休日は「おやじ」の味 ③ 親子料理研究家 岡本 靖史 本当は一回だけお試しでやって終わろうと思っていた。そんな軽い気持ちで始めた「お 父さんと子供の料理教室」が、なんと今年で三年目を迎える。 長男が小学校へ進学して、初めて地域の子供会の行事に参加した時、あまりにもお父さ ん達の参加が少なかったことに驚いた。「子どものために、何か父親ができることがあ る」と思いついて始めたのだ。驚いたことに、募集予定の三倍もの応募があり、意外なそ の反響の大きさにまずビックリさせられました。特にお母さんを介しての募集が多く、夫 への家事に関する協力への期待感が強いということを改めて感じた。 始めてみて分かったのは、月に一回開催の企画でも、その準備や段取りに相当なエネル ギーがいるということだ。また、料理ができるということと、料理を教えるということは 別物だということも。子どもも小学校低学年が多く、いかに分かりやすく、そして楽しく できるかということに心を砕き配慮した。こんな所に、仕事で障害を持つ方に料理を教え ていた技術が役立つとは思わなかった。 もちろん失敗や反省もあり、時には段取りなどが大変で落ち込んでしまい「もう辞め よう」と思ったことも何度もあった。でも、参加者の親子の楽しそうな笑顔を見ていると、 不思議とまた別の所から力がわいてくるのだ。実は、人前に立って何かをするというのは 今まで一番自分の中で苦手な分野だった。以前テレビを見ていたら巨人軍の原監督が、 「男は誰かのためにと思ったとき、眠っている力が出て来るんですよね」といっていたの を見て、私もなるほどと思った。そうか、子どものためなんて思って始めたわけだけど、 結局は自分の潜在能力を開花させてもらっていたんだ。余談ですが、こうやって文章を書 くことも実は苦手な分野なのだ。 この三年間、私を含めて周りの状況ががらりと変わった。まず一番の変化は、友人や知 り合いが増えたこと。身近な出会いから、気付き行動していくと、それが新たな出会いや 楽しみに結びついていく、そんな子育て連鎖現象を体感している。私達おやじ族にも、ま だまだ眠っている潜在能力はたくさんある。身近なところから「おやじの面積」を広げて みてはどうだろうか?
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