技術士第二次試験 における口頭試験

第1章
技術士第二次試験
における口頭試験
1.技術士までの道
2.口頭試験の概要
3.口頭試験の目的
4.受験申込書の作成
5.「技術的体験論文」と『業務内容の詳細』
6.口頭試験までの準備
7.口頭試験の流れ
8.口頭試験の受け方
・第 1 章 技術士第二次試験における口頭試験
平成 24 年度までの技術士第二次試験では、口頭試験が 45 分間も行われてい
たので、受験者にとって負担の大きな試験であった。また、口頭試験前に技術
的体験論文を短期間に作成して提出しなければならないだけでなく、口頭試験
の最初にはその技術的体験論文のプレゼンテーションをしなければならなかっ
た。口頭試験で試問される内容はそれだけではなく、暗記したり専門知識の復
習をしたりしなければならない項目もあり、筆記試験合格から口頭試験までの
間に、精神的に大きな負担を感じる受験者もいたと考えられる。実際にその頃
の口頭試験の合格率は、技術部門・選択科目別にばらつきがあるものの、情報
工学部門のように口頭試験合格率が 60 %台というところもあり、難関である
筆記試験を突破してきた口頭試験受験者にさらなる関門が課されていた。そう
いった状況に対して疑問を投げかける関係者もあり、口頭試験のあり方につい
ての議論が行われたと聞いている。さらに、筆記試験も含めた改正が検討され
るようになり、平成 25 年度試験からは試験制度の大幅な改正が行われた。その
中で、口頭試験においても大きな見直しが行われ、試問時間や試問内容が変更
された。本書は、口頭試験の対策を主に説明するものであるが、口頭試験にお
いては、受験申込書の記載方法や筆記試験で解答した答案の内容までもが関係
してくるので、試験制度全体の内容をここで理解しておかなければ、口頭試験
直前では手遅れとなる事態に陥りかねない。
なお、口頭試験の合格率だけを取り上げると、平成 25 年度試験以降は、技
術部門・選択科目でばらつきはあるものの、全体的な口頭試験合格率が平成
19 年度試験から平成 24 年度試験までよりは改善されている。そういった点で
は受験者にとって朗報であるが、不合格者が全くいなくなったわけではないの
で、準備不足の受験者は、最後の口頭試験で涙を呑む結果となってしまう。そ
のような結果にならないために、口頭試験は決して侮ってはいけないという点
は、強く認識して対応しなければならない。もしも口頭試験で不合格になった
場合は、翌年にまた筆記試験の挑戦から始めなければならず、筆記試験で再び
合格できるという保証はない。なお、現在の試験制度で特に注意しなければな
らない点として、受験申込書作成時点で、『業務内容の詳細』という記述があ
る点である。それは、この『業務内容の詳細』が口頭試験で最初に試問される
内容になるので、口頭試験の結果に大きな影響を与える要素となるからである
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が、まさか春に受験申込書を作成している時点で、その中に口頭試験の結果を
左右する要素が含まれているとは多くの受験者は考えていないであろう。その
点をここで強く認識して、本書の内容を確認しておくことが重要と考える。
また、技術士第二次試験の口頭試験は、受験者が技術士となるのにふさわし
い人物かどうかを総合的に判断する試験であるので、技術士制度などの基本事
項を含めて、すべてを理解しておかなければ適切な回答ができない試験である。
そういった点を配慮して、本章では技術士制度と技術士試験および口頭試験の
基礎について説明する。
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・第 1 章 技術士第二次試験における口頭試験
1.技術士までの道
技術士となるためには、技術士とはどういった人をいうのかを知っておかな
ければならない。そして、技術士になるために通らなければならない多くの関
門とその目的を十分理解しておく必要がある。
(1)技術士とは
技術士とは、日本の科学技術分野における最高の国家資格である。それは、
次のような資料に記載された内容からも明白である。
【技術士法による記載】
第 2 条(定義)
この法律において「技術士」とは、第 32 条第 1 項の登録を受け、技術
士の名称を用いて、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。以下同じ。)
に関する高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、
設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務(他の法律におい
てその業務を行うことが制限されている業務を除く。)を行う者をいう。
【公益社団法人日本技術士会『技術士制度について』での記載】
「科学技術に関する技術的専門知識と高等の応用能力及び豊富な実務経
験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備えた、優れた技術者
の育成」を図るための国による資格認定制度(文部科学省所管)です。
このように、法律的にも実際の認識としても、技術士は日本における科学技
術分野での最高の国家資格となっており、技術士には業務上で多くの業務権限
が与えられているだけではなく、他の国家試験の試験科目免除などの特典も与
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1.技術士までの道・
えられている。その例として、上記『技術士制度について』で示されている内
容の一部をここで転載すると、以下のとおりである。
(a)有資格者として認められているもの
建設業法の一般建設業及び特定建設業における営業所の専任技術者
建設コンサルタント又は地質調査業者として登録する専任の技術管理者
公共下水道又は流域下水道の設計又は工事の監督監理を行う者
鉄道事業法の鉄道事業における設計管理者
中小企業支援法による中小企業・ベンチャー総合支援事業派遣専門家
その他、多数あり
(b)資格試験の一部又は全部を免除されているもの
廃棄物処理施設技術管理者
労働安全・衛生コンサルタント
作業環境測定士
一級施工管理技士(土木、電気工事、管工事、造園)
土地区画整理士
弁理士
消防設備士
気象予報士
その他あり
(2)技術士になるためのステップ
技術士のような高度な国家資格の場合には、国際的には二段階選抜方式が一
般的とされているため、技術士試験制度も平成 13 年度試験からは二段階選抜
形式の試験制度になっている。そのため、技術士となるには図表 1. 1 に示すよ
うなステップを経なければならない。
このように、最初の関門は修習技術者となるための門である。修習技術者と
なるための道は現在 2 つあり、技術士第一次試験を受験して合格するか、大学
等において JABEE の認定コースを卒業していなければならないが、技術士を
目指す人が所属していた当時の大学等の専門課程が JABEE から認定を受けて
いなければ、必然的に技術士第一次試験に合格する道しかないことになる。
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・第 1 章 技術士第二次試験における口頭試験
技術士第一次試験に合格する
JABEE の認定コースを卒業する 【第一段階】
修習技術者となる+必要経験年数を経る
技術士第二次試験受験資格を得る
技術士第二次試験申込書書類審査[4 月初旬∼4 月下旬]
確認事項:経験年数
技術士第二次試験筆記試験[7 月下旬]
確認事項 1(択一式)
:専門知識 足切り 確認事項 2(記述式)
:専門知識、応用能力、課題解決能力
【第二段階】
口頭試験(筆記試験合格者のみ)
[11 月∼1 月]
確認事項:経歴、応用能力、技術者倫理、技術士制度の認識
技術士第二次試験合格(技術士登録資格取得)
技術士登録申請
技術士
注: は関門を示す。
図表 1. 1
技術士までのステップ
JABEE 認定者の受験者数は年々増えてきてはいるものの現在のところ、技術士
第二次試験受験者の多くは技術士第一次試験の合格者というのが実情である。
次に、技術士第二次試験を受験するためには、経験年数の条件をクリアしな
ければならない。受験条件には 3 つの種類があり、選択した受験資格によって
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