欧米経済展望2016年2月号(PDF:1070KB)

欧米経済展望
2016年2月
調査部 マクロ経済研究センター
http://www.jri.co.jp/report/medium/publication/overseas
目次
◆米国経済・・・・p.Ⅰ-(1~6)
◆欧州経済・・・・p.Ⅱ-(1~5)
◆原油市場・・・・p.Ⅲ-(1~2)
調査部 マクロ経済研究センター(海外経済グループ)
◆米国経済担当
藤山 光雄 (Tel:03-6833-2453
◆欧州経済担当
芝
亮行 (Tel:03-6833-0489
井上 肇
(Tel:03-6833-0920
◆原油市場担当
藤山 光雄
Mail:[email protected])
Mail:[email protected])
Mail:[email protected])
◆本資料は2016年2月1日時点で利用可能な情報をもとに作成しています。
米国経済の現状:
企業部門の弱含みを背景に、GDP成長率は大きく減速。
<2015年10~12月期GDP速報>
◆輸出や在庫投資、設備投資の弱含み
を受け、大きく減速
2015年10~12月期の実質GDPは前
期比年率+0.7%と、7~9月期から大
きく減速。輸出や在庫投資が弱含んだ
ほか、設備投資も2012年7~9月期以
来のマイナスに。もっとも、個人消費
は前期比年率+2.2%と、底堅さを維
持。
<家計部門>
◆個人消費の弱含みは、一時的にとど
まる公算
2015年12月の小売売上高は、前月比
▲0.1%と弱含み。コア売上高も、10ヵ
月ぶりとなるマイナスに。もっとも、
内訳をみると、百貨店などの総合小売
店や衣料品店の落ち込みが目立ってお
り、平年対比極めて温暖であった気候
の影響を大きく受けたものと判断。
<住宅市場>
◆住宅販売は底堅く推移
2015年12月の新築住宅販売件数は、
54.4万件と大きく増加。また、11月に
大きく減少していた中古住宅販売件数
も、再び昨年秋の水準を回復してお
り、11月の大幅な落ち込みは、住宅
ローンに関する規制変更への対応に伴
う一時的なものとの見方を裏付け。
米国
実質GDP成長率(前期比年率)
個人消費
在庫投資
輸入
(%)
8
設備投資
政府支出
実質GDP
欧州
原油
小売売上高(前月比)
住宅投資
輸出
(%)
建材
自動車
小売売上高
2.0
1.5
6
ガソリン
その他(コア)
1.0
4
0.5
2
0.0
0
▲0.5
▲2
▲1.0
▲1.5
▲4
2012
13
14
15
2014
(年/期)
15
(年/月)
(資料)Bureau of Economic Analysis
(資料)U.S. Census Bureau
住宅販売件数
暖房度日の平年差と総合小売店・衣料品店の売上高
<小売売上高(前月比、右目盛)>
500
総合小売店
衣料品店
400
(℃)
300
200
100
↑平年対比寒冷
0
▲100
▲200
暖房度日の平年差
(左目盛)
↓平年対比温暖
▲300
2014
15
(資料)NOAA、U.S. Census Bureau
(注)暖房度日は、1日の平均気温が華氏65℃
(摂氏約18℃)を何℃下回ったかを累積した値。
(%)
3
2
1
0
▲1
▲2
▲3
▲4
▲5
▲6
▲7
▲8
▲9
▲10
(年/月)
(万件)
(万件)
60
新築(左目盛)
580
55
中古(右目盛)
560
540
50
520
45
500
40
480
460
35
440
30
420
25
2011
400
12
13
14
(資料)U.S. Census Bureau、NAR
15
16
(年/月)
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月
- Ⅰ‐1 -
米国経済の現状:
製造業には依然として厳しさ。雇用・所得環境は改善傾向が持続
<企業部門>
◆製造業には厳しさが残存
2015年12月の鉱工業生産指数は前月
比▲0.4%と、4ヵ月連続のマイナス
に。原油安・暖冬による鉱業や電気・
ガスの落ち込みが大きいものの、製造
業も2ヵ月連続のマイナスとなるな
ど、総じて弱含み。
また、ISM製造業新規受注指数が
景況判断の分かれ目となる「50」前後
の低水準で推移しているほか、足許で
地区連銀の製造業景況指数(6ヵ月先
見通し)が大きく低下しており、当
面、新興国景気の減速やドル高などを
背景に、製造業には厳しさが残る見込
み。
<雇用環境>
◆雇用者数は堅調な伸びが持続
2015年12月の非農業部門雇用者数は
前月差+29.2万人と、3ヵ月連続で25
万人を超える伸びに。企業の採用見通
しも高水準にあり、先行きも雇用者数
の伸びは堅調に推移する見込み。
また、2015年半ば以降、最も重要な
経営課題として「雇用の質」をあげる
中小企業が一段と増加。先行き、質の
高い労働者の確保を目的に、企業が賃
上げに積極的になることを期待。
鉱工業生産指数(前月比)
(%)
製造業
1.2
欧州
原油
製造業のISM景況指数と地区連銀景況指数
(%ポイント)
鉱業
電気・ガス
米国
鉱工業生産
(%ポイント)
75
フィラデルフィア連銀(6ヵ月先見通し、右目盛)
70
0.8
0.2
0.0
▲0.2
▲0.4
▲0.6
80
ニューヨーク連銀( 〃 )
0.6
0.4
100
ISM製造業新規受注指数(左目盛)
1.0
65
60
60
40
55
20
50
0
▲0.8
▲1.0
45
2014
15
(年/月)
(資料)FRB
▲20
2012
50
14
15
16
(年/月)
(資料)ISM、各地区連銀
非農業部門雇用者数と企業の採用見通し
(前月差、
万人)
13
中小企業の最も重要な経営課題
(「採用増」-「採用減」、
%ポイント)
マンパワー採用見通し(右目盛)
NFIB中小企業採用見通し( 〃 )
(%)
35
20
雇用の質
規制
税制
売上不振
30
40
15
25
30
10
20
20
5
10
0
15
10
非農業部門雇用者数(左目盛)
0
▲5
2012
13
14
15
(年/期・月)
(資料)マンパワー、NFIB、Bureau of Labor Statistics
(注)マンパワーは翌四半期、NFIBは今後3ヵ月間の採用見通し。
5
0
2009
10
11
(資料)NFIB
(注)上位4項目を図示。
12
13
14
15
(年/月)
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月
- Ⅰ‐2 -
米国トピックス①:個人消費
個人消費は底堅く推移も、金融市場の混乱が懸念材料に
◆個人消費は底堅く推移
米国では、製造業を中心に企業部門
の低迷が続く一方、個人消費は底堅く
推移。消費者マインドは、2015年初に
07年半ば以前と並ぶ水準まで上昇した
後も、年を通して高水準を維持。ま
