平成二十七年度 国立大学法人岩手大学入学式 告辞 本日、多くの皆様のご列席の下、編入生二十二名を含む千百五十六名の新入生の皆さん を迎え、平成二十七年度岩手大学入学式を挙行できますことは、本学にとって大きな喜び であります。 また、皆さんをこれまで支え、励まして来られたご家族の皆様に対して、深く敬意を表 し、お祝いを申し上げます。 四年前の三月十一日に発生した東日本大震災は、私たちが経験したことのない千年に一 度と言われるほどの激甚なものでした。皆さんの多くは当時、多感な中学生であり、被災 した方もいることでしょう。復興が次第に進んできたとはいえ、どのような高校生活を送 ってきたのか察するに余りあるものがあります。岩手大学で学ぶことを選択された全ての 皆さんには今までの努力が報われたこと、本当におめでとうございます。そして、お子様 方を後押しされたご家族の皆様には、改めて敬意を表したいと思います。 岩手大学は皆さんの向学心を満足出来るように様々なプログラムを用意しております。 大学4年の間に皆さんはプロフェッショナルになることを求められています。そのために は、専門教育は当然大切ですが、教養教育や語学教育、クラブ活動などの課外活動にも積 極的に取り組んでほしいと思います。昨年度は、陸上競技部の学生が日本陸上競技選手権 大会二十キロ競歩において日本記録を出し、優勝しました。二週間前、この会場で行われ た卒業式で改めて紹介したところ、誇りと自信など、卒業生全体に一体感が生まれたのを 感じました。 さて,これからの大学生活の中で皆さんに求められる能力の一つとして、 「課題解決能力」 があります。これまでの勉強、特に受験勉強は答えが一つのものを見つけることが求めら れてきたのに対し、大学で獲得すべきこの課題解決能力は、多くの答えの中から最適と思 われる答を導き出すことです。何が問題なのかという課題抽出、その解決のためにどんな 方法を取るのか、そしてその結果がもたらす様々な答の中から、最も良いと思われる解、 最適解、を提示することです。これまでの方法とは異なるもので、本当に正解なのか不安 に駆られるかもしれません。 これはまさに、皆さんがプロフェッショナルになるための人生設計、キャリア・デザイ ンに通じるものです。最適解は、その時々の取り巻く状況、また皆さんの成長によっても 変わってくるものです。なぜなら、様々な経験を通して十八歳で見える世界と二十二歳で 見える世界は違っているはずだからです。ですから、自分自身の最適解を求めてチャレン ジしてください。焦らなくてもいいのです。皆さんの成長こそが、私たちの大きな喜びで あり、言うまでも無く大学の活力の源泉です。 現在,国立大学は八十六あります。その中で岩手大学の特徴は何なのか、と申しますと、 私は、自然豊かな盛岡の地に存在する,六千名余りの学生と四学部からなる中規模総合大 学で、しかも上田地区に全学部が集まるワン・キャンパス、そして復興活動に貢献してき ている被災地の大学であることを挙げることが出来ます。また、地域と協同して様々な課 題に取り組む姿勢も大きな特徴です。私たちはこれらの特徴を教育と研究に活かし、世界 に発信することを目指しています。一つの言葉で言い表せば「グローカル」です。ローカ ルとグローバルをあわせ持つという意味での「グローカル」です。皆さんも「地域創生」 という言葉をきいたことがあると思います。少子高齢化、過疎化という地域課題に大学と して正面から取り組むことは単に地域の限定的な問題ではなく、世界に共通する先端的課 題に取り組むことでもあるのです。まさに地域の創生に貢献していきたいと考えています。 大学は完成されたものではなく、未来に向かって成長段階にあります。新入生の皆さん も我々と一緒に輝かしい未来をつくっていきましょう。その積極さを期待して入学式にお ける告辞といたします。 平成二十七年四月七日 国立大学法人 岩手大学長 岩渕 明
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