製品 技術 1988年4月に発売されたXL-Z711。 このモデルは、当事、日本ビクターで開発された『K2インターフェイス K2インターフェイス』を採用した初めてのモデルです。 K2インターフェイス 私にとっては、音質的に特に気に入っていたモデルです。 ご多聞にもれず、これでもかというくらい物量投入していて、オペアンプはJRCのNE5534DD、パスコンには タイツウのPPフィルムSHコン、LPフィルタ部分には富士通製スチロールコンデンサ、出力DCカットにはニッ ケミのAWDとブチル巻きスチロールコンデンサのパラ接続・・・いったい原価はいくらかかっていたのか・・・。 K2インターフェイスのお披露目ということもあり、音質的にも同じ価格帯の他社モデルと極端に差をつけ なければならなかったという事情もあったと思います。 K2インターフェイスとは?・・・現在では高品位/高音質技術としてVE社(当事はビクター音産)の看板技術 として知られていますが、当時の日本ビクター開発研究所の桑岡俊治氏と青山スタジオの金井実氏が開発 したものです。 http://www.jvcmusic.co.jp/k2technology/ 彼らはデジタルデータ伝送が本来の機能である『符号伝送』を満たしていないために音質が劣化している ことに気付き、その解決方法を具現化するためにCDプレーヤXL-Z711にK2インターフェイスを搭載するよう 提案しました。 通常のデジタル信号処理は、エッジ動作と言って、0から1、1から0に変化する電圧の変化(エッジ)を検出 して、次の動作(状態)を規定します。 これに対し、初期のK2インターフェイスが狙ったのは「ウィンドウによる符号検知伝送」と言えるものでした。 図1および2の源信号を次のステージで検知 VH 源信号 源信号 する場合、図1のエッジ動作では立ち上がり VL のスレッショルドVHと立下りのスレッショルド VL共にゲート動作のバラつきで変化します。 B A したがってA≠A'ですし、B≠B'です。 A' VH いくつものゲートを通過することにより、この 時間軸誤差は源信号と相関が無くなります。 検知信号 A A' B' ADやDA変換というのは、ある時間レートで その時その時の情報を正しく捕らえ、それを そのまま伝えることが重要となりますので、 検知信号 エッジ動作が良い訳が無いという論法です。 A≠A' B B≠B' 図2のK2インターフェイスでは、水晶クロック A≒A' B≒2A 【図1 エッジ動作】 【図2 K2ウィンドウ動作】 精度の細いパルス(窓パルス)を検知に用い、 立ち上がりだけを使って源信号の符号を取り 込む(符号情報を読み取る)ので、生成された K2処理はDO(シリアルデータ)のみに実施している。 検知信号の時間軸情報は水晶クロック精度 VC4098というFPGAでタイミングを制御。 に近いということになります。 したがってA≒A'ですし、B≒2Aです。 Sheet2 1/2 Copyright@Gyouza-seijin 製品 技術 理論は正しいようにも思えますが、Z711に使用しているD/Aコンバータはラダー型のPCM56Pなので16bit 情報がDACのシフトレジスタにラッチされたら、マージャンの牌よろしく、 ロン! とアナログ電圧に変換する 方式です。(18bitDACであるPCM58Pが出る前のZ711は、ディスクリートで2bit分を追加していますが・・・) したがってDACの前段で伝送されるシリアルデータ信号に関する時間軸方向の『揺らぎ(ジッタ)』は、 極端に言えばどうでも良いはずです。(最近主流のPWM出力1bitDACはジッタの影響をモロに受けます!) ところが、K2のように窓パルスで処理したほうが、ラダー型のDACであったとしても確実に音の透明度が 高くなるのです!(K2をバイパスして比較:YM3414からダイレクトにBCO、WCO、DRO、DLOをカプラに接続) 当時、どうしてなのか随分悩みましたが、エッジ動作では前述のようにエッジ部分のスレッショルドレベルが 各ステージでランダムになることにより、不要輻射スペクトラムが経時的に変化することくらいしか現象として 認識できませんでした。 それが音質劣化に影響しているのかもしれないと、『都市伝説』のように仲間うちで話したものです。 もうひとつ、K2インターフェイス部分でフォトカプラとソノカプラによるアナデジGND分離も実施しており、 アナログ側のGNDベースノイズは確実に減っていました。 この状況があって、はじめてK2の効果が出たのかもしれません。 ソノカプラについて、簡単に説明しておきます。 超音波伝送を利用したアイソレータで、昭和電線電纜 VTH 源信号 (SWCC)が開発したSC-1500という素子です。 ピエゾ素子と同様に、入力側に電圧を加えると伝送路 tD SC-1500出力 (特殊セラミック結晶)に歪(超音波)が発生し、出力側 tD に伝播することを利用しています。 tD フォトカプラと同様、電気的に完全アイソレートできます。 tD:一定 その伝送路を伝わる時間が一定であるのを利用して ディレイラインとしても使えます。 機械的に伝送路の長さが規定されるため遅延時間は ある意味では水晶精度です。 復元信号 当時、フォトカプラで高速のものは、アナログデバイスなど から製品化されていましたが、非常に高価(@数千円) 【図3 ソノカプラ動作】 だったため、その代わりに使用したものです。 (1500というNo.からすると、15MHzまで伝送できた?) W.clockなど低速?の信号は、6N137という汎用の高速 フォトカプラを使っています。 最近のK2インターフェイスには、高音質化情報処理技術と謳った 『劣化したものを、復元する』技術を加えています。 更に、ネットやiPhoneでの使用を前提に、『可逆性の圧縮・伸張技術』 を開発し、これにもK2と名付けています。 ここまでくると、「こじつけ」っぽいですが、当初、デジタル歪に対処した 桑岡、金井の両氏に敬意を表したネーミングなのでしょう。 Sheet2 2/2 Copyright@Gyouza-seijin
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