平成26年度 環境保全活動実践報告書 地域の自然に

平成26年度
環境保全活動実践報告書
ひたちなか市立前渡小学校
地域の自然に学び,地域の自然と共に生きることで豊かな心をはぐくむ
~ 学校ビオトープでの活動を中心に ~
1
前渡小学校の環境保全活動の概要
本校は,旧勝田市の中心からやや離れ,旧那珂湊,東海村と学区を接する,自然環
境に恵まれている学校である。一方で,新興住宅地を抱え,児童数は870名となる
大規模校でもある。「健康でたくましく,自主自立・自学の精神に満ちた心豊かな児
童の育成をめざす」教育目標の下,経営方針として「全ての児童を生かす特別支援教
育の推進」「課題・目標・手立てを明確にした教育の実践」を掲げている。
豊かな自然環境を活かした本校のビオトープ「ほたるの森」では,環境を保全しな
がら,できるだけ多くの児童が活動できるようにするため,自由に出入りできる時間
や 季 節 を 制 限 し た り ,体 験 で き る 曜 日 を 学 年 毎 に 決 め た り す る な ど の 工 夫 を し て い る 。
また,PTAや「遊学会」(おやじの会)の協力により,ホタルの幼虫の放流や観察
会が実施されており,子どもたちだけでなく保護者や地域の人々にとっても,自然を
楽しむことのできる憩いの場所となるように環境の保全活動を行っている。
この様に,活発な利用や活動が行われている一方で,それらの活動は単年度での実
施・計画が多く,長期的・継続的に活動するための体系作りや,これまでの実践が積
み重ねられ,そこから児童が自然について考察できるような基盤作りまでには至って
いなかった。愛鳥モデル校の指定を受けて2年目となり,野鳥の来る森づくりの実践
にも取り組んだ。
2 ねらい
(1) 全 職 員 が 一 体 と な っ た 継 続 可 能 な 指 導 体 制 の 元 に 実 践 す
る 。学 校 ビ オ ト ー プ「 ほ た る の 森 」で の 教 育 活 動 を 通 し て ,
豊かで健やかな心と体の育成を図る。(交感的自然認識に
よる感受性の刺激と創造力の育成)
(2)
生 き も の や 植 物 ,そ れ を 取 り 巻 く 環 境 に 接 す る 中 で ,自
ら課題を見つけ,自ら考える態度を育成する。(直接体験
を通しての探求的態度・思考力・判断力の育成)
3「環境教育」で育てたい児童の姿
(1) め ざ し た い 学 び の 姿
・豊かな自然環境の中での活動を通して,自他の生命を大切にし,環境とそれに関
わる問題に対する関心と感受性を高める。
・体系的な環境教育に,各教科を通してクロスカリキュラムによる実施,児童の感
受性や好奇心を高め,科学的な見方・考え方を育てるとともに,児童の創造力や
思考力,表現力を育てる。自ら問題を見付け進んで対象に働きかけながら問題解
決していく中で,友達や周りの人,自然に関わり合いながら,自分のよさや成長
に気付き心を豊かにのばしていく姿を目指す。
(2) 本 校 の 環 境 教 育 の 取 り 組 み の 現 状
児童によるビオト-プレンジャーが組織され,
年間を通して活動している。業間休みを中心に,
できるだけ多くの児童が「ほたるの森」で活動で
きるようにしたいが,環境保全も考え,学年ごと
に体験できる曜日を決めるなどの工夫をして行っ
て い る 。 ま た , PTA や 遊 学 会 ( お や じ の 会 ) の 協
力により,ホタルの幼虫の放流や観察会が実施さ
れており,保護者や地域の人にとっても自然を楽
しむことのできる場所となっている。
-1-
ビオトープレンジャーの活動
3 取組内容
(1) 校 内 に お け る 環 境 教 育 の 実 践
豊かな自然環境の中での活動を通して,自他の生命を大切にし,環境とそれに関
わる問題に対する関心と感受性を高めるための指導体制を確立するため。
① 環境教育全体計画の作成
② 組織作り
・ビオトープレンジャーの組織作り
・野外観察クラブ
③ 各組織との連携 遊学会(おやじの会),PTAとの連携による体験型事業
