︶
もしも医者を目指している一夏が白式のカタログスペックと単一
∼おまけ∼ ?
型という近接ブレードが主武装だ。単一仕様能力は零落白夜で対象
のエネルギー全てを消滅させる。使用の際は雪片弐型が変形し、エネ
ルギーの刃を形成する。相手のエネルギー兵器による攻撃を無効化
したり、シールドバリアーを斬り裂くことで相手のシールドエネル
ギーに直接ダメージを与えられる白式最大の攻撃能力だ。ただし自
身のシールドエネルギーを消費して稼動するため、使用するほど自身
も危機に陥ってしまう諸刃の剣でもある。これはパイロットの安全
と言う点から言えば欠陥としか言いようがない。それに雪片以外の
武器が使えないというのも欠点でもある。
この世界の一夏はISの事に関してはISの事は少しは知ってい
るので零落白夜を素人が使うのは危険だと想像できた。しかし、この
世界の一夏でなくても白式を素人が使うのは車を無免許運転してい
るのに近いだろう。
彼はこんな物を使う気はない事と作った奴があほである事を言っ
たそうだ⋮⋮。
しかし渡した相手が誰なのかを一夏が知ったらとても恐ろしい事
が起きるだろう⋮⋮。
25
第八話
箒は一般科目の勉強と部活動を両立している。IS学園では高
校生で行う一般科目だけでなくISに関する勉強も並行して行われ
ている。それ故に一般的な高校生よりも勉強量が多い。
︵ISの事に関しては覚える事が多いな⋮⋮︶
箒は夕食を摂り終えた後、寮にある自室で今日の授業でした内容の
復習をしていた。その授業内容はISの操作方法や取り扱いにおけ
る法律及び歴史等の内容だった。ISに関する授業はここ最近、倫理
的な内容を重視するようになっていた。これはIS登場から2∼3
年経過して女性優遇政策により発生した﹃女尊男卑﹄が萬栄しかけた
反省としてISに携わる者として恥じる事のないように教育してい
く。
倫理的な内容を重視するようになったの前述した反省だけでなく
しずね
26
女尊男卑が浸透しかけていた時、ISに対するイメージが悪化してい
き、ISに関わる仕事をしている人達が風評被害を受けていた事も要
因となっており、そのイメージを払拭するというのも目的としてい
る。
彼女はここに望んで入学して来た訳ではない。とはいえやるべき
事はしっかりとやらなければ如何にもならない。覚えるべき事の多
たかつき
さに顔を顰めながらも箒はノートに書いていく。その途中でルーム
メイトである﹃鷹月 静寐﹄がシャワー室から出て来た。
﹁篠ノ之さん、つぎどうぞ﹂
静寐は箒にシャワー室から出た事を伝える。彼女はクラスで一番
のしっかりものと評されるほどの真面目な性格だがそれとは裏腹に、
ジョークが満載された本を好む傾向がある。シャワーを浴び終えた
﹂
彼女は既に部屋着に着替えている。二人の仲は良好だ。
﹁分かった。ん⋮⋮それは何だ
でその事を尋ねた。
室に向かおうとしたが静寐がスマホで聴いている曲が気になったの
箒は返事をした後、机に置いてある教材を簡単にまとめてシャワー
?
﹁これはね、最近活動が始まった﹃μ
s﹄の曲だよ﹂
﹄という曲でネットにある動画
sは三人で高坂穂乃果、南
'
sの曲を聴いて感心する。少しばかり粗雑な部分はある
と三組のクラス代表を堅実な戦術で倒し、一組のオルコットは殆どI
四組だった。四組の代表は日本の代表候補生で実力は確かだ。二組
そしてクラス代表戦は何の妨害もなく順調に進行し、優勝したのは
だった。
と補習を受けていたので練習は殆ど出来ていないという悲惨な状況
協力などはほぼ皆無だ。セシリアはクラス代表戦が始まるまでずっ
一組はオルコットがクラス代表を決める時にやらかした事もあり
と行いISでの訓練をしっかりと行った。
表者の雑務サポート等多くある。一組以外は情報収集等をしっかり
う事も重要となっていく。他のクラス代表者の情報を収集したり代
クラス代表戦は代表者の実力だけでなくクラス同士での協力し合
で出場するようだ。
機持ちがクラス代表なのは一組と四組だけだ。二組と三組は訓練機
行われた。セシリアはクラス代表なので当然出場した。因みに専用
それからIS学園に転入生が来ることは特になくクラス代表戦が
やっていけそうだ⋮⋮。
静 寐 の 言 葉 に 箒 は 返 事 を し て 気 合 を 入 れ 直 す。如 何 や ら う ま く
﹁そうだな⋮⋮。よし、シャワーを浴びたらもうひと頑張りしよう﹂
﹁これを聴いているとがんばろうって思いが出てくるよね﹂
かもしれないがそれでも自分達の全力を出して踊っている。
箒はμ
﹁これは⋮⋮すごい⋮⋮﹂
最近、活動が始まり今注目されているようだ。
ことり、園田海未の三人で国立音ノ木坂学院のスクールアイドルだ。
おりとても輝いているように見える。μ
サイトに配信されている。三人の女子高生が歌を歌いながら踊って
ている曲は﹃START:DASH
箒は静寐から渡されたイヤホンを耳に着けて曲を聴く。静寐が聴い
静寐はそう言って左耳に着けていたイヤホンを外して箒に渡した。
'
!!
