平成26年度「保育改善専門講座の指導を終えて」 福島市教育委員会学校教育課 指導教諭 田中まゆみ はじめに,今年度保育改善専門講座を受講された2名の先生方は,日々の保育や様々な 園の仕事に向き合うだけでも大変な中,「もっと自分を高めたい。」という希望と「今年 度,更に頑張る!」という覚悟をもって取り組まれました。その意欲と真摯な姿に敬意を 表したいと思います。 この講座を受講し,保育を通して,「幼児の生き生きとした姿が見られた。」「幼児の思 いを引き出し,援助ができた。」という喜びを味わえた瞬間も多かったことでしょう。反 面,「自分の予想や手立てが上手くいかなかった。」という反省や無念さ,「どうしたらよ いのか。」という悩みなどもあったことと思います。そんなときに「自分はだめだな。」 と自信を失ったり,「よし,明日こそは・・。」と気持ちを奮い立たせたりしたこともあ ったのではないでしょうか。 これから長い教師としての生活の中で,今後,そんな思いをもった時のために今回の講 座が先生方の背中を押してくれるものとなるよう検証してほしいと思います。 ◇ 想い起こしてみてください。 ○ 「先生!」と自らの気づきや発見を,嬉々とした表情で,急くように伝えてくる子 どもの姿を ○ 友達や教師に「すごいね」と認められた時の得意げな顔やはにかむ笑顔を ○ 園庭の花を摘み,色をだそうと無心にすりこぎ棒を動かす姿を ○ 世話をしているうさぎの頭を,そっとなでながら愛おしそうに見つめるまなざしを ○ 導入時の教材提示に,目を輝かせ,期待に身を乗り出してくる姿を ○ 教師からの問いかけに,今までの経験や知恵の全てを働かせ考え出す姿を ○ 泣いている友達の背中を ○ クラスで読み聞かせの時や歌をうたっている時に感じる子どもたちとの一体感を そっとなでている子どもの姿を 真剣に子どもたちと向き合い,幼児理解を心がけている先生方ですから,もっともっと 感じ取っている場面があると思います。現場から離れている時間が長くなった私は,それ らを見つけて感じる瞬間が懐かしく,味わっている先生方の幸せを,羨ましく思いました。 このような子どもたちの笑顔はもちろん,その子の内面が垣間見える姿や成長の姿(自 己中心的といえる自己主張であっても)など,日常のほんのひとこまの中に見つけること ができた時,感じ取った時の「喜び」「いとおしさ」「幸せ」これらは子どもたちと生活 を共にし,仲間の一員となって生活している教師だからこそ,感じることができる幸せで はないでしょうか。 保育を通しては,幸せばかりではなく,悩みや挫折など大きな葛藤や苦しみも味わいます。 それは,真剣に取り組んでいる証でもあります。そこで踏ん張って考えたり,試したり, 工夫したりする積み重ねをすることで,少しずつ実を結び,喜びにつながっていく大切な 通過点です。先輩の先生方も,その苦しさや大変さを乗り越えてきました。その原動力と なったものは,やはり子どもの姿です。だから「私たちを,自然と笑顔にさせてくれる子 どもたちの姿」を想い起こしてほしいと願っています。 ◇ 実体験から学ぶ 子どもたちの家庭や地域社会の中で,本来経験すべきものや身に付けるべきものが十分 にできていないのではないかという,育ちの変化が指摘され,体験の重視や思いを伝え合 う,人とのかかわりなどに関する指導の充実が求められていますが,大人も同じだと思う ことが多くあります。 今回の保育改善専門講座の大きな特徴は,ここ数年の願いであった「実際に仲間の先生 の保育を見て学ぶ」という研修が,各園の園長先生,先生方のご協力により実現できたこ とでした。 人は,相手が話した内容を捉えるとき,自分のもっている経験や考え方などをもとにす るため,同じ内容を話しても捉え方は様々です。また,援助の方法は様々あり,園児の実 態の違い,先生のもつ雰囲気や幼児との接し方,言葉のかけ方などの援助は,言葉で伝え ることが難しい部分だと感じていました。 先生方一人一人にはよさがあります。そして具体的な援助方法以外にも気付いてほしい こともありました。二人の先生方が相互に保育を参観し,事後研究会に出席されたことで, 私が言葉で伝えることの何倍もの学びや気付き,再確認ができたと思います。実際に見た り,考え方や経過を聞いたりしたことで,その場の空気,幼児との距離感などを自分自身 の心で感じ取り,「そうか。」という気付きが得られたと思います。また,具体的な環境 や援助の姿をみたことで「私もやってみよう。」という目標になり,新たな実践,改善へ と結びついていったと思います。 保育改善専門講座の受講を機に園内でも,日々の子どもの成長の姿や,幼児の思いや流 れに合わせた援助や環境の設定について,相談したり話し合ったりする機会が増えたとい うこともお聞きしました。幼稚園は,少人数の職員構成ですので,園内でお互いの保育を 見て学ぶ機会が少ないという現実があると思います。また,様々な仕事量の多さから,じ っくりと幼児のことを語らう時間の減少などがあると思います。一人の考えでは行き詰ま ることも,解決策が見いだせず自信を失いかける時もあります。保育は正解のない取組を 続けていくものですから,それを乗り越えていくためには,やはり人とのつながり,教師 間のアイディアの交流と共有化が大きな助けとなると考えます。保育を見合ったり,各教 員の経験や知識,技能を一人一人の教員が出し合い,つなぎ合い,学び合うことができる ようにし,教師集団としての力量を高めていってほしいと願っています。そして,受講し た先生たちには,それを実践する牽引役となっていくことを期待しています。
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