I C Uの高い貸出冊数を 支える仕組み

ICUの高い貸出冊数を
支える仕組み
山本 裕之
導しており、図書の返却と合わせてこれら
せ、最終的に卒業までに清算するよう指
二つを卒業要件としています。幸い、卒業
までに問 題は解 決され、現 在に至るまで
がある間は新規の貸出ができないという
もう一つの貸出停止は、延滞中の図書
実際に卒業延期となった学生はいません。
は誤解があります。確かに、論文を執筆し
制度です。延滞図書を持参し返却または
国際基督教大学
開架制と貸出冊数無制限
冊の 図 書
書を自由に手に取って見られるという環
るには大変な労力を必要としますが、図
けています。大量の図書を開架で維持す
在でも約 万冊の図書を開架で提供し続
してきました。自動化書庫を導入後の現
当時まだ珍しかった全面開架制度を採用
てみよう、気軽に本を借りてみよう、とい
ルの低さが、用事がなくても図書館に寄っ
せず必要なだけ借りられるというハード
しろ、必要になったらその時には何も気に
度の図書を借りているに過ぎません。む
全体の一部にすぎず、大多数は常時数冊程
ケースもありますが、そうした学生たちは
を借りており、中には100冊以上という
ります。100冊の図書を延滞すれば日
を厳密にせざるを得ないという利点もあ
とする学生であればあるほど、自己管理
須のものです。また、多くの図書を必要
に学生たちに提供するシステムとして必
制度を支え、利用の多い図書をスムーズ
ことで、大型で貸出されにくい図書や貸
また、いったん回収してデータを取る
なくてはならない条件です。
を可能にするために、この二つの制度は
や論文で多くの図書を必要とする時でも
ないという教育側の授業体制作りにある
さは、図書を利用しなければ単位が取れ
学生の図書館利用回数と貸出冊数の多
また、貸出には冊数制限がなく、試験
冊数を気にせず借りられ、更新︵貸出延
よってももたらされています。
る図書館のこうした受け入れ態勢作りに
と同時に、制限を減らし、安心感を与え
長︶回数にも制限はありません。
こうした話を他の図書館の方にすると、
を受けることが多くありますが、そこに
延滞料と貸出停止
これらの罰則制度は貸出冊数の無制限
な い 利 用 デ ー タ を 収 集 す る こ と が で き、
1 0 0 0 円 の 罰 金 と な り、 さ ら に、 出できない辞書類など、貸出記録に残ら
館員個人では判断の難しい自動化書庫へ
書館が回収、利用データを取って再配架
ク︵専用返却台︶に置くだけで、後は図
用ハードルの低さを最優先に考え、厳し
ものがほとんどです。学生の利便性と利
のサービスは、いずれも伝統とも言える
かいつまんでご紹介したこれら図書館
サービスと利用度
の際にも大きな助けとなっています。
の移動や廃棄、さらには選書などの判断
試験やレポートに今すぐにでも必要な図
図書の再配架
館内で閲覧される図書は年間約
万冊
もできます。そのため図書の延滞に対し
書利用の機会を減らしているという見方
れらの図書を借りられない他の学生の図
が、
日のべ 数時間をかけて再配架し
規則をトレーニングした学生アルバイト
に上り、これらは複雑な請求記号の配列
せて、再配架される図書は合計約
るまで貫き続けていますが、そのことが
てはおおらかな制度を当初から現在に至
い罰則を持ちながらも図書の提供に関し
します。年間の返却図書約
万冊と合わ
学生は利用が済んだらリターントラッ
万冊。
書が借りることができなくなるからです。
リターントラック。閲覧済みの図書で築かれた山
ています。これによって、複雑な請求記
結果として学生の高い図書館利用を維持
﹁行きやすさ﹂﹁使いやすさ﹂を生み出し、
円、特に支払期
号制度と開架制度の維持が初めて可能と
冊
し続ける原動力となっていると考えてい
日
ます。
延 滞 料 金は
なります。学生によって絞り込まれた主
︵テクニカルサービス・グループ︶
題に対してピンポイントでのブラウジン
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限は設けず、 年中いつでもまとめて支払
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則制度を採用しています。
て、延滞料金と貸出停止という二重の罰
さて、貸出冊数の多さは、一方で、そ
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いを 受け 付ける仕 組みです。学 生には学
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グ︵ 書 架 で 図 書 を ざ っ と 見 て い く こ と ︶
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﹁うちの職員数ではとても⋮﹂という反応
台車で更新にやってくる論文執筆中の学生も。
図書館の風物詩(?)
更新すれば解除されます。
境が学生の図書利用にとって最重要だと
数
図書館では1960年の開館当初から、 ている学 生の多 くは、常 時 数
考えているからです。
う気にさせていると考えています。
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期ごとに現在の合計金額をメールで知ら
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丸善ライブラリーニュース 復刊第 4 号