Sを動かせていないのと精神的に不安定だったという事もあり多少
27
'
は苦戦しながらも勝利を収めた。
因みに優勝したクラスには食堂のデザート無料券が得られるとの
事でそれを得た四組は喜んでいたらしい。
∼おまけ∼
夜のIS学園にある量の寮長室で織斑千冬がビールを一人で飲ん
でいた。
﹁一夏ぁ∼⋮⋮。たまには私にマッサージをしてくれ∼⋮⋮﹂
泥 酔 に 近 い 程 ビ ー ル を 飲 ん だ 千 冬 は ろ れ つ が 若 干 怪 し い 状 態 と
な っ て い る。千 冬 は 唯 一 の 家 族 に し て 弟 で あ る 一 夏 非 常 に 大 切 に
思っている。
しかし、ある時から一夏は千冬に構う時間が極端に少なくなり今ま
で自身にしてくれたマッサージを全くしなくなった。マッサージを
頼んでも勉強があるから無理と断られてきた。更には第二回モンド
グロッソを観に行かないと言い出して連れていこうとしたのだが頑
なに一夏は拒否したことで千冬は折れた。
第 二 回 モ ン ド グ ロ ッ ソ 後 か ら 一 夏 は ま す ま す 千 冬 に 構 う 時 間 が
減っていき遂には家事を自分で出来るようになれと言われるまでに
なってしまった。
ブラコンである彼女にとって弟が自分から離れていくのはとても
寂しい物なのだろう。因みに彼女は一夏が将来、医者になる事を知ら
ない。
﹁前みたいに構ってくれ⋮⋮﹂
千冬は寂しさに身を任せてビールを飲み続けていたらしい。
余談だが彼女は自身のするべき仕事を後輩の山田 真耶に押し付
けたらしい⋮⋮。こんな醜態を山田先生が見たら大変な事になりそ
うだ⋮⋮。
28
第九話
新 聞 に と あ る 記 事 が 表 紙 に 掲 載 さ れ て い た。そ の 題 名 は﹃ド イ
ツ、違法研究を行っていた﹄である。
ヴァ
禁
ル
キ
止
リ ー・
さ
ト
れ
レー
て
ス・
い
シ
る
ス
V
テ
ム
T
シ
ス
テ
ム
記事の内容によるとドイツはISの研究においてアラスカ条約で
は
︵Valkyrie Trace System の 略︶が 未 完 成 だ が
シュヴァルツェア・レーゲンに搭載されていたことが発覚した。この
システムは過去のモンド・グロッソ優勝者の戦闘方法をデータ化し、
そのまま再現・実行するものである。これは一見すると最高の力を得
たかのように思うがそうではない。データ入力された選手の動きを
再現する為、パイロットに﹃能力以上のスペック﹄を要求するため、肉
体に極めて多大な負荷が掛かり、場合によっては生命が危ぶまれ、最
悪の場合は死に至る。
それ故に現在ではあらゆる企業・国家での開発が禁止されている。
この研究をしている事が公にされた場合、国際問題に発展しかねな
い。
ここからは裏の情報で表に出ていない物を取り上げる。ドイツは
それ以外にも倫理的に大きな問題がある研究をしていた。
それはシュヴァルツェ・ハーゼという特殊部隊に所属しているラウ
ラ・ボーデヴィッヒ︵15歳︶だ。18歳未満の子供の兵士、所謂少
年兵だ。
武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約選
択議定書 第3条には18歳未満の児童の強制的徴集及び敵対行為
への参加を禁止。自国の軍隊に志願する者ついては、18歳未満の者
の採用を認めているが、その際低年齢を引き上げ、最低年齢について
拘束力のある宣言をする義務がある。
︵第4条︶また、国の軍隊とは異なる武装集団は、18歳未満の者の
採用及び敵対行為への使用をすべきではないと規定され、締約国は、
そのような行為を国内法上の犯罪とする措置をとる義務を有する。
ラウラが前述した文に違反しているのではないかと批判を受けて
29
いる。しかし、前述した少年兵が表に出なくとも彼女の出自そのもの
が大きな問題となるだろう。
ラウラは遺伝子強化試験体︵簡単にいえば生体兵器に近い試験管ベ
ビー︶として生み出されたのだ。体外受精そのものに問題がある訳で
はない。
不妊治療や病のために体外受精を行うという選択肢があるのでそ
うした出生だったとしても問題にはならない。しかし、彼女は遺伝子
操作により生体兵器として生み出された事に問題があるのだ。それ
以外も問題となっている研究がいくつかあるがここでは省略する。
違法な研究︵表に出していない情報を含めて︶をしていたことが表
ざたになったドイツは国際的な立場が極めて悪くなった。これらの
研究を危惧した各国の意思によりドイツが保有していたISのコア
は全て剥奪されたそうだ。この情報は某国の諜報機関に所属してい
る者が資料などを持ち帰って伝えられたそうだ。
余談だがラウラ・ボーデヴィッヒは自殺していてこの世から既に
去っていた。その理由はISの登場後、ISとの適合性向上のために
行われたヴォーダン・オージェの不適合により左目が金色に変色し、
能力を制御しきれず以降の訓練では全て基準以下の成績となってし
まう。このことから﹁できそこない﹂と見なされて存在意義を見失い、
研究者や同僚からいじめを受けた末に自殺したらしい。
﹁これは⋮⋮。人の命を道具としか見ていないのか⋮⋮﹂
一夏はこの記事を読んでそう呟いた。VTシステムの特性を知れ
ばだれでもそう考える。しかしながら医療の世界もある意味では似
た 事 が 起 き て い る。そ れ は 新 薬 の 開 発 や 新 た な 治 療 方 法 の 実 験 だ。
これらも被験者がいてこそ出来るものだ。ただ違う部分があるとす
ればその研究が人類の未来に貢献するか如何かだ。
彼は医者になる為にただひたすら突き進んでいく⋮⋮。
30
第十話
箒がIS学園にいる頃、一夏はいつもの様に藍越学園に通ってい
る。別の世界ではIS学園に通っているところだがこの世界では普
通の学園生活を送っている。
昼からの授業は現代社会でこの授業を担当する教師は﹃石室 章
雄﹄である。教師の号令で皆は席から立って一礼した後、着席した。
礼に始まり礼に終わる。これは武道だけでなくあらゆる面で重要と
なる事だ。教わる相手に敬意を持って接する事は大切な事だ。
﹁今日の授業は現代社会で問題となっている事だ﹂
石室先生は今日の授業でやる内容を提示する。その事が記述され
ている教科書のページを開くように促す。このページにはISの登
場により問題となっていた女尊男卑の事と性差別に関する内容等が
掲載されている。
︶
31
︵IS⋮⋮。俺達はこの未知なる力に振り回されている気がするけど
そんな世の中になっていたらどうなっているんだろう⋮⋮
なったような態度をとるのか私はそれを不快に思った﹂
﹁I S は 女 性 に し か 扱 え な い の に 何 そ れ だ け が 理 由 で 自 分 達 が 偉 く
徒は音読をする。数分で音読を終えた彼女は自身の意見を述べる。
石室先生に音読するように指示された﹃志賀崎 瞳﹄という女子生
﹁志賀崎、このページの内容を音読して自身が思った事を述べよ﹂
し、彼はそれだけでなく生徒にある事を行うように促す。
授業では大抵の場合は教科書の内容に沿った話をしたりする。しか
石 室 先 生 は 教 科 書 に 書 か れ て い る 内 容 の 一 部 を 簡 単 に 説 明 す る。
﹃BIGBOSS﹄により完全な女尊男卑の思想に陥らなかった﹂
この考えが間違いであり、我々の未来に悪影響を及ぼすと警告した男
﹁ISの普及に伴って世界は女尊男卑に陥りかけていた。しかし、
る。
れ、それが新たな社会の歪みとなっている別の世界がいくつも存在す
しか扱えないが故に女性が上であるという図式がいつのまにか生ま
一夏はそんな事を考えながら教科書を読み進める。ISは女性に
?
