地方創生につなげたい日本のGI制度への期待

地方創生につなげたい日本のGI制度への期待
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JMA マネジメント
2016.2
昨年の6月にスタートした日本のGI 制度(地理的表示 Geographical
Indication)
。運用開始初日に19 産品が登録申請され、その後 60 件以上の申
請がある。12月22日にようやく初登録となる7 産品(あおもりカシス、但馬牛、
神戸ビーフ、夕張メロン、八女伝統本玉露、江戸崎かぼちゃ、鹿児島の壺造
り黒酢)が決定した。
GI 制度における先進国である欧州各国は、この知財を戦略的にマーケティ
ングに活かしている。ご存じのとおり「シャンパン」は、シャンパーニュ地方
で生産される。決められた製法でつくられたものでなければ「シャンパン」の
名称を使うことはできない。これは、WTOのTRIPS 協定(知的所有権の貿易
関連の側面に関する協定)におけるPGI(地理的表示保護)に基づくものだ。
日本も独自の制度ではあるが、やっと同様の仕組みがスタートした。制度が
整い、登録されたとしても、登録価値を戦略的に創造しなければ、意味はない。
優れた例に学ぶならば、イタリアチーズの王様といわれるパルマ産のチーズ
「パルミジャーノ・レッジャーノ」がある。イタリアの原産地保護制度はDOP
と呼ばれるが、
「パルミジャーノ・レッジャーノ」を名乗るには、エミリア・ロマー
ニャ地方のパルマ、レッジョ・エミリア、モデナなどの特定地域でつくられ、
かつ、素材、製法、熟成期間や出来栄えなどの厳格な基準を満たし、DOPの
刻印を押されたもの、という条件を満たさねばならない。価格では、審査を通
過しなかったものと比べて何倍も高いという違いがある。こうした仕組みを地
域組織が厳格に守り育成し、その価値を高く保持しつづけてきたからこそ、こ
のチーズは世界に普及し、それにより生産者は幾代にもわたり続くことができ
ている。
では今後、私たち日本はどうしたいのか、どうするのかを考えなければなら
ない。昨今、農産物や水産物のブランド戦略が盛んに行われているが、先進
事例である欧州各地の厳格な取組みやマーケティングを学び、一時のブームに
せず、長期に守り育てる目線と戦略が関係者に共有されることを期待したい。
ブンヒン
(編集室 文斌)