学校だより1月20日号 - 相模原市立桜台小学校

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学校長
渡 部
強
平成28年 1月20日
◆江戸しぐさ
あるテレビ番組で、「江戸しぐさ」(仕草ではなく、心や思いが入るので、
思草と書くそうです)を取り上げていました。興味深く見入ってしまいました。
江戸は、今の東京と同じように、日本の中心で、たくさんの人が住んでいました。し
ぐさというのは、何かするときの動きや態度のことです。つまり、「江戸しぐさ」とい
うのは、江戸に住んでいた多くの人たちが、お互いに住みやすくするための動作や態度
のことです。江戸しぐさをいくつか紹介します。
●「傘かしげ」
雨の日に道を歩いていて、自分の傘から落ちる雨で相手をぬらしたりしないように、
お互いに傘を人のいない外側に斜めにかたむけてすれ違うことです。ぬれた傘を家の
中にもちこんだりしないというのも、今に通じる雨の日のエチケットです。
●「七三歩き」
道路を歩くとき、自分は、道の三つ分(3割)を歩き、道の七つ分(7割)を急ぐ
人や荷物を運ぶ車のためにあけておくということです。先日、高校生と思われる生徒
が、おしゃべりをしながら道一杯に広がって歩いていて、他の人が困っていました。
みなさんも登校、下校で、道いっぱい広がって歩いていることはありませんか。
●「こぶし腰浮かせ」
座っている時に誰かが来たら、みんなが、こぶし一つ、腰をう
かせてつめて、その人も座れるようにすることです。電車の中で、
詰めずに座っている人がいます。駅で人が乗って来たら、こぶし
一つ分、腰を浮かせてつめれば、一人が座れる空間ができます。
まだまだ、たくさんの「江戸しぐさ」があります。
江戸時代は、260年以上もの間、戦争のない平和な時代が続き
ました。その平和な安心な社会を支えたのが、「江戸しぐさ」という人づきあい、共生
の知恵です。江戸商人のリーダーたちが築き上げた、上に立つ者の行動哲学です。江戸
しぐさは、江戸に暮らす人々の他の人に対する「思いやり」や「心遣い」であふれてい
ます。よき商人として、いかに生きるべきかという商人道で、人間関係を円滑にするた
めの知恵でもありました。大切なことは、自分さえよければいいという身勝手な考えで
なく、他の人のことを思いやり、さりげない心遣いを大切にして、常に行動をしようと
いうことです。
ところで、この江戸しぐさは、何才までに身につけたのかというと、6才までに身に
つけたのだそうです。つまり、今の小学校1年生までに身につけていたのです。
このような「江戸しぐさ」をさりげなくできる人が、江戸では、
「いき(意気)な人」
(上方では「粋」と書きますが、多少意味が違います)であると言われていました。逆
に「江戸しぐさ」を身に付けていない人は、「野暮」(やぼ)と見られていました。
先日、昼休み時間を終えて外から帰ってきたとき、昇降口に先に入りかけていた6年
生の子が、友だちが玄関に入るまでさりげなくドアを押さえていてくれました。これも
素敵な江戸しぐさです。
子どもたちも「江戸しぐさ」のように、相手のことを思いやって行う
しぐさは、わりとできている人も多いと思います。そんなときは、私は、
「桜台小しぐさ」とよびたいです。「江戸しぐさ」に負けないたくさんの
「桜台小しぐさ」が、学校中にあふれてほしいです。