SURE: Shizuoka University REpository http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/ Title Author(s) Citation Issue Date URL Version IB 生物学的な限界環境下における人間生活の危機とその 克服方法の学際的比較研究 : 砂漠化と都市生活が生み出 す限界環境を中心に (『人間と地球環境』研究報告 : 環境 変動と生態系・人間(生活)への影響) 嶋田, 義仁 静岡大学学内特別研究報告. 2, p. 14-15 2000-03 http://doi.org/10.14945/00008222 publisher Rights This document is downloaded at: 2015-04-20T15:45:55Z IB 生物 学 的 な 限界環 境 下 にお ける 人 間生活 の 危 機 と そ の克 服 方法 の学 際 的比 較研 究 ―砂 漠 化 と都 市 生 活 が 生 み 出 す 限 界 環 境 を 中心 に 一 人文学部 嶋田義仁 IBチ ー ムの 研 究 の 分 担 なった。こう して生命は次第 に地球全体 にひ ろが 人 文・ 教授 社 会 人類 学 へ 総 括 ・ 砂漠化 の社会的宗教的対応 の研究 りなが ら地球環境 を利用 し尽 くして ゆくので あ 嶋 田 義仁 1)生 物学的限界環境 の研究班 増沢武弘 農 学・ 教授 林がサル を生んだ』によると、霊長類 による森 の 植 物 生態 学 情 報・ 助教授 開拓 である。 森林 はサルによっては じめて 開拓 さ れ、サルは森 の 王者 となった。 生物 学的限界環境 の研究 岩 崎 一孝 るが、そのク ライマ ックスは、河合雅雄氏 の『森 自然地理 学 2 人類 の 進化 もまた新たな 冒険 のは じま りで あ 気候 変動 の メカニ ズム と乾燥地地 理 の研究 2)自 然的限界環境 にお ける人間 生活 の研究班 横 田 博実 農 学 ・ 教授 人 支・ 助教 授 った。それ を象徴するのは二 足歩行 で、人類が 三 乾 燥地農 学 霊長類がが森 を出て 足歩行 をマス ター したのは、 サヴァンナ ヘ と歩 みをすす めたか らだと言わ れ 生態 人類 学 て いる。人類 の祖先 は楽 園 としての森を去 り、危 乾燥地 における農業 と緑化 の研究 河合 香吏 生 態 学 的 冒険 と して の 人類 進 化 牧 畜 民 の民族医学・ 生態 の研究 険な猛獣 な どのパ ッコす る草原世界 へ の冒険 者 3)都 市的限界環境 にお ける人間 生活 の研究班 となった。それ は、これ までの生命進化 とは 異な 諸井 克英 人丈 ・ 教授 社 会心理 学 人類以前 の 生命進化は、生命が様 々な種 へ と分 化・特殊化 しつつ、地球 上のさまざまな環境 へ と 都 市社会人の孤独感 の心理的研究 1 る生命進化 のは じまりとなった。 生 態 学 的 冒険者 と して の 生 命 本研究 は、 乾燥地 にお ける砂漠化 と都市環境問 適応す る ことによって、生命が地球 上へ と拡散 し 現代環 題 を学際的 に比較研 究す ることを通 じて、 境 問題 につ いて新 たな知見 を得 る こ とを目的 と てゆくプ ロセスであった。しか し人類 は特定 の環 境 へ の適応 による特殊化 を拒否 し、人類 自体 が地 して 発足 した。 乾燥地 も都市 も生物 学的 には限界 球全体 へ と拡散 して いつた。これ を可能に したの 環 境 にある。しか し人類文明 はむ しろ生物学的限 が、火や道具 、言語な どの文化 の発明である こと 界環境下 において こそ発展 を遂 げた かの観 が あ は い うまで もな いが、それ は、特定環境 に安住 す る。このパ ラ ドックスの解明 も本研 究 の深 い問題 ることな く、 環境 とのよ り強 い緊張関係 のなかで 意 識 としてあった。3年 間 の研究 の 総括 にあたっ 生きることの 選択 であった とも言 える。こうした て は、この問題 をめ ぐる反省 を整理 しておきたい。 人類進化 のの プ ロセスは文化的放散 とよばれ る。 このパ ラ ドックスは、生命進化 の歴史 にまで さ 人類は もうひ とつの冒険 もお こなった。ネオ ト か のぼって、人間 と環境 、生命 と環境 の関係 を考 ニー とか生理 的早産 とよばれてきた現象で、人間 察 す るな ら、けう して不思議で はな い。なぜな ら、 の子は未成熟 の状態で うまれ るよ うになった。動 生命 の歴史は、新たな棲息地 (ニ ッチ)を もとめ 親か ら独立 物はほとん ど完成 した状態 で生まれ、 て の フロンティア 開発 と冒険 の歴 史 であった か す るのも早 い。しか し人類 の赤子 の場合 は、保護 らである。オズポー ンは これを適応放散 と呼ぶ。 な くして は成育不 可能な状 態 に長期 間身 をお く 生命 はまず海で生成 した後 、 陸 へ と進化 を遂げ る。 のである。そ の 間 に人間 の子 は様 々な学習 をお こ ある時期まで、 陸は生命 によって利用 されること な うので あ るが、自然環境 に対 して まった く不適 の な い、未開拓 の地であった。両 生類爬虫類が こ 応 の形で誕 生す るのだ と言 ってよ い。 