4 ATBC 研究におけるヘリコバクタ類の血清学的陽性と胆道癌の関連

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ATBC 研究におけるヘリコバクタ類の血清学的陽性と胆道癌の関連
Association of Seropositivity to Helicobacter Species and Biliary Tract Cancer in the ATBC Study
Gwen Murphy et al.
Hepatology
2014;60:1963-1971
【背景】ヘリコバクタは人の胆汁中や肝胆道系の組織中に検出されるがそれが病因と関連があるかあるいは結
果なのかは明らかになっていない。動物実験ではヘリコバクタが胆石形成や肝胆道系の腫瘍形成に関連して
いるというエビデンスがあるが人では明らかになっていない。
【方法】今回我々は ATBC 研究における肝胆道系悪性腫瘍の頻度と 15 種類のヘリコバクタ・ピロリ蛋白に対する
血清学的陽性度の関連を検討した。
22 年にわたる ATBC 研究における登録症例から 64 例の胆管がんと 122 例の肝がん、年齢をマッチさせた 224
例のコントロールを用いた。 H.P の血清学的陽性の定義は 4 種以上の抗原が陽性の場合とした。オッズ比と
95%信頼区間は肝胆道系癌のリスクファクターで補正した。
【結果】ベースラインではコントロールの 88%が H.P 陽性であった。その後発生した胆嚢癌では 100%、胆管が
んでは 97%、乳頭部癌で 91%、肝内胆管癌で 96%、HCC で 94%が H.P 陽性であった。胆嚢癌のオッズ比は
計算できなかったがその他の癌では 7.01、2.21、10.67、1.2、胆管がん全体で 5.47 であった。1 以上のオッズ比
を示す抗原は多数あったが統計学的に有意ではなかった。(Table 3)
【結論】ATBC 研究において H.P 抗原に対する血清学的陽性度は胆道系の癌のリスク増加と関連している。今
後、どのようにして H.P が胆道系の癌のリスク増加に関連しているのか明らかにする必要がある。
(横田の感想)
ATBC 研究というのはフィンランドでおこなわれたαトコフェノールとβカロテンを用いた二重盲検試験で、50-69
才の男性喫煙者 29133 人を対象として肺がん発生率に差が出るか否かを調べた研究です。ベースラインの時
点でコントロール群の 88%が H.P 陽性であったというのは意外でした。胆道癌が発生しなかった群の H.P 陽性
率がもっと低ければより説得力のあるデータになっていたと思います。
(院長 横田 昌樹)