た、足許でリボルビング・ローン残高
の増勢が加速しており、借り入れを伴
う消費行動に積極化の動き。
背景には、雇用・所得環境の改善や
ガソリン価格の低下が指摘可能。足許
で時間当たり賃金の伸びに拡大の兆し
がみられ、所得環境の一段の改善を背
景に、個人消費は先行きも底堅く推移
する見込み。
◆金融市場の混乱が長引けば、個人消
費の重石となる恐れ
一方、昨年半ば以降、貯蓄率が再び
上昇傾向に。昨夏の金融市場の混乱な
どから、ガソリン支出の負担減少分を
消費に振り向ける動きが抑制されてい
る可能性。
こうしたなか、本年初め以降、中国
景気の先行き不安を発端に金融市場が
再び混乱。消費者の株価見通しは、昨
年末にかけて持ち直し傾向にあったも
のの、足許で再び下振れており、金融
市場の混乱が長期化あるいは頻繁に生
じれば、株価に対する慎重な見方が固
定化し、個人消費の重石となる恐れ。
消費者マインド(総合指数)
(ポイント)
欧州
原油
時間当たり賃金とリボルビング・ローン残高
カンファレンスボード消費者信頼感指数
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
米国
(億ドル)
ミシガン大学消費者信頼感指数
(%)
リボルビング・ローン残高
(前年差、左目盛)
800
600
4.5
時間当たり賃金
(前年比、右目盛)
400
4.0
3.5
200
0
3.0
▲200
2.5
▲400
2.0
▲600
2004 05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(資料)The Conference Board、University of Michigan (年/月)
(注)カンファレンスボードは1985年=100、ミシガン大学
は1966年=100。
▲1,000
2007 08
(ドル/ガロン)
4.5
ガソリン価格(右目盛)
4.0
5.5
3.5
3.0
5.0
2.5
4.5
2.0
4.0
1.5
2013
14
15
(資料)Bureau of Economic Analysis、EIA
10
11
12
13
14
15
(年/月)
株価と消費者の株価見通し(先行き1年)
貯蓄率(左目盛)
6.0
1.0
09
(資料)FRB、Bureau of Labor Statistics
ガソリン価格と貯蓄率
(%)
1.5
▲800
(ドル)
(「上昇」-「下落」、%ポイント)
36
32
28
24
20
16
12
8
4
0
▲4
▲8
▲12
ダウ工業30種平均株価
(月中平均、右目盛)
18,000
17,000
16,000
株価下落
15,000
14,000
13,000
株価の先行き
見通し(左目盛)
12,000
11,000
16
2013
(年/月)
(資料)The Conference Board、Bloomberg L.P.
14
15
16
(年/月)
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月
- Ⅰ‐3 -
米国トピックス②:自動車販売
買い替え需要は減衰も、所得環境の改善やガソリン安が追い風に
◆自動車販売は高水準で推移
2015年の米国の自動車販売台数は
1,733万台と、ITバブル期の2000年と
並ぶ過去最高水準に。①リーマン・
ショック後に先送りされていた需要の
顕在化、②ローン金利の低下、③ガソ
リン価格の低下、などが追い風に。
先行きを展望すると、先送り需要の
顕在化による押し上げ効果は徐々に減
衰していく見込み。実際、リーマン・
ショック後に急速に長期化した自動車
の平均車齢は、2013年以降、買い替え
の進展などから横ばい傾向に。また、
FRBの利上げに伴い、ローン金利も
上昇していく公算。
もっとも、金利の上昇は緩やかにと
どまると予想されるほか、雇用・所得
環境の改善や低水準のガソリン価格な
どが引き続き追い風となり、自動車販
売は当面高水準で推移する見通し。
◆自動車版サブプライム・ローンへの
過度な懸念は不要と判断
自動車販売が堅調に推移するなか、
足許で信用リスクの高い消費者(サブ
プライム層)を対象としたローン残高
の増加を懸念する声も。
もっとも、自動車ローン残高全体に
占めるサブプライム向けの割合が大き
く高まっているわけではないこと、延
滞率に顕著な高まりはみられないこ
と、などから過度な懸念は不要と判
断。
自動車販売台数
(万台)
2,000
米国
欧州
原油
自動車の平均車齢
乗用車
(年)
ライト・トラック
12.0
1,800
計
乗用車
11.5
1,600
ライト・トラック
1,400
11.0
1,200
10.5
1,000
800
10.0
600
9.5
400
200
9.0
2002
0
1990
95
2000
05
10
自動車ローン残高のクレジット・スコア別割合
(%)
35
620未満
620~659
660~719
720~779
780以上
30
06
08
10
12
14
(資料)IHS、U.S. Department of Transportation
(注)各年7月1日時点(2009年のみ10月1日時点)。
(年)
(資料)Bureau of Economic Analysis
04
(年)
15
自動車ローンの延滞率
(%)
5.5
新規延滞率
5.0
90日以上延滞率
4.5
4.0
25
3.5
3.0
20
2.5
15
2.0
1.5
10
2004 05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
(資料)Federal Reserve Bank of New York
(注)クレジット・スコアは、一般的に650前後を下回ると
サブプライム層とされる。
15
(年/期)
1.0
2000
02
04
06
08
10
12
(資料)Federal Reserve Bank of New York
(注)新規延滞率は、新規延滞残高/期末残高。
14
(年/期末)
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月
- Ⅰ‐4 -
米国景気・金利見通し:
家計部門の底堅さを背景に、回復基調が持続
<景気見通し>
◆2016年末にかけて、2%台半ばをやや
上回る成長ペースが続く見通し
米国経済は、海外景気の回復の遅れ
や、2014年半ば以降の原油安・ドル高の
影響などから、短期的には設備投資や輸
出が伸び悩むものの、原油安・ドル高に
よる下押し圧力が減衰していくにつれ
て、緩やかに持ち直しへ。一方、家計部
門では、低水準で推移するガソリン価格
に加え、労働需給の引き締まりや「雇用
の質」の改善を背景とした賃金の伸びの
高まりが、個人消費の押し上げに寄与。
なお、FRBの利上げペースが緩やか
