ラーネマの「貧困」 貧困の定義と測定 キーワード 1. 絶対的な貧困 2. 相対的な貧困 3. 伝統社会 4. 誘発されるニーズ 5. 干渉主義(外からの干渉) 1 貧困 UNDPによる貧困の定義(絶対的な貧困) 貧困とは、教育、仕事、食料、保健医療、飲料水、住居、エ ネルギーなど最も基本的な物・サービスを手に入れられない 状態のことです。極度の、あるいは絶対的な貧困とは、生き ていくうえで最低限必要な食料さえ確保できず、尊厳ある社 会生活を営むことが困難な状態を指します。 世界中で12億以上の人々が1日わずか1ドルで生活しています。20億 人以上が1日2ドル未満で生活し、8億5,000万人以上が日々の食べ物 にも事欠く毎日を送っています。 2 貧困 相対的な貧困 周囲の地域や住民と比べるとものに事欠く。 先進国や豊かな国の中にもあるし、 途上国の生活水準格差にもある。 UNDP又は日本外務省による豊かな国の例:日本、北欧などの中 にある社会層格差。 途上国の例:比較的に近代化されているタイ、ガーナ。日本と比較 すると、貧困国。本国の隣国と比べると、富裕国。 個々人の比較で、そして時代の流れに連れて、「貧困」の水準が異 なるからこれらにも「相対的な貧困」が当てはまる。 3 貧困と先進国と途上国との関係 “伝統社会” 1.農村社会(「国」ではなくて「社会」) 2.前近代社会(「国」ではなくて「社会」) 3.“価値観”が金銭的な価値観だけではない 4. 自己消費のために生産する。(“自己”=コミュニティ) 国際市場のための余剰生産・換金作物生産ではない 4 伝統社会の定義 つづき 農村社会・主に農業に従事する その上、伝統社会の定義にどのような観念があるのか? 伝統社会にあるはずの要素: ・伝統的な社会組織 ・村落の形式 ・自給自足生活 ・国際社会との関係がうすい。国際市場との関係がない ・有利・不利を共同体内で耐える 5 貧困とその解釈 誘惑された「ニーズ」 途上国の例:先進国からの誘い: 先進国の余剰生産物の購入(国政府への誘惑、 伝統的な共同体への誘惑、個人への誘惑) 先進国の例:「隣家に負けぬ暮しをする」 6 貧困の定義 IV 社会という場と時空による貧困への感覚とその違い • • • 社会・共同体の生活と価値観の違い 時代の流れに起源する違い 地域や共同体の昔からの感覚と、 外との関係が始まってからの感覚との違い (ラダク人の例p227) 7 ラーネマの「貧困」 貧困の定義と測定への批判 1. 2. 3. 4. 典型的な定義の四つの次元 物質性 p224~225 主体の感覚 p225~226 外から見た貧困 p226 さまざまな貧困感覚に対する社会文化的 時空の影響 p226~227 8 貧困の定義と測定:例1:「GDP」 相対的な貧困の測定・世界銀行からのデータ.単位=米ドル GDP=国内総生産 2000年度現在 国 1人当りGDP (購買力に変換された) 国のGDP タイ 6,600 121Billion (1210億) ベトナム 1,950 154.4Billion (1544億) 日本 27,200 3.45兆円 シンガポール 24,700 106.3Billion (1063億) 9 9 貧困の測定:例2:「相対的な貧困」 • 国家間の物質的な格差 • 地域間の物質的な格差 相対的な貧困率の測定 カナダ 20% ドイツ 13% メキシコ 29% ロシア 26% アメリカ合衆国 24% 順位 2 1 5 4 3 1人当りGDPの測定 $875B(8千75億) $2,17T(2.17兆) $920B(9千20億) $1.2T(1.2兆) $10T(10兆) 順位 5 2 4 3 1 情報源線:LIS 1990年代中旬 所得の中央値の60%以下 ※相対的な貧困率の順位は、貧困率の低い国が1. 10 10 貧困の定義 I 1. 「物質性」による貧困の定義: 「貧困」としての物質的な欠如・物の欠如もあるが、 概念としての貧困とは違う。「貧しさ」として感じとられたと きに、初めて「貧困」という言葉に込められた特定の意味を帯びる (p225下)。が、否定的に感覚する自分の貧困を越える ために、“「有力」のある人(権力者)との結びつき”に依存する p226上 疑問点:貧困が物質的な貧困だけであれば、人間の 満足や保障をどのように測定するのか? そして、非物質的な富裕も欠如もあるといえるが、 11 何になるのであろうか? 貧困の定義 II 2.主体の感覚と貧困の状況 • 貧困の感覚は個人にもよる、社会にもよる • 「貧困者」の自己感覚は、自分たちの意志や力とは別に 動く状態、境遇による貧困(“どうしようもない貧困”) • 選択された貧困:「有形資産からの解放」、宗教のため の貧乏など • 有力な者への依存関係(権力者又はパトロンへの依存) 12 12 貧困の定義 III (先進国の)社会における貧困への「答え」: 1. 「干渉」する:経済構造の調整(改革)・技術移転・ ダム建設・保健医療の改善などの、 援助、慈善、教育の水準化などの活動を他国で行おうとす る。 2.干渉しない・関係をつくらない。無視する。 疑問点:このリストに欠けている、異なる関係が 13 考えられるのか? ラネーマによる グローバル化・経済化の定義 I グローバリゼーションの前 • 低開発地域のインフラ状態 後 • 先進国のインフラ状態 • 伝統による自給自足可能な社会 • 近代化しているニーズ • 特徴がある地域と村の生活 • 普遍的で同質化された 生活 • 地域の経済的な利益の ための労働・職業 • 国内外の経済的利益のた めの経済活動・雇用構造 (輸出経済、工業化) • 貧困者・貧困者ではない者が 同じ共同体に所属する意識 • 貧困層への差別 (学校、 病院、雇用制度、政策に よる) 14 途上国の「経済化」 利点 解決策が求められる点 • 大量生産・多様な生産 • 必要なインフラが入手 できる(医療設備、教育 施設、交通機関など) • 正式な雇用構造 • 必需品のニーズや誘発 されたニーズに応える経 済活動 • 生み出された富と欲求は、 恒常的な欠乏、欲望の満た されない状態に置く • インフラや化学物質から生 じる問題を解決する方法は ない • 生活費は恒常的に高まる • 工業生産が充足できない ニーズが増え、経済的な価 値がつかない活動の価値 15 が低下する
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