FOMC、利上げ「忍耐強く」の文言削除

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インベストメント・アップデート
2015 年 3 月 19 日
FOMC、利上げ「忍耐強く」の文言削除
米連邦準備制度理事会(FRB)は 3 月 18 日に発表し
た米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明で、利上げ実
行まで「patient(忍耐強く)」待つとの文言を削除し
ました。この「patient」を頼りに市場は FRB の利上げ
までの間合いを読んでいましたが、イエレン FRB 議長
は、「patient(忍耐強く)」という言葉が無くなって
も「impatient(せっかち)」になるわけでは無いと性
急な利上げは無いことを市場に伝えました。利上げの
時期について明確な示唆が得られるような文言はあり
ませんでしたが、4 月の次回 FOMC での利上げは
「unlikely(可能性は低い)」としました。
米国経済の現状判断は、経済成長が幾分か緩やかに
なった("moderated somewhat")との表現で、若干下
方修正され、背景として輸出の伸びが弱まったことが
指摘されました。今回改訂した経済見通しで、2015 年
と 2016 年の GDP 成長率見通しの中心値が全体として
0.3%程度引き下げられました。輸出の鈍化の原因とし
て、米ドル高の進行と世界景気の回復力の弱さを FRB
も懸念しているものと弊社では見ています。
がどう見ているかの目安とされる長期的な失業率の中
心が 5.1%にまで引き下げられました。弊社では、失
業率が低下するとインフレは上昇するという関係性が
かつてほどは強くないことを FRB が再認識したことを
示し、失業率の低下それ自体が性急な利上げに結びつ
かないことを意味するものと考えます。
市場が好感したのは、今回の FOMC で政策金利の予想
を大幅に下方修正したことです。FOMC の 17 人のメン
バーが今後、政策金利がどのように動くかの予想分布
を示すいわゆる「ドット・チャート」によれば、2015
年末の政策金利の予想値(最頻値)は前回(2014 年 12
月時点)が 0.875%であったのに対し、今回(2015 年 3
月時点)は 0.675%に低下し、その分布も最頻値の周辺
に集中するものへ変化しています。同様に、2016 年末
についても 2.125%から 1.675%へ大きく低下するともに、
分布も下方向に移動しています。市場が恐れていた
「利上げペース加速→2013 年のバーナンキ・ショック
再来のシナリオ」が遠のき、FOMC 声明公表後は米国株、
米国債ともに大きく上昇する展開となりました。
ドット・チャート
FOMC メンバーの経済見通し
中央傾向値
2015 年
2016 年
2017 年
長期的
見通し
15 年 3 月時点
2.3-2.7
2.3-2.7
2.0-2.4
2.0-2.3
14 年 12 月時点
2.6-3.0
2.5-3.0
2.3-2.5
2.0-2.3
15 年 3 月時点
5.0-5.2
4.9-5.1
4.8-5.1
5.0-5.2
14 年 12 月時点
5.2-5.3
5.0-5.2
4.9-5.3
5.2-5.5
GDP 成長率
失業率
PCE(個人消費支出) インフレ率
15 年 3 月時点
0.6-0.8
1.7-1.9
1.9-2.0
2.0
14 年 12 月時点
1.0-1.6
1.7-2.0
1.8-2.0
2.0
コア PCE(個人消費支出) インフレ率
15 年 3 月時点
1.3-1.4
1.5-1.9
1.8-2.0
-
14 年 12 月時点
1.5-1.8
1.7-2.0
1.8-2.0
-
出所:FRB
インフレと雇用という FRB の政策目標の 2 つについ
て今回改定された経済見通しのなかで確認すると、ま
ず、インフレに関しては、PCE(個人消費支出)インフ
レ率をみると、2015 年の見通しの中心は、前回(2014
年 12 月時点)には 1.3%であったものが今回(2015 年
3 月時点)は 0.7%へ大きく下方修正されました。しか
し、2016 年については、前回の 1.85%から 1.8%へと
ほとんど変化せず、インフレ率が目標に近づくタイミ
ングは遅くなるが、軌道は外れないことを示しました。
一方、雇用に関しては、足許の雇用の拡大を受け、失
業率の予想の中心は 12 月時点から下方修正されていま
す。同時に、インフレを起こさない自然失業率を FRB
出所:Board of Governors of the Federal Reserve System
情報提供用資料
今後の見通しについては、FRB は慎重かつ緩やかに
利上げのタイミングを探っていくものと予想します。
ただ、リーマンショック後の米国の景気回復期間が、
戦後の米国の平均的な景気回復期間である 58 ヶ月を超
えてきており、経験則的には景気拡大局面のピークア
ウトが起きてもおかしくない時期に入ってきておりま
す。FRB が利上げを開始した途端に米国景気が下降に
向かって動き始めるという皮肉な展開もあり得ると考
えます。景気が下降局面に向かえば、FRB の予想通り
に雇用の回復軌道を維持できるかについては楽観でき
ません。
米国以外の多くの国で金融緩和姿勢が取られるなか、
原油安、米ドル高の進行が世界的なデフレ圧力となっ
て米国自体にも跳ね返ってくることを FRB が認識して
いることを確認できました。債券市場がこれまでに織
り込んできた FRB の利上げペースはより緩やかなもの
に修正を余儀なくされ、今後の米国の長期金利の低下
圧力につながっていくものと予想します。3 月上旬に
つけた米国 10 年国債利回り 2.2%台が当面の長期金利
の上限と見ています。
円ベース・ポートフォリオ構築チーム
ベアリング・アセット・マネジメント・リミテッド(英国法人)
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Date Complied(東京): 2015 年 3 月 19 日
Ref No. M20151Q63
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