となるなか、当面金利上昇によるマイナ
ス影響は軽微にとどまる見込み。
<金利見通し>
◆景気回復に伴い緩やかに上昇
FRBは、雇用・物価動向を注視しな
がらも、先行き追加利上げを模索。もっ
とも、高水準のGDPギャップの残存
や、ドル高・原油安の影響などから、当
面ディスインフレ傾向が続くとみられ、
利上げペースは年1%程度の緩やかな
ペースとなる見通し。新興国景気の一段
の減速や金融市場の混乱の長期化などか
ら、米国景気・物価への下押し圧力が強
まれば、次回利上げが年半ば以降に先送
りされる可能性も。
長期金利は、米国景気の回復基調が強
まるのに伴い上昇していく見込み。ただ
し、新興国景気の減速懸念やディスイン
フレ懸念の残存などが重石となり、上昇
ペースは緩やかにとどまる見通し。
米国
欧州
原油
米国経済・物価見通し
(四半期は季調済前期比年率、%、%ポイント)
1~3
(実績)
実質GDP
個人消費
住宅投資
設備投資
在庫投資(寄与度)
政府支出
純輸出(寄与度)
輸出
輸入
実質最終需要
消費者物価
除く食料・エネルギー
2015年
4~6 7~9 10~12
1~3
(予測)
2016年
2014年 2015年 2016年
4~6 7~9 10~12
(実績)
(予測)
0.6
3.9
2.0
0.7
2.5
2.7
2.7
2.7
2.4
2.4
2.3
1.8
10.1
1.6
0.9
▲ 0.1
▲ 1.9
▲ 6.0
7.1
▲ 0.2
▲ 0.1
1.7
3.6
9.3
4.1
0.0
2.6
0.2
5.1
3.0
3.9
▲ 0.0
1.8
3.0
8.2
2.6
▲ 0.7
1.8
▲ 0.3
0.7
2.3
2.7
0.1
1.8
2.2
8.1
1.8
0.5
0.7
0.5
2.5
1.1
1.2
0.5
2.0
2.3
7.2
3.6
0.3
0.4
▲ 0.2
3.2
3.8
2.2
1.0
2.0
2.8
6.9
4.4
0.1
0.3
▲ 0.2
4.8
5.1
2.6
1.1
2.0
2.6
7.0
5.2
0.0
0.2
▲ 0.1
5.1
4.9
2.6
1.5
2.1
2.6
6.3
4.9
0.1
0.1
▲ 0.1
4.9
4.5
2.6
1.8
2.1
2.7
1.8
6.2
0.0
▲ 0.6
▲ 0.2
3.4
3.8
2.4
1.6
1.7
3.1
8.7
2.9
0.2
0.8
▲ 0.7
1.1
5.0
2.2
0.1
1.8
2.6
7.5
2.9
▲ 0.0
0.7
▲ 0.2
2.6
3.5
2.3
1.4
2.1
▲
▲
▲
▲
(資料)Bureau of Economic Analysis、Bureau of Labor Statistics
(注)在庫投資、純輸出の年間値は前年比寄与度、四半期値は前期比年率寄与度。消費者物価は前年(同期)比。 米国金利見通し
(%)
4.0
予測
3.5
3.4
3.0
10年国債利回り
2.5
2.4
2.0
1.5
FF金利誘導目標(レンジ)
1.0
ドルLIBOR3ヵ月
0.5
0.0
2014/12
15/3
6
(資料)FRB、Bloomberg L.P.
9
12
16/3
6
9
12
(年/月末)
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月
- Ⅰ‐5 -
FED
WATCH:
次回利上げをめぐり、物価を取り巻く上下両方向の圧力の行方が焦点に
◆当面、世界的な経済・金融情勢を見
極める姿勢を強調
FRBは、1月26・27日のFOMC
で、政策金利の据え置きを決定。
また、FOMC声明では、年初以降
の新興国景気の減速懸念の強まりや原
油価格の下落、それらを受けた金融市
場の混乱などを踏まえ、「見通しに対
するリスクは均衡している」との文言
を削除し、「世界的な経済・金融情勢
を注視し、その影響を精査する」との
文言を追加。
もっとも、利上げを見送った昨年9
月のFOMCで、「最近の経済・金融
情勢は、インフレ率のさらなる下押し
圧力となる可能性」との文言が追加さ
れた際と比べ、直接的な下振れリスク
への言及はみられず、今後の米国経
済・物価情勢を慎重に見極めたいとい
う姿勢がにじむ内容に。
◆追加利上げに向け、金融市場の安定
と賃金の伸びの拡大がカギに
先行き、金融市場が落ち着きを取り
戻すとともに、賃金の伸びが拡大して
いく、すなわち賃金面からのインフレ
圧力の高まりが見通せるのであれば、
FRBは3月FOMCで追加利上げに
踏み切る見通し。一方、そうした条件
が整わなければ、次回利上げが年半ば
以降に先送りされる可能性も。
米国
欧州
原油
FOMC声明(要旨)
今回(2016年1月26、27日)
前回(2015年12月15、16日)
・ 経済見通しを踏まえ、FF金利の誘導目標レンジを0.25~0.5%で維持
することを決定。金融政策スタンスは引き続き緩和的であり、労働市場の
一段の改善とインフレ率の2%への回復を支援。
・ FF金利の誘導目標レンジの今後の調整の時期や規模を決定するにあたっ
ては、最大雇用と2%のインフレ率という目標を念頭に、経済情勢の実績と
見通しを評価。この評価には、労働市場の状態に関する指標や、インフレ
圧力・インフレ期待に関する指標、金融および国際情勢を含む幅広い情報
を考慮。
金
融
政
策
・ 経済見通し、および、政策行動が将来の経済に影響を及ぼすまでに要する
時間を考慮し、FF金利の誘導目標レンジを0.25~0.5%へ引き上げることを決
定。この引き上げ後も、金融政策スタンスは引き続き緩和的であり、労働市場
の一段の改善とインフレ率の2%への回復を支援。
・ FF金利の誘導目標レンジの今後の調整の時期や規模を決定するにあたって
は、最大雇用と2%のインフレ率という目標を念頭に、経済情勢の実績と見通
しを評価。この評価には、労働市場の状態に関する指標や、インフレ圧力・イ
ンフレ期待に関する指標、金融および国際情勢を含む幅広い情報を考慮。
・ 前回会合以降に入手した情報では、経済活動は、緩やかなペースで拡大。
・ 前回会合以降に入手した情報では、昨年末にかけて経済成長が減速し
たものの、労働市場の状況は一段と改善。家計支出と企業の設備投
家計支出と企業の設備投資はここ数ヵ月着実なペースで増加し、住宅市場
は一段と改善したものの、純輸出は弱含み。
資はここ数ヵ月緩やかなペースで増加し、住宅市場は一段と改善したも
・ 持続的な雇用の伸びや失業率の低下を含め、最近の労働市場に関する
のの、純輸出は弱含んでおり、在庫投資は減速。
・ 力強い雇用の伸びを含め、最近の労働市場に関する様々な指標は、
様々な指標は一段の改善を示しており、年初以降に労働資源の活用不足が
イ
労働資源の活用不足がさらにいくらか縮小したことを示している。
景
目に見えて縮小してきたことを裏付け。
ン
