商法解説(PDF 123KB)

■2016 年度B日程一般入試法律科目試験「商法」問題の解説
本問は、個人で小売業を営んできたAが、BとCから出資を受けて共同でス
ーパーマーケットを営むため、株式会社(甲会社)を設立するとともに、小売
業を営んでいたA所有の土地・建物(本件不動産)を甲会社に譲渡するという
事案において、甲会社の成立後に本件不動産を甲会社に売却することが、会社
法上、事後設立(会 467 条 1 項 5 号)として規制されていることを理解できて
いるかを問う問題である。
さらに、甲会社の代表取締役に就任したAが、A所有の不動産を甲会社に売
却することは、取締役と会社との間の取引(会 356 条 1 項 2 号)に当たること
を理解できているかも問われている。
現物出資、財産引受、事後設立は 3 点セットで覚えておくべきことは当然の
ことだと思っていたのだが、事後設立の論点を理解していた答案は多くなかっ
た。
利益相反取引については、多くの答案が理解していたが、株主総会の承認を
受けなければならないと誤解している答案が多数であった。会社法制定前には、
利益相反取引の承認機関が取締役会であることを間違えることはあり得ないこ
とだったと思うが、会社法制定により、(利益相反取引に限らず)このあたり
の理解がおろそかになっているように思われる。法科大学院で勉強した後は、
株主総会の承認は本来の決定機関である取締役会(会 365 条 1 項)がない場合
の規定であることを多くの学生が理解できるのだが、学部段階ではきちんと説
明されていないのだろうか?
利益相反取引は重要な事実を開示して取締役会の承認を受けなければならな
いことを理解しつつ、甲会社は公開会社だから取締役会設置会社である(会
327 条 1 項 1 号)ことを理解していない答案もあった。
以上