志賀崎は自身の思った事を率直に述べた。彼女の言うようにIS
が女性にのみ扱えるからと言って偉そうにしていい理由にはならな
い。志 賀 崎 は さ ば さ ば と し た 性 格 で I S に よ る 性 差 別 は 当 初 か ら
嫌っている。彼女は釣り目で少し見た目は怖そうだが素行は悪くは
できれば理由を述べてもらいた
なく女尊男卑という思想を不快に思っている。また友達思いで優し
い一面があるらしい。
﹁何故、貴方は不快に感じたのか
い﹂
石室先生は彼女に自身が何故そう思ったのかの理由を問う。
﹁ISを扱うにはそもそもそれに適した勉強をする必要があり、主に
IS学園といったISに関する教育機関に入って勉強する事でIS
操縦者になれる可能性が出来るからです。偉ぶっている女性たちは
そうした勉強をしていない人たちが多いと聞くので私はそれが気に
入らないと思ったからです﹂
志賀崎は理由を述べて着席した。この意見に石室先生は感心する。
﹁ISの普及によって女尊男卑に陥りかけたのは彼女の言う通り、I
Sが女性にだけ動かせる事を女性が偉いと勘違いするが故に生じる。
しかし、ISを実際に動かすには専門の教育機関で勉強して卒業、そ
れから厳しい試験を合格する事で初めてIS操縦者になれる。女性
の方々にはISを動かせるから女性が上であるという認識を早く捨
てて欲しい﹂
彼は志賀崎の意見を肯定しつつ女尊男卑は間違っている事を生徒
に伝える。近年の社会では間違った認識や誤解を生まないように指
導をしていく。
ただ、その考えが気に入らない女尊男卑の思想を持った女子生徒が
2、3人いるようだ。しかし直ぐに反論をしても意味がないようだ。
何故なら相手の意見は筋が通っているのでそれを覆すのは容易では
ない。脅すような形で発言しても授業妨害と見なされて生徒指導室
に即連行されてしまう事は目に見えているので今は大人しくしてい
るようだ。
石室先生はただ教科書の内容を教えるだけでなく自身の考えを述
32
?
べさせるように促す。それはただ生きているだけでなくあらゆる分
野について自分の考えを持ってほしいと彼は思っている。それらの
意見を互いに交換して生徒が違う考えを取り入れて幅広い視野を持
つようになってほしいを石室先生は考えている。
﹁他の生徒の意見も聞きたいところだが時間が足りなくなるので次は
IS普及後に起きているテロについて説明する﹂
教科書を一枚めくって開いた次のページは性差別等によるテロが
多発している事が書かれているページだった。
﹁ISの登場が十年が経過した今でも性差別が原因でテロ行為やデモ
などが未だに起きている﹂
このテロについて彼は詳しい説明をする。女尊男卑によって多く
の男性はありもしない言いがかりなどで人生を大きく狂わされ、また
ある者は家庭崩壊した等の実例を交えながらテロ等の問題点を述べ
ていく。
33
テロが起きる理由は単純ではない。貧困、医療不足、政治等への不
満、差別宗教的な問題や資源をめぐる問題や国のイデオロギーの違い
が要因となっている場合が多い。これらは人間がこの地球上で生き
ていく限り決して無くなる事は無いだろう。今の問題を解決しても
新 た な 問 題 が 生 ま れ る。そ の 問 題 が テ ロ を 起 こ す 切 っ 掛 け と な る。
そうした説明をしている途中で授業の終わりを告げるチャイムが
鳴った。
﹁今日の課題は性差別等によるテロ等の社会問題に関して、自分の意
見をこの紙に書いて次の授業の時に提出せよ。本日の授業はこれで
終了する﹂
石室先生は用紙を配布した後、号令して今日の授業が終了した。
一夏は授業を終えて、今回の授業で出された課題に取り組むことに
した。
︵人が生きる限り何処かで紛争やテロが起きる⋮⋮。医者はその紛争
やテロで怪我をした人を救えても死んだ人は救えないし、テロの根本
︶
的な解決が出来るわけではない⋮⋮。俺はどんな医者になるべきな
んだ⋮⋮
?
彼は医者になっても命を守れるわけでないと薄々は気付いていた
がそれに関して大いに悩んだようだ⋮⋮。
34
第十一話
日本にある巨大財団・鴻上ファウンデーションでとある会議が行
われている。
鴻上ファウンデーションは3大何やってるのかわからない大企業
として有名であり、美術館や飲料水等の開発等の様々な業種でその名
を聞くことが多いがその実態は謎に包まれている。
その会長は﹃鴻上光生﹄という強面の大男で、派手な色のスーツを
着用している姿がほとんどであり、あまりカタギの人には見えない。
そんな見た目によらず人当たりは良く紳士的だが、ハイテンション
で他の企業の偉い人を口先だけで手玉に取るほどの人物である。
ここからは鴻上ファウンデーション内にある会議室で行われてい
る事を見て見よう。
﹁僕たちは鴻上ファウンデーションや多くの企業からの協力により遂
に念願だった﹃テレイグジスタンスロボ﹄を実用段階まで進める事が
出来た﹂
スクリーンにはテレイグジスタンスロボの絵やそれに関する説明
が映っている。その説明をしているのは﹃ハル・エメリッヒ﹄という
青年である。彼は独学でとある工科大学に入学し、若くして博士号を
授与され、別の大学でも学士号、修士号を取得した天才である。その
後、彼は鴻上ファウンデーションの会長からスカウトされてファウン
デーションの下部組織が運営している工学研究所に所属している。
ハル・エメリッヒは日本のアニメが好きで、アメリカで開催される
日本アニメのイベント﹁オタコン﹂
︵オタク・コンベンション、Ota
kon︶ の常連であることから﹁オタコン ︵Otacon︶﹂と呼ば
れおり、彼はそのあだ名を気に入っている。
スカウトされた研究所では二足歩行ロボットの開発が行われてい
る事を聞いたオタコンはアニメのようなロボットを造りたいという
思いを抱いていたのでそれが見事に合ったのだ。
それに加えて会長は欲望を持つ者を評価する傾向にある。だから
35
オタコンの抱く欲望を評価してスカウトしたのだろう。
オ タ コ ン は 開 発 し た テ レ イ グ ジ ス タ ン ス ロ ボ の 説 明 を し て い く。
テレイグジスタンスとはバーチャルリアリティの一分野であり、遠隔
地にある物︵あるいは人︶があたかも近くにあるかのように感じなが
ら、操作などをリアルタイムに行う環境を構築する技術およびその体
系のことである。
彼らが開発したのは遠隔ロボットのセンサ情報をオペレータが受
けながら、このロボットを制御することにより、遠隔におけるタスク