・ 現在のところ、金融政策スタンスの段階的な調整によって、経済活動は緩
気 ・ 現在のところ、金融政策スタンスの段階的な調整によって、経済活動は緩や
フ
判
やかに拡大し、労働市場の指標は、引き続き力強さを増すと予想。
かな拡大が続き、労働市場の指標は、引き続き力強さを増すと予想。
レ
・ 市場ベースのインフレ見通しは一段と低下し、調査に基づく長期的な
断 ・ 全体として、国内および海外情勢を踏まえると、経済活動と労働市場の見通
認
・
インフレ期待はここ数ヵ月総じて横ばい。
しに対するリスクは均衡していると判断。
識
・ 市場ベースのインフレ見通しは依然として低く、一部の調査に基づく長期的
・ インフレ率は、エネルギー価格の一段の低下を一因に、当面低水準で
推移するとみられるものの、エネルギー価格や輸入物価の低下による一
なインフレ期待はやや低下。
・ インフレ率は、エネルギー価格や輸入物価の低下による一時的な影響が剥
時的な影響が剥落し、労働市場が一段と力強さを増すのに伴い、中期的に
2%に向かい上昇していくと予想。世界的な経済・金融情勢を注視し、労
落し、労働市場が一段と力強さを増すのに伴い、中期的に2%に向かい上昇
していくと予想。物価動向については、引き続き注意深く監視。
働市場やインフレ、見通しのリスク・バランスに対する影響を精査。
(資料)FRB等をもとに日本総研作成 (注)強調部分は変更点。
原油価格と輸入物価(前年比)
(%)
100
80
60
40
20
0
▲20
▲40
▲60
▲80
2008
期待インフレ率
(%)
原油価格(左目盛)
10
8
6
4
2
0
▲2
▲4
▲6
▲8
輸入物価
(除く石油製品、右目盛)
09
10
11
12
13
(資料)FRB、Bloomberg L.P.
14
15
16
(年/月)
(%)
4
消費者(3年)
予測専門家(5年)
消費者(5年)
3
2
ブレーク・イーブン・インフレ率(5年)
1
2012
13
14
15
16
(年/期、月)
(資料)ニューヨーク連銀、University of Michigan、
フィラデルフィア連銀、Bloomberg L.P.
(注)消費者のインフレ期待はニューヨーク連銀(3年)、ミシガン大学(5年)調べ。
予測専門家調査はフィラデルフィア連銀調べのPCEデフレータ見通し。
ブレーク・イーブン・インフレ率は、5年債利回り-5年物価連動債利回り。
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月
- Ⅰ‐6 -
欧州経済の現状:
やや減速するも、底堅い景気回復が持続
<企業部門>
◆ユーロ圏景気はやや減速するも、底堅
い景気回復が持続
ユーロ圏の1月の総合PMI(速報
値)は53.5と、15年2月以来の水準まで
低下。本年入り後の金融市場の混乱が企
業マインドを下押し。
<雇用環境>
◆雇用環境は改善が持続
ユーロ圏の11月の失業率は10.5%
と、緩やかながらも改善傾向が持続。
また、企業の採用見通しも「増加」超
での推移が続いており、当面雇用環境
の改善が続く見込み。
<企業部門>
◆輸出は新興国景気の減速を受け、伸び
悩み
ユーロ圏の輸出は、景気が堅調なEU
向けが増加。一方、ロシア向けは下げ止
まり、中国・アジア向けは昨秋にかけて
底打ちの兆しがみられたものの、その後
の中国景気の再減速や原油安の一段の進
行を踏まえると、先行き下振れのリス
ク。
<銀行部門>
◆銀行の貸出態度は徐々に緩和も、厳し
さは残存
直近のユーロ圏の銀行貸出調査(調査
期間は15年12月9~30日)によると、銀
行は貸出態度を緩和しつつある状況。
もっとも、多くの銀行が、08年以降の金
融危機、債務危機時に厳格化した貸出態
度を変えておらず、依然として企業の資
金調達環境には厳しさが残存。
米国
ユーロ圏の購買担当者景気指数
(ポイント)
サービス業
製造業
54
52
50
48
46
44
42
2010
11
12
13
14
15
(資料)Markit
16
(年/月)
ユーロ圏の域外向け名目輸出(季調値)
米国<12.4>
欧州(除くEU)<11.8>
EU(除くユーロ圏)<32.0>
中国<6.8>
アジア(除く中国)<17.0>
ロシア<4.1>
(2012年=100)
140
130
120
110
ユーロ圏の銀行の企業向け貸出基準の変化
不変(左目盛)
緩和(〃)
厳格化(〃)
厳格化-緩和(右目盛)
200
180
140
20
90
100
70
合計
50
2012
13
14
15
(資料)Eurostatを基に日本総研作成
(注)後方3ヵ月移動平均。<>内は2014年のシェア。
60
40
120
(%)
80
(%ポイント)
80
160
100
60
失業率(左目盛)
(「増加」-
「減少」)
採用見通し(3ヵ月先行、右逆目盛)
13
▲ 12
▲ 10
▲8
12
▲6
▲4
▲2
11
0
2
10
4
採用増
6
9
8
2011
12
13
14
15
16
(年/月)
(資料)DG ECFIN、Eurostatを基に日本総研作成
(注)採用見通しは、鉱工業・サービス業・建設業・小売業の
数値を経済センチメント指数のウエイトに基づいて合成し、
算出(鉱工業50%・サービス業37.5%・建設業6.25%・小
売業6.25%)。
(%)
60
56
原油
ユーロ圏の失業率と採用見通し
総合
58
欧州
0
緩和
▲ 20
80
▲ 40
60
▲ 60
40
▲ 80
20
▲ 100
▲ 120
0
(年/月)
2007 08
09
10
11
12
13
14
15
(年/期)
(資料)ECBを基に日本総研作成
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月
- Ⅱ-1 -
欧州トピックス:ドイツへの難民流入
難民の労働力化を通じたドイツ経済押し上げには時間を要する見込み
◆ドイツでは将来的な労働力不足への
対応として難民に期待
中東情勢の混乱が続くなか、ドイツ
では2015年に過去を大きく上回る約47
万人が難民庇護を申請。こうした難民
の増加は、短期的には財政支出の拡大
などから成長率の押し上げに作用。ま
た、15年の難民庇護申請者を年齢別に
みると、35歳未満の世代が約8割を占
める状況。少子高齢化が進み、将来的
な労働力不足が懸念されるドイツで
は、若年層を中心とした難民を潜在的
な労働力として期待する向きも。
◆ドイツの職業訓練体制の拡充も必要
ただし、急増する難民の労働力化を
進めるにあたり、受け入れ側のドイツ
にも課題。ドイツでは失業率が過去最
低水準で推移するなど、雇用環境の改
善が持続。もっとも、ドイツの失業者
数を国籍別にみると、国内出身者は、
減少が続いている一方、国外出身者
は、14年半ば以降、増加基調が持続。
国外出身者には難民以外も含んでいる
