2 委員会活動

ルビ注意
新春経済講演会
中 部 経 済4団 体主催 新春経済講演会
1月19日(月)、中経連は中部経済同友会、名古屋商工会議所、愛知県経営者協会と共催で、新春経済
講演会を名古屋市内にて開催し、約500名が参加した。
今 回は政 治 評 論 家
③では、歴史認識について、国によって理解が
の加藤清隆氏をお招き
異なっている案件が生じている経緯についての解
し、
「 激動の政治情勢を
説や、
そうした認識のギャップを埋めるのに政府や
読む」
と題してご講演を
ジャーナリズムが果たすべき役割等について言及
いただいた。
した。
加藤氏は、①安倍内閣の行方、②激変する国
(会員部 伊藤 康隆)
際情勢、③歴史認識をテーマに講演を行った。
①では、
アベノミクスの経済効果や消費税の増
税の影響等について独自の視点で解説し、昨年
12月の衆議院総選挙後の国内政局の見通しにつ
いて方向性を示した。
②では、中東、
クリミア、尖閣諸島等世界各地で
発生する諸問題について多岐にわたり解説し、現
在の日本を取り巻く国際的な政治課題等につい
て、次世代のためにも我々の世代で解決に向けた
努力が必要だと強く訴えた。
委員会活動
第3回経済委員会
はないか」、
「愛知県
1月21日(水)、第3回経済委員会を開催、委員
等にとって産 業 観 光
長の豊田副会長はじめ45名が参加した。
は大きなテーマなの
今回は、提言書原案「貿易・サービス収支改善
の提言 ∼ 経常収支赤字化の回避 ∼」
について
最終審議を行った。
で、
もっと強調してい
いのではないか」等、多数の意見が出された。
今回の委員会で出された意見を踏まえた上で
委員からは、
「 経常収支の中で大幅な黒字の第
修正案を取りまとめ、
2月2日に開催する正・副会
一 次 所 得 収 支( 投 資 収 益など)を増やす努力も
長会および総合政策会議に上程することとし、審
大切である旨を書いた方がいいのではないか」、
議は終了した。
「医療機器産業の振興について、中部圏で出来る
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ことがもっとあるので
中経連 2015.3
(調査部 加藤 慎哉)
中経連 2015.3
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ルビ注意
委員会活動
第17回Next30産学フォーラム
技 術を一例に挙げて、特に雑音除去による音声
認識技術の向上が必要であると訴えた。
1月19日(月)、第17回Next30産学フォーラム
塙氏は
「呼吸の非接触センシング ∼サーモグラ
を名古屋市立大学病院にて開催、34名が参加
フィでヒトの呼吸をみる∼」
をテーマに、今後、在宅
した。
での健康管理・健康支援の重要性を見据えて、
ヒ
今回は講演会・懇親会に加え、同大学病院の
施設見学会をあわせて実施した。
トの呼吸計測による身体異常の早期発見が有効
な手段の一つになると強調した。
また遠赤外線画
はじめに、名古屋市立大学理事長・学長の郡健
像による呼吸計測の検証結果を説明し、
ヒトに負
二郎氏から、異分野交流の重要性と学内での産
担をかけない計 測 方 法の有 用性を訴えるととも
学連携の事例が紹介され、
「 今後、企業で医療に
に、課題を早期に解決し実用化につなげていきた
係わる研究があれば是非本校を実証の場として
いと述べた。
活用してもらいたい」
との挨拶があった。
講 演 会 後は
続いて、中京大学スポーツ科学部スポーツ健康
医 療 デ ザイン
科学科講師の倉持梨恵子氏、大同大学情報学部
研究センターと
情報システム学科准教授の柘植覚氏、名古屋市
臨床シミュレー
立大学大学院芸術工学研究科准教授の塙大氏
ションセンター
を講師とし、講演会を行った。
の 見 学 会を実
施した。医療デ
ザイン研究セン
ターでは、最新
の3Dプリンタ
による 医 療 機
器 の 開 発 を支
援しており、シ
左から中京大学・倉持講師、大同大学・柘植准教授、
名古屋市立大学・塙准教授
倉持氏は「体幹トレーニング 体感!? ∼ケガの
予防とパフォーマンスアップの
∼」をテーマに、
こうとうきょう
ミュレーション用臓器モデルや喉頭鏡など、
これ
までの研究開発の事例について紹介があった。
ま
た経験の少ない若い医師・看護師たちがトレーニ
ングを積む研修施設である臨床シミュレーション
実際の体幹運動を紹介するとともに、腰痛予防の
センターでは、最新式シミュレーターを使用する
ための腹筋運動でも、腹横筋を鍛えることに加え
ことで実践に近い訓練を受けられる様子が紹介