を実行する遠隔操作システムの形式をとったロボットで作業する対
象がバーチャルな世界であるようなテレイグジスタンスということ
を述べている。
そしてこの技術を応用し、人間が行く事が困難な場所での危険作業
が出来るものと考えている。
このロボットの開発自体はISが登場する前から行われていたが
思うように進まず停滞気味だった。
しかし、ISの登場からその研究によりISで使われている技術
︵ハイパーセンサーやISスーツ等︶で遠隔操作出来る距離を拡張す
る事が出来た。 更にIS登場から数年後、VRMMORPGのソー
ドアート・オンライン︵略称SAO︶とアルヴヘイム・オンライン︵A
LO︶事件が発生した。この事件によりテレイグジスタンスの技術が
飛躍的に進歩する事になった。
その理由はSAO、ALOで使われているVRマシンにある。
このマシンはハードの内側に埋め込まれた無数の信号素子で発生
させた多重電界でユーザーの脳を直接接続し、感覚器官を介さずに脳
に直接仮想の五感情報を与えて仮想空間を生成する。同時に脳から
体へ出力される電気信号も回収するので、仮想空間でいくら動き回っ
ても現実世界の体はピクリともしない。また、一定以上の痛覚もペイ
ン・アブソーバ機能によって遮断される。
この技術をテレイグジスタンスに応用したのだ。
事件後に鴻上ファウンデーションの下部組織の企業がの手により
﹁ザ・シード﹂規格のVRMMORPGとして復活した。そしてゲーム
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運営をする傍らでオタコン達がそのゲームシステムを応用してロ
ボットの研究をしていた。
二足歩行技術に関しては鴻上ファウンデーションだけでなく小型
の二足歩行ロボットの研究・開発を行っている同ファウンデーション
に所属している企業ラムダ・コーポレーションも開発に携わってい
る。
ラムダ・コーポレーションは工業用ロボの開発、研究をしている。
そして二足歩行ロボットの研究も行われており、鴻上ファウンデー
ションの研究所よりも進んでいる。
﹁我々と共同開発したテレイグシスタンスロボが世界を変えるやも
しれんな⋮⋮﹂
ラムダ・コーポレーションの会長を務める壮年の男は誰にも聞こえ
ないようにそう呟いた。
鴻上ファウンデーションの研究員でこのロボットの開発に携わっ
たのはオタコンだけでなく電子物理学者﹃沢神 りんな﹄、天才プログ
ラマー﹃杵田光晴﹄や量子物理学者である﹃高山我夢﹄等の研究者が
開発及び研究に携わっていた。
ラムダ・コーポレーションの研究員からはこのロボットの動力源を
開発した科学者﹃クリム・スタインベルト﹄、二足歩行ロボットの骨格
を 製 作 し た﹃ダ テ 博 士﹄、そ の ロ ボ ッ ト の 駆 動 系 を 製 作 し た 科 学 者
﹃ショーン・ホワイト﹄やロボットに使われる人工筋肉を開発した科学
者﹃稲森 京子﹄等、どちらも極めて優秀な研究者がそろっている。
テレイグジスタンスロボットの動力源としてISのコアに酷似し
た擬似コアを使用している。このコアはISのコアにある量子変換、
PICは無い。しかし、擬似ハイパーセンサー、コアネットワークシ
ステムを搭載しておりハイパーセンサーとコアネットワークシステ
ムを組み合わせる事により操縦者の動きをロボットにフィードバッ
クする仕組みだ。現段階では操縦者が動きを反映させるために作ら
れた特別な部屋の中でその動きをする事でロボットも同様の動きを
する。最終的にはSAOやALOの様な形でロボットを動かせるよ
うに出来る事、ロボットの大きさが現段階では約5mなのでそれを2
37
mに小さくする事を目標としている。
テレイグジスタンスロボットは八月に発表される予定だ。
∼おまけ∼
七月、IS学園の行事で臨海学校がある。一年生はその行事をする
場所﹃花月荘﹄に来ていた。無論、箒もいる。この行事は2泊3日で
1日目が自由行動。2日目に装備試験という予定になっている。
その行事中に篠ノ之箒宛に差出人不明のISが届けられた。
しかし彼女は直さま警備に通報して係員によってそのISは直ぐ
に回収された。ISは研究所に移送された後に解体され、そのコアは
表舞台に立つ機会を永遠に失った。
第四世代のISとして世間に出るはずだった﹃紅椿﹄は箒が手に
する事無く永遠の闇に葬られたそうだ⋮⋮。その事に何処かの兎は
発狂していたらしいがそんな事を知る者は誰もいなかった。
余 談 だ が 箒 は 姉 と は 絶 縁 し て い る の で 束 か ら の 贈 り 物 だ と 分
かったからそれを受けとる気は最初からなかった。
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番外編 ISの未来
ISが登場してから42年後、ISの開発者である﹃篠ノ之 束﹄
は自らが開発したISの発展を望んでいたがその願いが叶わなかっ
た。
ISがこの世界で使われなくなったのには二つの理由がある。
一つ目は﹃G│ディフューザーシステム﹄という反重力発生装置が
開発及び民間企業にも普及したからだ。この装置はDr.アンドル
フが基礎理論を確立して完成させた反重力発生装置である。これは
元々﹃反重力ホバーシステム﹄が元になっているが﹃G│ディフュー
ザーシステム﹄は前者よりも出力が劣っていたのを改良したことによ
り名前を変えたらしい。
姿勢制御装置として今では一般的な航空機や軍用機などに搭載さ
れており、この装置を搭載した機体は重力に逆らって宙に浮くことが
できるほか、急加減速や急旋回などあらゆる機体制御が可能となって
いる。また、機体の大幅な省スペース化にも一役買っており軍用機の
小型化やテレイグジスタンスロボに後付け装備として飛行能力を与
えている。
そしてその装置を他の科学者と協力して民間企業でも扱えるよう
に改良された事によりISのPICによる慣性制御による飛行の優
位性がほぼ失われてしまった。加えてISとは異なり量産できると
いうのも注目すべき点である。
とある実験記録によると反重力システムを搭載した航空機と同シ
ステムを搭載したテレイグジスタンスロボの性能比較実験を行った
結果、ISと同等以上の機動力を発揮した。因みに速度では航空機が
勝り、汎用性ではロボットが勝るとの事だった。
二つ目はテレイグジスタンスロボの通信機能の強化と小型化によ
りISよりも遥かに有用性があるという事だ。
