無二の会短信 ◆今年こそ面倒なことが無いようにと祈っていたが、二月に入ってからそうはいかなかった。会計 役だけは大変なので断っていたのだが、前任者に頼みこんで続けてもらったら、決算近くで帳簿が 合わないといってきた。当人が通帳の出し入れをせずに、立替えを優先しすぎたために合わないこ とがわかり、最初から伝票作りをして、二週間をかけて何とか目安がついた。 「だろう」仕事が如 何に迷惑をかけるか、あらためて身に染みる結果になった。 池田桂一 ◆雨上がりの庭に小さな鉢植えがいくつか並んでいて、冬咲きの花の色があざやかに目に映る。も う春の気配が足もとに近づいてきたようだ。正月に余った野菜や餅を雑煮にして食べながら、コタ ツから出られないでいると、友達から出かけようとの誘いがあった。けれど、風邪をひきそうだっ たので、もっと先にしようと言って断ってしまった。 市川茂子 ◆この地に越してきた当初からあったホームセンターが、近くに同業者が開店したあおりか、閉店 し、すぐに更地になった。代わって 時間マックが新築開店した。近いこともあって、このところ マックが読書室となっている。それにしても、今のマックは多く若い人たちが勉強部屋として使っ ていて、そのなかに交じって読書しているので、少しくすぐったいような感じがある。小野澤繁雄 ◆家の近くに老人施設が昨年九月に開設された。 「近隣の方々との交流を持ちたい」と女性ホーム 長が訪ねて来られた。入居者の介護の他にもハープ演奏、落語の独演会などの催し物があり、部活 のように俳句、カラオケ、リハビリ体操、料理に水彩画などの集まりも企画されている。 「どれで もご出席いただきたい」と言われて、「それでは、俳句とカラオケね」と乗ってしまった。私自身 が退院後であったので、近場であることが嬉しかった。ここ四ヵ月出席しているうちに、どちらの 会でも、なんとなくお世話役になってしまった。深い人生から醸し出される俳句や歌唱には感動が 発行)という 多く、学ぶことも多くて大切にしたいと思っている。 『毎日が発見』 ( KADOKAWA 高齢者向けの雑誌の中に短歌を応募する「新・短歌のじかん」が設けられていて選者の伊藤一彦先 生が「現在のことでも過去のことでもかまいません」と言って下さっているのは入居者には励みに なる。私も幾分か年長の方々と過去の思い出も活き活きと表現していきたいと思っている。 河村郁子 ◆初めまして。この度、ご縁がございまして「展景」に載せていただくことになりました。何卒よ ろしくお願い申し上げます。まだまだ勉強途上の未熟者でございますが、 日々努力してゆこうと思っ ております。今後ともよろしくご指導、ご鞭撻をお願いいたします。 谷垣滿壽子 ◆一九八七年、フィリピンの農民との交流で、四人の仲間とミンダナオ島を訪ねた。農地解放を求 48 展景 No. 77 展景 No. 77 49 24 める運動家の家に泊まることになっていたが、村人から日本人が来ていると知られ、身の危険を避 けるため、漆黒の闇の中、隣村に逃れた。太平洋戦争中、日本兵に家族を殺された村人が少なから ずいるという。隣村では、かつて日本軍がパイナップル農園を経営していた。安倍首相が戦後七十 年談話を出すに際して、昨日のことのように思い出している。 新野祐子 ◆最近、スマホに万歩計の機能がついていることに気がついた。うちの辺りは最寄りの駅まで徒歩 で約二十分、スーパーまで二十五、六分とひどく不便な所で、不便さを嘆いていたが、早速、歩数 にして何歩歩くのか測ってみることにした。すると駅まで片道千九百歩、スーパーまで二千百歩、 どちらも往復にして約四千歩歩くことになる。健康のためには一日四千歩は歩く必要がある、と何 かで読んだことがある。そこで近ごろは不便さを嘆かず喜んで歩いている。 松井淑子 ◆ことしはひどいお正月だった。十一月二十日すぎ、隣に住んでいる一人住いの弟が、脳梗塞にな り救急入院した。その日救急担当の医師が脳神経専門の方でラッキーであった。しかし簡単に考え てはいけない、と釘をさされ心配した。今は手当も薬もよくて、リハビリ専門の病院に転院するこ とができ、養生している。困ることは、隣に住んでいる、というだけで彼の留守宅の日常の雑事が、 私の負担になっていることだ。わずかなことでも、 毎日となると少々息切れがしてきて困っている。 丸山弘子 ◆介護職員養成訓練校を卒業する三月がいよいよ目前に迫ってきた。 「あと、一ヵ月後には介護職 として働いているのだろうか」と日々自問。やる気がないわけではないが、自信がない。今は残さ れたモラトリアム期間の貴重さを噛みしめている。 山内裕子 ◆狭山から持ってきた鉢のなかにシクラメンがあった。白い花びらの中心と縁が濃いローズ色の花 である。このシクラメン︱︱なかなかの優れもので、多分、平成八、九年頃から毎年、花を咲かせ つづけている。今年は特に見事で、現在十八個の花をつけ、十二個の蕾をもつ。これはもともと妹 が、もう亡くなった母のためにもってきた鉢の花であった。花の少ない年もあるが、一つも咲かな かったという年はなかった。今、直径二十センチ程度の鉢なのだが、花がおわったら、もう少し大 きな鉢に移してやったほうがいいのだろうか? 米のとぎ汁をやるだけなのだが、なにか肥料を与 えた方がいいのかなど思案している。 結城 文 50 展景 No. 77 展景 No. 77 51
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