ものの、増加が続く難民に対する訓練
体制が追いついていないことが一因と
なっている可能性。実際、難民急増を
受け、ドイツ語の教師不足という供給
面での問題が顕在化。
以上を踏まえると、難民の就労を促
進するためには、難民の語学・職業ス
キルの習得をサポートする訓練体制を
一段と拡充する必要。
ドイツへの庇護申請者数
米国
欧州
原油
ドイツの人口と流入難民の構成(年齢層別)
(万人)
(%)
100
2015年
7
6
55歳以上
90
14年
80
13年
70
12年
60
5
45~55歳未満
35~45歳未満
50
4
25~35歳未満
40
3
30
2
20
16~25歳未満
10
1
16歳未満
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
(月)
(資料)Eurostat
1990年
2014年
2015年
人口
人口
流入難民
(資料)Eurostat 、Germany's Federal Ministry of the
interiorを基に日本総研作成
ユーロ圏各国の失業率
(%)
14
13
12
11
10
9
8
7
6
5
4
2010
ドイツの失業者の推移(国籍別、前年差)
ユーロ圏(左目盛)
ドイツ(左目盛)
フランス(〃)
イタリア(〃)
スペイン(右目盛)
(%)
28
26
13
(資料)Eurostat
14
15
外国
合計
10
0
▲ 10
▲ 20
22
▲ 30
▲ 40
▲ 50
18
▲ 60
16
▲ 70
14
12
ドイツ国内
20
24
20
11
(万人)
30
▲ 80
2007
08
09
10
11
12
(年/月)
13
14
15
(年/期)
(資料)Eurostatを基に日本総研作成
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月
- Ⅱ-2 -
英国経済の現状:
15年10~12月期は建設業のマイナス幅が縮小し、成長ペースが持ち直し
<10~12月期実質GDP(生産側)>
◆英国景気は成長ペースが加速
英国の15年10~12月期の実質GDP
(生産側)は前期比年率+2.0%と、
成長ペースが持ち直し。サービス業の
堅調な回復が続いたほか、建設業のマ
イナス幅が縮小。
<家計部門>
◆個人消費は高水準を維持
12月の小売売上高は、前月比
▲1.1%と弱含み。もっとも、11月の
クリスマス商戦前倒しの影響が大き
く、増加基調は不変と判断。一方、16
年入り後の金融市場の混乱を受け、足
もとで株価が大きく下落しており、混
乱が長期化すると、消費者マインドが
下押しされ、個人消費回復の重石とな
る恐れも。
<雇用環境>
◆失業率は低下傾向が持続
英国では、足許で失業率が5.1%と
なるなど、雇用環境は着実に改善。賃
金の伸びは鈍化傾向にあるものの、伸
び抑制に作用していたと考えられる
パートタイム比率が低下に転じている
ことから労働需給のひっ迫に伴い、賃
金の伸びも再加速すると期待。
<企業部門>
◆業種間で景況感にバラつき
景況感を業種別にみると、鉱工業は
低迷が持続。ユーロ圏に比して、資
源・エネルギー企業が多く、原油価格
低下の影響が大。もっとも、個人消費
の恩恵を受けるサービス業、小売業は
底堅く推移しており、景気を下支え。
その他
建設業
製造業
実質GDP
5
欧州
農林水産業
鉱業
サービス業
小売売上高(左目盛)
(2010年=100)
FTSE100株価(〃)
130
GfK消費者信頼感(右目盛)
125
4
2
1
0
▲5
▲10
110
▲15
105
▲20
▲25
▲30
95
▲2
▲3
13
14
15
(年/期)
(資料)ONS
▲35
90
▲40
2010
11
12
13
14
15
16
(資料)ONS、FTSE、GfK
(年/月)
(注)小売売上高は数量ベース、株価は月中平均。
英国の雇用・所得環境
英国の業種別景況感
(%)
27
(%ポイント)
40
26
30
25
(%)
5
6
7
09
10
11
12
13
(資料)ONSを基に日本総研作成
14
15
鉱工業
小売業
建設業
10
名目賃金(ボーナス除く、前年比、左目盛)
失業率(ILO基準、6ヵ月先行、右逆目盛)
サービス業
20
就業者に占めるパートタイム従事者の割合
24
(%)
6
5
4
3
2
1
0
2008
5
115
100
▲1
(ポイント)
10
0
120
3
2012
原油
英国の小売売上と株価、消費者マインド
英国の実質GDP(前期比年率)
(%)
米国
0
▲ 10
▲ 20
▲ 30
▲ 40
8
▲ 50
9
▲ 60
2010
11
12
(年/月)
13
14
15
16
(年/月)
(資料)DG ECFIN
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月
- Ⅱ-3 -
欧州経済見通し:
欧州経済は緩やかな景気回復が続く見通し
<ユーロ圏・景気見通し>
◆1%台半ば程度の成長が続く見込み
ドイツでは、良好な雇用・所得環境
を背景に、個人消費が底堅さを維持
し、回復基調が続く見込み。短期的に
は、難民対策の財政支出拡大も景気押
し上げに作用。もっとも、新興国景気
の下振れにより、従来のように輸出に
けん引役を期待することは難しく、回
復ペースは緩やかにとどまる見込み。
一方、ドイツ以外では、労働市場改革
が進展したスペインなどで堅調な回復
が続く公算ながら、フランスやイタリ
アでは、雇用・所得環境に厳しさが残
るなか、回復ペースの一段の加速には
なお時間を要する見込み。
インフレ率は、原油価格下落の影響
が一巡するにつれて、徐々にプラス幅
が拡大していく見込み。もっとも、南
欧諸国を中心に域内需要の低迷が続く
なか、ECBの目標である2%弱を大
きく下回る水準での推移が長期化する
見込み。
欧州
原油
欧州各国経済・物価見通し
10~12
(前年比、実質GDPの四半期は季節調整済前期比年率、%)
2016年
2014年 2015年 2016年
1~3
4~6
7~9 10~12
(予測)
(実績) (予測) (予測)
2015年
1~3
4~6
7~9
(実績)
ユーロ圏
ドイツ
フランス
実質GDP
消費者物価指数
実質GDP
消費者物価指数
実質GDP
消費者物価指数
実質GDP
2.2
1.6
1.2
1.4
1.5
1.6
1.6
1.6
0.9
1.5
▲ 0.3
0.2
0.1
0.2
0.5
0.5
0.9
1.2
0.4
0.0
1.6
0.8
1.4
1.8
1.3
1.4
1.6
1.7
1.7
1.7
1.6
1.5
1.7
▲ 0.1
0.4
0.0
0.2
0.7
0.7
1.2
1.4
0.8
0.1
1.0
2.8
0.1
1.0
1.0
1.1
1.2
1.2
1.3
0.2
1.1
1.1
▲ 0.2
