デザインマネジメントレポート

デザインマネジメントレポート
SIM4年 30777 梅城 崇師
「高度な科学技術が世界にもたらした繁栄の中で、環境問題、南北間題、経済格差、貧困、飢え、情報格差、テ
ロと安全・安心等々の課題は依然として減る気配を見せていない。講義の中で提示された様々なデザイン手法を
参照しながら、周辺の人工物中から藝術的な視点から気に入ったデザインを一つ選び、選定理由を述べよ。また、
科学的な視点、工学的な視点およびグローバルな視点からのデザインの改良案を提示せよ。
」
周辺の人工物として、「ペットボトル」を考える。選定理由はその発想と新規性にある。
ペットボトルが登場するまで、飲料の世界はスチールとアルミに大別される缶が主勢を
占め、ビンや紙が補佐する様に互いの分野を極めていた。このような状況でペットボトル
が登場したのである。ペットボトルの最大の特徴は中身が見えることであろう。従来の缶
などでは素材は不透明であるため、中身を確認することができない。中身がどのような状
態であるか確認できないことは、お茶ならお茶の色を直接消費者に見せることができず、
パッケージという形でしか表現できないという表現力不足を招くだけでなく、商品を飲用
している際に残量がどれほどあるかを確認できないことなど、様々な不便があったが、ペ
ットボトルの登場により、それを全て解消したのである。
その他にペットボトルの特徴として、軽いことや、割れないこと、熱が伝わりにくいこ
とがある。軽くて割れないため、気軽に持ち歩くことができ、取り扱いにも注意を要する
ことはない。缶でさえも地面に落下させると傷がついたりするのだが、ペットボトルでは
傷すらつかないこともある。また、割れない性質を利用して、缶などではできなかった中
身毎冷凍することも(推奨されていないが)可能になり、夏場の冷却材としての利用にも
用いられた。加えて缶などに比べて熱が伝わりにくいため、冷たいものを持ったときでも、
それほど問題なく持つことができるのである。
更にペットボトルの特徴をとして、蓋を閉めるという画期的なアイディアも存在する。
それまでの飲料製品はどれも、一度開栓すると、栓や蓋を閉めることができず、飲み干す
かあきらめてそのまま待ち歩かざるを得なかった。しかしペットボトルは、蓋という機能
を持ち合わせることで、飲み残した状態でも容易に持ち歩ける手段を提供し、これがより
一層の普及に貢献したのである。
ペットボトルには実に多彩な種類がある。簡単に飲めるミニサイズから、分け合うよう
なリットルサイズまで多様な種類の大きさと、含まれる内容物が炭酸か清涼飲料かなどに
よって違ってくる形状や、ペットボトル材質の違いなどを加えると千差万別といってもよ
い。形状では特に最近、ペットボトル本体に立体模様を入れることで他社製品と差別化を
図るようなことも行われている。材質でも、オレンジ色キャップが目印であるホット用の
ペットボトルでは、従来のペットボトルでは変形するような熱湯を入れても、変形しない
材料が使用されている。
加えて、今まで未開拓であった分野への進出も顕著である。特に大きな需要の見込める
ビール容器としての使用は、酸素や光の透過を抑制したペットボトル材料の開発などによ
り商品化直前まできており、近年中に出荷されるようである。
このようなペットボトルに求められる改良点はリサイクルのしやすさではないか。ペッ
トボトル普及当初は、リサイクル工程が整備されておらず問題にもなったが、現在では有
る程度のリサイクルが行われている。しかし、問題も山積している状態である。
缶などの無機物と違って、ペットボトルは炭化水素化合物であるため、リサイクルの過
程は複雑にならざるを得ず、高コストである。これが生産者のリサイクル意欲を減退させ
る一員にもなっているため、よりリサイクルしやすい製品を作る必要があると考える。リ
サイクルを目的とした製品作りにより、生産者も消費者も関心を持つことが望ましい。
まずペットボトルは、本体、キャップ、ラベルのそれぞれに使用されている材料が違い、
リサイクル方法も異なってくる。本体は当然 PET であるが、キャップはポリエチレンやポ
リプロプレン、ラベルはポリエチレンや PET といった異なった組み合わせが用いられてい
るのである。これが、リサイクルをする際に手間となり、効率を下げるため、全て同じ材
料で統一したり、容器に無害な材料で直接彩色したりといった方法を取る必要がある。
またペットボトルはメーカごとに PET の重合度などが異なることも、リサイクル阻害の
要因となっている。よって、メーカ内だけでなく、メーカ間でも協力したリサイクル体制
を築くことが重要である。もし、ペットボトルの材料を変更する必要があるなら、それぞ
れのペットボトルごとに彩色を施すとか、形状に特徴を持たせるとかの、一見で判断でき
る工夫を加えるべきであろう。このように再生原料自体にばらつきがあるため、再生ペッ
ト樹脂も、艶が悪いなど品質が低下する傾向がある。よって、リサイクル商品に商品価値
を持たせるためにも、ペットボトルの材質による分類を進めるべきであると考える。
プラスチックが捨てられた際の問題も大きい。缶や紙などは、まだ自然に還ることがで
きやすいといえるが、ペットボトルはこれを腐食するような環境や、分解する微生物が少
ないため、自然に容易に還元することはない。これを解消するために、生分解性プラスチ
ックの研究を進め、自然最近が分解できるプラスチックを作成するといったことも必要で
はないか。
ペットボトルの原料は石油であるため、ペットボトルの普及は一見、資源の浪費に移る
かもしれない。しかし、リサイクルがすすめば、他材質の容器と同様にリユース可能にな
り、製造エネルギーの低さと、軽さや取り扱いやすさなどによる影響で、環境負荷の少な
い素材になることも夢ではない。