30回目を迎えた日本語スピーチ発表会 —日本での体験

内なる
グローバル化
30 回目を迎えた日本語スピーチ発表会
—日本での体験を通して草の根交流を推進
一般社団法人日本在外企業協会
業務部 主幹
日本在外企業協会(日外協)では、国際交
流活動の一環として、アジアを中心に海外各
国で行われる「日本語スピーチコンテスト」
す どう
しん
須藤 真
表のサンディーウェイさんは日本語の学習用
にと秋葉原でアニメを何十冊も購入した。
10 月 29 日に行われた日本語スピーチ発表
の優秀者を毎年日本に招いて日本語スピーチ
会では、30 回目を記念して、過去の招聘者
発表会を開催している。また、約 1 週間の滞
がお祝いのメッセージを寄せてくれた。日本
在中、企業・大学訪問、観光などのプログラ
に来ていなかったら今の自分はなかっただろ
ムが組まれている。この招聘事業がスタート
うと感謝の思いを記したものもある。こうし
したのは 1986 年(昭和 61 年)。以来、国内
た先輩たちに負けない見事なスピーチを今回
外の多数の関係先からご支援とご協力を頂き
の発表者たちも披露した。先生になって子供
ながら 2015 年 10 月、おかげさまで 30 回目
たちに諦めない不屈の精神を教えたい、貧し
という節目を迎えることができた。
い子供たちのために学校をつくってあげた
しょうへい
い、世界中の人たちにその国の言語で語り掛
チャレンジ精神にあふれた日本語スピーチ
けることのできる「スーパーマルチリンガル
2015 年は、ブルネイ、カンボジア、インド
ブロガー」になりたい、といった将来への夢
ネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィ
が語られた。アジアにおけるスマホの普及や
リピン、タイの 8 ヵ国から 12 人が来日、10 月
ラオスのモータリゼーションなど社会問題を
25 日(日)から 11 月 1 日(日)まで日本に滞
背景にした提言もあった。インドネシア代
在した。10 人が大学生、2 人が社会人である。
表のリンダさんは、「おもてなし」の心で日
1 週間という短い期間だったが、天候にも
本人はもっとムスリムの信仰や習慣を理解し
恵まれ、アジアの若者たちは日本を大いに体
てほしいと訴えた。彼女は、日本でのイスラ
感できたに違いない。味の素と花王の工場で
は日本の品質へのこだわりを身近で感じても
らった。明治大学では茶道・伝統楽器など日
本文化を体験、日本語講座で敬語の使い方を
学んだ。また、
スカイツリーや富士山を観光。
最も人気が高かったのは東京ディズニーラン
ドで、誰もが夢の世界にいるようだったと感
想を語っていた。100 円ショップは海外でも
有名なようだ。皆たくさんのお土産を買い込
んでいた。ミャンマーは今回初参加だが、代
茶道体験(明治大学)
、リンダさん(インドネシア)
2016年1月号 No.743 41
内なる
グローバル化
ム教に対する見方が少しでも変わるようにと
願っている。カンボジア、ミャンマー、タイ
の女性たちは、差別や旧習といったカベを乗
り越えて日本語の勉強を続けている自身の体
験を語った。どのスピーチもチャレンジ精神
にあふれている。
草の根交流の意義
日本に関心を持ったきっかけは、全員が日
本のアニメや歌、ドラマだという。本事業が
日本語スピーチ発表会後の記念撮影
スタートした当時の若者たちが経済大国日本
に憧れて日本語を始めたことを思うと様変わ
かもしれないが、本人ばかりでなく、家族や
りである。日本とアジアとの関係が経済一辺
友人などにも日本理解の輪が広がることで、
倒から、より重層的・多角的になったことを
アジア各国に進出している日本企業にも追い
物語っている。
風となることだろう。
「投資先国社会との協調融和」の観点から
アジアの若者たちは、一連の行事を通じて
始まった当事業は、アジアの若者たちに生の
日本にたくさんの友人ができたことをとても
日本を肌で感じ取ってもらうこととともに、
喜んでいる様子だった。同時に、誰もが 1 週
日本の人々と日本語で交流を図り、日本社会
間行動を共にしたアジアの仲間との友情を一
や文化に対する理解を深めてもらうことを目
生大切にしたいという。アジアの異なる国の
的としている。当事業による来日者数は累計
若者同士が楽しそうに交流を深める、共通言
で 314 人に上る。多くがその後も日本と関わ
語は日本語。忘れられない光景である。これ
り続け、ビジネスや教育などさまざまな分野
らの若者たちが将来、自国と日本との懸け橋
で活躍している。草の根レベルの小さな交流
JF
となって活躍することを心から祈っている。TC
No.
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12
国名
インドネシア
ブルネイ
ミャンマー
カンボジア
ラオス
タイ
タイ
マレーシア
マレーシア
フィリピン
インドネシア
フィリピン
42 日本貿易会 月報
表 日本語スピーチ発表者(発表順) 氏名
スピーチタイトル
リンダ・アリア・ウィダヤンティ(Ms.)
日本のおもてなしから平和が生まれる
チュン・ミン・フイ(Mr.)
スマホ依存症
サンディー・ウェイ(Ms.)
二番目の家族
エム・ウサー(Ms.)
自分の将来は自分で作るものだ
サンティスック・デーンケット(Mr.)
皆さんができること
オンピモン・シットコンデン(Ms.)
私が選んだ道
ワッシャラーコン・セーヘン(Ms.)
なりたい自分
ユオン・ジン・イン(Ms.)
先生になったら
タン・ゼーリン(Ms.)
文の終わりに付けるもの
ジア・パオラ・エセル(Ms.)
言葉の限界を超えるブロガー
グラム・ビンタン・シャーリアル(Mr.)
笑顔の力
ダニエル・ウランダイ(Mr.)
少年ダニエルの小さな悩み