0.3
0.1
0.2
0.3
0.3
0.7
1.0
0.6
0.1
0.6
1.5
2.2
1.8
2.0
2.2
2.4
2.4
2.3
2.9
2.2
2.2
消費者物価指数
0.1
(資料)Eurostat、ONSを基に日本総研作成
0.0
0.0
0.1
0.6
0.8
1.3
1.5
1.5
0.1
1.1
英国
ユーロ圏のHICP(前年比)と期待インフレ率
エネルギー(左目盛)
(%)
食料品(〃)
3
コア(〃)
HICP(〃) ECBの目標上限
(左目盛)
(%)
3.5
3.0
2.5
<英国・景気見通し>
◆2%台での成長が続く見通し
英国では、政府の住宅購入支援策や
低金利に下支えされた堅調な住宅需要
や良好な雇用環境などを背景に、個人
消費が堅調に推移する見通し。
インフレ率は、原油安の影響一巡に
加え、良好な雇用環境などを受けた需
要増が押し上げに作用し、徐々にプラ
ス幅が拡大する見込み。
米国
2.0
2.5
1.5
1.0
0.5
2
0.0
▲0.5
▲1.0
5年先5年物インフレ・スワップレート
(右目盛)
▲1.5
2010
11
12
(資料)Eurostat
1.5
13
14
15
16
(年/月)
【ホット・トピック】
◆ECBは3月に更なる追加緩和に踏み
切る可能性
1月21日に行われたECB理事会後の会
見で、ドラギ総裁は、次回のECBスタッ
フ見通しが発表される3月の理事会で更な
る追加緩和実施の可能性に言及。ユーロ圏
景気には、底堅さがみられるものの、16年
入り後の金融市場の混乱や原油安の一段の
進行などを受け、ECBは物価下押し圧力
の強まりを懸念。ECBが注目している市
場ベースのユーロ圏の期待インフレ率は、
1月の理事会後も上昇の兆しはみられず、
15年3月の量的緩和導入を示唆した15年1
月時点の水準近くまで低下。新興国景気や
原油価格に大きな改善がみられなければ、
ECBは3月理事会で追加緩和に踏み切る
可能性。
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月
- Ⅱ-4 -
欧州金利見通し:
ECBは3月にも更なる追加緩和の可能性
<ユーロ圏・金利見通し>
◆ECBの量的緩和が続くなか、独10
年債利回りは1%を下回る水準で推移
ユーロ圏では、南欧諸国を中心に、
大幅な需要不足が続くなか、デフレ圧
力が根強く残っており、インフレ率が
中長期的な物価目標に整合的な経路に
復する時期は当面見通せない状況。加
えて、新興国景気の減速や原油価格の
下落などから、足もとで物価の下振れ
リスクが高まっており、ECBは更な
る追加緩和を余儀なくされる可能性。
独10年債利回りは、ディスインフレ
傾向に加え、ECBの大量の国債買入
による需給面からの金利低下圧力が続
くなか、総じて1%を下回る水準での
推移が続く見通し。
<英国・金利見通し>
◆利上げ期待の後退や新興国景気の減
速が上昇抑制要因に
BOEは当面、現行の緩和的な金融
政策を維持。景気は良好ながら、原油
価格の下落などを背景に、インフレ率
の伸びが低調にとどまっていることか
ら、利上げ開始は2016年半ば以降とな
る見通し。
英10年債利回りは、当面、利上げ期
待の後退や新興国景気の減速などが金
利上昇の抑制要因として見込まれるも
のの、賃金やインフレ率の伸び加速の
兆しがみられ、利上げ期待が高まるの
に伴い上昇していく見込み。
米国
欧州
原油
ユーロ圏金利見通し
(%)
3.0
予測
2.5
2.0
1.5
独10年債利回り
1.00
1.0
0.5
0.0
14/12
ユーロ圏政策金利
0.00
15/3
6
9
12
16/3
6
9
12
(年/月末)
英国金利見通し
(%)
4.0
予測
3.5
2.80
3.0
英国10年債利回り
2.5
2.0
1.80
1.5
1.0
英国政策金利
0.5
0.0
14/12
15/3
6
9
12
16/3
6
9
12
(年/月末)
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月
- Ⅱ-5 -
原油市場動向:原油価格
当面、低水準での推移が続く見通し
<原油市況>
◆WTI原油先物価格は、一時26ドル
台まで下落
1月のWTI原油先物価格は、中国
景気の減速懸念の強まりやドル高の進
行、米国の石油製品在庫の増加などか
ら、月下旬にかけて急落。20日には、
2003年5月以来となる26ドル台半ばま
で下落。その後は、サウジアラビアや
ロシアの減産観測を受け、一時33ドル
台まで反発。
<投機筋・投機資金の動向>
◆投機筋の買い越し幅は、1月下旬に
かけて小幅拡大
金融市場の混乱を受け、月半ばに一
時2012年末以来の水準まで縮小も、株
価の反発に伴い月下旬にかけて拡大に
転化。
<原油価格見通し>
◆当面、低水準での推移が続く見通し
WTI先物は、米国原油生産の減少
や米国景気の回復基調の強まりが価格
押し上げに作用するほか、中東や北ア
フリカ、ロシアをめぐる地政学リスク
の残存が価格上振れ要因に。
もっとも、イランやイラク、リビア
での原油生産の回復観測や米原油在庫
の高止まり、新興国景気の減速懸念な
どが価格抑制に作用。この結果、総じ
て安値圏での推移が長期化する見通
し。
米国
原油価格と株価・為替レート
欧州
原油
米国の原油・石油製品在庫(前週差)
(百万バレル/日)
(ドル/バレル)
WTI原油先物価格
50
45
40
35
30
25
20
原油
16
ガソリン
留出油
12
ドル名目実効レート
(左逆目盛)
(1997年1月=100)
116
118
120
122
124
126
128
2015/8
9
10
11
S&P500種株価
(右目盛)
ドル高↓
12
16/1
(資料)Bloomberg L.P.、FRB
(ポイント)
2,200
2,150
2,100
2,050
2,000
1,950
1,900
1,850
2
(年/月)
8
4
0
▲4
▲8
▲12
2015/5
6
投機筋ネットポジション(左目盛)
(千枚)
400
1,800
90
350
1,700
300
1,600
250
1,500
200
1,400
60
150
1,300
50
100
1,200
40
50
↑買い越し
0
▲50
2014/9 11 15/1
3
5
7
11
12
16/1
(年/月)
1,100
1,000
70
30
20
9
10
2014/12
900
11 16/1
(年/月)
予測
80
↓売り越し
(資料)CFTC
(注)建玉単位の「1枚」は「1,000バレル」。
10
(ドル/バレル)
100
総建玉残高(右目盛)
9
WTI原油先物価格見通し
1,900
450
8
(資料)EIA
WTI原油先物ポジション
(千枚)
7
15/3
6
(資料)Bloomberg L.P.