テレイグジスタンスロボは発表当初、全長は5mと未々大型だっ
た。しかし、技術の進歩により現在では15㎝のロボットが開発、運
用されている。通信機器に関しては高山我夢、藤宮博也の二人の科学
39
者を中心としてチェレンコフ光を用いた光通信システムを開発した。
これに加えて擬似ハイパーセンサー等の改良によりロボットのタイ
ムラグ短縮や操作出来る距離が従来よりも遥かに伸びた。
更にロボットの小型化により新たな二足歩行機械が多く開発され
た。ラムダ・コーポレーションの﹃カスタムロボ﹄、とある企業が軍用
目的で製作した増殖強化型アンドロイド﹃ロイミュード﹄等遠隔操作
で動かすロボットが多数生まれた。
しかし、遠隔操作するロボットだけでなく人が乗り込むロボットも
また開発された。人型機動兵器﹃アーマード・コア﹄や﹃モビルスー
ツ﹄、核搭載二足歩行型戦車﹃メタルギア﹄等の有人型の二足歩行ロ
ボットも多く生まれ、あらゆる戦場で使用されている。
しかし、その戦場にISの姿はなかった。理由として考えられるの
はISは女性にしか扱えない事だろう。モビルスーツ等は男女問わ
ず訓練を積むことにより扱える。それだけでなく製造方法が分から
ないISのコアとは異なり量産が容易に行えるというのもポイント
だ。幾ら強力な兵器でも量産できなければ意味がないのだ。ISを
研究していた企業などはやがてISよりも遥かに汎用性が高いロ
ボ ッ ト 開 発 に 移 行 し た。I S の 研 究 等 は 殆 ど 行 わ れ な く な っ て し
まった。
ISが戦場を支配していた時代は終わりを迎え、二足歩行ロボット
を中心とした時代に変わった。この時代では宇宙開発が大幅に進み、
何と月や火星付近に宇宙基地が建設されたりするなど宇宙開拓が盛
んになっていた。モビルスーツやカスタムロボ、テレイグジスタンス
ロボ等が宇宙で飛び回る姿を多くの人々が見ていたがそこにISの
姿は見られなかった⋮⋮。
束は自分が作ったISを誰も使わなくなったことに怒り、無人の
ISを用いて二足歩行ロボットの研究、開発が行われている企業に対
してテロ行為を行った。全てはISを再び頂点に立たせるためだっ
た⋮⋮。そう、白騎士事件を起こした時と同じ思いを抱いていた。
しかし、彼女の目論見通りに事が進展する事は無くロイミュードや
40
戦闘用テレイグジスタンスロボット等により無人ISは悉く破壊さ
れた。それでもロボットの開発施設等を破壊したりする事には成功
した。
だが、そんな事をしてもISを見向きする人たちは現れる事はなく
寧ろISは二足歩行ロボットよりも劣っている事を示す事になって
しまい、ISは本当に誰も使われなくなるという以前よりも状況が更
に悪くなった。
無人で動かせるISが開発されたとしてもそのコアの絶対数が限
られていては容易に研究は進まない。宇宙へ飛び立つはずだったI
Sは人々から忘れ去られてしまうのは時間の問題だろう⋮⋮。
そして束はその世界に絶望していつの間にかこの世を去ったらし
いがそれを気にする者は誰もいなかった。一時期は世間をひっかき
まわしていた天災は時代に適応できずに呆気なく消え去った⋮⋮。
41
第十二話
﹁今日は三者懇談だ。丁度謂い機会だから千冬姉に将来は医者志
望である事を言おう﹂
一夏は三者面談で自分の進路をこの機会に宣言する事を決意した。
集合場所は藍越学園前で千冬は仕事をしてから藍越学園に向かうと
いう事になっている。
予定通り、千冬は自身の仕事を終えて藍越学園にやって来た。彼女
はスーツ姿でとても様になっている。
﹁待たせたな一夏﹂
千冬は一夏にそう言って待たせてしまった事を軽く謝るが一夏は
気にしていないようだ。
﹁行こう、千冬姉﹂
一夏はそう言って千冬と共に三者面談を行うためにその教室に向
42
かった。
三者面談は順調に進んでいた。彼のクラスの担任である石室先生
は一夏の学校生活や成績は問題ないと評価している。ここで一夏は
大学で医学部を志望している事を千冬と担任に明かした︵担任には既
に医者を目指していた事は言っていた︶。
﹁医者を目指しているのは以前聞いた。今の成績では少し厳しいかも
しれないが一年の夏休みだ。これから頑張っていけば君が志望する
大学に行けると思う﹂
﹁⋮⋮﹂
石室先生は一夏に若干辛口な評価を出すがフォローはしっかりと
行っていた。しかし、千冬は自分の弟が医者を目指している事を知っ
て黙り込んでしまった。
それから三者面談を終えた一夏と千冬は自宅に戻ったが、そこで
﹂
千冬は医者を目指して事を黙っていたのか問いただす。
﹁一夏、何故私に黙って医者を目指していたんだ
?
﹁それは⋮⋮千冬姉に黙っていたのは忙しくて中々言えなかったのと
これは自分の問題だから﹂
千冬の質問に対して一夏はそう答えた。彼にとって自分の夢は出
来る限り自分の力で叶えようと思っていたので千冬に言うべきか
そ
迷っていた。それだけでなく千冬は仕事で家を空けている事が多く、
中々この話をする機会に恵まれなかった事が要因だ。
﹁医者になるにはどれだけの金が掛かるのか分かっているのか
れに今のお前の成績では厳しいとお前の担任は言っていた﹂
千冬は捲し立てながら言う。確かに医者になるには莫大な費用が
掛かる。私立大学ともなれば1千万円を超えるのはざらだ。それに
一夏の現時点での学力では少し厳しいのも事実だ。
﹁学力はこれから着けていく。それに学費は奨学金や国立大学に行け
ばある程度は減らすことが出来る﹂
医者になる為に必要な事をある程度調べていた一夏は姉の意見に
対して反論する。彼の言う通り国立では場合にもよるが約350万
円で私立大学よりも遥かに安く済む。
﹁しかし、それはあくまで国立大学に合格すればの話だ。今のお前が
合格できるとは到底思えないな﹂
﹂
てしまった彼は家を飛び出してしまった。
﹂
彼は徒歩で5分の所にある公園に走って向かっている。そこは勉
強終わりに休憩所として立ち寄る場所で一夏にとってはお気に入り
の公園だ。
公園の入り口に行くためにはその前にある信号機がある横断歩道
を通過しなければならない。時刻は午後七時半で少し暗いもののそ
れほど見通しが悪いわけではない。一夏は信号機が赤から青になっ
43
!?
千冬はそう言って一夏の反論を一蹴して彼に追い撃ちを掛けるよ
うにある事を言う。
﹁兎に角、医者になろうなどと二度と考えるな
﹁⋮⋮千冬姉のわからずや
千冬はそう言って一夏が医者を目指す事を禁じた。
!
一夏は千冬に自分の夢と目標を全て否定されて自暴自棄となっ
!!
