14章 前半

C.T.ホーングレンほか、渡邊俊輔監訳
『マネジメント・アカウンティング』
~ Introduction to Management Accounting
明治大学経営学部 鈴木研一ゼミナール
担当 増山宏美、坂元謙太
第14章 総合原価計算システム
総合原価計算とは


製品原価計算では、どの方法でも、平均化によって生産量単位あ
たりコストを算定する (第13章参照)
 こうした平均化は、個別生産システムで生産される特定の印
刷ジョブのように、比較的少ない生産量に適用される
 連続工程の製造システムで生産する汎用製品は、極めて広範
囲に平均化する必要がある
≪ EX ≫石灰石の道路舗装
総合原価計算システムは、一連の製造工程によって連続大量生産
される製品コストを割り当てる
 各工程はそれぞれ別の部門に分かれていることが多いが、1つ
の部門に複数の工程が含まれることもある
2
個別原価計算と総合原価計算の比較



個別原価計算と総合原価計算では適用される製品の種類が異なる
個別原価計算
 製品が単位ごとやバッチ(ジョブ)ごとに容易に区別できる
≪ EX ≫ 印刷業、建設業、家具メーカー etc
総合原価計算
 配合や調理といった連続する工程で大量に生産する
≪ EX ≫ 化学製品、小麦粉、練り歯磨き、石灰石 etc
3
Panel A;個別原価計算
図表14-1
ジョブ100
直接材料費
直接労務費
製造間接費
ジョブ101
完成品
売上原価
ジョブ102
仕掛品
完成品
売上原価
xxxxxx
xxxxxx
xxxxxx
4
Panel B;総合原価計算
工程A
直接材料費
直接労務費
製造間接費
図表14-1
・各工程(部門)ごとに仕掛品勘
定が必要
・製品が工程を進むのに応じて、
コストを振替えていく
工程B
完成品
組立
売上原価
仕掛品
工程A
仕掛品
工程B
仕掛品
組立
完成品
売上原価
xxxxxx
xxxxxx
xxxxxx
xxxxxx
xxxxxx
5
Nally and Gibsonの総合原価計算
図表14-2
工程①
地表採石場や鉱
山から石炭岩
を採掘する
工程②
岩石をプラント
へ輸送する
資源
直接材料費
直接労務費
製造間接費
工程③
岩石を粉砕し、
ふるいにかける
工程④
岩石を在庫にし
ておく
完成品
売上原価
6
補足


総合原価アプローチでは、個々の製品単位を区別しない
 その代わりに、期間コストを集計し、期間の生産量で割って広く平
均化した単位コストを算定する
総合原価計算は、製造活動だけでなく非製造活動にも適用できる
≪ EX ≫
 州政府の運転免許試験のコストを受験者数で割る
 郵便局の仕分部門のコストを郵便物の数で割る
7
Magenta Midget Frozen Vegetablesの事例
直接材料費
直接労務費
製造間接費
期末棚卸高
仕掛品-調理
14 完成品原価
次部門への振替
4
8
26
2
24
振替える
仕掛品-冷凍
調理部門から振替 24 完成品原価
直接労務費
1 完成品へ振替
製造間接費
2
27
期末棚卸高
2
25
小さな人参や豆などの野菜を
簡単に調理してから冷凍する
8
事例の仕訳
1. 仕掛品-調理
(直接材料費)
2. 仕掛品-調理
(直接労務費)
14 / 直接材料在庫
4 / 未払賃金
3. 仕掛品-調理
8 / 製造間接費
(製品への製造間接費配賦額)
4. 仕掛品-冷凍
24 / 仕掛品-調理
(調理工程からの製品の振替)
5. 仕掛品-冷凍
(直接労務費)
1 / 未払賃金
6. 仕掛品-冷凍
2 / 製造間接費
(製品への製造間接費配賦額)
7. 完成品
25 / 仕掛品-冷凍
(冷凍工程からの製品の振替)
14
4
8
24
1
2
25
9
総合原価計算の中心的な問題



総合原価計算の中心的な問題は、各部門で、
振替える製品のコスト
部門に残る製品のコスト
をどう計算するか
1単位の製品振替と1単位の期末在庫について、同じだけの作業
を行われている場合
コスト総額
総生産量
 この単位コストを利用して、振替品総数のコスト総額と期末
在庫品のコストを計算する
期末在庫品が仕掛中である場合
振替える完成品のコスト
振替えない仕掛品のコスト を区別する
10
工程別製造システムの設計

