『社会福祉要説』(東京福祉大学編、ミネルヴァ書房刊)「まえがき」(抄出)

――なぜ新しい 21 世紀スタイルの東京福祉大学を創ったのか――
このままでは、将来日本はだめになってしまう。この状態から脱却するには、全く新し
い大学を創り、21 世紀に日本を救える役に立つ人材を養成するしかないと思ったからです。
学問・文化の基礎である、創造力、思考力、分析力、問題発見と解決能力などを育成す
る教育というものが、今までの日本にはあまりにも欠けていたと思います。
本学は大学創立以前である 20 年以上前から新しい考え方に基づき学生を指導してきました。
だから学生の就職率が高いし、社会で評価されているのです。
教師が学生に一方的に知識を伝達するのではなく、学生と双方向の対話をしながら学生
とともに教師自身も学ぶべきです。教師自身が社会の変化からも、学生からさえも、学ば
なければ学問の発展もありません。
創立者は、自分が留学していたニューヨークの名門私立大学フォーダム大学教育学大学
院、及び教育学者として研究をしていたハーバード大学教育学大学院で学び身につけた、
「本当に優秀な人材を育てる教育方法」を日本に導入し、創立者自身の教育理念を実践す
るために、新しい東京福祉大学を創ることにしたのです。
大学も、いったん入学してしまえば、教育の中味はどこも同じようなもので、教室では
中味のない授業がくり返され、学生の頭は一向に鍛えられず良くなりませんでした。
中学・高校の、暗記再生中心の詰め込み教育で得た知識だけでは、創造性を生みだすた
めの基礎能力が育てられることがなく、これからの厳しい国際競争社会で生き残れない時
代になったのです。
自分で大学の教科書や参考文献を読んできちんと理解し、他の情報やデータも参考にし
て丸写しでなく、自分の言葉で自分の考えを入れて独創的なレポートを書き、学んだこと
を応用して、自ら直面する新しい問題を解決できる、
「正解は1つではないという」考え方
に基づき、ただし論証方法が正しければ、人によって解答が異なって正反対でも正解であ
る、本当に何が正しかったかは後の世になって歴史のみが示すのです。そういう勉強方法
で学んでいかないと、これからの複雑な社会では生き残れません。
試験というものは、その人の能力を伸ばすために行われるものです。その意味で、一番
ダメな試験というのは、いわゆる○×式試験や、選択式試験(いくつかの答えの中から正
しいものを選ぶ)で正解はただ一つという考え方の試験です。暗記された知識を試すもの
ではなくて、今まで得た知識や情報を分析する能力、そして分析した知識や情報を応用し
て、未知の問題を解決できる能力を育てる目的を持ったものです。
読んだものを分析し、自分なりの文章に書き直す文章力。さまざまな情報やデータを自
分なりに分析して、自分が直面する新しい、未知の問題の解決のために応用できる能力。
本来、そういう能力を伸ばす訓練になる、論文作成形式の試験が一番重要なのです。書く
力というものを無視した○×式や選択式の試験にだけ慣れている人は、思考力や問題解決
能力が全くなく、将来の人生において、大きな過ちを犯す可能性があります。書くことに
よって、思考力がつくのですし、書くこと又は口頭で発表することによって、その人の言
語運用能力というものができてくるわけです。言葉をどのように使うか、どのような文章
が書けるか、口頭で発表できるか、それを読めば又は聞けば、その人の知性や教養の程度
がはっきりと判断されると思います。
日本では、就職などのために必要な国家資格等の資格試験がとてもむずかしくなってい
ますが、狭き門の資格さえ取ってしまえば、それでほぼその人の目的は終わりです。あと
は、その資格を看板にして、何とか平穏無事に生活していけます。司法試験に合格したら、
小、中、高校の教員として採用されたら、大学の教授になったら、公認会計士になったら、
医者になったら、公務員になったら、博士号を取得したら、大学生になったら、それで目
的は終わり。資格を取った後も努力をして、もっと上のレベルを目指す・さらに上級の学
位等の資格を目指すというシステムが日本には確立されていません。
アメリカでは、資格を取る前だけではなく、取った後で専門家としてのさらに上を目指
したりしてより本格的な競争が始まります。それぞれの分野で次から次により社会的地位
や信用が上がり、より高額の報酬が得られるようにチャレンジし、働く場所を変えて、上
昇していけるように努力をします。資格を取った後こそ、自らの専門家としての能力を向
上させ、きちんと仕事のできる人のみが専門家として生き残り、収入も増えて、他の人の
ために、又社会のために奉仕ができるのです。