4.1 2015. 人材マネジメントの基本(8) 4 人事機能強化戦略① /森井 修 中堅・中小企業に求められるCFO経営(10) 6 ホールディング経営④ 指針 3 /中須 悟 ものづくり実践経営 ~強い黒字企業をつくる処方箋~(14) 9 コストに強い設計技術者の養成② /黒澤 淳靖 13 12 成長の阻害要因を 見極めよ /日木 義則 伝える力を身に付ける /川口 勉 組織経営の仕組みづくり講座 ~後継者のための誌上コンサルティング~(8) <最終回> 事業承継のスタートライン /北東 良之 永続発展につながる企業内研修(4) 16 管理職研修 /水谷 好伸 実例に学ぶCS向上の実践具体策(16) 18 顧客密着度の進化を CS向上につなげる⑤ /竹林 剛 売れる仕組み×仕掛け(44) 20 ビジネスモデルを理解し、 競争優位性を高めよ /大森 実 ◆本誌に落丁・乱丁がございましたら、お取り替え致します。 ◆本文記事を許可なく複写複製、および配布することを禁じます。 第一線のコンサルタントが書く、 マネジャー・エグゼクティブクラス向けスキルアップ情報誌 2015年4月1日号(平成27年4月1日発行) 発行人 若松孝彦 編集人 福田季三志 発行所 株式会社タナベ経営 戦略総合研究所 〒532-0003 大阪市淀川区宮原3-3-41 TEL. 06-7177-4008 FAX. 06-7177-4028 http://www.tanabekeiei.co.jp/ 印刷・製本 株式会社廣済堂 Consultant Series 生 産 ものづくり実践経営 ~強い黒字企業をつくる処方箋~ 第 14 回 (株)タナベ経営 中部本部 経営コンサルティング部 コストに強い 設計技術者の養成② 設計者の使命と役割 (1)コストは設計プロセスでつ くり込む 黒澤 淳靖 ■お問い合わせ先■ (株)タナベ経営 中部本部 TEL:052-565-1451 FAX:052-565-1494 [email protected] きを検討して公差を決める。こう 顧客ニーズを満たす製品を最小コ して設計プロセスのアウトプット ストで実現できない。筆者は以前、 である図面や仕様書が出来上が 自動車メーカーで生産設備の設計 る。(【図1】参照) をしていたが、検図の際、よく上 「品質は工程でつくり込む」と 以上があるべき設計プロセスだ いわれるが、同様にコストも設計 が、設計者と設計方法に問題があ プロセスでつくり込まねばならな ると、なかなかうまくいかない。 設計者の育成に高い効果があると い。つまり、原価発生の源流にさ 設計者の問題の原因としては、コ かのぼって VE(バリュー・エンジ ストに対する関心が低いこと、コ (2)設計者の使命を果たすため ニアリング)などの手法を取り入 ストを見積もる技術を習得してい れ、企画段階や設計プロセスで原 ないこと、開発テーマの製造上の コストに関して設計者に課せら 価をつくり込むということだ。 情報や購入品のコスト情報を積極 れた使命は、目標原価以下で製造 もう少し説明しよう。商品企画 的に収集していないことなどが挙 できる設計書を作成することであ の段階では、市場調査により目標 げられる。一方、設計方法の問題 る。そのためには、設計プロセス 売価を設定し、目標粗利益率や目 の原因は、顧客ニーズを機能に置 の各段階から、設計以外の関係部 標原価を設定する。機能設計では、 き換えてから設計せず、構造や形 門を参画させるリーダーシップだ 顧客ニーズを機能に置き換えて必 状、材質などの手段・方法からス けでなく、機能設計と原価計算の 要な機能を明確にし、目標原価以 タートしてしまうことだ。 技量が必要となる。 下での生産を可能にする。システ 設計者はよく本来の目的である 司から「目的は何か?」としつこ く質問されたものだ。この質問は、 思う。 の技量 機能設計に必要なことは、次の ム設計では、顧客が満足する方式 「顧客ニーズ」を見失う。すると、 3点だ。 や構造を最小コストで具現化でき る方法を検討する。パラメーター 【図1】設計プロセス 機能設計(広義) 設計では、システムを構成する機 器の特性の中心値を決める。