祖母と私元郷中学校二年片野瞳「ありがとう。」これは、私の祖母の口ぐせです。私の祖母は、私が母のお腹の中にいる時に脳梗塞で倒れました。祖母は生死をさまよいましたが、治療のおかげでなんとか助かり、今でも元気に生きています。しかし、その病気のせいで、右半身が不自由になってしまい、言葉もうまく話せません。だから祖母は自分の気持ちを伝える時は、私や母が質問をしてそれに対して祖母が「そう」や「違う」で答えるしかないのです。それでも祖母は「ありがとう」という言葉はしっかりと言うことができます。母はそんな祖母の事をいつも一番に考えています。毎朝八時頃になると、必ず電話をかけます。夕方には、一人で買い物に行けない祖母のために、いつも買い物をして届けています。祖母のための夕食を作ったあと、急いで帰ってきて私の分の夕食も作ってくれます。祖母は、一人暮らしをしているので、デイケアに行ったり、週三日ヘルパーの方に来てもらったりしているのですが、家に一人きりでいる時は自分の身のまわりの事をやらなくてはいけません。しかし、祖母にはできない事もたくさんあります。特に苦手なのは、テレビやエアコンの操作です。よくあるのは、テレビのリモコンの普段使わないボタンを押してしまったり、夏なのに間違えて暖房をつけてしまったりすることです。そうするとすぐに、テレビやエアコンが壊れたと思って母に電話をかけます。しかし祖母はうまく伝えられないので、一生懸命伝えようとして怒り出してしまうこともよくあります。「何かがあった」ということはわかっても「何があったのか」がわかりません。そんなことがしょっちゅうあると母も怒りがたまってしまい、電話の向こうの祖母と言い合いになっていることもあります。それでも母は自分が折れて、たとえそれが何時であっても、小さなことだとわかっていても、「わかったから今いくよ。」と言って祖母のもとに行ってあげるのです。母の祖母に対する優しさは私も見習いたいと思います。祖母は、私が生まれる前に病気になったので、私は病気の祖母しか見たことがありません。だから私にとって病気の祖母は普通なのです。祖母は右半身が不自由なので、歩くにはつえが必要ですが、歩くのがとても遅く長時間歩くこともできないので、外出は主に車いすです。小さな頃から私は、祖母と一緒にでかけると車いすを押してあげたりしていたので、いつも身近なところに車いすがありました。ですが、他の人にとっては車いすはあまり身近なものではないようで、私が祖母をのせた車いすを押していると色々な人が、私や祖母のことをじろじろと見てきます。特にいやだったのは小さい子です。小さい子にとって車いすはなじみがないものだから、仕方ないことだと思いますが、珍しいものを見るようにじーっと見てきたり、指をさしてきたりするからです。今は私も中学生ですが、小学校低学年の頃は自分と同い年くらいの子にじろじろ見られるのがとてもいやでした。そういうことをなくすには、もっと車いすが身近なものになればいいと思います。私の祖母は病気です。祖母が自分でできることは限られているけれど、いつも祖母なりに楽しく暮らしています。私は、祖母がおいしそうにご飯を食べる姿や、楽しそうに笑っている姿を見るだけで、いつでも元気をもらうことができます。祖母の笑顔には、見ている人を元気にさせる力があると思います。私はそんな祖母のことが大好きです。だから、これからも母とともに、祖母のことを支えていきたいです