・ ホ タ ル の 観 賞 会 ( 7 / 1 2 実 施 親 子 334 名 参 加 )
・オ オ ム ラ サ キ の 観 察( 昇 降 口 に 透 明 ケ ー ス を 設 置 し て 観 察 で き る よ う に 実 施 。観
察後,ほたるの森で放蝶。)
・カヌー体験教室(8/4)
・月と星の観察会(10/30実施)
(2) 自 ら 課 題 を 見 付 け , 自 ら 考 え る 態 度 を 育 成 す る た め の 取 り 組 み 。
体 系 的 な 環 境 教 育 に ,複 数 の 教 科 を 関 連 づ け る ク ロ ス カ リ キ ュ ラ ム に よ り 多 角 的
に 取 り 組 む こ と で ,児 童 の 感 受 性 や 好 奇 心 を 高 め ,科 学 的 な 見 方・考 え 方 を 育 て る
とともに,児童の創造力や思考力,表現力を育てる。
・生活科:「生きものとなかよし」(2年生で実施)
・理 科:植物や生きものの観察→行動や生態の観察(3,4年生で実施)
・社会科:環境の保全に対する取り組みについて調べる。環境を守るための活動の
理解から実践(5年生)
・図 工:自然物(木の実,葉,石など)を使っての作品製作。作品をビオトープ
の森の中に置いての鑑賞など
・国 語:作文や俳句,詩で「ほたるの森」での体験や自然を表現する。
・総合的な学習:環境や生きものの調査。ビオトープでの活動
(3) 各 活 動 の 実 践 の 様 子
①「ほたるの森」及び校内での自然体験活動
【ビオトープレンジャーと1年生によるホタルの放流】
【ホタルの観察会および校庭でのキャンプ】
-2-
【親子カヌー教室】
【野外観察クラブでの活動観察】
【オオムラサキの観察】
【巣箱の清掃】
【月と星の観察会】
【裏山探検】
【冬季の餌台の活用】バードケーキ作り
-3-
②
4
前小生きもの図鑑の作成
今年度の活動結果
(1)
全職員が一体となった継続可能な指導体制の確立について
今までは,ビオトープでの活動がそれぞれ独立しているような面があったが,そ
れを意識的に環境教育として,各学年の教科やクラブ,委員会の活動と関連づける
ことによって体系作りを行った。各学年に環境教育部員を配し,各学年の年計の中
に環境教育との関連を入れていくことも視野に入れた。
(2)
直接体験を通して,探求的態度・思考力・判断力を育成する ことについて
本 校 の 児 童 に と っ て ,ビ オ ト ー プ「 ほ た る の 森 」が 現 在 ど の 様 な 存 在 で あ る の か ,
昨年度,本校の自慢できるところとして高学年にアンケートを取ったところ,以下
のような結果が見られた。
・「ほたるの森」がある 67%
・吹奏楽部の活躍
10%
・花壇がきれい
9%
・あいさつ
4%
・ボランティア清掃
2%
・その他
1%
( 5,6 年 生 276 名 調 べ )
あいさつ
4%
花壇
9%
吹奏楽
部
10%
ボランティ
ア清掃
2%
前渡小の学校自慢は?
その他
1%
ほたるの
森
67%
本校のビオトープ「ほたるの森」での活動は,震災直後,斜面の崩壊の恐れがあ
り,活動が制限された。一昨年度はビオトープ内の空間放射線量が除染基準値を超
えたが,地域の方の協力による除染作業の後,活動を再開した。暫くは空間放射線
量を確認しながら慎重に行っている状況であったが,昨年度から,ホタルの放流も
再開し,より多くの開放,活動を行うことができるようになった。
また,昨年度から茨城県の愛鳥モデル校の指定を受けたことで,観察用具の提供
もあり,野外観察クラブの活動もより充実したものとなった。昨年度末から今年度
初めにかけて,新規の餌台と巣箱の設置を行った。今後も,より多くの生き物にと
って居心地のいい学校ビオトープを目指すと共に,そこで活動する児童にとっても
楽しく体験のできる「ほたるの森」をめざして環境整備を進めることで,活動内容
の充実と市内の環境保全活動に取り組む他団体との交流や情報交換が拡がることも
含め,さらに活動が深まっていくことを期待したい。
-4-