公差 商品企画 機能設計 (狭義) 生産設計 システム 設計 パラメーター 設計 公差設計 図面・ 仕様書 設計では、中心値に対するバラつ 2015. 4. 1 9 ①日ごろから市場価格の動向に関 ように加工するのかを、コストを の主要部分を構成する材料のこ 心を持ち、今後の価格の変化を推 検討しながら決定する。ここでコ と。部品は他社から買い入れ、自 定・予想する視座を持つ ストの 80%が決まってしまう。 社で加工することなく、そのまま ②顧客ニーズの変遷と今後の要求 設計者は、考えているようで何 を先取りし、機能に置き換えて設 も考えていない。顧客ニーズを満 直接材料費は、製造原価に占め 計業務をスタートできる たすという本来の目的は忘れがち る割合が大きく、製品ごとに容易 取り付けられることが多い。 ③競合他社と差別化するために、 だし、「こんな感じでいいだろう」 に計算できるので正確に見積もり 不要な機能を外し、魅力ある機能 と実に“いい加減”な設計をする。 を行う。これに対し間接材料費は、 を追加して高付加価値商品を設計 機能設計については、回を改めて 製品ごとの算出・評価が難しいた できる能力を持つ 詳しく解説することとし、今回は め、実際の消費額をできるだけ正 原価計算について述べる。 確に反映するような割り当て基準 また、原価計算に必要なことは を設定して見積もる(配賦)。 次の2点である。 ①自分が担当するテーマに関して 原価計算 コストを見積もり、評価・査定す 加工費・組立費は、「賃率×加 (1)製造コストの分類 る知識と能力を持つ (3)加工費・組立費の捉え方 ②原価改善や低減に必要な知識や 製造コストの分類方法は次の通 工時間」「賃率×組立時間」で求 める。加工時間・組立時間は、加 技法をマスターし、最小コストを りである。 実現できる ①形態別分類:材料費、労務費、 別に分け、標準時間や実績時間を 原価以下での生産を実現するた 製造経費などに分類 工や組み立てに要する時間を工程 参考に見積もる。 めには、まず狭義の機能設計を ②機能別分類:材料費を主材料費、 しっかりと行わなければならな 補助材料費、工場消耗品費などに 門別原価計算により、工場全体で い。機能とは、顧客が製品に求め 分類 発生する費用(設備費用+直接労 る「目的」と「働き」のことである。 ③製品との関連における分類:直 一方、賃率は前回に説明した部 務費+共通費)を、総直接作業時 ここで言う「目的」は、顧客にとっ 接費と間接費に分類 間や総機械稼働時間で割って求め ての製品の使用目的であり、「働 ④操業度との関連における分類: る(【図3】参照)。ただし加工 き」はその目的を果たすための手 変動費と固定費などに分類 費・組立費をより正確に見積もる 段や方法のことだ。 形態別分類はどの会社も必ず実 には、工程ごとに発生する費用を 機能設計では、まず顧客の求め 施しているため、今回はこの分類 集計して賃率を求めた方がよい。 るニーズを機能で置き換えて、そ について説明する。前回(3月1 ①設備費用 の機能を最小コストで実現する設 日号)は、③の直接費と間接費に 設備費用は設備固定費と設備比 計案を検討する。例えば、「回転 触れ、間接費はコストをゆがませ 例費からなる。設備固定費は、操 力を伝達する」という機能が必要 る原因になると述べた。④はコス 業度の増減に関係なく総額が一定 な場合を考えてみよう。この機能 ト低減だけではなく、管理会計に 期間変化しないが、設備比例費は を満たす方式には、ギヤ方式、ベ おいても重要である。 操業度の増減に比例する。 ルトとプーリー方式、シャフト方 (2)材料費の捉え方 式があり、その中からシャフト方 式を選択したとする。ここまでが 材料費は、大きく直接材料費と ②直接労務費 直接労務費は労務主費と労務副 間接材料費に分類される(【図2】 費から構成される(【図4】参照)。 機能設計の範囲だ。生産設計では、 参照)。直接材料費の主要材料と 直接工の労務費は、直接工が直接 シャフトをどのような素材でどの 作業に従事した場合に計上される 10 は、生産のために消費され、製品 2015. 