内臓脂肪について

編集・発行/信楽園病院検査科
内臓脂肪について
臨床検査技師 太田 朱音
肥満症は生活習慣病や動脈硬化性疾患の温床です。肥満というと外からみてわかる皮下脂肪に
気をとられがちですが、実は内臓脂肪の方がこうしたリスクが高いとされています。
肥満学会のガイドラインではBMIが 25 以上、内臓脂肪面積が 100cm2以上あれば内臓脂肪型肥
満と診断されます。
内臓脂肪は、蓄積することによって脂質や血糖、血圧に影響を及ぼし生活習慣病を引き起こし
やすくなります。それによって動脈硬化の進行が促進され、心筋梗塞や脳卒中といった命にかか
わる病気を招きやすくなります。
一方、皮下脂肪は腕、足、胸、腹、背中などに多くつ
いてしまうと運動能力の低下を招くものの、内臓脂肪型
のようなリスクは高くないことがわかってきました。
◆内臓脂肪はどうやって測るの?
内臓脂肪蓄積の確定診断には X 線 CT 装置が使用されています(腹部の
輪切り画像から内臓脂肪の面積を計測します)
。
これに加え、当院では一昨年より内臓脂肪測定装置が導入されました。
微弱な電流を流した際の抵抗値の差を利用して、簡便に内臓脂肪を計測で
きます。あくまでスクリーニング的な検査ではありますが、CT のような
被ばくの心配がなく、繰り返し測定できる利点があります。
◆肥満症の治療
肥満による健康障害がある群、および確定診断された内臓脂肪型肥満は治療の対象となります。
肥満症の主な治療法は、①食事療法、②運動療法、③行動療法が基本であり、これらを組み合わ
せたライフスタイルの改善を基本に、場合により④薬物療法を検討します。
① 食事療法…必要栄養素を確保しながら総エネルギー量を抑える。
② 運動療法…有酸素運動を行う。運動には基礎代謝の増加、インスリン感受性の向上、
脂肪合成酵素の抑制、HDL(善玉コレステロール)増加など太りにくい代謝
状態をつくる効果がある。
③ 行動療法…日常生活における肥満に結びつく行動(まとめ食い、ながら食い、つられ
食い、早食い等)を明らかにし、そこに働きかける。
ライフスタイルの改善がすべての生活習慣病予防の柱となります!