工程別製造システムの設計は多様
 パネルBで示した設計は連続的である
工程A


工程B
実際、他にも多くの設計がある
 それぞれ特定の製品仕様に合わせて仕立てられる
≪ EX ≫最終組立までは工程が平行して進む
→工程Aと工程Bは同時に進行し、完成品の異なる部分を製造
ただし、レイアウトがどうであれ、総合原価計算の基本原則に変
わりはない
11
総合原価計算の応用 事例A①

Oakville Wooden Toys Inc.の例

加工部門では、直接材料として木材を購入

加工部門では、1種類の玩具(あやつり人形)を加工

あやつり人形は、仕上工程に振替え、そこで手仕上を行って、糸をつけ、
色を塗り、服を着せる

加工部門では4月に、25,000個を生産
直接材料費
加工費
直接労務費
製造間接費
コスト合計
$70,000
$10,625
31,875
42,500
$112,500
12
事例A①の続き

工程完成品の単位コスト;$112,500÷25,000=$4.50
直接材料費
$70,000÷25,000
加工費
$42,500÷25,000
完成したあやつり人形の単位コスト
$2.80
$1.70
$4.50
13
事例A②


4月に25,000個全てのあやつり人形が完成していなかったら?
20,000個だけが完成
5,000個は4月末に工程途中
 直接材料費資源・・・振替品、仕掛品100%投入(25,000個)
 加工費資源・・・振替品
100%投入
(20,000個)
工程途中
25%投入
( 5,000個)
加工部門では、振替製品のコストと期末仕掛品のコストをどう計
算すればよいのか?
14
5つの重要なステップ





ステップ1 ;
ステップ2 ;
ステップ3 ;
する
ステップ4 ;
ステップ5 ;
物理的数量のフローを集計する
換算量に直してアウトプットを計算をする
計上すべき総額、つまり仕掛品に配分するコストを集計
単位コストを計算する
完成品量と期末仕掛品量にコストを配分する
15
物理的数量と換算量(Step1とStep2)


Step1・・・物理的な生産量を把握
 合計25,000個の物理的数量を計上
 しかし、全てが加工部門のアウトプットとして同じように把
握されるわけではない
 完成品は20,000個であり、未完成品は5,000個であるため
Step2・・・換算量に直してアウトプットを計算
 換算量とは、投入したインプットから製造できたはずの完成
品量
≪EX≫半分まで完成した製品が4単位あれば、換算量は2単位
各製品が1/4完成していれば、4つ合わせて換算量は1単位
換算量=物理的数量×進捗度
1,250=
5,000× 25%
16
換算量による加工部門のアウトプット図表14-3
19x9,4/30
(Step2 ) 換 算 量
(Step1 )
製造フロー
物理的数量 直接材料費 加工費
完成品
20,000
20,000
20,000
期末仕掛品
5,000
5,000
1,250
個数計
25,000
月末までの作業量
25,000
21,250
17
換算量の補足①

換算量を計算するには、ある資源のうちどれだけが加工中の製品に
投入されているのかを見積もる必要がある
 簡単に見積もることもできるが、簡単な作業であるとは限らない
≪EX≫・直接材料の利用量を見積もるのはかなり簡単
・加工費には測定困難な資源が多く含まれている
→どれだけの動力、メンテナンス作業、監督を利用し
たか? etc
 よって、加工費は1単位の製品を完成するためには合
計どれだけの努力が必要になるのか、加工中の製品に
既にどれだけの努力が投入されているのかを見積もっ
ておく必要がある
18
換算量の補足②



常に多くの仕掛品が存在する繊維などの産業では、かなり複雑
見積もりを単純化するために、全ての仕掛品の完成度を
1/3,1/2,2/3のいずれかに決めている企業もある
連続的に加工しているため、毎月末ほぼ同量が加工中であれば、
会計担当者は仕掛品を全く無視し、月間製造コストすべてを工程
完成品に割り当てる
19
製品コストの計算(Step3からStep5)