て直ぐに横断歩道を進んでいく。しかし彼はこの時、自分の身に大き
な危機が迫っているとは気付いていなかった⋮⋮。
彼が横断歩道を歩いている頃、数百メートル先に青い軽自動車が
走っているが何か様子がおかしい。道路標識で指示されている速度
を上回っている。この道路の規定速度は40 kmだが今走ってい
る車は大凡80∼95 kmの速度で進んでいる。それだけでなく
先程から少しふら付いているようにも見える。
この車を運転しているのは酒を飲んだ状態で運転しており、かなり
酔っている状態だ。そんな状態で車両の運転をするのは極めて危険
な行為だ。運転手は目の前の信号機が赤にも関わらず停止はおろか
スピードを落とそうとしない。恐らく運転手は少しぐらい信号無視
をしても良いだろうと高を括っていた。それに急ぎの用事があった
のと酒を飲んで酔っていたのか注意力が低下していた。
車はそのまま少年が横断している歩道に突っ込んで行った。歩行
44
者 と の 距 離 が 5 0 ㎝ の 所 で 運 転 手 は 歩 行 者 を 発 見 し て 咄 嗟 に ブ
﹂
レーキをかけた。
﹁あっ
事故が起きてから数分後、千冬は弟に少し言いすぎたと思い探し
する者は誰もいなかった。
び救急車を呼ぶべき加害者は事故現場から既に逃げたのでそれらを
救急車で病院へ搬送しなければ彼の命が危ない。しかし応急手当及
一夏の頭から血が流れており意識を失っている。応急処置をして
げてしまった。
その歩行者を助けようと思ったのだが恐怖の余りその場から車で逃
リートに後頭部を叩きつけられた。彼と激突してしまった運転手は
車と少年は激突し、少年は数m先まで飛ばされとても硬いコンク
付くも手遅れだった。
横断歩道の中腹に差し掛かった時、一夏は車が接近している事に気
!?
に行こうとした時、電話が鳴った。
﹁はい、織斑千冬です﹂
千冬は電話に出て用件を尋ねようとした時、電話相手の人は直ぐに
ある事を伝える。
﹁五反田 蓮です。一夏が事故に遭って救急車で搬送された 車で
﹂
私の弟は無事ですか
彼の治療を担当していた医者に廊下で会った。
﹁貴方が織斑千冬さんですか
﹁はい、一夏はどうなりましたか
﹂
千冬は病院に到着して一夏がいると思われる場所を探しに行くと
にやって来た。千冬はその車に乗って一夏のいる病院に向かった。
そう言って蓮は電話を終えた。それから数分後、蓮が車で千冬の家
説明するから﹂
病院に連れていくからそこで待っていて。事故については車の中で
!
﹁⋮⋮分かりました。着いて来てください﹂
く確認したい衝動にかられている。
は唯一の肉親であり家族だ。千冬は弟が無事が如何なのか一刻も早
医者の質問に答えた千冬は一夏の容体を問う。彼女にとって一夏
?
担当医はそう言って千冬を一夏がいる病室に案内した。果たして
織斑一夏は無事なのだろうか⋮⋮
?
45
?
?
第十三話
医者の案内により千冬は一夏がいる病室に到着した。一夏がい
﹂
る病室は個室で今は彼以外の患者はその部屋にはいない
﹁一夏
千冬は大声を出しながら部屋に入るもその中の光景を見て唖然と
する事になる。
﹁一夏⋮⋮﹂
千冬が目にした光景とは一体何か⋮⋮そして一夏は無事なのか
?
千冬だ
返事をしろ
﹂
それは織斑一夏が死んだように眠っている姿だった。千冬は彼
私だ
!
が眠っているベッドに近づいて声をかける。
﹁一夏
!
た。
﹁先生
医者の口から語られた。
﹂ 彼の死因は大量出血と脛椎損傷等様々な要因が重なっていた事が
ていたが知るよしはない。
あげた⋮⋮。そして何処かで兎が一夏が死んだことを知って発狂し
けられてしまい、号泣すると共に病院全体に聞こえるほどの叫び声を
彼女は唯一無二の家族にして弟である一夏が死んだ事実を突き付
⋮⋮。わぁぁぁぁぁぁぁぁぉ⋮⋮‼﹂ ﹁一夏⋮⋮一夏⋮⋮一夏⋮⋮一夏⋮⋮。そんな⋮⋮こんな⋮⋮あぁぁ
を聴いて全身の力が一気に抜けたかの様にその場にへたれこんだ。
医者は無情にも千冬に一夏が死亡したことを告げた。千冬はそれ
﹁織斑一夏は⋮⋮貴女が到着する3分前に死亡しました⋮⋮﹂
ち砕かれる事になる。
千冬は藁にもすがる思いで医者に尋ねるも彼女の思いはここで打
一夏は⋮⋮一夏は生きていますか
彼女は自分の弟の名前を何度も何度も必死に叫ぶも返事はなかっ
!!
!?
46
!!
!
!