て体幹を鍛えることが重要であること、
また日常生
された。
活においても体幹を意識することで痛みの改善・
ケガの予防につながると説明した。
柘植氏は
「コンピュータに耳を持たす ∼音声認
識・話者認識∼」をテーマに、人の会話を文章に
起こす音声認識技術は、同一人物が発する声で
も時差・時期差によって認識精度が落ちることが
あるため、大量の音声データ収集が必要であるこ
最後に、学生食堂を会場とした懇親会では、参
加者が講師を囲み、各種のトレーニング方法、
ソフ
トウェア・医療機器の実用化に向けた動きについ
て意見を交わすなど、交流を深めた。
次回は3月17日に名古屋栄ビルにて開催する
予定である。
(産業振興部 水田 晴久)
と、また携帯電話で使われている音声信号処理
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中経連 2015.3
中経連 2015.3
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文字Q数、行間注意
委員会活動
国際交流懇談会
東南アジアセミナー
日時:12月16日(火) 場所:名古屋市内 参加者:40名
テーマ
メコン地域における日系企業のビジネスチャンス
∼カンボジア、ラオス、ミャンマーの最新情報を素材に∼
講 師
㈱日本経済研究所 常務取締役国際本部長 安永
英資 氏
プロフィール
日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行、
ドイツトレーニー、ワシントン事務所、
国際協力審議役室等を経験後、
( 財)日本経済研究所を経て、現職。
講演要旨
はじめに
「競争力ある経済地域」
「 公平な経済発展」
「グローバ
メコン地域(カンボジア、
ラオス、
ミャンマー、ベトナ
ル経済への統合」
を4つの柱として掲げ、
メコン地域内
ム、
タイ、中国雲南省等)
は国際的には
「グレーター メ
の関税撤廃を中心に、
ヒト、モノ、カネの移動規制の
コン サブリージョン」
と呼ばれている。
この10年間で
緩和を目指している。
しかし、各国の事情により足並み
日系進出企業ならびに在留邦人、邦人旅行者は年々
が わず、発足に向けた準備はまだ十分整っていない。
増加しており、
その発展ぶりは著しい。今回は中国雲
メコン地域における主要経済回廊
南省等を除くメコン地域のうち新興諸国(カンボジ
ア、
ラオス、
ミャンマー)
に焦点を当てたい。
現在、
9つの国際幹線道路(東西・南部・南北・南
部沿岸・東部・西部・北東・北部・中央)が計画されて
いる。
その内、東西・南部・南北経済回廊の整備・補修
メコン地域の概況
メコン地域5カ国の総面積は190万㎢、総人口は
約2億4,000万人。最近の経済成長率は、
タイとベト
至昆明
ミャンマー
ネーピード
8%である。
1人あたりGDPはタイが約6,000ドルと
ヤンゴン
いるが、首都圏と地方で所得格差があり、カンボジア
の平均所得が1,000ドルに対し、首都の平均所得は
2,000ドルを超える。
メコン地域のポテンシャルとその背景
現在、
メコン地域にはアセアン経済共同体(AEC)
の発足と域内における主要経済回廊の整備の2つの
動きがある。
これらが実現すると、
タイに隣接する、人
ハノイ
ラオス
ナムが3∼5%、
ラオス、
カンボジア、
ミャンマーが6∼
突出している。他4カ国は2,000ドル以下に留まって
南北経済回廊
ビエンチャン
メーソット
モーラミャイン
ダウェイ
ベトナム
サバナケット
タイ
東西経済回廊
ダナン
カンボジア
バンコク
レムチャバン港
南部沿岸回廊
シアヌークビル港
南部経済回廊
プノンペン
ホーチミン
カイメップ・チーバイ港
図 メコン地域における主要経済回廊の状況
出所/安永氏の講演資料を基に作成
件費が低廉なカンボジア、
ラオス、
ミャンマーにおい
東西経済回廊:2006年に第2メコン架橋が完成し、
て、日系企業の生産拠点新増設が進み、
タイ・プラス
ベトナム・ダナン−タイ・メーソット間の移動が40時間
ワン型事業(タイ周辺国における分工場で生産した
に短縮。現在、
タイからミャンマー内への開通を計画。
製品・部品をタイのマザー工場または日本に供給)が
南部経済回廊:2015年3月開通予定のネアックルン
加速すると予想される。
橋(カンボジア・メコン川)が完成すれば、主要部分が
アセアン経済共同体(AEC)
開通。現在、
タイ・バンコク―ミャンマー・ダウェイ間の
2015年末に発足予定。
「 単一市場と生産基地」
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が優先的に行われている
