行政法解説(PDF 86KB)

■2016 年度B日程一般入試法律科目試験「行政法」問題の解説
(1)
本設例は、行政法の基本原則である法治主義、とくに法律の留保の原則に関
するものである。法律の留保の原則の原則については、侵害留保説、権力留保
説、全部留保説などの諸説があるが(答案では、この点について言及する必要
がある)、行政による実力行使については法律の授権が必要である。
そこで、まず、この法律の留保の原則によると、法律や条例にはA市が鉄杭の
撤去を行うことを認める規定はなかったというのであるから、A市による鉄杭
の撤去は、違法であったということを指摘する必要がある。
これが解答の 1 つの筋になるが、本設例の状況では、鉄杭の撤去を適法と見
る余地がなかったかどうかに言及することも必要である。すなわち船の航行上
の危険があったというのであるから、撤去を認める余地がゼロではないという
ことを指摘する必要がある。
(2)
本設例で行われた実力行使は、行政上の即時強制に当たるものであるが、本
問題で問われているのは、行政上の強制執行ができなかったかどうかである。
従って、答案では、以下のことを書くことが期待されている。すなわち、行
政上の強制執行には、法律の授権が必要であること、本設例で考えられる行政
上の強制執行は行政上の代執行であるが、それについては行政代執行法がある
こと(つまり法律の授権があること)、代執行の対象になるのは代替的作為義
務であるが、鉄杭の撤去の義務は代替的作為義務であり、この点でも代執行は
可能であること、しかし本設例ではこの義務を命じる規定が法律や条例にはな
いので代執行はできないこと、である。
以上