Step3・・・計上すべきコスト総額(仕掛品-加工勘定に振替えた借
方のコスト総額)を集計
Step4・・・2つのカテゴリーのコスト総額を適切な換算量尺度で
割っ
て単位コストを求める
 完成品の単位コスト=直接材料費+加工費
→ $4.80=$2.80+$2.00
Step5・・・単位コストを用いて、製品にコストを配賦する
 完成品は、直接材料費と加工費完了
→完成品コスト=単位コスト×完成品量
 未完成品は、直接材料費は完了、加工費は25%完了
→未完成品の直接材料費=換算量5,000×$2.80=$14,000
→未完成品の 加工費 =換算量1,250×$2.00=$ 2,500
5,000×25%
20
加工部門の製造原価報告書
図表14-4
19×9, 4/30
内訳
(Step3)コスト合計
(Step4)換算量で割る
単位コスト
(Step5)コスト配分
完成品(振替品)へ
20,000個@$4.80
期末仕掛品へ
5,000個 (4/30)
直接材料費
加工費
仕掛品期末在庫
コスト合計
コスト合計
$112,500
$4.80
直接材料費
$70,000
÷25,000a
$2.80
加工費
$42,500
÷21,250a
$2.00
$96,000
$14,000
2,500a
$16,500
$112,500
5,000 ($2.80)
1,250 ($2.00)
21
加工部門の製造原価報告書
図表14-4
19×9, 4/30
内訳
(Step3)コスト合計
(Step4)換算量で割る
単位コスト
(Step5)コスト配分
完成品(振替品)へ
20,000個@$4.80
期末仕掛品へ
5,000個 (4/30)
直接材料費
加工費
仕掛品期末在庫
コスト合計
コスト合計
$112,500
$4.80
直接材料費
$70,000
÷25,000a
$2.80
加工費
$42,500
÷21,250a
$2.00
$96,000
$14,000
2,500a
$16,500
$112,500
5,000 ($2.80)
1,250 ($2.00)
22
事例Aの仕訳
1. 仕掛品-加工
70,000
2. 仕掛品-加工
10,625
3. 仕掛品-加工
31,875
70,000 / 直接材料在庫高
(4月の製造に投入した直接材料費)
10,625 / 未払賃金
(4月の直接労務費)
31,875 / 製造間接費
(4月に配賦した製造間接費)
4. 仕掛品-仕上
96,000 / 仕掛品-加工
96,000
(4月における加工工程から組立工程への振替品(完成品)のコ
スト)
23
続き

仕掛品-加工勘定に計上した$112,500から、振替えた$96,000を
差し引いた残りが、期末残高$16,500になる
1.直接材料費
2.直接労務費
3.製造間接費
コスト合計
期末残高(4/30)
仕掛品-加工
$70,000 4.仕上工程への振替
$10,625
$31,875
$112,500
$16,500
$96,000
24
レビュー問題

Taytor Plasticsの事例
 様々なプラスチック製品を製造
 成形部門のアウトプットとコストは以下の通り
単位数
完成品:30,000個
仕掛品:10,000個;直接材料費100%、加工費60%の完了
配分されるコスト
合計:$81,600;直接材料費$60,000;加工費$21,600
Taylorの成形部門における完成品コストと期末仕掛品コストを
計算しなさい
25
レビュー問題;解答①
(Step2 ) 換 算 量
(Step1 )
製造フロー
物理的数量 直接材料費 加工費
完成品
30,000
30,000
30,000
期末仕掛品
10,000
10000*
6000*
個数計
40,000
月末までの作業量
40,000
36,000
*) 10,000×100%=10,000 10,000×60%=6,000
26
レビュー問題;解答②
内訳
(Step3)コスト合計
(Step4)換算量で割る
単位コスト
(Step5)コスト配分
完成品(振替品)へ
30,000個@$2.10
期末仕掛品へ
10,000個
直接材料費
加工費
仕掛品期末在庫
コスト合計
コスト合計
$81,600
$2.10*a
直接材料費
$60,000
÷40,000a
$1.50
加工費
$21,600
÷36,000a
$0.60
$63,000
$15,000 10,000 ($1.50)
3600a
$18,600
$81,600
6.000 ($0.60)
*) 単位コスト($2.10)=直接材料費($1.50)+加工費($0.60)
27