糖尿病患者の療養指導 ~化学療法中に血糖コントロールが乱れた事例~

糖尿病患者の療養指導
~化学療法中に血糖コントロールが乱れた事例~
平成27年11月9日
急性期病棟看護師
はじめに
糖尿病治療の基本は、食事療法と運動療
法である。
患者が意欲を持ち、主体的に行動を行う
ことが治療の一環となる。糖尿病は主疾
患に合併して罹患していることが多く、こ
れらは療養生活を妨げる因子となること
が多い。
事例紹介
患者:71歳 女性
病名:左乳癌
2型糖尿病
身長:145㎝ 体重:39.4㎏
BMI:18.74
合併症 網膜症:なし
高血圧:なし
神経障害:なし 脂質異常:なし
腎症:3期
動脈硬化性疾患:なし
食事療法
あり(ENC 1600kcal)
運動療法
あり(自転車15分)
薬物療法
あり(アマリール1mg/日)
経過
X年Y月
左乳房全摘術+センチネルリンパ節生検施行
X年Y+3月 CE療法開始
①ヴィーンF(500) 1V
②生食(100)
1V
アロキシ(0.75)
1V
デキサート(3.3) 3A
③生食(100) 1V
ファルモルビシン(50) 2V
ファルモルビシン(10) 2V
④生食(100)
1V
エンドキサン(500) 1V
エンドキサン(100) 2V
X年Y+3月Z日
倦怠感、嘔吐、食思低下あり、
デキサート1A+生食50ml 2日間投与後、
BS:279mg/dlと上昇。経口摂取量が少ない
ため補液施行。
X年Y+3月Z+2日 ジャヌビア(50)、ビオグリタゾン(15)開始。
食事5割以上摂取で点滴減量の指示あり。
X年Y+3月Z+4日 BS:54。低血糖あり。自覚症状なし。
X年Y+3月Z+5日 スライディングスケール中止。
X年Y+3月Z+6日 食思低下、嘔気軽減し退院。
血糖値の推移
月/日 朝食前 昼食前 夕食前
Y/Z
279
162
278
/Z+1
128
328
/Z+2
148
256
/Z+3
164
275
/Z+4
134
/Z+5
未測定
140
269
/Z+6
291
/Z+7 未測定
319
245
106
102
54
159
221
BS 3検
スライディングスケールA
スライディングスケール中止
療養上の問題点
① 治療によるストレスの増加
② 摂取カロリーの不安定化
化学療法の副作用による食欲低下
③ ステロイド剤使用による
血糖コントロールの乱れ
① の問題への対応
プライバシーに配慮した環境を作り、
患者の感情を表出させ、前向きに
治療に臨めるように支援した。
② の問題への対応
血糖測定の導入、スライディングスケール
の使用など初めての治療・処置の必要性
と意義について説明した。
化学療法により起こりえる副作用(食欲不
振、嘔気、嘔吐など)とそれにより惹き起こ
される血糖値の変動について説明した。
③ の問題への対応
化学療法を予定通り施行することが優先
されていたため、今後もステロイド剤投与
が必要であることを説明した。ステロイド
投与により血糖値変動が起こる事、又そ
れは血糖値とそれに基づくスライディング
スケールの導入で安定化できることを説
明した。
まとめ
① 厳格な血糖コントロールより、化学療法を
無事に施行することが最重要課題となる。
② 食事療法、運動療法の遂行が困難な状況
であっても焦らずに待つ姿勢が大切となる。
③ 治療・処置に伴い予測される経過と反応を
患者と共有する。