(下図)。
中経連 2015.3
延長を計画。副回廊として南部沿岸回廊も整備中。
中経連 2015.3
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文字Q数、行間注意
委員会活動
南北経済回廊:タイ・ラオス第4友好橋完成により、
民政移管を図った。2015年は大統領選挙があるが、
2013年にラオスルートが全線開通。
ティン・セイン現大統領は続投しないとみられる一方、
野党有力候補アウンサン・スー・チー氏は現行憲法
新興メコン地域諸国について
カンボジア
の制約により大統領就任が難しいため、選挙後の先
行きは不透明。
ポルポト政権時代の内戦を経て、1991年に立憲君
優位性:豊富で低廉な若い労働力があり、対日関係も
主制として復興。1999年のASEAN加盟後、経済成
良好。中国・インド・ASEANに隣接する地政学的な
長が著しい。主力産業は農林水産や観光・サービス
要衝で、国内消費市場としても魅力がある。
の他、縫製や建設。人口は首都を中心に国全体で増
課題:首都(ネーピード)
と経済中心地(ヤンゴン)が
加している。
地理的に離れていることから官民の連携・対話が不十
優位性:豊富な若年労働力があり、外資規制を緩和
分。
また、高等教育体制が脆弱で熟練人材が不足して
し、特恵関税も適用されている。豊かな農水産品と世
いる。金融セクター整備も今後重要。外資誘致を図る
界遺産を含む観光資源を有し、
7つの経済特区が稼
ために、
日本が官民で協力しているティラワ地区をはじ
働している。物流手段としては南部経済回廊でタイへ
めとし現在3つの経済特区開発計画が進んでいる。
陸送するか、
メコン川からベトナムの港を経由し日本へ
運ぶ船上輸送などがあり、地理的優位性も高い。
課 題:ポルポト政権時に知識人層が大量に虐殺され
日系企業にとってのメコン地域のポテンシャル
た影響で、熟練人材が不足している。民族的には優秀
①総人口2億4,000万人のマーケット
で勉強熱心であるため、教育の充実強化が最重要課
②大市場である中国、
インドとの近接性
題。従来政治は安定していたが、2013年の総選挙以
③経済回廊整備に伴う物流ルートと手段の多様化
降与党の求心力が低下しつつある。
④アセアン経 済 共同体 発 足による 陸のアセアン
ラオス
1975年のベトナム社会主義体制誕生の波及で、
ラオ
⑤日本との文化的共通性・親日性
⑥豊富で低廉な若年労働力の確保
識人層が50万人流出し、人材が不足。現在では鉱山・
日系企業の経済回廊利用状況と今後の展望
今後は主要経済回廊を利用するビジネスの可能性
国売電により外貨を獲得している。
がある。具体的には、南部経済回廊を利用するベト
優位性:政府は「ランド・ロック
(閉ざされた国)から
ナム・プラスワン型的事業や、
タイ
(設計・デザイン)→
ランド・リンク
(繋がる国)へ」をスローガンに、周辺国
カンボジア/ラオス
(組立)→ベトナム
(手直し・検査・
の物流ハブとしての位置づけを目指している。政治体
出荷)の3カ国分業体制を検討する日系企業が出てく
制・治安が安定していることに加え、
ラオス語とタイ語
ると予想される。
との近似性が高く、タイ・プラスワン型事業展開が容
新興メコン地域諸国への企業進出には、各国の特
易。現在2つの経済特区が稼働しており、政府は外資
徴や強み・弱みを十分理解した上で、地域統括拠点の
企業誘致を図っている。
設置を視野に入れた広域的なビジネスモデルを構築
課題:労働人口が少なく、人材確保が難しい。経済特
する必要がある。
それには中国やインドとの連携と陸海
区を中心にインフラ整備が開発途上であり、内陸国の
空の物流形態をいかに組み合わせるかが重要である。
ため輸送コストが割高。裾野産業も未発達で、法規制
また、
これらの諸国においては、産業政策をはじめ
整備も不十分である。
法制度や統計整備が十分でないため、事業を円滑に
ミャンマー
進めるには現地有力者との人脈を構築することも重
軍政統治時代に欧米による経済制裁を受けたこと
もあり、発展が遅れたが、2011年に大統領制による
中経連 2015.3
一体化
ス王国から社会主義国家に移行。
そのため、旧体制知
電源開発が経済成長を推し進めており、水力発電の隣
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まとめ
要となる。
(国際部 平山 りえ)
中経連 2015.3
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