車に吹き飛ばされたときに後頭部を強打したことで首の骨に大き
な負荷がかかって骨折し、脊椎の神経が断裂した。また首だけでなく
背骨や肋骨も折れており、特に肋骨は折れた際の衝撃で肺を傷をつけ
ていた。
それだけでなく地面に叩きつけられたことにより打撲も負ってい
た。
この時点で既に彼は即死に限りなく近い状態にあり、仮に応急処置
を施したとしてもとても助からないだろう。しかし、だからといって
適切な応急措置がされずに放置をしても良い理由には決してならな
い。事故を起こしたのならばその場で出来る限りの事をする義務が
あるのだがそれを加害者はしなかった。
その結果、ほんの僅かでも助かる可能性があったのかもしれな命が
消えた⋮⋮。それも15歳という余りにも若い年齢だった。
仮にとある天才医者が手術をしたとしても彼の命を救うことは到
底叶わないだろう⋮⋮。こうして織斑一夏の生涯は余りにも悲惨な
形で幕を閉じた⋮⋮。
織斑一夏が交通事故で死んだことは直ぐに世間に知れ渡った。ブ
リュンヒルデの弟なので報道されたとしてもおかしくないだろう。
彼の葬儀は身内と彼が通っていた学校の友人と教師、篠ノ之箒や凰
鈴音も葬儀に出席した。多くの者は彼の死に嘆き悲しんでいた。
特に千冬が一番悲しんでいた。自分が弟の夢を否定したばかりに
彼 を 間 接 的 に 死 に 追 い や っ た よ う な 物 だ と 彼 女 は 思 い 込 ん で い る。
あの時、自分が夢を否定せずに応援していればこんな事にはならな
かったと千冬の心に一生消える事のない傷を負った。
そもそも千冬が一夏の夢を否定したのは医者になることがどれ
だけ大変なのかをある程度は知っていた。そんな大きな夢を叶えら
れるとは思っていなかった。成績は彼が通う学園でトップでも厳し
いと聞いたのでやめた方が良いのではないかと考えた。
其だけでなく医者になるということは自分の元から離れるとい
うことも意味している。千冬は一夏に依存しているといってもいい
状態だ。彼が居なければ家事もままならない。家事が出来る一夏が
47
居なければ家事をする人が居なくなってしまう。千冬はそれが耐え
られなかった。だからこそ一夏に反論させないように脅しに限り無
く近い形で夢を諦めるように言ったがこの様な事になると彼女は
思っていなかった。
凰 鈴音は彼に片思いをしていたが一夏に自身の好意を告げる
事と二度と会えない事に嘆き悲しんでいたらしい⋮⋮。
その後、彼をひき逃げした犯人は何と刑事の﹃須藤雅史﹄である事
が判明した。警察の調査により明らかになったそうだ。この刑事は
ひき逃げ以外にも刑事の立場を隠れ蓑にして悪事を働いていた事も
発覚した。
余談だが彼の逮捕したのは泊進ノ介らしい。
それから雅史は裁判で死刑判決を受けた。この判決に千冬は喜べ
なかった。犯人が死んでも一夏の命は決して戻ってこないのだ
葬儀を終えてから千冬と鈴は喪失感で暫くは立ち直れなかった。
箒は一夏に対して好意などは抱いていなかったので直ぐに立ち直っ
た。
薄情かもしれないが箒は既に権現坂に好意を持っているのでそ
こまで悲しむ事はないからだ。
一夏の死から千冬は周囲の人や後輩からの励ましにより何とか復
帰したものの彼女の指導方法が大きく変わった。彼女の指導方法は
厳しく規則を破った生徒には容赦なく鉄拳や出席簿で制裁を与えて
いた。しかし、一夏が死んでからはそれは更にエスカレートし始め
た。
例として規則を破ったりした生徒に対して必要以上の暴力行為に
及ぶようになり、生徒に対して自分の教えを徹底的に押し付ける程の
鬼教官に変わってしまった。まるで自分の思うように動く者を作る
かのように⋮⋮。
それは軍隊の訓練にも匹敵する程の厳しいものでIS学園の生徒
達はそんな千冬のやり方に不満を持っていた︵箒も千冬のやり方に反
感を抱いていた︶。千冬がイカれた指導をするようになったのかは誰
48
にも分からなかった。ただひとつ分かるとすれば一夏の死が大きく
関わっている事だけだ。
そんな指導をしても懲戒免職にならないのはブリュンヒルデとい
う称号のおかげだった。その称号の効果がある限り、彼女の教えを心
酔する者達が阻んでくる。
しかし、その称号はあるものの登場によって効力を失う事になる。
一 夏 が 死 ん で か ら 暫 く し て テ レ イ グ ジ ス タ ン ス ロ ボ が 発 表 さ れ た。
発表当初はそこまで受け入れられなかったが災害救助や医療への応
用など様々な分野において有用である事を数年かけて示した事と通
信機器等のシステムを発表した後も改良を重ね続けた事により普及
していった事でISの人気は少しずつだが無くなり始めた。
ISは使うのに様々な手続き等が必要だが改良されたテレイグジ
スタンスロボであれば手続きを必要とするISよりも速やかに現場
へ急行できる上に人が進入するには危険な場所も難なく入って活動
できる。
それから数年後、千冬は必要以上の体罰や厳しすぎる指導により懲
戒免職となった。ブリュンヒルデを心酔していた世代が卒業してし
まい、彼女を擁護する人がいなくなったのと彼女のやり方に多くの生
徒が不満を持っている事が決め手となった。
一夏が死んで数十年後の事をここに記す。
ISが衰退した事を快く思っていなかった束は職を失って途方に
暮れていた千冬に改良した白騎士に乗ってIsの力をもう一度示そ
うと話を持ち掛けて来た。
千冬はそれを当初は断っていたが、束は千冬に洗脳手術を無理矢理
施して第二の白騎士事件を起こそうとした。
しかし、その頃にはISよりも汎用性が高いロボット兵器が誕生し
ておりIsでは到底破壊する事は叶わずあっという間に束が製作し
た無人機は駆逐されてしまった。千冬も当然、破壊行為を行っていた
49
がアーマードコアやロイミュード、戦闘用テレイグジスタンスロボと
の戦いで死んだ。
最初の内は千冬が優勢だったが敵の数に押されていき、エネルギー
が無くなる前に逃げようとしがその隙を突かれて一斉攻撃を喰らっ
て死亡したらしい⋮⋮。
束は千冬が死んでも自身の行いを続けたがISのコアを作る資金
が底をつき、自分の願いが叶わぬことに絶望しながらこの世を去っ
た。
篠ノ之箒はIS学園を卒業後、大学に進学。卒業後は権現坂武と結
婚して篠ノ之道場を復活させた。それから二児の母親となり幸せな
毎日を送っている。権現坂は刑事として犯罪を取り締まる為に日夜
働いているそうだ。
他の者達もそれぞれの道を進んでいるがIS一筋だった方々の人
生はかなり厳しかったらしい⋮⋮。
50
最終話
﹂
三者面談を終えた一夏と千冬は家に帰って進路相談をする。
﹁一夏、お前⋮⋮医者になるというのは本気なのか⋮⋮
﹂
姿を見て何処か嬉しそうな表情をしていた。
千冬は心の中で少し寂しさを感じながらも前に進もうとする弟の
のか⋮⋮。だから私と関わる時間が減っていたのか︶
︵そうか⋮⋮。一夏は何時の間にか自分のやるべき事を見つけていた
え間ない努力を続けて来た彼の言葉を遮る事なく
一夏は千冬に自分の覚悟を述べる。医者になろうと決めてから絶
の夢の為に前に進んでいく
それはこれからも続けていく。今は厳しいって言われても俺は自分
学 費 を 確 保 す る 為 に 出 来 る だ け 出 費 を 抑 え る よ う に 努 力 し て 来 た。
が出来る医者になりたい。だから俺は今までずっと勉強をしてきた。
た。だからこそ俺は医者になって病気で苦しんでいる人を助ける事
﹁本気だ。俺は千冬姉の様に誰かを守れるようになりたいと思ってい
か千冬でも分かる事だ。
千冬は一夏にそう問いかける。医者になる事がどれだけ大変なの
?
﹂
﹁分かった。私も出来る限り力を貸す。ただし、今後の成績次第では
﹂
医者になるのは諦めてもらう。いいな
﹁俺は絶対に医者になる
?
