環境低負荷型 放射線蛍光検出器の開発 原発事故に適した お茶の水女子大学大学院 人間文化創成科学研究科 理学専攻物理科学コース/ ラジオアイソトープ実験センター 講師 古田 悦子 1 本研究の目的 ベータ線測定のための蛍光検出器の開発 ⇔特に、低エネルギー純ベータ線放出核種の測定 ⇔環境低負荷であること ⇔高濃度~低濃度測定が可能であること ⇔短時間で測定結果が得られること 2 放射線を測定するには 放射線が当たって蛍光を出す物質(励起) ⇒蛍光を検出 放射線が当たって自由電子が飛び出し、 電流が流れる(電離) ⇒電気信号の測定 3 蛍光測定の対象とは 医学・薬学・生命科学などで用いられる標識化合物(非密封放 射性同位元素)は、ほとんどが純ベータ線放出核種である 上記の主なベータ線のエネルギーは3Hの18.6 keVから32Pの 1,709 keVまで様々である 飛程例(概算値) 3H 32P 空気中の最大飛程 2.7 mm 6100 mm 水中の最大飛程 0.6 μm 0.6 mm 低エネルギーの放射線は、検出器まで届く率(検出効率)が 低くなる 4 放射線を放出する標識化合物 揮発性があるなど、不安定な標識化合物 =空気中で不安定な化合物(ex.ペニシリン)や トリチウム水(HTO) 揮発性のない標識化合物 =化合物として安定(ex.3H-Methionineなど) これらの測定には、液体シンチレーションカウンター(LSC)が 従来用いられてきた 5 従来技術;LSCとその問題点 液体シンチレータを用いたLSC測定 LSCは放射線が溶媒に与えたエネルギーを蛍光として測定す る機器である 液体シンチレータ内に放射性の試料を溶かしこむため、全方向 の放射線から蛍光を発することができ、効率が良い しかし、液体シンチレータは環境負荷になる、 測定後のシンチレータは放射性有機廃液として処分し なければならない 6 液体シンチレータを用いないLSC測定 固体シンチレータ(Ready Capなど)は再現性がなかった プラスチックシンチレータに容器を用いては、低エネルギー ベータ線は測定不可能 微細ビーズでは20時間近い測定が必要 シート状プラスチックシンチレータ(PS) を用いた測定法を開発 7 新技術の特徴・従来技術との比較 PSを用いることにより、従来技術の問題点であった 放射性有機廃液をゼロにすることに成功した。 本技術の適用により、使用に伴う環境負荷がなくなる。 従来の測定は、測定効率の面で液体シンチレータの 使用に限られていたが、PSにより同等の測定効率での 測定が可能となった。 測定時間も他の液体シンチレータを用いない方法と 比較して大幅に短縮できた。 8 本技術の想定される用途 原発事故後のトリチウム水、ストロンチウムなどの ベータ線測定に適した環境低負荷型放射線蛍光 検出器の開発 今後の環境放射能の測定 (原発周辺域などの安全確認) トリチウム水では、環境モニタリング 通常の標識化合物を用いた研究 クエンチングのないスペクトルの取得が可能であ り、試料の核種同定が可能 安全な標準試料の作成 9 揮発性のない試料の測定 PS法 :空気中で3~4時間乾燥後、別の1枚のPSを重ねる。 LSC計測 0.5mm厚のPS sheet;BC-400、13mm*50mm ノークエンチ PS-Plasma法; LSC計測 10 揮発性のない物質の測定例 トリチウムMethionine例(Eβmax=18.6 keV) 化合物によっては、PS2枚Plasma処理で42%の測定効率が得ら れている 50% Measurement efficiency [%] 45% 40% 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% P処理PS2枚 未処理PS2枚 P処理PS1枚 未処理PS1枚 LS_ 1min DBD plasma_3H-Methionine 11 シリカゲルを用いた測定時間の短縮 30.0 plasma treatment + siliga gel beads measurement efficiencies (%) 25.0 20.0 plasma treatment 15.0 non treatment 10.0 non treatment + silica gel beads 5.0 PS1枚の例 0.0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 elapsed time (hour) 試料溶液(トリチウム標識化合物)である水分が5(~20)μLのため、 一定の検出効率が得られるまでに約6時間を要していた。 ⇒シリカゲルをバイアルに入れたところ初めから安定になり、時間 の短縮につながった。 12 実用化に向けた課題 種々の吸湿剤について検討を行う必要がある。 実用化に向けて、プラズマ処理以上に安定した 効果のあるPS表面処理技術があると良い。 ガラスバイアルの蛍光検出への影響を最小限にする。 現在、揮発性標識化合物(トリチウム水など)に ついて液体シンチレータを用いた場合に近い 測定効率が得られている。(詳細は検討中) 13 企業への期待 プラスチック表面の親水化処理技術をもつ企業 との共同研究を希望。 水分子のみを吸湿する素材を開発中の企業 との共同研究を希望。 ガラスバイアルのガラス表面の加工技術を持つ企業 との共同研究を希望。 揮発性物質に関して、企業との共同研究を希望。 (詳細は、直接問い合わせください。) 14 本技術に関する知的財産権 発明の名称 : プラスチックシンチレータ、シンチレーション測定 用試料体、プラスチックシンチレータの作製方法 及びシンチレーション検出器 出願番号 :PCT/JP2013/82642 (基礎出願:特願2012-265737) 出願人 :お茶の水女子大学 発明者 :古田悦子 15 本研究に関連した共同研究等の経歴 核融合研究所一般共同研究に採択 装置開発企業と共同研究実施 放射線管理取扱い企業と共同研究実施 日本原子力開発機構 Broader Approach (BA-DEMO研究開発に係るトリチウム技術 の研究開発;2014-2016年度)に採択 2014年~ 富山大学水素同位体科学研究センター 一般共同研究に採択 2011年~ 2013年~ 2013年~ 2014年~ 16 お問い合わせ先 お茶の水女子大学 研究協力・社会連携チーム 社会連携係 中内 TEL FAX e-mail 03-5978-5462 03-5978-2732 [email protected] 17
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