平成 24 年度 家庭用品健康被害防止調査 アゾ染料に由来する

平成 24 年度 家庭用品健康被害防止調査
アゾ染料に由来する発がん性を有する芳香族第一級アミン類(PAAs)の繊維製品からの溶
出試験
国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部 河上強志、伊佐間和郎、五十嵐良明
-------------------------------------------------------------------------------概要
アゾ染料が使用されている繊維製品中の遊離型の芳香族第一級アミン類(PAAs)につい
て、汗での溶出挙動および溶出量評価のために、人工汗による溶出試験を実施した。試料
には、これまでの調査で benzidine 等が高濃度で検出された綿製シーツ類を用いた。人工汗
は JIS L0804:2004「汗による染色堅ろう度試験」に基づき、酸性(pH=5.5)およびアルカ
リ性(pH=8.0)の 2 種類を用いた。いずれの試料も染色堅ろう度は非常に低く、今回使用
した繊維製品による試験結果は、一般的な繊維製品による代表的な試験結果として扱うこ
とは難しいと考えられる。試料からメタノール抽出された遊離型 PAAs は、benzidine、
aniline および 4-aminobiphenyl であった。次に、試料を人工汗に 0.25~14 時間浸漬し、
PAAs 溶出量の経時変化を調べた。酸性人工汗では aniline の溶出量が若干増加したが、他
の PAAs 溶出量はメタノール抽出した時とほぼ同等であり、明確な経時変化も認められな
かった。一方、アルカリ性人工汗では 4 時間までは各 PAA の溶出量に経時変化は認められ
なかったが、12 および 14 時間後にはいずれの PAA とも溶出量が大幅に増加し、アルカリ
性人工汗中では試料中のアゾ染料が一部分解している可能性が示唆された。本試験で使用
した製品については、洗濯時に大部分の遊離型 PAAs が除去されると考えられ、これらの
製品を使用前に数回洗濯すれば、当該製品中の遊離型 benzidine の発がんリスクは大幅に低
下すると考えられた。