を目指す事を認めた瞬間だった。
三者面談から数日後、一夏は図書館で勉強をしていた。千冬に力
を貸してもらうために彼は必死に勉強をしている。一日、一日を勉強
に費やしている所を見るとそ本気度が分かる。
51
!
千冬の激励に対して一夏は力強く返事をした。千冬は一夏が医者
!
﹁も う こ ん な 時 間 か ⋮⋮。そ ろ そ ろ 帰 っ て 食 事 の 準 備 を し な き ゃ
⋮⋮﹂
一夏は図書館にある時計を見て勉強道具を片付け始める。時刻は
午後四時で、図書館の閉館時間である五時が迫っている頃で引き上げ
るには丁度良い。
﹁後は家で勉強だな﹂
一夏はそう呟いて図書館から出て自宅に戻る途中である事を思い
出す。
﹁あっ⋮⋮電気代の料金を支払っておかないと﹂
一夏は鞄の中に電気料金の支払い用紙を持っている事に気付いて
急いで郵便局に向かった。
幸いにも郵便局が閉まる前だった。それから支払いを終えてから
﹂
出ようとした時、六人の男が突然入って来た。
﹁動くな
六人の男は拳銃を構えながら叫んだ。男達は黒いジャケットを着
ており、顔をニット帽で覆っているので全容が掴めない。郵便局で働
いていたスタッフと一夏、幼い子供を連れた母親は人質となってし
まった。
﹁良いか、お前らは我々の人質だ。下手な行動を起こすと命の保証は
出来ないぞ﹂
人質となった皆はその男の言葉に黙って従った。それから数分後、
騒ぎに気付いた通行人が警察を呼んだのか郵便局周辺にパトカーが
集まりだした。
﹂
﹁リーダー、警察が現れました。こっちはまだ作業が途中です﹂
﹁分かった、出来るだけ急げ
は必死にあやしているが一向に泣き止む気配が無い。
その時、小さな子供が恐怖に耐え切れず泣き始めた。その子の母親
かった。しかしその裏で救出作戦の準備を進めていた。
な い よ う に 脅 し て き た。警 察 は そ の 要 求 に 従 っ て 強 行 突 入 は し な
リーダーは警察に対して人質がいる事を伝えて下手な行動を起こさ
部 下 と 思 わ し き 男 と リ ー ダ ー 格 の 男 が そ ん な や り 取 り を す る。
!
52
!
﹁おい、さっさと泣き止ませろ
﹁ちっ⋮⋮さっさと黙れ
﹂
﹂
けながら脅す。母親は必死にあやしているが泣き止みそうにない。
リーダーと共に見張りをしている男が子供と母親に拳銃を突きつ
!
た。
面に叩きつけられた。
﹁こいつ⋮⋮俺達に逆らいやがった
﹂
一夏が咄嗟に親子の前に出て庇ったのだ。彼は殴られてしまい、地
﹁ぐっ⋮⋮
﹂
部下の男は母親と子供を殴ろうとした時、誰かが親子の前に出て来
!
のか
﹂
﹂
お前の夢はこんな所で終わる
一夏⋮⋮一夏⋮⋮一夏ぁぁぁぁ
!!
﹁一夏⋮⋮医者になる夢はどうした
一夏の死を知った千冬はこんな事を言っていた。
病院に運ばれたが頭部に受けた銃弾により既に命を落としていた。
男達は警察の手によって逮捕され、一夏は病院に搬送された。彼は
られていたので男達は混乱していた。
した。突入の際にスモークグレネードを投げていたので視界が封じ
それから男達が引き上げようとした時、警察の特殊部隊が強行突入
男達が作業を終えるまで大人しくしていた。
横たわった。一夏が撃たれた後、皆はそれを見せしめと判断したのか
銃弾が一夏の頭部直撃し、彼はそのまま立ち上がる事なくその場で
﹁あっ⋮⋮
ていた拳銃の引き金を引いて銃弾を放った。
部下の男は一夏が命令に逆らって動いたのに逆上して右手に持っ
!
!?
それを確認してみよう。
一夏が医者になろうとする世界の他の結末はどうなっているの
か
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!
!
こうして一夏の医者になる夢は呆気なく終わってしまった。
!?
図書館での帰り道で暴走していたトラックに轢かれて死亡、体を酷
?
使してまでも勉強し続けてクモ膜下出血を発症して死亡、帰り道で無
差別殺人に巻き込まれて死亡⋮⋮。どの世界でも一夏は三者面談の
数日後に起きた何らかの出来事で死亡している。それも千冬が一夏
が医者を目指す事を認めているか否かに関わらずである。
何故彼が死亡するという結末になっているのか⋮⋮
そ れ は 本 来 の 筋 道 か ら 外 れ た 事 に よ り 生 じ る 歪 み の 一 部 な の だ。
本来の筋道であればとある学園に入学しているはずだった。しかし、
この世界の彼は医者になると決めてとある者に触れなかったので本
来の筋道から外れた。それよりも前にとある事件に遭うはずだった
のが医者になると決めた時点でそれが無くなってしまった。
本来の筋道から外れた事による因果の歪みが何らかの形で生まれ
ていき、その歪みがまた更なる歪みを生むという連鎖反応が生じる。
この世界で生じる歪みとして必ず発生するものとして一夏の死亡と
ISよりも汎用性や実用性が高い二足歩行ロボットが生まれるとい
う反応だ。
様々な物語が無数に存在する世界で本来の筋道ではなかったはず
の物が現れるという事は良いことだけでなく悪い事も引き起こす場
合がある。男性IS操縦者が一夏以外にもいたり、その世界にはな
かったはずの異物が紛れ込むなどその歪みが何処かでどんな影響を
及ぼすのか誰にも予想できない。
この世界での一夏は医者になると決めた時点で短命である事が定
められていた。しかし、悪いことばかりではないと思う。幸が薄かっ
た箒が幸せな家庭を築いて生活している。
それにシャルロット・デュノアも平穏な生活を送れている。後は更
識簪は二足歩行ロボットの研究者として名をはせるほどの活躍をし
ている等、良くも悪くも様々な影響が現れるのだ。
セシリア・オルコットはISが衰退した後でも二足歩行ロボット
⋮⋮特にブルーティアーズで培った遠隔操作ぼ技術をテレイグジス
タンスロボやカスタムロボに活かす為に様々な実験に協力した。 鈴はIS操縦者を解雇された後、実家の中華料理店を継ぐために勉
強をしている。
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?
更識楯無は暗部の任務中に殉職したらしいがその真相を知る者は
いない⋮⋮。
この様に無数の世界が存在する中でどんな介入がどの様な形で
影響するのかは誰にも分からない⋮⋮。もしかしたら本来のであれ
ば誰かが幸福になるはずが異物の介入により不幸になる未来に変わ
るのかもしれない⋮⋮。
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