1.4.4.需要曲線と供給曲線の推定

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2015 年 4 月 30 日
1.4.部分均衡分析(続き)
1.4.4.需要曲線と供給曲線の推定
いかにして現実の需要曲線、供給曲線を描くか?
Demand Tables, Supply Tables は現実のデータとしては Available でない
cf. オークション(複数単位同時):国債入札、電力入札、etc.
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例:ある一定時点の価格および取引量は ( p, Q ) であった。
次の時点の価格および取引量は ( p, Q ) であった。
二時点で、価格と取引量はなぜ変わったか。
供給側のシフト要因:天候、生産要素価格の変化など
価格
0
価格
数量
0
観察されたデータから需要曲線が推定できる
数量
3
需要側のシフト要因:所得、他の財の価格変化などなど
価格
0
価格
数量
0
観察されたデータから供給曲線が推定できる
数量
4
供給側と需要側双方のシフト要因が考えられるケース
( p, Q ) および ( p, Q ) は特定の需要曲線あるいは特定の供給曲線の上には位置しない
価格
0
価格
数量
0
どうすれば需要曲線と供給曲線を推定できる?
(計量経済学を学びなさい!)
数量
5
補足:データの裏を読み取る
価格
ある時期:高価格
価格弾力性低め
Very Steep
(Why?)
別の時期:低価格
価格弾力性高め
Very Flat
(Why?)
数量
0
6
例:カリフォルニア電力危機(2000~2001)
カリフォルニア州で電力自由化:
電力市場:
スポット市場(電力会社の購入義務):
発電(供給)サイド:
発電(発電所)と送配電(電力会社)の分離
発電所が供給、電力会社が需要
低い需要価格弾力性
cf. 長期契約、中期契約
プライステーカーより「プライスセッター」になろう!
⇒ 供給者による電力価格引き上げ
エンロンによる発電所の独占的買収
⇒ 電力会社倒産(小売価格に Ceilings)、停電
価格
価格
数量
0
数量
0
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1.4.5.余剰分析
需給均衡がもたらす取引(配分)は社会にどれほどの「価値」をもたらすか?
Demand Table 再考
需要量
1
2
3
4
5
価格
100
80
60
35
15
限界効用(Marginal Utility)
最初の一単位目に対して
2 単位目に対して
3 単位目に対して
4 単位目に対して
5 単位目に対して
100 円まで払っていい:
80 円まで払っていい
60 円まで払っていい
35 円まで払っていい
15 円まで払っていい
限界効用逓減法則(ゴッセンの第一法則):
限界効用は概して需要量が増えると低下していく
1 単位消費による効用 (使用価値)
2 単位消費による効用 (使用価値)
3 単位消費による効用 (使用価値)
4 単位消費による効用 (使用価値)
5 単位消費による効用 (使用価値)
100+80=
100+80+60=
100+80+60+35=
100+80+60+35+15=
Willingness to Pay、あるいは限界効用)
100 円
180 円
240 円
275 円
290 円
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消費量 x に対する消費者余剰:支払額を考慮すると
青色台形の面積(消費量 x に対して払っていいと判断される最大金額、あるいは財の使用価値)
- 支出(実支払った金額)
単価 p 円で購入した場合の消費者余剰は
オレンジ色三角形の面積
価格
価格
数量
0
消費量
需要曲線の高さ: 限界効用
台形面積:
限界効用の積分
(使用価値)
数量
0
消費量
9
Supply Table 再考
供給量
1
2
3
4
5
価格
10
15
40
60
90
限界費用(Marginal Cost)
最初の一単位目に対して
2 単位目に対して
3 単位目に対して
4 単位目に対して
5 単位目に対して
1 単位生産にかかる生産費用
2 単位生産にかかる生産費用
3 単位生産にかかる生産費用
4 単位生産にかかる生産費用
5 単位生産にかかる生産費用
10 円以上なら売っていい:
15 円以上なら売っていい
40 円以上なら売っていい
60 円以上なら売っていい
90 円以上なら売っていい
100+80=
100+80+60=
100+80+60+35=
100+80+60+35+15=
追加一単位にかかる限界費用
100 円
180 円
240 円
275 円
290 円
10
供給量 x に対する生産者余剰(利潤)
収入-青色台形の面積(生産費用)
単価 p 円で売却した場合の生産者余剰は
オレンジ色三角形の面積
価格
価格
数量
0
消費量
供給曲線の高さ: 限界費用
台形面積:
限界費用の積分
(生産費用)
数量
0
消費量
11
取引量 x における「総余剰」
=消費者余剰+生産者余剰
(使用価値から生産費用を引いたもの)
総余剰=青台形の面積
価格
D
0
S
数量
12
総余剰
=青三角形の面積―オレンジ三角形の面積(Why?)
価格
D
0
S
数量
13
需給均衡における総余剰
=青三角形の面積
価格
0
D
S
数量
需給均衡(完全競争)において総余剰が最大化される!
(価格統制や数量規制がある場合の総余剰を考えよ)
14
Jules Dupuit(1804 - 1866)
Alfred Marshall(1842 ‐1924)
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1.4.6.価値と価格:限界革命
限界革命
価格は使用価値でなく希少価値(限界効用、限界費用)によって決まる
水の使用価値は高いが、希少価値は低い:低価格
価格
0
数量
16
学者の使用価値は低い(だろう)が、希少価値は高い:高(?)賃金
価格
数量
0
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限界革命
Hermann Heinrich Gossen
(1810 - 1858)
Leon Warlas
(1834~1910)
William Stanley Jevons
(1840-1921)
Carl Menger
(1835 – 1882)
以前:労働価値説「価値の源泉は労働にあり」
Adam Smith (1723 – 1790)
David Ricardo (1772~1823)
Karl Heinrich Marx (1818 - 1883)
(価値をめぐる議論は経済学にとって全く無意味だったのか--????????)
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1.4.7.一般均衡と部分均衡の関係:消費者について
他の財
考察する財
ここに着目!
所得(予算)
M
他の財
他の財
19
無差別曲線群:上級財
正の所得効果
(所得が増えると需要も増える)
財
0
所得
20
無差別曲線群:下級(劣等)財
負の所得効果
(所得が増えると需要が減る:ジャガイモ、軽自動車)
財
0
所得
21
無差別曲線群:中級財
所得効果ゼロ
(所得と需要は無関係:生活必需品?)
財
0
所得
22
部分均衡分析における特殊な前提条件
需要量
1
2
3
4
5
価格
100
80
60
35
15
例:上級財
3 単位分を計 230(やや割高)円で購入した。
「4 単位目を 34 円で買わないか」
「いや、やめとく。ずいぶん支出したので、気が変わった。
4単位目は 30 円以下でないと買わないよ」
Why?
高額の 230 円を支払ったため、想定していた所得より低くなってしまった。
正の所得効果より、4 単位目の限界効用が 35 円から 30 円に下がってしまった
需要曲線(Demand Schedule)が上級財においても支出額に影響されないことを仮定:
「当該財支出は所得全体に比べ微々たるもの。支出がもたらす所得効果は無視していい」
(中級財のように扱っていい)