の 処女地 に上陸 して、 陸はは じめて 動物 の天下 と 3 ―-14-一 文 化 的 適 応 放 散 と文 明 形 成 人類進化 には しか し 2段 階が認め られ る。そ の 第 一段階 は、 文化 的な適応放散 の プ ロセスで ある。 人類は文化放散 に よって地 球全体 へ と拡散 して として の 環境 は人 間が直接 居住する地域 の環 境 をはるかに 越 えて広 がること になるか らである。 各人の生 は今や異 なる生態 環境 にまたが って 営 い ったが、同時 にさまざまな環境 に文化的 に適応 まれることにな る。人類以前 の生命進化段階にお し、様 々な文化 、様 々な部族・民族集 団を形成す いて、 多様な地球環境 を全体 と して支配 して いた るに至 ったか らである。それは生命が様 々な生物 のは生命であったが、人類 の 誕生 とともに、人類 種 に分化・特殊化 して い つたプ ロセセスと似 て い る。人間環 境問題 にお いて重 要な のは、このプロ とい う一 つの 生物 種が地球 環 境 を全体 として 支 配 しは じめる。ところが「文明」の形成 とともに、 セスにお いては ま だかな り強固な環 境 との調 和 人類 メン バーー人 一 人によ る地 球環 境 の広範 囲 がはか られて い る こ とである。 の利用が可能 になったので ある。 しか し歴史 上のある時点 か ら、この運動が逆 転 しか し人類文明 が地球規 模 に拡大 ある いは 肥 しは じめる。人類 とその文化 は もう一 度統合 にむ 大化す るにともな い、新 たな危機がは じまる。そ か いは じめたか らである。同時 に、人間生活 の環 のひ とつは、 資源 の収奪 とそ の 消費後 の廃棄物処 境 へ の依存度 は減少す る。これ を文明形成 の プ ロ セス と呼びたい。文明 の特徴 は 国家・都市 の形成 理が天文 学的量 にのぼ り環 境負荷 が膨大 にな っ であるが、国家・都市形成 にともな って 1様 々な 機が うまれて い る。それは、文明 の肥大化 によ り、 ふたたび統合 へ と向か いは じ 文化 や 民族集団が、 人間はそ のなか に呑み込 まれ 、自然環境 に関 して める。 これは、政治的 のみな らず、交 易な どの商 業活動 を通 じて も、宗教的にも、言語的にも、さ は直接 の 認識 を持 ち得な くな って しまってい る ことで ある。そ のため人間・環境関係 の適 正な コ まざなの レヴェル を通 じてお こなわれ る。か くし ン トロールが困難 になった。 た とい う事実である。しか しもうひ とつ重大な危 て広範な地域的統 合 をお こなった 文 明圏が世 界 比喩で いえば、ヨッ トな どの小 さな船で航海す 各地 にい くつ も形 成 され次 第 に巨大 化 して い つ るばあい、 船乗 りはたえず 自然 の荒波を直接認識 たが、そ の間 の 闘争 を経 て、現代地球規模 の統合 しているが、巨大船舶 で航海す る場合 、船乗 りは が現実 の もの とな った。言 いかえると世界は小 さ くなった。この測定 を野沢慎司は「小 さな世界問 海自 巨大船舶 の複雑 な システム に関心 を奪われ、 体 の認識 がお ろそかになる。それだけな らまだよ 題」 として社会学的 な実験 を通 じて試みて いる。 様 々な社 文化的な適応放散 の段階 にお いて も、 いが、 船乗 りが船舶 の複雑 な システ ムの管理 を怠 会関係が形成 された。しか しこの段階 においては、 対 自然関 係が人間 生活 の関 心 の 中心 を 占めて い れることもある。システム の複雑 さに神 経症 を病 た。しか し文明 のは じま りとともに、多様な文化 ある。 諸井 は現代人 の対人能 力 は けつ して衰えて や人 間集団、 異 な る生産活動 をどの よ うにして結 いな いと い う こと を社会心 理学 の実験 を通 じて び付 けるか とい う、人間 の諸活動 の地 域的統合 シ 指摘 して い る。しか し問題 は、対人能力の向 上 に ス テム の構築 とそ の維持 、 発展 が人間生活 の主 要 反比例 して対 自然 の感性や 能 力が衰 えて しま っ 関心事 とな りは じめ る。乾燥地 がな にゆえに文明 て いな いか、と い う点 にあるだ ろう。対人能力 に 家畜 を使って 発展 の揺監地 であったかとい うと、 優 れた者 が船長 の座 を得た時 、船 は座礁 していた ということこそが恐れるべ き ことで ある。 の運搬手段が存在 す るな ど長距離移 動が容易 な けた り、 船長 の座 をあ らそ って船 のか じ取 りを忘 む船乗 りもでて くるだろう。ここに最大 の危機が 乾燥地 はそ うした 広範囲におよぶ地 域的な統 合 構築が比較的容易な環境 であったか らである。 4文 明 の パ ラ ドックス 生 命・ 環 境 関 係 の 図 式 生命進化 文明 の発展 とともに、人間 の 自然環境 への依存 場貴妃 が馬 を飛 ばさせて熱帯産の 度 は激減す る。 果物 を食卓にのぼ らせたよ うに、人間 の生活基盤 一-15-― 種 的適 応 放 散 分 化・ 文化 的適応放散 特殊 化 文 明形 成 統合 化 人類 進 化
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