9
12
16/3
6
(年/月末)
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月
- Ⅲ‐1 -
原油市場動向:米国の原油輸出解禁
輸出解禁が世界の原油市場に与える影響は、限定的となる見込み
◆米国の原油輸出量の増加は、当面、
緩やかにとどまる見込み
米国は、2015年12月に約40年ぶりに
原油輸出を解禁。シェールオイルの増
産を受け、特例として認められていた
カナダ向けを中心に米国の原油輸出は
既に増加傾向にあり、全面解禁を契機
に今後一段と拡大していく可能性。
もっとも、以下2点を背景に、当
面、輸出量の増加ペースは緩やかにと
どまる見込み。第一に、米国は依然と
して原油の純輸入国であり、先行き
シェールオイルの減産により、むしろ
純輸入量は増加に転じると予想されて
いること。第二に、足許でWTI原油
と北海ブレント原油の価格差が大きく
縮小しており、米国産原油の価格競争
力が低下していること。
◆WTI原油先物価格の国際指標とし
ての地位に回復の兆し
ちなみに、米国の原油輸出解禁を巡
る議論が本格化した2015年入り以降、
WTI原油先物取引の出来高が増加
し、北海ブレントを逆転。シェールオ
イルの増産以降、WTI原油先物価格
は米国内の需給動向の影響を受けやす
くなり、国際指標としての位置付けが
低下していたものの、輸出解禁を契機
に再び国際指標としての地位を取り戻
しつつある状況。
米国の原油・石油製品輸出
米国
欧州
原油
米国の原油生産量と純輸入量
(百万バレル/日)
(万バレル/日)
純輸入量
11
200
EIA見通し
生産量
180
原油
160
石油製品
10
140
9
120
8
100
7
80
60
6
40
5
20
0
2006 07
4
08
09
10
11
12
13
14
2006 07
15
(年/月)
(資料)EIA
08
(ドル/バレル)
160
140
120
100
80
60
40
20
0
20
40
60
80
北海ブレント( 〃 )
40
(ドル/バレル)
30
20
10
0
▲20
価格差
(WTI-北海ブレント、
左目盛)
▲30
2006 07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年/月)
(資料)Bloomberg L.P.
11
12
13
14
15
16
17
(年/月)
原油先物取引の出来高
WTI(右目盛)
▲10
10
(資料)EIA
原油価格
50
09
(万枚)
WTI(左目盛)
2,000
北海ブレント( 〃 )
1,500
1,000
500
WTI-北海ブレント
(右目盛)
0
500
1,000
2008
09
10
11
(資料)Bloomberg L.P.
12
13
14
15
2,200
2,000
1,800
1,600
1,400
(万枚)
1,200
1,000
800
600
400
200
0
▲200
▲400
16
(年/月)
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月
- Ⅲ‐2 -
_
内外市場データ(月中平均)
為替相場
$/€
¥/$
¥/€
(NY終値) (NY終値) (NY終値)
12/5
12/6
12/7
12/8
12/9
12/10
12/11
12/12
13/1
13/2
13/3
13/4
13/5
13/6
13/7
13/8
13/9
13/10
13/11
13/12
14/1
14/2
14/3
14/4
14/5
14/6
14/7
14/8
14/9
14/10
14/11
14/12
15/1
15/2
15/3
15/4
15/5
15/6
15/7
15/8
15/9
15/10
15/11
15/12
16/1
79.68
79.35
78.98
78.68
78.16
79.01
81.05
83.91
89.10
93.13
94.87
97.75
100.99
97.29
99.64
97.80
99.19
97.83
100.11
103.60
103.88
102.12
102.36
102.51
101.84
102.06
101.75
102.98
107.39
108.02
116.40
119.44
118.33
118.78
120.37
119.52
120.84
123.68
123.33
123.06
120.09
120.16
122.63
121.58
118.29
101.90
99.57
97.09
97.59
100.62
102.47
104.07
110.16
118.53
124.24
122.92
127.35
131.05
128.40
130.47
130.25
132.53
133.43
135.13
141.96
141.51
139.59
141.52
141.58
139.85
138.81
137.74
137.10
138.46
136.99
145.21
146.99
137.63
134.86
130.33
129.29
134.80
138.96
135.63
137.11
134.95
134.81
131.56
132.51
128.54
1.2788
1.2548
1.2293
1.2404
1.2874
1.2970
1.2838
1.3127
1.3302
1.3339
1.2957
1.3025
1.2978
1.3200
1.3095
1.3319
1.3362
1.3639
1.3497
1.3703
1.3623
1.3670
1.3826
1.3811
1.3733
1.3601
1.3537
1.3314
1.2895
1.2682
1.2475
1.2307
1.1630
1.1354
1.0828
1.0818
1.1157
1.1235
1.0999
1.1145
1.1237
1.1220
1.0729
1.0899
1.0867
無担O/N
(%)
0.0836
0.0764
0.0836
0.0863
0.0848
0.0849
0.0856
0.0822
0.0828
0.0866
0.0780
0.0721
0.0734
0.0743
0.0734
0.0735
0.0715
0.0700
0.0733
0.0737
0.0726
0.0766
0.0721
0.0650
0.0676
0.0670
0.0658
0.0686
0.0664
0.0590
0.0649
0.0678
0.0739
0.0762
0.0697
0.0609
0.0693
0.0717
0.0740
0.0764
0.0734
0.0761
0.0781
0.0749
0.0745
国内市場
TIBOR
国債
日経平均
3ヵ月
10年物
株価
(%)
(%)
(円)
0.33
0.85
8842.54
0.33
0.84
8638.08
0.33
0.77
8760.68
0.33
0.80
8949.88
0.33
0.80
8948.59
0.33
0.77
8827.39
0.32
0.74
9059.86
0.32
0.74
9814.38
0.30
0.77 10750.85
0.28
0.74 11336.44
0.25
0.60 12244.03
0.24
0.57 13224.06
0.23
0.78 14532.41
0.23
0.85 13106.62
0.23
0.83 14317.54
0.23
0.75 13726.66
0.23
0.72 14372.12
0.22
0.63 14329.02
0.22
0.61 14931.74
0.22
0.67 15655.23
0.22
0.66 15578.28
0.22
0.60 14617.57
0.21
0.62 14694.83
0.21
0.61 14475.33
0.21
0.59 14343.14
0.21
0.59 15131.80