4. 1 標準に実際生産量を掛けることに 【図2】材料費の構造 直接材料費 (素材、原材料) 部品費 間接材料費 (購入部品) 【図3】賃率の構造 賃率(○○円/分) 設備費用 補助材料費 より、標準原価は求められる。事 工場消耗品費 前に原価を設定できるので会計手 事務消耗品費 続きを簡素化でき、原価差異を管 (塗料、溶接棒ほか) 主要材料費 (グリス、 ウエスほか) 理することにより原価管理も可能 設備固定費(減価償却費、保険料、賃借料など) 設備比例費(電力費、ガス費、修繕費など) になるため、メリットが大きい。 直接労務費(詳細は【図4】参照) 共通費(経費) (管理監督者の労務費、固定資産税など) 【図4】労務費の構造 賃 金 労務主費 賞与諸手当 直接労務費 個別副費 労務副費 共通副費 【図5】共通費の構造 特定の職場内での 共通費 労務費 設備費 経費 職場全体の共通費 補助作業部門費 製造用役部門費 工場管理部門費 共通費 【図6】 ○実際原価の算出方法 直接原価を算出するには、変動 基本給 加給金 費と固定費を区分し、変動費だけ 賞 与 を製品原価にして、固定費を期間 諸手当 費用とする。この方法は、変動・ 退職給与引当金 し 固定の区分に恣意が入る可能性が 福利厚生費 あるため、税法上は認められてい 募集費 ない。しかし、経営管理のために 教育訓練費 は不可欠である。 ②個別原価と総合原価 生産形態により、個別原価と総 材料費 = 実際消費価格 × 実際消費量 〈実際価格に基づく方法〉 加工費 = 実際賃率 × 実際直接加工時間 実際原価 材料費 = 予定消費価格 × 実際消費量 〈予定価格に基づく方法〉 加工費 = 予定賃率 × 実際直接加工時間 実際原価 合原価に分類できる。個別原価と は、種類や規格が異なる製品を個 別に生産する場合(工作機械、水 ○標準原価の算出方法 原価標準 = 予定価格 × 標準消費量 い 法定福利費 力機械、造船など)や、一品受注 標準原価 = 原価標準 × 実際生産量 生産形態に適する。製造指示書ご とに原価を集計する。総合原価と が、間接作業に従事した場合は間 どの運用を担当する部門の費用)、 は、種類・規格を同じくする製品 接労務費となる。 工場管理部門費(生産技術、品質 ③共通費 管理などを担当する部門の費用) 油・肥料などの装置産業、自動車、 個別に把握できず、共通でしか を反復継続的に生産する場合(石 家電、カメラなど)に適する。 などがある。 捉えられない費用や、把握できた (4)製品原価の見方・捉え方 コストの 80%を決める設計者 としても金額が小さいものは共通 ①実際原価、標準原価、直接原価 費とする。共通費は、特定の職場 製品原価には、実際原価、標準 筆者がコンサルティングで行って 内での共通費と職場全体の共通費 原価、直接原価がある。このうち いる「エンジニアリング・マネジ からなる。(【図5】参照) 会計制度上で認められているの メント」というプログラムは、リー 前者は、特定の職場内における は、実際原価と標準原価だ。実際 ダーの人間関係のスキル向上を主 管理監督者の労務費と、天井ク 原価の算出方法は、【図6】の2 目的としており、 「マネジメント レーンや変電設備などに関する減 通りである。 入門」「部下のマネジメント」「プ 価償却費、固定資産税、保険料な は、しっかり教育する必要がある。 標準原価を算出するには、まず、 ロジェクトマネジメント」「エン ど。後者は、補助作業部門費(運搬・ 予定価格と標準消費量(材料など ジニアリング・ファシリテーショ 検査・包装などの部門で発生する の本来あるべき消費量)を掛け ン」「リーダーシップ工学」など 労務費、設備費、経費など)、製 る。これを原価標準(製品1単位 を習得できる。興味のある方は筆 造用役部門費(電力やボイラーな 当たりの原価)という。この原価 者までご連絡いただきたい。 2015. 4. 1 11
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