0.21
0.54 15379.29
0.21
0.51 15358.70
0.21
0.54 15948.47
0.20
0.49 15394.11
0.18
0.47 17179.03
0.18
0.38 17541.69
0.18
0.26 17274.40
0.17
0.37 18053.20
0.17
0.38 19197.57
0.17
0.33 19767.92
0.17
0.41 19974.19
0.17
0.47 20403.84
0.17
0.44 20372.58
0.17
0.38 19919.09
0.17
0.36 17944.22
0.17
0.31 18374.11
0.17
0.31 19581.77
0.17
0.30 19202.58
0.17
0.22 17302.30
FF O/N
(%)
0.16
0.16
0.16
0.13
0.14
0.16
0.16
0.16
0.14
0.15
0.14
0.15
0.11
0.09
0.09
0.08
0.08
0.09
0.08
0.09
0.07
0.07
0.08
0.09
0.09
0.10
0.09
0.09
0.09
0.09
0.09
0.12
0.11
0.11
0.11
0.12
0.12
0.13
0.13
0.14
0.14
0.12
0.12
0.24
0.34
LIBOR
3ヵ月
(%)
0.47
0.47
0.45
0.43
0.39
0.33
0.31
0.31
0.30
0.29
0.28
0.28
0.27
0.27
0.27
0.26
0.25
0.24
0.24
0.24
0.24
0.24
0.23
0.23
0.23
0.23
0.23
0.23
0.23
0.23
0.23
0.24
0.25
0.26
0.27
0.28
0.28
0.28
0.29
0.32
0.33
0.32
0.37
0.53
0.62
米国市場
国債
NYダウ
10年物
工業株
(%)
(ドル)
1.78 12721.08
1.61 12544.90
1.50 12814.10
1.67 13134.90
1.70 13418.50
1.72 13380.65
1.65 12896.44
1.71 13144.18
1.88 13615.32
1.97 13967.33
1.94 14418.26
1.73 14675.91
1.92 15172.18
2.29 15035.75
2.56 15390.21
2.73 15195.35
2.80 15269.84
2.60 15289.29
2.71 15870.83
2.89 16095.77
2.85 16243.72
2.70 15958.44
2.72 16308.63
2.69 16399.50
2.55 16567.25
2.59 16843.75
2.53 16988.26
2.41 16775.15
2.52 17098.13
2.29 16701.87
2.32 17648.98
2.20 17754.24
1.88 17542.25
1.98 17945.41
2.04 17931.75
1.92 17970.51
2.20 18124.71
2.36 17927.22
2.32 17795.02
2.16 17061.59
2.16 16339.95
2.06 17182.28
2.26 17723.77
2.23 17542.85
2.08 16305.25
S&P500
1341.27
1323.48
1359.78
1403.44
1443.42
1437.82
1394.51
1422.29
1480.40
1512.31
1550.83
1570.70
1639.84
1618.77
1668.68
1670.09
1687.17
1720.03
1783.54
1807.78
1822.36
1817.03
1863.52
1864.26
1889.77
1947.09
1973.10
1961.53
1993.23
1937.27
2044.57
2054.27
2028.18
2082.20
2079.99
2094.86
2111.94
2099.28
2094.14
2039.87
1944.40
2024.81
2080.62
2054.08
1918.60
EONIA
(%)
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲
0.34
0.33
0.18
0.11
0.10
0.09
0.08
0.07
0.07
0.07
0.07
0.08
0.08
0.09
0.09
0.08
0.08
0.09
0.10
0.17
0.20
0.16
0.19
0.25
0.25
0.08
0.04
0.02
0.01
0.00
0.01
0.03
0.05
0.04
0.05
0.08
0.11
0.12
0.12
0.12
0.14
0.14
0.14
0.20
0.24
EURIBOR
3ヵ月
(%)
0.69
0.66
0.50
0.33
0.25
0.21
0.19
0.19
0.21
0.22
0.21
0.21
0.20
0.21
0.22
0.23
0.22
0.23
0.22
0.27
0.29
0.29
0.31
0.33
0.33
0.24
0.21
0.19
0.10
0.08
0.08
0.08
0.06
0.05
0.03
0.01
▲ 0.01
▲ 0.01
▲ 0.02
▲ 0.03
▲ 0.04
▲ 0.05
▲ 0.09
▲ 0.13
▲ 0.15
欧州市場
独国債
10年物
(%)
1.46
1.43
1.31
1.42
1.55
1.52
1.39
1.36
1.56
1.60
1.41
1.25
1.37
1.62
1.63
1.80
1.93
1.81
1.72
1.85
1.80
1.66
1.59
1.53
1.40
1.35
1.20
1.02
1.00
0.88
0.79
0.64
0.45
0.35
0.26
0.16
0.58
0.83
0.76
0.67
0.68
0.55
0.55
0.60
0.51
英国債
10年物
(%)
1.87
1.67
1.55
1.57
1.77
1.80
1.79
1.85
2.04
2.11
1.89
1.71
1.86
2.21
2.36
2.61
2.89
2.69
2.74
2.93
2.87
2.74
2.72
2.67
2.62
2.70
2.63
2.44
2.49
2.23
2.13
1.87
1.55
1.68
1.69
1.62
1.93
2.06
2.01
1.87
1.85
1.81
1.94
1.88
1.74
ユーロ・
ストックス50
2198.50
2152.74
2258.36
2424.50
2530.69
2503.47
2513.98
2625.55
2715.30
2630.40
2680.18
2636.35
2785.77
2655.76
2686.53
2803.85
2864.56
2988.88
3055.98
3010.20
3092.40
3085.87
3093.97
3171.53
3197.40
3271.69
3192.31
3089.05
3233.38
3029.58
3126.15
3159.77
3207.26
3453.79
3655.31
3733.80
3617.87
3521.77
3545.10
3444.41
3165.46
3275.48
3439.57
3288.63
3030.50
商品市況
WTI
COMEX
原油先物
金先物
($/B)
($/TO)
94.72
1587.68
82.41
1600.53
87.93
1593.68
94.16
1630.27
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1096.42
(株)日本総合研究所 欧米経済展望 2016年2月